フランス軍参謀総長はテレビ中継まで入れた前例のない記者会見で「もう我々の選択肢に後戻りはない」と、マクロン大統領も「1945年以来、自由がこれほど脅かされたことはない」「我々は両親が享受していた平和の配当の恩恵をもう受けられない」と述べて軍事予算の増額を発表した。
参考:Climat, relations avec les Etats-Unis, défense du territoire national : les nouvelles priorités de la revue nationale stratégique 2025
参考:Pour le chef d’état-major des armées, la Russie « constituera une vraie menace avant 2030 »
参考:Discours aux armées : face à l’accélération des menaces, Emmanuel Macron demande un effort de toute la nation
まだマクロン大統領の決意を国民が支持するかどうかは不明
フランス軍のブルクハルト参謀総長はテレビ中継まで入れた前例のない11日の記者会見で「フランスが直面している脅威の全貌」について語り、この中で「以前の世界では1つの危機が別の危機にとって変わっていたが、現在では次々と新たな危機が発生して重複しあっている。もう我々の選択肢に後戻りはない。現在の不安定な状況を我慢すれば元通りになってビジネスを再開できると考えるのは無駄だ。恐怖を煽るつもりはないが、現在の世界には本当に認識すべきリスクがある」と指摘。

出典:Минобороны России
ブルクハルト参謀総長は「現在のロシア軍は細部に至るまで完璧な軍事モデルだ」「電子戦妨害能力から対宇宙能力、砲兵システムに至るまで本当に欠けている能力が見当たらない」「核兵器も極めて堅牢で実証済みの教義と指揮系統によって運用されている」と、プーチン大統領の狙いについても「ウクライナとの戦争は国の存亡をかけた戦いだ」「少なくとも掲げた目標を絶対に達成したいと考えている」「プーチン大統領の狙いは欧州を弱体化させてNATOを解体することだ」「戦争で莫大な損失を被っても再軍備の取り組みを継続するだろう」「現在のペースなら2030年までに真の脅威となるロシア軍が誕生する」と訴えた。
13日に発表された国家戦略レビューの中でも「世界が新たな時代に入りつつあることは明白だ」「2030年までに欧州の国内外でフランスと同盟国が、特に欧州諸国を巻き込む強度の高い大規模戦争のリスクが高まっている」「同時にフランスは大規模なハイブリッド攻撃の標的にされる可能性が高く、このシナリオに備えることは必要不可欠なことだ」「ロシアは2030年までに兵士30万人、戦車3,000輌、戦闘機300機を増強することを目標に再軍備を進めている」「ロシアの国家予算における軍事費は約40%で対応に失敗すれば米国の支援を失うだろう」と言及。
EN DIRECT | Discours aux armées du Président @EmmanuelMacron depuis l’Hôtel de Brienne. https://t.co/a5mkTCeLeJ
— Élysée (@Elysee) July 13, 2025
マクロン大統領もフランス革命を記念した軍事パレード前夜の演説で「我々は歴史の転換点に差し掛かっている」「1945年以来、自由がこれほど脅かされたことはない」「欧州大陸の平和は我々の決断に依存している」「ロシアの脅威は計画的、組織的、持続的なもので、これに対処するための能力が求められている」「この世界で自由であるためには敵に恐れられる必要がある」「敵に恐れられるためには強い力がなければならない」「そのためには全ての国民が意識をより高めることが必要で、今こそ我々が知っていることから結論を導き出す時だ」と呼びかけた。
“今後3年~4年の間に欧州で強度の高い戦争が勃発した場合、我々は抵抗できるのだろうか? これにイエスと答える力をもつには歴史的な決断が必要になるだろう。自分が何を望んでいるのかを知らなければならないし、それが分かったのなら口に出す勇気が必要だ。そして望みを口にしたら実行する勇気を持たなければならない。我々は2026年と2027年の軍事予算を35億ユーロと30億ユーロづつ増額する。軍事的独立は財政的独立と切り離せないため軍事予算増額の財源を借金に頼ることには反対だ。より多くの生産活動によって必要な資金を賄うべきで、我々は両親が享受していた平和の配当の恩恵をもう受けられない”

出典:U.S. Air Force photo by Senior Airman Koby I. Saunders
2027年の軍事予算は今回の増額を受けて640億ユーロ=約11兆円に達する見込みだが、フランスが理想的と考える軍事予算の規模は1,000億ユーロ=約17兆円(GDP比3.0前後)で、NATO加盟国が合意したGDP比5.0%を達成するのは1,400億ユーロ~1,500億ユーロ=24兆円~26兆円もの資金が必要になり、まだフランスは「2035年までに目標をどう達成するのか」の道筋が定まっていない。
それでも国民に「軍事予算増額の財源を借金に頼らない」「両親が享受していた平和の配当の恩恵をもう受けられない」「歴史的な決断が必要になる」と訴え、バイル首相は財政赤字削減のため400億ユーロ規模の予算削減を進めており、もう「国民は安全を確保するため社会保障が削られることを覚悟すべき」と言っているようにも聞こえる。

出典:NATO
ドイツのように財政規律を厳しく守ってきた国は「軍事予算の増額」を借金に頼ることも可能だが、フランスは積み上がった財政赤字と国家債務のせいで資金調達能力が制限されているため、もうフランス人は安全の代償として負担増を受け入れる覚悟が必要なのだろう。
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※アイキャッチ画像の出典:Armée de Terre





















純粋な疑問として欧州はまあ国民にネチネチ突っ込まれつつヒイヒイ言いながら軍備増強は達成できるだけど、ロシアはあんな脆弱な経済基盤で莫大な軍事費を維持できるのか?
