欧州関連

ドイツ陸軍の多連装ロケットシステム調達、EuroPULSを250両調達予定

ドイツ軍は地上ベースの長距離攻撃能力を強化するため多連装ロケットシステムの新規取得に動いており、独ディフェンスメディアは3日「ドイツ軍が最大500両分のEuroPULS(MARS-3)採用発注に向けた枠組みを締結する意向」「本枠組みの半分=250両はドイツ軍向けだ」と報じている。

参考:Rund 500 Raketenartilleriesysteme – Bundeswehr bereitet Großbestellung für MARS 3 vor

ドイツ軍はNATO加盟国の中でもポーランド軍や米軍に次ぐ長距離攻撃能力を手に入れる

欧州はウクライナとロシアの戦争を目の当たりにして「大規模な地上戦が再び欧州で発生する可能性」と「高度な防空システムの普及で接近拒否が成立する可能性」を認識し、航空戦力に偏っていた火力投射能力を地上戦力に戻す動きが加速しており、伝統的な榴弾砲、自走砲、多連装ロケットシステムなどが再評価されている。

欧州諸国の多連装ロケットシステムの導入動向(枠組み合意の数字)
国種類数量
ポーランドHIMARS506両
Chunmoo290両
エストニアHIMARS6両
Chunmoo6両
ラトビアHIMARS6両
リトアニアHIMARS8両
イタリアHIMARS21両
ルーマニアHIMARS54両
オランダPULS20両
ドイツPULS5両
デンマークPULS8両
スペインPULS16両
ノルウェーChunmoo16両

砲兵システムに関しては欧州独自の選択肢が存在するものの、多連装ロケットシステムについては独自のシステムがないため米国製のHIMARS、イスラエル製のPULS、韓国製のChunmooに人気が集中し、ポーランドとエストニアはHIMARSとChunmooを並行導入、ラトビア、リトアニア、イタリア、ルーマニアはHIMARS導入、オランダ、デンマーク、スペインはPULS導入、ノルウェーはChunmoo導入を決めた。

但し、スペインはガザ地区での軍事作戦を理由にPULS導入をキャンセル、ドイツはウクライナへのMLRS(MARS-2)提供分を穴埋めするためPULSの少数導入を決め、KNDS Deutschlandとエルビット・システムズが提案するPULSの技術を流用したEuroPULS(MARS-3=PULSの技術を流用した欧州生産バージョン)採用が確定的で、ドイツのディフェンスメディア=hartpunktは3日「ドイツ軍が最大500両分のMARS-3発注に向けた枠組みを締結する意向だ」と報じている。

出典:Matti Blume /CC BY-SA

“ドイツ軍は最大500両分のMARS-3発注に向けた枠組みの合意締結を意図しており、複数の情報筋によれば本枠組みの半分=250両はドイツ軍向けで、残り半分はドイツ軍と同じ条件でMARS-3発注を希望する同盟国向け分だ。この調達案に関する議会での審議は2026年下半期に行われると予想している。MARS-3向け弾薬について大規模な枠組みの合意締結を目指している。第一弾調達として射程150kmのロケット弾が数十億ユーロ規模で調達される見込みだ。2030年まで1万発台前半のロケット弾が部隊に配備され、その後は毎年数千発の追加調達が計画されている”

“第二弾調達としては射程300kmクラスのロケット弾(戦術弾道ミサイル)や同程度の射程をもつ徘徊型弾薬の調達が見込まれ、射程100km超の地雷散布型ロケット弾などのニーズもある。中長期的には射程500kmクラスの戦術弾道ミサイル、巡航ミサイル(JFSM)、SaabのRBS15、KongsbergのNSMの統合も予想される”

現在のドイツ軍はMLRS(MARS-2)を33両しか保有していないため、MARS-3を250両も導入すれば多連装ロケットシステムによる火力投射は7倍以上になり、NATO加盟国の中でも前例のない軍拡に取り組むポーランド軍や米軍(HIMARSを約360両保有)に次ぐ長距離攻撃能力を手に入れる格好だ。

因みにMARS-3はロケット弾ポッドを2基搭載できるため瞬発的な火力投射量はHIMARSの2倍で、欧州ではロケット弾ポッドの2基搭載が好まれている。

関連記事:仏シンクタンク、フランス陸軍に韓国製の多連装ロケットシステム取得を奨励
関連記事:ノルウェー軍がChunmoo採用、韓国製が米HIMARSと独EuroPULSに勝利
関連記事:ノルウェー議会、ドイツ製ロケットシステムの購入をあらゆる側面から拒否
関連記事:ノルウェー議会の過半数が韓国製ロケット砲購入を支持、HIMARSを破る
関連記事:エストニア軍が韓国製ロケット砲調達契約を締結、HIMARS部隊を補完
関連記事:独メディア、なぜノルウェーは韓国から多連装ロケットシステムを購入するのか?
関連記事:エストニアはHIMARSの長い納期に不満、韓国製のChunmoo購入を発表
関連記事:スペイン、イスラエル製多連装ロケットシステムの調達を正式にキャンセル
関連記事:クロアチアはHIMARSを選択、ノルウェーはPULSやChunmooも検討

 

