ウクライナ戦況

ドイツ首相、ウクライナへ防空システムと対砲兵レーダーの提供を発表

ドイツのショルツ首相は1日、ウクライナに短距離防空システム「IRIS-T SL」とPzH2000と連携可能な対砲兵レーダー「COBRA」を提供すると表明した。

参考:German government promises to send IRIS-T air defense system to Ukraine
参考:Шольц пообещал Украине больше оружия, в том числе систему ПВО
参考:Berlin to supply arms to Greece, Athens to deliver Soviet weapons to Kyiv -Scholz

ウクライナに提供するIRIS-TSLが稼働を始めるのは11月頃、旧ソ連製の歩兵戦闘車をウクライナに提供するギリシャにドイツ製の歩兵戦闘車を提供

ウクライナに提供されるIRIS-TSLはドイツ、イタリア、スウェーデン、ギリシャ、カナダ、ノルウェーの6ヶ国で共同開発したIRIS-T(AIM-9を置き換える短距離空対空ミサイル)ベースの地上発射型で、大型ブースターが取り付けられているため最大射程は40km(最大高度20km)に拡張されており、赤外線シーカーが作動するまでは目標まで中間誘導を行う必要があるものの航空機、ヘリコプター、巡航ミサイル、大型のロケット弾、小型のUAVなどに対する迎撃効果は非常に高いらしい。

出典:diehl 投棄可能なノーズコーンが取り付けたられたIRIS-TSL

ただIRIS-TSLを操作したり整備を行うウクライナ人の訓練には時間が必要で、独メディアは「ウクライナ国内でIRIS-TSLが稼働を始めるのは11月頃だろう」と指摘している。

因みにショルツ首相はIRIS-TSLに加え、PzH2000による敵砲兵部隊への反撃を効果的に行うために欠かせない対砲兵レーダー「COBRA」もウクライナに提供すると約束しており、ギリシャが保有する旧ソ連製の歩兵戦闘車(BMP-1?)をウクライナに提供してもらうため「ドイツ製の歩兵戦闘車をギリシャに提供する」とも31日に発表しているが、ギリシャが何をウクライナに提供してドイツから何を受け取るのかについて詳細は伏せられている。

追記:どうやらウクライナにM109を提供したのノルウェーで、20輌のM109A3GNを5月上旬から引き渡し始めたらしい。このM109Aは既に東部戦線に投入されるのが視覚的に確認されている。

関連記事:6/1更新|各国がウクライナに提供している武器や装備のリスト

 

アイキャッチ画像の出典:diehl 中央がIRIS-TSLMで左がIRIS-TSLS

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コメント

    • ミリオタの猫(ロシア軍、今度こそ架空戦記張りの大逆転をやるのか?)
    • 2022年 6月 01日

    ほう、ドイツも漸く有効な武器支援を決めましたか。
    IRIS-TSLはS-300程では無いもののウクライナ軍が持っている9K37ブークにほぼ相当する射程を持っているので、訓練に時間が掛かるとは言え中低高度の防空任務に資すると思います。
    後、対砲兵レーダーも優勢なロシア砲兵と戦う為の必需品として効果を発揮するでしょう。

    それにしても、ゲパルト用の35ミリ砲弾やらピラーニャⅢC装甲車やらを送っちゃダメと言うスイス…お前は何時からロシアのポチに成り下がった(スイスの金融機関はロシアのオルガリヒが御得意様だからプーチンに弱みを握られているのか?)

    9
      • 幽霊
      • 2022年 6月 01日

      気に食わないからって何でもかんでもロシアの犬ダーって言わない方がいいと思いますよ?
      スイスにはスイスの方針があるそれだけのことです。
      それにスイスは対ロシア制裁も行ってますよ。

      46
    • や、やめろー
    • 2022年 6月 01日

    11月では意味があるのかどうかが分からん。8月までなら行けると思うが早くはできないのかな?ー

    3
      • 新・にわかミリオタ
      • 2022年 6月 01日

      人間がやることなので、時間短縮のために操作方法や整備の訓練を簡略化してしまうと、自ずとミスを犯すリスクも高まります。
      そこら辺はやはり適切な手順を踏むことは大事だと思います。

      17
        • sundaycameraman
        • 2022年 6月 01日

        しかしまあ、今のウクライナ人なら訓練前倒しで予定より早期の実戦化の可能性はありますよね。でないと帰る場所無くなるのかもしれないのだから。
        現場の頑張りに期待しましょう!

        10
          • 新・にわかミリオタ
          • 2022年 6月 01日

          両立が難しい話ではありますが、ウクライナ軍には頑張ってほしいです!

          9
      • 第1白ロシア方面軍
      • 2022年 6月 02日

      11月までにゼレンスキー政権が消滅しているかもしれないですしね

      1
    • 新・にわかミリオタ
    • 2022年 6月 01日

    日本も早く規制を解除してほしいですね。
    本邦が攻撃型の武器を提供できるか否かは、台湾有事の時に西側諸国が武器提供をしてくれるかと言う問題にも繋がるかもしれません。
    FH-70はもうすぐ退役するようですし、ポンと数十台提供できれば、国際社会からの見方も変わると思います。

    19
      • 幽霊
      • 2022年 6月 01日

      規制を解除したとして日本が提供出来るものってどれくらい有るんでしょうね?
      弾薬類はそもそも日本の備蓄量がギリギリですし製造能力もそこまで高くないでしょう
      兵器類も日本オリジナルの物は整備の問題がありますし
      提供できるのはFH70とかライセンス生産した火砲とかですかね?