いやまあ、中国の足引っ張ってくれればくれるほど日米台は有利になるから構わんけど
というかロシア、もう戦争経済から足抜け出来ないレベルじゃないか?
>というかロシア、もう戦争経済から足抜け出来ないレベルじゃないか?
とっくにそうなってるでしょうね(だからこそドンバス4州を越えて進軍してますし)
ロシアも中々しぶとくはありますが、ソ連時代からの伝統なのかロシアは攻め手になると本当に戦下手になりますね(攻められた時はナポレオンにせよヒトラーにせよ撃退するほど戦上手なのに)
ロシアはなんだかんだ品質に目を瞑れば資源から兵器を一から自活できる大国であるし、現在もガスや穀物の輸出などを行っているので、思っているよりは潰れにくいでしょう。
余りこの言い方はしたくないけれど、大日本帝国も経済力は列強でも明確に下の方でしたが米映が警戒するレベルの軍事力を持てたから…
民需や社会保障を犠牲にすればある程度維持できてしまうんだろうなぁと
その究極形が北朝鮮
一人当たりGDPがアフリカ最貧国レベルだが、今や世界有数の軍事大国
戦時経済から抜け出せない、やめたら破綻するのなら永遠に戦時経済を続けるしかない
哀れなロシア国民
フランス政治は、かなり流動的になっていますから、政局や選挙にどういった影響を及ぼすのか注目ですね。
フランス政局は、3つに分裂しているようですから、先行きがどうなるのか見通しにくい面があります(日本も見通しにくくなりそうですね…)。
>左派とRNは昨年12月、バルニエ前内閣の緊縮型予算案に反対し、倒閣に成功。
>最新の世論調査では、マクロン氏の支持率は22%、バイル首相は14%に低迷。来春の地方選、2027年の大統領選といった政治日程を見据えると、マクロン氏が新たに解散・総選挙を仕掛ける余裕があるか疑問だ。
(2025年07月07日 仏政局、秋に再び緊迫も マクロン氏の求心力低下―総選挙1年 時事通信)
(2025年7月9日 仏極右政党RN本部を家宅捜索 選挙資金不正調達疑惑で 日経)
「現在のペースなら2030年までに真の脅威となるロシア軍が誕生する」と訴えたと、何にせよロシアが損耗よりも増強の方が上手く行っており5年後には欧州相手取って戦える戦力を整えてくる可能性が高いということだろうけどそうするとやはりウクライナ戦争でのロシアの損耗は大本営発表よりも実際は相当少ないのが実情だとなりますが真相は戦後でしょうかね。
まあ長期的にはロシアも勢いを維持できるとは思えないけどね。
今のロシアの出生率が1.42のはず、人口置換水準はとっくに下回ってる。
高齢化率がちょっとマシという点で欧州を上回っているが平均寿命の低さで
少し良く見えるだけだし、戦争は出生率を上げるという現象も何故か起きてない。
結局現代の陸戦も人命を大量消費するイベントであり、その点は100年前から
何も変わってない訳で、そこを真剣に認識し始めた各国はちゃんと準備をしている。
でも少し経ったら人間を用意すること自体難しくなるはずなんだよね。
戦車は今でも代替不可能だし砲兵も重要だし伝統的な陸戦を軽視してはならん
という意見は大変もっともではあるが、出生率の低下だけはどうにもならないだろう。
この大量の戦車どうする?乗る人いないけど…って後で言ってそう、ロシアも欧州も。
ベビーブームは終末感が一段落した戦後になって起きるので…まあ今回それが起きるかは未知数ですが。
実際、ロシアが行動を起こしたのは人口問題含めた未来予想からで、ロシアの人口から算出できる戦力的ピークが今だったからなんじゃないかとは思ってます。
モスクワ市民とかは戦争なんてどこ吹く風という感じで過ごしてるから戦争終わっても出生率なんて増えるわけ無いよね
