欧州関連

ファーンボロー国際航空ショー、GA-ASIが空母搭載型のGambit5を披露

GA-ASIはGambitシリーズの5つ目となる派生型=空母運用型をファーンボロー国際航空ショーで披露、グラフィックに描かれたクイーン・エリザベス級空母にはGambit5がカタパルトにセットされ、短距離離着陸バージョンのMQ-9B STOLが描かれている。

参考:New Carrier-Based Version Of The Gambit Family Of Combat Drones Is In The Works

クイーン・エリザベス級空母の航空戦力はF-35BやAH-64Eと無人機の混合になることが確実視されている

英国防省は2021年3月「3年~5年以内に艦船への搭載が可能な電磁式カタパルトとアレスティングワイヤに関する情報提供依頼書」を発行して注目を集めたが、要求されている電磁式カタパルトの射出性能、アレスティングワイヤの回収性能はF-35Cなどの戦闘重量に対応しておらず、これは有人機よりも小型の無人機運用に関するものだと予想され、英海軍のプレゼン資料にも「将来の脅威に対応可能で、損耗を吸収でき、過度な人命リスクを負うことなくディープストライクを実行可能な固定翼タイプの無人航空機開発=Project Vixenを進めている」と言及していた。

出典:Royal Navy/OGL v1.0 Crowsnest Merlin HM2

英海軍は基本型となるVixenを元に無人戦闘機、無人早期警戒、空中給油機などを開発して「2030年までに導入したい」と方向性を示し、英国防省は議会の質問に答える形で「クイーン・エリザベス級空母の配備に合わせて開発した早期警戒ヘリ=Crowsnest Merlin HM2は2029年に退役予定」「早期警戒能力は無人システムに引き継ぐ予定」と回答、さらに英海軍は強力な短距離離着陸能力を備えたMojaveの運用テストをクイーン・エリザベス級空母で実施しており、クイーン・エリザベス級空母の航空戦力はF-35BやAH-64Eと無人機の混合になることが確実視されている。

これを裏付けるものとしてGA-ASIはGambitシリーズの5つ目となる派生型=空母運用型をファーンボロー国際航空ショーで披露、WARZONEの取材に応じたGA-ASIの関係者は「空対空バージョンのGambit2をベースにした空母運用型を検討している」「このコンセプトを我々はGambit5と読んでおり、ファーンボロー国際航空ショーで披露したグラフィックに反映されている」と述べ、GA-ASIのグラフィックに描かれたクイーン・エリザベス級空母の飛行甲板にはGambit5がカタパルトにセットされ、MQ-9Bの短距離離着陸バージョン=MQ-9B STOLも描かれているのが興味深い。

GA-ASIはMQ-9にソノブイ・ディスペンサーポッドを搭載して対潜戦に活用することを提案しており、米海軍とGA-ASIはソノブイを搭載したMQ-9 blockⅤを使用して模擬潜水艦を追跡するテストを2020年11月に実施、ソノブイが受信した水中音響信号をMQ-9が中継してカリフォルニア州ユマ試験場に送信することに成功し、ハドソン研究所のクラーク氏も「無人航空機を活用することでミッションコストを下げることが可能だ」「高価なP-8Aを使用してソノブイを運ぶ必要性は何処にもなく、複数のMQ-9を使用して広い捜索エリアをカバーできればP-8Aを安全な後方で運用することできる」と絶賛していた。

恐らくMQ-9B STOLもソノブイ・ディスペンサーポッドを搭載する事が可能で、その辺りの意図を込めてクイーン・エリザベス級空母のグラフィックに盛り込まれているのだろう。

出典:GA-ASI

因みにGambitシリーズは米空軍研究所が主導するOBSSプログラム(このプログラムが何なのかは依然として不明)の下でプロトタイプ=XQ-67Aが初飛行しており、米空軍のCCA Increment1にもAndurilと共にGA-ASIが選定され、CCAにXQ-67Aが提案されていたと言われている。

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※アイキャッチ画像の出典:Gareth Jennings

