独ディフェンスメディアのhartpunktは11日「FCASプログラムが終焉に近づいている兆候が強まっている」「メルツ首相やAirbusはこれ以上の譲歩には応じられないと示唆している」「フランスの過剰要求に備えてプランBを策定して置くことが重要だ」と勧告した。
参考:Plan B – Schweden als Partner für die Zeit nach FCAS interessant
ドイツ政府、スウェーデン政府、Airbus、Helsing、SAABの組み合わせは互いの足りないとことをカバーしあえる組み合わせ
仏Dassaultは将来戦闘航空システム(Future Combat Air System=FCAS)の有人戦闘機部分について「ワークシェア配分の3ヶ国合意」を無視して出資比率を超える主導権を要求、これに対してドイツとスペインは合意を守って出資比率に応じたワークシェア配分を守るよう要求しており、ドイツのメルツ首相もスペインのサンチェス首相と会談後「このままではフランスと共同でFCASプログラムを続けることはできない」と述べ、独ディフェンスメディアのhartpunktは11日「フランスの過剰要求に備えてプランBを策定して置くことが重要だ」と報じた。

出典:Dassault Aviation
“ここ数週間、FCASプログラムが終焉に近づいている兆候が強まっている。長年の確執を経て「Dassaultに対するこれ以上の譲歩には応じられない」とメルツ首相やAirbusは示唆している。この問題に関する政治的解決策は年末までに見つける予定だったが、10月に予定されていた3ヶ国国防相会合は政治的混乱に直面しているフランスの都合で中止されてしまった。FCASが継続されて2026年に開始される有人戦闘機のプロトタイプ製造=フェイズ2に移行する可能性は0ではないものの、観測筋はフェイズ2完了後にフランスが新たな要求リストを提示してくると予想している”
“したがってドイツはプランBを用意しておくことが肝心で、ここで登場するのがスウェーデンだ。ドイツはタイフーンの後継機としてFCASに期待しているため第5世代戦闘機=F-35Aの調達は限定的だ。スウェーデンも改良を継続してグリペン運用を今後数十年続ける予定で、まだ次世代戦闘機の開発方針を決定していない。スウェーデンの単独開発は国の財政能力を超える可能性があり、海外から輸入するという解決策はスウェーデン防衛産業にとって有益ではなく、特に独自の戦闘機開発能力を維持してきたSAABにとってはノウハウと付加価値を失うだろう”

出典:AIRBUS
“AirbusもF-35Aが空軍の標準戦闘機になるか、Dassaultの要求に屈服すれば同様の運命を辿るかもしれない。特に観測筋はこの2つのケースに陥るとAirbusの防衛部門は存続さえ危うくなるかもしれないと危惧している。そのためベルリンでは「FCASが中止になればSAABとAirbusが次世代戦闘機開発のための合弁会社を設立するかもしれない」という噂が流れている。フランスもFCASが中止になれば次世代戦闘機の単独開発に踏み切るだろし、あの国の戦略的自立政策を考えれば単独開発が最も合理的な解決策だ。スペインに関してはどの様な選択を取るのか不透明だ”
“ドイツとスウェーデンの間で防衛協力の強化は既に進んでおり、SAABはF123フリゲート艦のアップグレードに参加し、既存のタイフーン向け自己防御システムとしてSAABのArexisを選択、タイフーンT5にもArexisが搭載される見込みで、ピストリウス国防相は最近「ドイツはAWACSの取得を検討中でGlobalEyeは選択肢の1つだ」「控えめに言ってもGlobalEyeは最有力候補だ」と述べている。さらにドイツは他の欧州諸国と異なり防衛分野への巨額な投資資金をもっている”