※アイキャッチ画像の出典:Ministerie van Defensie/CC BY-SA 4.0

米国とイランの戦争は消耗戦、どちらが先に目的を達成するかを競う戦い前のページ

イランの攻撃を受ける中東諸国、米国製迎撃ミサイルを3日間で約800発消耗次のページ

関連記事

  1. 欧州関連

    BAYKAR、TB2に搭載可能なジェットエンジン駆動の徘徊型弾薬を発表

    トルコ最大の防衛見本市「TEKNOFEST2023」が開幕、BAYKA…

  2. 欧州関連

    英仏の新型対地/対艦ミサイル、紆余曲折を経て本格開発へ移行

    アタック級潜水艦キャンセルの余波を受けてフランスが開発協定への署名を見…

  3. 欧州関連

    英陸軍、スウォーム攻撃も電子妨害も可能な小型ドローン「Drone40」を導入

    英陸軍はオーストラリア企業「DefendTex」が開発した40mmグレ…

  4. 欧州関連

    プーチンの嘘に騙された独首相、たった1日で外交成果はゴミ箱行き

    ロシアを訪問したショルツ首相はプーチン大統領から対話継続の意思を引き出…

  5. 欧州関連

    トルコ、第5世代戦闘機「TF-X」完成までF-16のアップグレードで凌げるか?

    トルコは第5世代戦闘機F-35Aの調達が不可能になっためF-16Cの機…

  6. 欧州関連

    歩兵戦闘のゲームチャンジャー? 英陸軍が注目する「命中を保証」する魔法のスコープ

    英陸軍の特殊空挺部隊「SAS」は、過酷な訓練を受けていない兵士でも熟練…

コメント

  • コメント (6)

  • トラックバックは利用できません。

    • たむごん
    • 2026年 3月 08日

    ウクライナ戦争で、投入当初HIMARSが、物凄い威力を発揮してたのを思い出しました。

    ウクライナ南部反転攻勢では、ロシア軍が防衛線強化のために散布型地雷とんでもない量ばら撒くのに使ってましたから、多連装ロケット砲は攻守両面で不可欠なのでしょうね。

    9
    • YF
    • 2026年 3月 08日

    表のポーランドの多連装ロケットシステムの導入数(予定込み)に震えますね。それだけ危機感の表れなんでしょうけど。
    周辺国から警戒されないか心配になるレベルです。
    ドイツが多連装システムの大量導入に踏み切った理由にロシアだけでなく隣国とのバランス取ったとも考えられます。

    3
      • nachteule
      • 2026年 3月 09日

       今見えている導入数だけ見ればドイツの多連装ロケットシステムと榴弾砲の数量に関して冷戦並を目指したぐらいの感じとしか。
       250両がドイツ向けなら使用出来る弾種が多い多連装ロケットは40両ぐらい増え弾種が少なく射程が短い榴弾砲は200両減であり、トータルで見て過剰とかみたいな意見は出ないとは思う。

       ポーランドの多連装ロケットシステム数量は実現すれば質量と共に世界一になるとは思うけど、今の装備を何でも増産してしつこく戦争継続をするロシアを見るにそれを差し置いて警戒するのかって感じがする。
       決定的打撃を短期間に与えなければダラダラ何年も戦争継続する国なんだから過剰レベルがちょうどでは?

    • アノマリーカリス
    • 2026年 3月 08日

    フランスは核兵器の大増産に踏み切り、ドイツもポーランドも大軍拡・・・
    あっちで戦争、こっちで戦争

    なんか間違ってませんか、今の世界。日本はこの流れに乗っていいんですかね、むしろたとえ微力でも、違う道もあると説得し続けることが大事なんじゃないんですかね

    アメリカを止めるべき反米勢力のロシアはあろうことか自分で戦争やってて手一杯、中国は台湾だの日本だのの小事に拘泥して相変わらずの大軍拡。未来を見据える国や指導者が一つくらいほしいものです

    8
      • AH-X
      • 2026年 3月 08日

      確かに狂ってますね。今の世界は

      日本は平和主義でいけとかいう気は別にないんですが、大軍拡にまであんまり付き合う必要はないんじゃないかなとは思います。
      その備えがどのくらい必要かは判断が難しいですが必要なものを必要な分だけ買うくらいでいいんじゃないですかね。

      1
      • 接近する味噌
      • 2026年 3月 08日

      こういう時代に生まれたことを悔やむしかないね、尤も悔やまない時代なんてあるのかしら
      目を覚まして現実を直視する時間だよ

      4

ポチって応援してくれると頑張れます!

にほんブログ村 その他趣味ブログ ミリタリーへ

最近の記事

関連コンテンツ

  1. 米国関連

    F-35の設計は根本的に冷却要件を見誤り、エンジン寿命に問題を抱えている
  2. 欧州関連

    オーストリア空軍、お荷物状態だったタイフーンへのアップグレードを検討
  3. 北米/南米関連

    カナダ海軍は最大12隻の新型潜水艦を調達したい、乗組員はどうするの?
  4. 欧州関連

    BAYKAR、TB2に搭載可能なジェットエンジン駆動の徘徊型弾薬を発表
  5. インド太平洋関連

    米英豪が豪州の原潜取得に関する合意を発表、米戦闘システムを採用するAUKUS級を…
PAGE TOP