欧州関連

ドイツ議会、トーネード後継機としてタイフーン導入をひとまず承認

ドイツ議会の予算委員会は5日、エアバスから戦闘機タイフーン トランシェ4(恐らくトランシェ3の機体にCaptor-E MK.1を搭載したもの?)を38機調達するため54億ユーロ(6,600億円)の契約を承認したと報じられている。

参考:Germany approves billion-euro purchase of 38 Eurofighter jets

ドイツ議会がひとまずタイフーン38機導入契約を承認、残りは来年の総選挙後に

ドイツ国防省は戦闘機トーネードの後継機としてボーイングから戦闘機F/A-18E/Fを30機、電子戦闘機EA-18Gを15機、エアバスから戦闘機タイフーンを93機導入する計画(今だに揉めているので予定通り進むかは未知数)を進めており、今回の契約はタイフーン93機導入の一部で残り55機の契約については来年実施される総選挙後と独メディアが報じている。

しかしF/A-18E/FとEA-18Gの契約については未定で、キリスト教民主同盟と連立政権を組むドイツ社会民主党はF/A-18E/F導入の白紙化=事実上のタイフーン単独導入を要求しており、核攻撃能力についてはニュークリア・シェアリング体制の脱局+国内からの戦術核兵器「B61」撤去を主張してNATOや米国から「無責任だ」と批判を受けることになったが「直接的な核攻撃能力をドイツが維持しなくても、NATO加盟国の核兵器を搭載した航空機をドイツ空軍機が護衛するなど貢献方法はいくらでもある」と主張。

※アイキャッチ画像の出典:U.S. Navy photo by Mass Communication Specialist 3rd Chris Cavagnaro/Released

ドイツ最大の労働組合「IG Metall」は首相、国防大臣、経済大臣に書簡を送り米国製戦闘機を購入しないよう要請、もしF/A-18E/Fを購入すればドイツだけでなく欧州防衛産業界全体を危険に晒すことになると語り「ドイツと欧州の企業を危険に晒す決定には防衛産業界で働く従業員とドイツの納税者には受け入れられない」と主張してタイフーン単独導入しか認めない構えだ。

果たして計画通りF/A-18E/F、EA-18G、タイフーンの3機種分割導入案が実現するのは不明だが、タイフーンの調達だけは確実で今回承認された38機(単座型31機/複座型7機)は2025年~2030年の間に引き渡されるらしい。

因みにトーネードは約88.6億ユーロ(機体維持に56.4億ユーロ+旧式化した部品交換に16.2億ユーロ+新たな保守部品調達に15.8億ユーロなど)を負担することで2030年頃まで運用寿命を延長する予定だが、現在のペースでタイフーンを調達すればトーネード退役に間に合うのか微妙で、もしタイフーン単独導入になれば全機(138機)を揃え終わるのは2040年頃になりドイツ空軍は頭を抱えることになるだろう。

出典:public domain ドイツ空軍の戦闘機トーネード

3機種分割導入案を主張するキリスト教民主同盟(CDU)が来年の総選挙で単独過半数を獲得することができれば良いのだが、メルケル首相の実質的後任と言われていたクランプ・カレンバウアー国防相がメルケル首相の後任を目指さないと表明してCDU党首を辞任する意向で、後任党首選びで党内に深刻な亀裂が生じている。

このまま新しい党首が長期間不在となれば、党内の不協和音は大きくなり来年10月までに実施される総選挙に影響が出るのは確実だ。

仮に総選挙で議席を減らすようなことになれば連立を組むドイツ社会民主党の影響が大きくなり、本当にタイフーン単独導入が現実味を帯びてくるかもしれない。

 

※アイキャッチ画像の出典:Rob Schleiffert / CC BY-SA 2.0 ドイツ空軍のユーロファイター・タイフーン

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コメント

    • 誤字の女王ミズポ
    • 2020年 11月 06日

    「社会民主党」は東洋も西洋も変わらんね。

    22
    • 匿名
    • 2020年 11月 06日

    ニュークリアシェアリングどうするのか・・・。

    5
      • 匿名
      • 2020年 11月 06日

      タイフーンが核兵器の運用能力を持つまではリースとかトーネードを無理やり延命するとか…
      核兵器の運用に置き換え予定のトーネード全機は不要だろうし。

      3
      • 匿名
      • 2020年 11月 06日

      無いものは無理って開き直るんでは?
      文句あっても欧州はドイツ無しじゃ何も出来ないわけで
      また新たにヘイト貯めるだけでそのままうやむやで終わりそうではある
      いつ爆発するのかは知らんが……

      17
        • 匿名
        • 2020年 11月 07日

        要するに其れがしたいんだよねw
        強者(アメリカ)への服従を嫌うフランスと、開き直るイタリアの影響だろうか?
        単に左翼思想だけでは無く、ドイツのラテン化が進んでいるのかも。

        1
    • 匿名
    • 2020年 11月 06日

    タイフーンは、外装の一部の寿命がやたら短い不具合らしきものがあったが、予算注ぎ込みで解決?