20~24歳の男性だけで370万人もいるので足りなくなるということはないと思うのだが。
社会を可能な限り今のまま回そうとするなら兵力を捻出出来ないだけで、社会のあちこちがボロボロになっても戦争に全振りするなら戦争の継続は可能だし、それをやらないのは国民の反発を懸念してるからだが、戦争に負けることによる国民の反発のほうが大きそうだから、プーチンはその選択をする可能性が高い。
ちなみに10~14歳は471万人、5~9歳も459万人いるので中期的には楽になる。
つーか今出生率が倍になったところで兵役やその他の社会システムを維持する仕事に就けるのは18年後だし少なくとも今やってる戦争には関係ないかと。
ウクライナを緩衝国のままにしておけば平和の配当をまだ受けつ取り続けられていただろうに
このOTANこなす
本気でそんな危機感があるなら今兵器代金をアメリカに支払ってウクライナに渡してあげなよ
金で傭兵雇ってあげても良い
これだけ西側が盛り上がってる最中にプーチン急死で、スターリン死後権力闘争の上フルシチョフが就任したように、ある程度話し合いが通用する新指導者が就任したら、NATO諸国国防費GDP比5.0%祭りがどう展開するのだろうか?
と妄想
恐ろしい事実を教えてあげよう
ロシア政界ではプーチンが一番話の通じる相手なんです、いやマジで
うーんこの
OH!
NATO諸国の方針変更はなさげですね
ロシア政界に詳しくわないから後継者候補とか知らないのでアレですが
対ロ相手の欧州でも危機感は強まってるな
日本が相手にする中国はそれ以上
皆マジで選挙には行こう
どこに入れるか以前に、国政に参加する意識を持とう
国民こそ当事者と理解しないと、危機なんて乗り越えるどころか備えることすら出来ないよ
最近の西側指導者層特有の歴史感覚の喪失はどうにかならんかね
ここ30年からの揺り戻しでちょっと物騒になっただけで、明日にも世界最終戦争が起きかねなかった冷戦とは比べ物にならないほど平和なのに1945年以来とか簡単に言うなよって感じ
むしろそういう人間は、世界大戦が起こってくれないと自分がただの狼少年になってしまうから困る、って考えてるんじゃないかと疑っています
冷戦時代にソ連がヨーロッパの国を侵略したことがあったか?衛星国で起きた反乱を潰したことは何度かあったし、ロシアとしては今回もその感覚かもしれないが
あとシンプルに当時と比べて西欧側が弱体化し過ぎている上に米国との関係が悪化している、つまり抑止力が大きく損なわれている
マカロンは年金の開始年齢を上げただけで黄色いベスト運動が起こったことを忘れたのか?
ロシアを過大評価しすぎな気もするが、取りあえずフランス人はいざとなったらライン川の向こうを戦術核で焼き払えば良いと思ってるでしょ。ドイツという盾が存在する以上、ドイツとの敵対無しにフランスに真の危機感が生まれるとは思えない。
>もう「国民は安全を確保するため社会保障が削られることを覚悟すべき」と言っているようにも聞こえる。
真っ先に減らされるのは移民関連の福祉予算だろうなと
おフランス人の本音は中々エグいモノがある
それに比べたら、今の日本人はピュア過ぎるぐらいだ
日本も総理があの人で無ければ、少なくともアジア版NATOやらC-17なんて妄言を言わず中国に対して毅然と演説してたんだろうなあ・・・。
もうあの人がクリティカルな時期に首相になることはないんだと思えば…。
しかし、参院選で政権交代が起きるのは「最悪の更新」になる可能性も。
管理人さま
些事ながら、Burkhard参謀総長はフランス人なので、ビュルカールとかおフランス風に呼ぶべきじゃないでしょうか?
彼はベルフォール県(普仏戦争でフランス側に残された残存アルザス地域)出身なので、ルーツはアルザス人でしょうね。