出典:Airbus
“有人戦闘機は航空戦力において重要な要素であるものの、将来の航空システムにおいては構成要素の1つに過ぎず、ドイツはセンサー、AI、サイバーセキュリティ分野でトップクラスの技術や開発環境を備えており、Airbusも欧州の無人戦闘機(CCA)開発をリードしている。SAABもCCA開発でAirbusとの共同開発を模索しており、両社は欧州の特定要件に的を絞ったプラットフォームに依存しないミッションシステムを搭載する6トンクラスのCCAを共同開発する可能性が高い”
“このCCAのプロトタイプになると予想されているのが、AirbusとKratosが共同開発するXQ-58Aの欧州バージョンで、この機体には欧州製のミッションシステム(恐らくHelsing製)が採用されてドイツ空軍に提案される見込みだ。AirbusはXQ-58Aの欧州バージョン開発で獲得した技術やノウハウをSAABとの共同開発に反映させ、6トンクラスのCCA開発を加速させるだろう。ドイツ空軍もLitening5を活用したCCA制御の開発にAirbusと取り組んでいる”

出典:SAAB
“このアプローチが成功すればドイツはCCA関連の技術的遅れを挽回し、2029年までにタイフーンとCCAの初期協調能力を獲得でき、新たなCCAを有人戦闘機に追加する際も主権を確保したミッションシステムを搭載できるようになる。SAABと共同開発する6トンクラスのCCAも早ければ2032年までに完全運用能力を獲得する見込みだ。この分野で大きな役割を果たしているのがHelsingであり、グリペン向け自律制御システム=Centaur AIもHelsingの技術を基盤している。AI分野のトップティアに近いHelsingはAirbusと共にCCA開発に膨大なエンジニアリングリソースを投資している”
防衛分野におけるドイツのスウェーデンの接近は随所に見られ、ドイツはフランスのように次世代戦闘機開発に必要な能力を全て備えているわけではないが、将来の航空システムを構成する要素においてAI技術は非常に重要な部分を占めており、米国のShield AIはCCAを直接開発していないものの同社のAI技術はXQ-58、MQM-178、MQ-20、YFQ-42A、YFQ-44Aなどに採用され、国防総省、米空軍、米海軍、シンガポール空軍、Boeing、Northrop Grumman、L3Harris、Airbus、韓国航空宇宙産業、LIG Nex1などともAI技術分野で提携している。
要するに次世代戦闘機を含む将来航空システムの基盤技術の中でもAI技術は非常の重要な位置を占め、Helsingは欧州においてShield AIに匹敵する影響力を、AirbusとHelsingは欧州のCCA開発をリードする存在になる可能性があり、ドイツは欧州諸国が調達に苦労している資金を豊富をもっているため、スウェーデンが次世代有人戦闘機を開発する上で相性がいいという意味だ。
英国もテンペストプログラムにおいて「構成技術や要素を全て国内開発する」というアプローチを放棄し、各分野のトップティア企業に「国内に開発・製造拠点を設けて英国人を雇用する」という条件でプログラムを解放し、開発企業の国籍ではなく「使用する技術の権利」を確保することで重複投資を避ける形を取っているため、基本的にhartpunktが提示したプランB=ドイツ政府、スウェーデン政府、Airbus、Helsing、SAABの組み合わせは互いの足りないとことをカバーしあえる組み合わせと言える。
問題はドイツとスウェーデンの次世代有人戦闘機に対する要件が許容範囲内に収まるかどうかで、ここさえクリアできるならhartpunktが提示したプランBは魅力的に見えるものの、物理的な要件=機体サイズなどで衝突すればどれだけ組み合わせの相性が良くても合意できないだろう。
因みにスペインとトルコは安全保障政策や防衛産業の面で協力関係がますます深化しており、特に分離独立を求め武力蜂起したクルド人問題に関連して米国、ドイツ、オランダはトルコ領内に派遣したパトリオット部隊を撤収させたのに対し、スペインだけは派遣したパトリオット部隊を2015年8月以降も維持し、シリアとの国境に近いアダナ国際空港やトルコ空軍と米空軍が共同利用しているインジルリク空軍基地などを保護したため、トルコはスペインに大きな恩義を感じている。