    2
    • 匿名
    • 2020年 11月 06日

    日本も公明党のせいでグダグダなので何も言えない

    12
      • 信濃町大勝利飴
      • 2020年 11月 06日

      日本の防衛を妨げる奴らには仏罰が下って欲しい。

      17
        • 匿名
        • 2020年 11月 06日

        公明党ディスる公明党員草

        9
    • 匿名
    • 2020年 11月 06日

    ああ、ドイツがさらにポンコツを増やして、ポンコツになっていく。
    せっかくだからトーネードを魔改造して、ドイツのB52を目指せ。

    9
    • 匿名
    • 2020年 11月 06日

    空軍ボロボロだけど核搭載機を護衛するほど力あるの?よく馬鹿にされる韓国以下じゃなかったか
    相手だって落とされたくないから死に物狂いで阻止しにくるよ、今のドイツじゃ無理でしょ

    18
      • 匿名
      • 2020年 11月 06日

      そうですよね~
      このサイトの記事にもなってたけどドイツ空軍は875人のパイロットの内、363人が年間最低訓練時間を飛べてない状態
      「護衛と言う形で貢献出来る」って簡単に言うけど、そんな重大任務が今のドイツ空軍に務まるんですかね・・

      13
    • 2020年 11月 06日

    タイフーンは第4-4.5世代では存在感あると思えるが、
    今から最新のタイフーン大量に調達、2040年頃に完了って、この計画は、早く陳腐化し色褪せてしまう感じがする。日本やイギリス、フランス、今回のドイツも次世代戦闘機の時代が来ようとしている時にね!
    今のタイミングならF18を繋ぎで揃えてグラウダーついて来るなら良いし、核も対応出来るならベストだと思う。日本で例えるなら、F3の開発計画が動きだして2035年頃から量産機が姿を現す頃に新規のF2が100機ぐらい
    配置とかあり得ない話。でもドイツのやっている。
    ドイツはEUと言う寝心地の良いベッドで寝ているので、核も戦闘機、戦車、潜水艦など戦略兵器、戦術を自国一国で真剣に考えなくなったが、その副作用が本格的にドイツ軍を襲う事になる。

    20
      • 匿名
      • 2020年 11月 07日

      NATO内にあるF-16買えば良いんじゃあないですかね?
      B61運用出来るし

      2
      • 匿名
      • 2020年 11月 07日

      というか2030年代にはいくら金欠のロシアでもSu-57の量産をある程度は終えて、第6世代機の開発に取り組んでるだろうから、時代遅れってレベルじゃ…
      それとFCASは空中分解してるかもしれんしなぁ。

      2
    • 匿名
    • 2020年 11月 06日

    日本に売り込みかけてた時はAESAレーダー付きで売るって言ってたのに
    2020年にもなってドイツ空軍ですらまだAESAレーダー付きのタイフーンを発注するかしないかで揉めてんのかよ
    10何年前の話だったかな

    20
      • 匿名
      • 2020年 11月 09日

      「AESAレーダー付きで売るよ(だから開発予算よこせ)」
      だったんじゃない?

    • 匿名
    • 2020年 11月 06日

    これが経済的に困窮してて仕方なくって話ならともかく、EUのの経済優等生面しながらこの体たらくってのがなぁ…

    21
    • 匿名
    • 2020年 11月 06日

    この記事の肝は、CDUはSPDと縁を切れるか?のように読めてしまう。
    自民党は公明党と縁を切れるか?とまったく似た話。
    来年メルケル首相が政界を引退したら、ドイツに激震というか亀裂が走ると思う。

    11
      • 匿名
      • 2020年 11月 08日

      好きにしてくれ。
      もうどうでもいいよ。

      2
    • 匿名
    • 2020年 11月 06日

    トルコからドローン買ってくるんじゃない?

    1
    • 匿名
    • 2020年 11月 06日

    今更タイフーンかぁ
    世界中で第五世代機への置き換えが進んでいる中だと、どうにも見劣りするというか…
    素人目から見ると配備される頃には時代遅れになってそうだけど、どうなんだろう

    9
    • 匿名
    • 2020年 11月 06日

    ボーイングもスーパーホーネットの生産ラインの維持が難しい状況だな

    2
    • 匿名
    • 2020年 11月 06日

    どうせ使わないのだから、
    役立たずのモックアップ軍隊で問題なし!
    独労働組合の利権に奉仕するのが、ドイツ軍の務め!
    労働組合に心臓を捧げよー!

    4
    • 匿名
    • 2020年 11月 07日

    タイフーンを導入後に、タイフーンに核攻撃出来るよう認証しろと圧力を掛ける。
    これで解決。

    2
    • 匿名
    • 2020年 11月 07日

    米国製戦闘機買うなね・・
    ドイツは、工業製品自慢らしいが、傲慢さが酷くなってる、EUが無くなるころは戦争だね

    スペインの高速鉄道が普及するころから、
    独企業ジーメンスはボンバルディアと組むのを辞めて、自社だけで欧州らに売ろうとしてる
    アーリアの暴走が始まった

    3
    • 匿名
    • 2020年 11月 07日

    自由落下の核爆弾って今日日必要なの?ロシアが大軍率いて攻めてくるって状況は生まれないだろうし、もし起こるとしても防空システムくらいあるだろうに、戦闘機がわざわざ中に入って行ってポンと落としてくるなんて非現実的でしょうに。

    3
      • 匿名
      • 2020年 11月 08日

      落としに行くのではなく、敵の進行予想ルートに小型を播いておくんです
      ドローンや衛星を使って監視し、爆発のタイミングを決める
      わが国の機雷散布戦術と似ています 敵が来たら、効率よく叩く

      1
    • 匿名
    • 2020年 11月 08日

    中国と距離置こうとするEUの情勢に、中国頼りの輸出関係を深めたいドイツの事情だろう
    だから、日本の哨戒機も買おうとシナかったドイツの中国優先の内部事情だ

    • 匿名
    • 2020年 11月 09日

    このいい機会に、ドイツはVWとメルケルとともに滅んでほしい

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