欧州関連

ドイツ、Patria6×6とNEMOを組み合わせた火力支援車両開発で合意

Patria6×6の採用国にドイツが加わったため総受注数は1,000輌超えがほぼ確定、さらにPatriaとドイツはPatria6×6とNEMOを組み合わせた火力支援車両の開発でも合意し、チェコやスペインも自動装填もしくは半自動装填に対応した120mm迫撃砲の砲塔システム採用を検討している。

参考:Germany and Patria have signed work package for CAVS Patria 6×6 programme-related mortar variants development

120mm迫撃砲の搭載方法を砲塔式にした火力支援システムに大きなニーズ

PatriaはXA-180シリーズやXA-200シリーズの後継プラットフォームとしてCommon Armoured Vehicle System=Patria6×6(XA-300)を発表、このプログラムの枠組みにはフィンランド(161輌)、ラトビア(256輌)、スウェーデン(341輌)が参加し、ドイツもFuchs更新(推定需要300輌)のためPatria6×6、Pandur Evo6×6、 Fuchs1A9(Fuchs2)を検討していたが、今年1月に4番目の運用国になることを決定したためPatria6×6の総受注数は1,000輌超えがほぼ確定した。

さらにドイツは120mm迫撃砲を搭載したM113の更新も検討中で、Patriaは先月31日「ドイツと初めてCAVS派生型の開発契約を締結した。これはPatria6×6とNEMOを組み合わせたもので、契約の作業範囲にはCAVS NEMOと指揮統制車の構築、ドイツ製戦闘管理システムの統合、システム全体に対するドイツの認定が含まれる」と発表、これはM113PzMrsの後継プラットフォームとしてPatria6×6の採用、120mm迫撃砲の搭載方法も従来方式ではなく砲塔式にすること示唆している。

120mm迫撃砲を搭載した装甲車や高機動車は「手軽で安価な火力支援車両」として広く普及しているものの、スウェーデンとポーランドでは120mm迫撃砲を砲塔式にした火力支援システムを実用化、スウェーデン陸軍は120mm迫撃砲を2門搭載したCV90Mjölnerを、ポーランド陸軍はPatria AMVに120mm迫撃砲を搭載したM120Rakを配備済みで、特に自動装填装置が組み込まれているM120Rakはウクライナに供給されて実戦を経験しており、台湾もM120Rakの取得に関心があるらしい。

出典:BAE

オランダ陸軍も歩兵大隊の火力を強化するためCV90MkIIIをMjölnerに改造することを決定、米陸軍もPatria製砲塔=NEMOを搭載したAMPVのプロトタイプ(M1064とM1129の後継候補)を受領しており、Patriaは「高度に自動化された射撃管制システムが搭載されているため、最大6発の迫撃砲弾を目標に同着させるMRSIミッションも可能だ」「強力なネットワーク機能を備えているため外部センサーとのデータ共有も簡単にできる」と述べ、この射撃管制システムは移動しながらの攻撃も可能だ。

チェコ陸軍もPandur8×8と組み合わせる120mm迫撃砲搭載の砲塔システム(推定需要62門)を、スペイン陸軍もPiranhaVとASCODに搭載する120mm迫撃砲システムを探しており、この両方で競合しているのはNEMOとRakで、PatriaとRheinmetallは英陸軍のニーズを想定して「Boxerに統合可能なNEMO」も発表するなど、この分野のニーズが急速に高まっていることを伺わせる。

出典:MKFI/Public Domain AMV XA-361 AMOS 

因みにCV90Mjölnerに搭載されているシステムの原型もPatriaとHägglundsが開発したAdvanced Mortar System=AMOSで、スウェーデン陸軍はAMOSをキャンセルしてMjölnerを、スウェーデン海軍も小型艦艇へのAMOS搭載をコストやサイズの問題でキャンセルしてNEMOを選択しているため、AMOS(プラットフォームはPatria AMV)を採用した国はフィンランドのみだ。

関連記事:火力支援能力の再構築、オランダ陸軍がCV90Mjölnerや新型迫撃砲を取得
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※アイキャッチ画像の出典:Patria

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コメント

    • たむごん
    • 2025年 2月 02日

    長砲身になれば、より生産が難しくなりますからね。
    ラインメタル155mm砲は、新規車輛生産分だけでも需要がひっ迫しており、ウクライナ戦争交換分が不足している言われています。

    生産コスト・地形・戦時の運用を考えたときに、自走迫撃砲の需要も興味深いですね。

    8
    • MK
    • 2025年 2月 02日

    自動化とか砲塔とか言い出したら折角の低コストがーとか思いましたが走行間射撃は生存性が高そうですね。

    4
    • もり
    • 2025年 2月 02日

    陸自も同じような迫撃砲支援車両新造配備するし面白い分野だよね

    15
    • どちらが良いのか
    • 2025年 2月 02日

    直射火力を自前で用意出来るからとは言え、パトリア1強の中で日本(とイタリア、フランス)のみフランスの120mm迫撃砲を採用するのは何か気が引けると言いますか…

    7
      • Minerva
      • 2025年 2月 02日

      日本は昔からフランス製の120mm迫を大量に導入したため乗り換えができない状態ですね
      NEMOは滑腔迫撃砲なのに対し重迫はライフリング式迫撃砲のため両者に弾薬互換性がありません