      8
        • sundaycameraman
        • 2022年 6月 01日

        FH70は、装輪自走砲に置き換えてる最中だから、法的問題なければ可能かもですね。
        幸か不幸か法的に今は無理そうだけど

        12
        • 新・にわかミリオタ
        • 2022年 6月 01日

        やはりFH-70が一番に上がると思います。
        ウクライナ兵が日本に来て捜査や整備の訓練を受けると言うのはハードルが高いでしょうし、国産兵器の提供は難しい話ではあります。

        14
      • 四凶
      • 2022年 6月 02日

       FH70を渡すよりは砲弾と装薬渡す方が良いかなとは思う。

       何気に必要な人数は多いし機動性もそれ程でも無い、M777みたいにヘリで簡単に輸送とか夢のまた夢だし他国の榴弾砲で使える物を提供した方がウクライナのためになるのではないかなと思ったりする。

      9
    • AH-X
    • 2022年 6月 01日

    紛争当事国へは直接難しいでしょうが、FH-70ならイタリアなどに大量提供してその代わりにイタリアのFH-70を提供するとかなら可能性ありますな。
    しかし、せっかくなら81式か11式あたり供与して実戦テストしてみたいもんです。いやらしい話ですがNATO諸国も少なからずそういう思惑あるでしょうし。

    3
      • G
      • 2022年 6月 01日

      >ただIRIS-TSLを操作したり整備を行うウクライナ人の訓練には時間が必要で、独メディアは「ウクライナ国内でIRIS-TSLが稼働を始めるのは11月頃だろう」と指摘している。

      とありますように、急ぎの使用訓練でさえ時間がかかるのに、まして有効な使用データをとれるようになれるまで訓練するのにどれほど時間がかかるか
      またデータとりができるようになったとして、戦場で実際にデータをとる余裕があるのかを考えると、実戦テストするには戦死するリスク(それもデータ取りをするなら通常使用より手間がかかる分高くなる)を抱えさせた自国兵士を義勇兵としてセットにして送り込めるのでもない限り現実性がないかと

      9
    • 通りすがりのななし犬
    • 2022年 6月 01日

    レーダーやドローンで索敵して、多連装ロケット砲と自走砲を中心とした砲兵部隊で叩く。それをお互いやり合うような地上戦になるのですね。戦車はなんの役を果たすのだろう? 趨勢が決まった時にトドメを刺す役割かな? 戦争のやり方が変わる、区切りになるような戦争になるんですね。

    2
      • おわふ
      • 2022年 6月 02日

      準備砲撃した後、素早く前進して支配地域を広げるのに使うのでは?
      歩兵とは速度が違いますし、荒れ地も進める。

      9
    • zerotester
    • 2022年 6月 02日

    欲しかった対空兵器のめどはついたので、あとは戦闘機ですね。訓練に時間はかかるとしても西側の戦闘機の供与を検討する時期ではないでしょうか。ウクライナはF-16を希望しているそうで。この戦争はあと半年やそこらでは終わらないので長期的な視点も必要でしょう。

    2
      • G
      • 2022年 6月 02日

      残念ながらIRIS-T SLでは射程距離や対応高度がS300に劣るため、ウクライナが一番求めているS-300か相応の高高度対応対空ミサイル相応とは言い難いかと

      5
    • makumaku
    • 2022年 6月 02日

    このIRIS-T SL防空システムがウクライナ軍に供与されるのが11月頃になるだろうという理由は、それがドイツ連邦軍からではなく、製造メーカーのDieHLからの直送になるためのようです。

    また、マルダ―歩兵戦闘車両についてですが、ドイツ連邦議会国防委員会はショルツ政権に対して、いま直ぐにウクライナへ50輌のマルダ―を送るように要求しているそうです。
    リンク
    ウクライナへの軍事支援について、ショルツ首相は口では勇ましいのですが、どうにもチグハグ感が拭えませんね。

    3
    • 58式素人
    • 2022年 6月 03日

    IRIS-TSLは、多分、HAWKの後継なのだと思うけど、一つ疑問。
    HAWKは発射台の数×3基のミサイルが用意されていたと思うけど、
    新しいIRIS-TSLは、古いHAWKの機体を運用は可能だろうか。
    HAWKは速度M2.4、射程40kmで、セミアクティブレーダーホーミングです。
    誘導はさておき、速度と射程は新しいものに遜色ないと思えます。
    現在のウクライナ戦争で、話題に上がることの一つに” 保管兵器” があります。
    新しいものを調達する他に、利用できるものは最低限の改造・整備と
    ” 保管” をした方が良いのではと思います。無論、日本においても。
    見方によっては” 戦争が近い” とも思える昨今ですから。

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