マクロン大統領は18日「ラファールを追加発注し(同機の生産を)加速させるつもりだ」と発言、Dassaultのトラピエ最高経営責任者も「大統領の発言を受けて月5機体制の可能性を検討している」と述べ、F-35に疑問を抱く国に「ラファールを提供をする用意がある」とも付け加えた。
参考:Macron speeds up Rafale warplane orders as France invests in nuclear deterrence
参考:France’s Dassault says upping Rafale warplane output
参考:Éric Trappier, PDG de Dassault Aviation : «Nous étudions la possibilité de produire cinq Rafale par mois»
フランスの戦略的自立は「外部からの資金流入で成り立つ防衛産業」に支えられており、これを放棄してまで規模の拡大を追求する気はないのだろう
フランスのルコルニュ国防相は最近「現在の危機的状況に対応するためにはラファールがあと20機~30機必要だ」と、マクロン大統領も18日「ラファールを追加発注し(同機の生産を)加速させるつもりだ」と述べ、Dassaultのトラピエ最高経営責任者も「ラファールの生産能力は月2機以上(2020年まで月1機)に引き上げられたが、さらに生産能力を拡張するためサプライヤー約400社と協力している。2025年には月3機、2028年以降には月4機体制を予定している」「大統領の発言を受けて月5機体制の可能性を検討している」「まだ具体的な指示はないものの(追加発注を)期待している」と述べた。
À l’horizon de 2035, Luxeuil sera la première base à accueillir la prochaine version du Rafale et son missile nucléaire hypersonique.
Luxeuil poursuivra sa longue histoire au service de notre dissuasion, cœur de notre défense. pic.twitter.com/0s1YPctfPe
— Emmanuel Macron (@EmmanuelMacron) March 18, 2025
さらにトランプ政権の不確実性が原因でF-35に疑問を抱く国についても「状況を注意深く観察している。戦闘機を購入するということは(購入国の安全保障に)長期的なコミットメントをすることだ。どのような決定が下されのか分からないが、我々はF-35を選んだ国が選択に疑問を抱いた場合、これまで通り政府の管理下でサービスを提供する用意がある」と述べ、F-35発注見直しを公言したカナダにラファールを提供する用意があることを示唆し、F-16後継機候補からF-35除外を示唆したポルトガルについても「ラファールを提供したい」と述べて注目を集めている。
因みにトラピエ最高経営責任者は「欧州諸国が米国製ではなく欧州製を優先する雰囲気」についても「現在では欧州製を優先することに誰も反対しないが、つい最近までは誰もが反対していた。この流れが長期的なものになることを願っている」と、各国の防衛産業企業を統合して「防衛バージョンのAirbusを夢見るべきかどうか」という質問についても「米防衛産業にはLockheed Martin、Boeing、Raytheon といった複数の企業が存在する。必要なのは何をしているのか分からないほどの巨大企業ではなく有能なプレイヤーだ」と述べた。

出典:Jim Ong/Domaine public
フランスのマクロン大統領は2023年1月「2024年~2030年まで7年間で計4,000億ユーロを国防費に充てる」と表明、2024年に472.3億ユーロを支出し、2025年は505億ユーロを支出する予定だが、米国が2024年に国防費として支出した8,243億ドル=約8,000億ユーロ、中国が2024年に支出する1兆7,000億元=約2,200億ユーロと比べると非常に規模が小さく、それだけ仏防衛産業に流れ込む資金も製造規模も小さくなる訳だが、フランスは戦略的自立に必要な戦闘機、空母、原潜、ミサイル、核兵器といった武器システムの開発・製造能力を維持し続けている。
米中と比べて数分の1の費用で戦略的自立を達成する重要なポイントは外部からの資金流入、つまり武器輸出の獲得=防衛産業基盤の維持と拡大であり、ルコルニュ国防相は今年1月「ラファールと潜水艦に対する需要のお陰で2024年の武器輸出額は2022年の270億ユーロに次ぐ規模だった」「2025年の武器輸出も水上艦艇、潜水艦、レーダー、大砲、ラファール、ヘリコプターが牽引して新たな記録が生まれるだろう」「フランスにとって武器輸出は主権の前提条件であり、防衛産業や技術基盤を発展させ、貿易収支や雇用創出に不可欠だ」と言及。

出典:Koninklijke Marine
