ドイツ連邦議会は海軍が要請していた210億ユーロ相当の調達プログラムを承認、この決定についてTKMSは「F127プログラムへの投資は将来の海上安全保障における決定的な一歩だ」と歓迎しており、イージス戦闘システムを搭載するF127プログラムが正式に動き出した。
参考:thyssenkrupp Marine Systems
参考:Germany formally approves Type F127 air-defense frigate program
F127がAN/SPY-6とAN/SPY-7のどちらを採用するか不明
ドイツ国防省は2018年にF124の後継艦としてミサイル防衛に対応したF127を計画、これをオランダと共同開発するため両国は2020年に意向表明書に署名したものの、プラットフォームや搭載レーダーについて両国は異なる考えを持っていたため共同開発は破棄されてしまった。
ドイツはF127をアーレイ・バーク級FlightIIIに準じたものとして計画しており、TKMSは今年7月に防空向けの新型フリゲート(MEKO A-400 AMD)を発表、このプラットフォームは全長160m、幅21m、排水量1万トン、127mm砲、Mk.41VLS×64セル、4連装NSN用ランチャー×2基、RAM用ランチャー×2基、ヘリを2機収容できる格納を備え、米海軍航空システム・コマンド(NAVSEA)も「イージス戦闘システムをF127に統合する請負業者に関連した入札文書」を公開。
Nnaval NewsもMEKO A-400 AMDについて「AN/SPY-6に良く似たAESAが搭載されている」と指摘しているため、F127はMEKOベースのプラットフォームにAN/SPY-6とイージス戦闘システムの組み合わせたものになる可能性が高いと予想していたが、連邦議会は海軍が要請していた210億ユーロ相当の調達プログラム=212CDの追加発注、IDAS=対潜ヘリ、水上艦艇、陸上目標と交戦可能な水中発射型誘導ミサイルへの継続的な資金供給、F127プログラムに対する資金供給の開始を承認。
この決定により212CDの建造規模は最大12隻(ドイツとノルウェー発注分)に増加、212AへのIDAS導入も現実を帯び、F127プログラムも書類上の存在から脱却することが確定、TKMSも「F127プログラムへの投資は将来の海上安全保障における決定的な一歩だ」「MEKO A-400 AMDの設計がシームレスなF124更新を可能にする」と歓迎しており、ドイツは2034年頃に最初のF127を就役させ、最大でF127を6隻取得する見通しだが、まだ最終的な仕様も調達規模も正式には確定していない。
Nnaval NewsはMEKO A-400 AMDが採用するレーダーと戦闘システムについて以前「AN/SPY-6とイージス戦闘システムの組み合わせになる可能性が高い」と予想したが、現在では「AN/SPY-6とAN/SPY-7のどちらになるか分からない」「スペインのF-110やカナダのリバー級はLockheed Martin製のAN/SPY-7を選択した」と報じており、海外ではAN/SPY-7について「米海軍が採用していない」といったネガティブな声は特に見られない。
因みにイタリア海軍はサルヴァトーレ・トーダロ級潜水艦を改良したU212NFSを調達予定、このプログラムを管理しているOCCAR(防衛装備協力共同機構)は今年4月「U212NFSに搭載するリチウムイオン蓄電池の熱伝播試験が良好な結果を得た」「この試験中に火災や爆発は発生せずガスのみが放出された」と明かしていたが、Fincantieriは「U212NFSに搭載するリチウムイオン蓄電池のテストが完了した」「再現された運用環境で優れた性能を実証した」と発表。
U212NFSの動力が「AIP+リチウムイオン蓄電池」になるのか「リチウムイオン蓄電池のみ」になるのかは不明だが、U212CDとKSS-III/BatchIIは前者、Scorpene Evolvedは両方に対応しており、スペインのS-80Plusはリチウムイオン蓄電池を搭載していないが、インド向けに提案されている同艦ベースの潜水艦にはリチウムイオン蓄電池搭載の設定があるため、将来的にS-80Plusも「AIP+リチウムイオン蓄電池」になるのかもしれない。
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※アイキャッチ画像の出典:TKMS MEKO A-400 AMD
>海外ではAN/SPY-7について「米海軍が採用していない」といったネガティブな声は特に見られない
日本ではSPY-7の選択はアメリカのイージス艦非搭載だから愚策って意見が多かったけど、海外では割とフラットにみてどちらか選択してるようですね。
アメリカや欧州採用済みのものを使う
=主体性がない、周回遅れだ
独自のものを使う
=ガラパゴス的でありえない
っていう判断軸が日本の軍事好き界隈では多いイメージ
ドイツは、安全保障投資に力を入れていますね。
ショルツ首相は2月にクビでしょうし、国内経済ガタガタの中で、なかなか先が見通せなくなりました…
日本から見れば、ドイツは対中国・台湾海峡情勢どのように動くのか、今まで信用できない国でしたがどう変化していくのか注目しています。
ユーロ全般の話ですが一帯一路で中国とのお付き合いは国家安全問題があると気づいたようですでしたが、経済構成的な問題から中国との関係深化を選択するかもしれませんね。
今回のも公金で経済動かす手の一つでしょうし。
まさに仰る通りです。
日本は欧州諸国から、対中国・産業面で煮え湯を飲まされ続けてきたわけですから、忘れない事が肝要に思っています。
上手く行っても10年先か。横須賀に寄稿してくれるのが待ち遠しいわ。まだ絵の段階だけど、タンブルホーム船形の前弩級艦みたいな詰まった艦影がちょっと好み。
あきづき型の劣化版みたいでダサいな
そうは思わないな