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コメント

    • 58式素人
    • 2024年 7月 23日

    MQ-9B STOLは、いずれ退役する早期警戒ヘリの替わりもするのかな?
    レーダーは何を使うのだろう。
    現在の早期警戒ヘリのそれ(360°捜索)と同じとはいかないでしょうね。
    戦闘機(F-35B?)と同じものを積んで、複数機でピケットラインを張るのかな。

    1
      • あまつ
      • 2024年 7月 24日

      上にあるCGの甲板に並んでるMQ-9の向かって左の機体が翼につけてるのが側視レーダーポッドじゃないかな。
      能力や機能は限定的にならざるを得ないだろうけど丸1日以上滞空してられるのは強みですな。
      これならいずも型にも搭載可能だろうけど、日本が想定してる戦域を考えれば陸上基地からの行動圏内だから艦載する意味が無いかも。

      1
    • 無人機激押しマン
    • 2024年 7月 23日

    身贔屓かもしれんがね、私はこれからの主力はああいった新型の無人機だと思っている。金がかかり人的資源に負荷をかけるだけの鈍重な有人機よりもな。

    5
      • T.T
      • 2024年 7月 23日

      虫みたいな名前はともかく、強くて格好いいから好きですよ。

      1
    • hogehoge
    • 2024年 7月 23日

    一瞬AH64Eで何するんだと思ったけれど、非対称戦での護衛役としては上空から30mm掃射で悪くないかもしれないな。
    ただ海軍機ではないから塩分と湿度が過多の海上に常設して大丈夫なのか不安かな。

      • nachteule
      • 2024年 7月 24日

       何いってんの、イギリスのApache AH Mk 1は原型そのままでのライセンス生産ではなくローター折りたたみ含めマリナイズされているはずだし、E型はD型から既存のアップグレードしているようにイギリスでも新造をせずにそれを行う。元々求めていた機能を有しているんだから海上運用に何の問題があるのか。

       それにE型のウリである部分を無視して上空から30mmをばら撒くのも悪くないって流石にどうかと思う。E型はコクピット周りの防御力アップ。ロングボウレーダーの性能向上(洋上目標用のマリタイムモードとドローン探知能力)。UAVとの協働能力とかあるし既存のD型であってもレーダーによる空域監視、地形プロファイリングも出来て情報共有も出来るんだから既存の輸送ヘリとかにHフォースみたいな武装を追加するだけとは違う能力を持っている。

      2
    • 戦略眼
    • 2024年 7月 23日

    先ずは、早期警戒機の小型無人機化だね。
    ひゅうが型護衛艦で運用可能な物が、F-35Bの運用開始までには欲しい。
    レーダーだけで、情報処理は母艦でも構わない。

    5
    • 成層圏
    • 2024年 7月 23日

    >Crowsnest Merlin HM2は2029年に退役予定

    これも、開発かなり遅れてたね。
    後継機が間に合わない時は、どうするんだろうか。

    逆に、間に合って不要なら、海自に譲って欲しい。いずも型にピッタリだから。

    3
    • 鼻毛
    • 2024年 7月 24日

    NATOとロシアが交戦状態ともなれば昔のドイツよろしく通商破壊作戦と潜水艦狩りは海戦の中心になるでしょうからこの分野は興味あります

    • APFSDS
    • 2024年 7月 25日

    イメージのF35がC型(主翼折り畳みとカタパルトバー)ですし、ゼネラル・アトミックスとしては中途半端な電磁カタパルト買うくらいなら、大は小を兼ねるうちのEMALSを買えといった感じだろうか。

      • 58式素人
      • 2024年 7月 25日

      どうなのでしょう。
      必ずしも、電磁カタパルトである必要はないような気がします。
      仮に機体がゼネラルアトミクスの”モハヴェ”とすると、
      最大離陸重量が7,000lb(3,175kg)とあります。
      過去例を見ると、日本海軍がイ-400型で呉式1号10型カタパルト
      を使って、青嵐攻撃機(全装備重量4,250 kg)を打ち出しています。
      動力は圧搾空気でした。多分、こうしたものの方が面倒がないのでは。
      昔と違い、バルブコントロールにパソコンが使えるだろうし、
      バルブそのものの工作精度も上がっていると想像します。

      2
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