つまりフランスの戦略的自立は「外部からの資金流入で成り立つ防衛産業」に支えられており、これを放棄してまで規模の拡大を追求する気はないのだろう。
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※アイキャッチ画像の出典:U.S. Air Force Photo by Senior Airman Brooke Wise
もう欧州内すら、ガタガタになりそうですね。
フランスは我田引水、米国の動きを利用していると映ってしまう。
欧州全体の利益になるような企業体を作る、というのがフランスに利さない、フランスの主権に関わるというのはわかるが、
そもそも今回の議論は欧州全体の防衛をアメリカ依存から脱却させることのはず。
欧州の軍事的独立という流れの中でフランスの辿ってきた軍事的独立の道への合流という方法論は現在ドイツを中心に支持されている話だからそうおかしなものでもない
フランスはサヘル諸国の経済的独立によって今後の地盤沈下が避けられない状況にあり、その軍事的自立のために兵器生産には自国分の需要のみならず輸出による総需要の拡大は必要不可欠だろう
まあとはいえ経済的に落ちぶれていく中で今後もラファールのような性能の良い売れる戦闘機を作り続けていけるかは怪しいところだが
その前に、ラファールを増産出来るのか。
ソ連崩壊で一時アホみたいに落ちぶれたロシアでも高性能な戦闘機を続々開発できたんだから出来るでしょ。フランスの電力源なんてほぼ原発で燃料値上がりのダメージ薄いし
>武器輸出も水上艦艇、潜水艦、レーダー、大砲、ラファール、ヘリコプターが牽引して
ルクレール、と言うかカエサル以外の陸戦兵器が無い…
そこはドイツが頑張るのかな
管理人様の過去記事では、(契約によりますが)1機当たり約300億円ですから、インフレ・ユーロ高の今ならば更に高くなっているかもしれません。
月5機に増産ならば、月1000億円超、年間2兆円近いビジネスになりますから規模の大きさを感じますね。
エジプト:総額52億ユーロ(約6,500億円)で24機導入1機あたりの導入費用は約2.2億ユーロ(約270億円)
カタール:総額63億ユーロ(約7,600億円)で24機導入1機あたりの導入費用は約2.6億ユーロ(約310億円)
インド:総額78.7億ユーロ(約9,800億円)で36機導入、1機あたりの導入費用は約2.2億ユーロ(約270億円)
(2020.08.3 戦闘機導入の相場、フランスのラファール導入が高額になる理由 航空万能論)
J-10, JF-35, KF-21とアジア勢のライバルが増えているし、F-47の登場でF-35はやり広くばら撒かれるようになるかもしれないので、今が今後も好調なセールスを維持できるかどうかの正念場かもですね。
仰る通りです、熾烈な競争ですね…
すみません。JF-35ってのはなんですか?ggrksとまた言われるのは嫌なので調べましたが、1件もヒットしません。
J-35の輸出型はFC-31ですし。
JF-17とごっちゃになっていました、すいません。
J-35/FC-31ですね。
中国製を選べる先進国は少ないでしょうし、アメリカフリーが目的であればアメリカ製はもちろん韓国のKF-21もエンジンなどアメリカに頼っている構成部品がありますからダメになります。
グリペンも同様な上にタイフーンも1国でも輸出やその後の部品供給に反対すればアメリカ製と同様ですので、ラファールは唯一といってよい選択肢になります。
敵失による利益ですが、ここまでラファールが盛り返すとは思いませんでした。
その記事でも説明されてる通り、300億は訓練や運用インフラ等の諸費用を含めたコストですので、月産機数に掛けるのはおかしいでしょう。
生産単価は120億少々なので月600億、年7000億程度…いやまあそれでも大層な額ですが。
大きいビジネスですよね。
上記は、為替が1ユーロ120円換算ですが、今は1ユーロ約162円ですから、35%価格アップ。
インフレ率が、2014年~2025年・2020年~2025年、どちらで考えていもよいですが大幅にアップすることを加味する必要もあります。
カナダが今から契約交渉~契約締結する頃には、さらなる価格値上がりも有り得るわけで、とんでもない値段になるのかもなと少し考えています。
カナダ空軍の既存装備・既存設備、どの程度使いまわしできるのか気になりますが、なんだかんだ他国他社ですからね…
「大きなシノギの匂いがするな…!」
まあ、軍事関係はだいたいそうですけど。
フランスがどこまで本気なのかわからない
本当に防衛力強化を考えているのか、単にアメリカ代わりに軍事産業で儲けたいだけなのか
とりあえず目先の金が欲しいのでは。
次の戦闘機の完成まで20年は掛かりそうなので、それまでRafaleの生産で持たせないといけないですし。
どちらを為すにも生産体制の増強は不可欠であり今やることは同じ。現状は「ただそれだけ」かと。
それをどう「使う」かは、言ってしまえば中間選挙後の米国次第な面も小さくないでしょうね。
そもそも今使途を断定する必要自体がありません。
学生のうちにどれだけ研鑽を積み重ねてきたかで将来の選択肢の幅が変わるのと同じなわけです。