出典:Türk Havacılık Uzay Sanayii
勿論、スペインも善意のみでパトリオット部隊を派遣したのではなく「防衛協力を通じたスペイン産業の経済的利益」も一因で、両国の防衛産業はどんどん緊密になり、トルコが建造を開始した6万級空母にもNavantiaを含むスペイン企業が関与しており、両国はトルコ航空宇宙産業が開発したHürjetベースでスペイン空軍の次期高等訓練機開発を行うことを決定、トルコ企業はスペインが契約をキャンセルしたイスラエル製兵器の代替品にも積極的に売り込みを行っている。
FCAS問題が浮上するとトルコメディアは積極的に「KAANプログラムへのスペイン合流」を報じ始め、このニュースはスペインメディアも報じるほどの勢いだが、それでも「スペインがKAANに関心を示している」という動きは公式に確認されたものではない。

出典:航空万能論GF
但し、これまでの経緯や防衛産業分野における両国の緊密さを考えれば「荒唐無稽なプランB」とは言い切れないものの、この辺りの背景を把握していないと「なんでスペインがKAANに?」となるのも十分理解できる。
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※アイキャッチ画像の出典:Tiraden / CC BY-SA 4.0





















欧州の政治状況複雑過ぎぃ!
ドイツやスペインがどこと組むかは分からないけど、もう独仏がよりを戻すのは期待できそうにない事はなんとなく解った
ただスペインはトルコと協力関係を深めてるとは言え、単独ならフランスと繋がってもいいんじゃ無いかとは思う
艦載機欲しいだろうし
まあ今のスペインに単独でフランスとやり合える政治力があるかは疑問だが、米国に反旗を翻すムーブはフランスに通ずる物もあるし、お似合いな気もする
ドイツはもう分からん、CCAだけ大量導入でいいんじゃないかな?
スウェーデン抜きでなんか話が進んでるのが、ドイツの日常だな
何と言うか、FCASはもうダメっぽい事だけ分かったような気がする
以前の記事で出てた「キングボンビーなすりつけ」というのが本当にしっくり来るな…
スウェーデン戦闘機には愛着があるので、できることなら仏になすりつけ返して欲しいとこだがもう無理そう、
せめて仏英伊につっぱねられた独が凹んでミニボンビー化してくれるといいんだが期待薄だろうなぁ…
ぶりかす「GCAPのサブプランユーロファイターテンペストプランを立ち上げましたー。予算を出してくれるんなら我が国が全力で取り組みますぞ」
ぐらいのことはいってきそう。
ホント、ドイツ君さぁ…
相手の都合とか相手の意志を全く確認しないで勝手に吹き上がるムーブ、そろそろやめた方が良いと思うんだけどなぁ
(インドネシアが伊からフリゲートを購入した事や、フィリピンのあぶくま型購入やらの、youtubeの解説動画における現地人たちのコメントとかと変わらないノリ)
スウェーデンはフランスより政治・財政含めて国力劣るんだから、ドイツに対する警戒感なんて当然フランスの比じゃないよ?
スウェーデンさんが何かイギリスと協議猛スピードで開始していそう。
スウェーデンは必要としてる機体規模も要件も時期も異なるから
FCASにもGCAPにも手を伸ばさなかったんだろうに
どうやって一緒になろうというのだドイツよ
まさかグリペンEの調達反故にして一緒に作ろうよって言っても飲むわけないだろうに
ドイツが「自腹で戦闘機開発するから手伝ってくれ」というなら嫌とは言わないんじゃないかな。
逆にいうとそれ以外にスウェーデンが協力する道が見えない…
インフラがグリペン最適化してますからね>スウェーデン
どうするんだか
そういえばグリペンの新型の運用条件から高速道路からの離発着が削られたとかどこかで読んだ気がしたな。
スウェーデンの要件も時代とともに変わっていくんだろうなあ。
もう中立国じゃあないからね。
なんでNATO軍として使える編成にする必要があるんだけど。
その場合戦闘機よりも国全体のインフラのほうが・・・
F-35B購入国と組んでそっちの後継狙った方が好みのやつ出来る可能性があるんだよね。
>ドイツ政府、スウェーデン政府、Airbus、Helsing、SAABの組み合わせは互いの足りないとことをカバーしあえる組み合わせ
MTU、GKNエアロ(旧ボルボ)「」
独瑞共同開発になるとしてエンジンどうするん?
アメリカ様に泣きつくのか?