フランスにとって両者は表裏一体なのでは。
それはそれとしてラファールの次というかFCASをどうするのか。
第5世代機とはいえトルコのTFXの進捗や性能次第では2030年代後半に『手頃な機体』を欲しがる国での商戦で競合するんじゃなかろうか。
FCASの先行きが不安になる
それこそGCAPやF-47(によって売却制限がなくなるF-35)を警戒して、フランスは25〜26年の間にFCASの単独開発に移行するんじゃないかな。
ドイツはFCASやGCAPの進展の妨害ばかり繰り返した挙句、ついにはF-35ネガキャンを始めて、今後の空軍戦略をどうしたいのか意味不明。ここまで無邪気に利敵が出来るのは才能だと思うが、フランスとしてはこんな航空音痴の三文芝居にいつまでも付き合うとは思えんし、F-35が信頼を回復するこの数年間にFCASプロトタイプを飛ばして来ると思う。
4年前にダッソーが「プランB」については言及していましたから、やるなら今すぐにでも取り掛かった方がいいでしょうね。
「FCASから抜ける」のではなくて「艦載機は仏が単独でやる。FCASは独西に主導権を譲りベルギー他の加入も容認し、艦載機分の調達数と開発費負担率を削減、開発からも基本手を引き要請されたら技術や部品の供給・支援」なら仏も独西(ベルギー他)もwin-winでしょう(すっとぼけ
Rafaleの最新モデルのアヴィオニクスとエンジンをベースに、RCSの削減と将来の拡張性のために内部のキャパシティの増加だけ行うとかですかね… >プランB
予算も時間もないと中途半端な戦闘機になりそうです。
流石に機体は新設計…というかFCASの飛行実証機ベースにどうにか格好つけるんじゃないですかね。中身はほぼラファールになるとしても。
ステルス戦闘機化はどんなに技術が進んでも確実に単価と維持メンテのコストが増大しそうなので、既存のRafaleの運用国とも要相談(そこまでの性能を求めていない国も多そう)が必要で、悩ましそうですね。
もちろんラファールは残すでしょう。
アメリカだって未だにF-15Eも16もスパホも運用&輸出してる訳で。
まあ仏産業界が2機種並行生産をこなす体力があるかは分かりませんが、他国にワークシェア譲る気がないんだからそこは自力で頑張るしかないでしょう。
ドイツも我が国同様、WWII時には大空軍を所有していて、戦後に産業をつぶされていましたが、とても再建に成功していたとは言えない。代わりに車で大成功しましたが。
プライドだけは一流のままなんでしょうね。
この一言に尽きますね。
「そんな装備で大丈夫か?」
さて、一朝事あった際に、どっちの答えが帰ってくるか……
航空機同士の戦闘ではステルス機の優位は疑わないのですが、F-35にしろSu-57にしろSAM網による接近拒否を実際にかいくぐれるのか、実戦証明はされていないんですよね。
ロシアがSu-57でウクライナ深部まで攻撃すれば証明できたんでしょうけど、遠くからピンポンダッシュしただけのようですし。
イスラエルのF-35使用状況は、まだよくわからない。
F-117が60年代の対空ミサイルで撃墜された以上F-35が無敵だとは思えん
ロシア軍もステルス機の限界は理解してるであろうからSAMにカチコミかけるのは分が悪いと判断してるのでは
あの撃墜は「ワハハ、ステルスの力を過信したな!」事例だったので、舐めた運用をすればステルス機も墜とされるという教訓を得ましたね。通り道に重点的にSAMを配置したんでしたっけ。
濃厚なSAM網に対して、どれだけの効果があるのか、まあ米軍あたりは実際に演習していそう。
アメリカも実はステルス機の限界を知っているので輸出しているのではないでしょうか。
自国製を含む既存の防空システムを完全に無力化できるくらい強力な兵器であれば、門外不出になると思います。
ロシアや中国もステルス機を輸出する方針ですので、ステルス性能のレベルに差があるとは言え、同じような結論なのでしょう。
イランのようにまともな防空システムを持たない国に対しては有効なのかもしれませんが・・・。
イスラエルは所有する価値がありそうです。
アメリカから支援も打ち切られないでしょうし。
と言うよりもステルス機と対空ミサイルの相克から強力なシステムが生まれるのであって、だから米軍もF-35とパトリオットをセットで売却してるじゃないかと。
結局西側で最強の戦闘機も最強のSAMも製造してるのが米国なら、西側各国は何れかを買わざるを得なくなる。
電波ステルスだって、音も出せば熱も出しますからね。
「ほんにあなたは屁のような」とはいかない。
高高度ならともかく、低高度だと速度も知れてる。
道具としてのF-35は、それ以外に対して高性能ではあるけれど、万能でも無敵でもない。
要は、どう運用するか、でしょうか……
……いやだからA-10はアップを始めなくていい。
そこで、プラズマステルスかミノ粉ですよ。マクロスの世界線でも電磁ステルスがあるという設定だったな。
技本がミノ粉の研究してることを期待します。
いろいろ問題はあるにしても,それなりの兵器開発を続けられているフランスは偉いし,スゴいなと思います。