      14
        • 774rr
        • 2025年 2月 02日

        迫撃砲は昔からおフランス製のがメジャーじゃなかったかな?
        ネモは砲身が2本付いてて連射効きそうなのは羨ましいけど

        6
        • nachteule
        • 2025年 2月 02日

         それはどうですかね?フランスはNATOの枠組みでの互換性はあるでしょうし、2R2MはNATO規格全タイプのライフルおよび性能は落ちますが滑腔の120mm迫撃砲弾を使用できるように設計されている筈です。滑腔砲タイプはライフル砲弾がかみ合う部分が干渉して入らないのか逆は無理という感じはします。

        1
          • Minerva
          • 2025年 2月 03日

          2R2Mは砲身を滑腔砲身に交換可能という話でライフリング砲身で滑空砲弾を使用できたかは調べてもわかりませんでした

          4
        • Kenny
        • 2025年 2月 03日

        ロシアのNonaや中国の05式はライフル砲身で専用の榴弾も迫撃砲弾(有翼式)も使用出来たはずで、ライフル砲身に換装すれば後装式でもどちらも使えるんでは。

    • Whiskey Dick
    • 2025年 2月 02日

    ウクライナ戦争における従来の戦車・装甲車両は大きく鈍重なためドローンの格好の餌食となり、ドローン攻撃の対抗策としてロシア軍は隠蔽と速度に優れた軽車両とバイクを多用するようになった(装甲車両が足りないという説もあるが)。
    清谷氏が将来の戦車に関する考察で「主砲はトップアタックと間接射撃を考慮した曲射砲になるかもしれない」と述べていたが、これにウクライナの戦訓を組み合わせれば小型車両に重迫撃砲を搭載したものが最適解となる。小型・高速で比較的費用の安い6輪装甲車と重迫撃砲の組み合わせはポストウクライナの標準になり得る。

    3
      • 特盛
      • 2025年 2月 03日

      kytnって時点で信頼度は眉唾程度かと

      8
      •    
      • 2025年 2月 03日

      一両9億から10億円くらいかな。インフレでもっとか。西側は景気が良いな。
      やられる時は、10万円のドローンでもやられるわけだから無常だよな。

      3
    • マンゴー
    • 2025年 2月 02日

    >射撃管制システムは移動しながらの攻撃も可能
    コレがキモですなぁ
    特にドローンが飛び交う戦場においては
    撃ったら引っ込んで隠れてまた撃つみたいな状況になってるし、
    なんなら移動中も攻撃出来た方が良い
    道理だなぁ、と

    12
    • 無印
    • 2025年 2月 02日

    フクスの後継がフィンランド製ってのが意外
    ドイツの装甲車開発事情も裏で何かあるのかなぁ

    2
    • 58式素人
    • 2025年 2月 02日

    陸自は、自走重迫でどの方向に行くのかな?。
    素人は、現用の仏製120mmRTが悪いとは思いません。
    射程が劣っているわけではないし、施条砲だし、射撃精度は期待できるのでは。
    米海兵隊も採用していますから、弾の補給は、多少期待できるのでは。
    勝手を言うと、これを基に自走化するなら、米海兵隊で開発していた、
    ドラゴンファイアの様なもので良いのでは。割と簡単に自走化ができるみたいです。

    2
      • Natto
      • 2025年 2月 02日

      ここに出てくるようなデラックス路線の自走迫はどうなんだろと思います。生存性やNBC環境を考えると砲塔型が良いけど数が揃えれない問題がまた。
      MCVの車体に迫撃砲積んだヤツは目撃情報がありましたね。

      1
        • Natto
        • 2025年 2月 02日

        と思ってたら24式機動迫撃砲で制式化されてました。
        従来と同じ迫撃砲を車体に設置型。

        5
    • イーロンマスク
    • 2025年 2月 02日

    自分はこの分野は105mmりゅう弾砲搭載ハンヴィーみたいなのが主流になると思ってましたが、自走迫撃砲という手もあるんですね
    wikipediaによると105mm榴弾砲は120mm迫撃砲に置き換えられつつあるとのこと
    命中率で劣るものの砲身が安価でコスト面で有利なそうな
    どうせ面制圧なんだから多少命中率落ちても関係ないのかも

    2
      • qqq
      • 2025年 2月 05日

      米英はライトガンの自動化と車載化の模索が無人化のロボット火砲で構想みたいに言われてっけど実際は120mm重迫化に至って前装でなく後送式で砲塔式になって装輪装甲に統合化ってのが目に見えてる。米陸軍はARVの系統で、英陸軍はボクサーでって多分なる。
      ヘリボン用はATVで牽引の簡素な代物になる。マリンコのオスプレイ展開用の重迫に同じだね。FVLの大型機もこれを機外懸架はしない。速度と距離の要求的に。なのでハンビー車載105mmとかにはもうならない。
      ロボット火砲はなんでそうまでして105mmにすんのか説明無理でこれに誘導弾薬の導入論議が含まれると既存でそれがある12迫とそれがないので開発必要な10榴って話が決定打になるだろう。また後送迫ならドローンを射出もできる。

    • qqq
    • 2025年 2月 05日

    フクス後継でXA300って確かに安いし合弁で完全ドイツ製ならそりゃそうだろうがミッドシップの6輪ならドイツメーカーで完全新型を作るなんぞ造作もないだろうに。しかしそれが結果フクスA9であり自軍採用で敗退したのならドイツの面目は?って感じが。
    ボクサーの下位で1000両予定のが広義でのAMVの派生(ああ見えてAMVにほぼ共通化)を独軍が採用ってのはわーくにも習うべき所かと。なんせAMV系でハイエンドのXPを採用してますからわーくにこそXA300を採用すべきでしょ。いやそもそも次世代パーツ多用のXPをやめて全部で既存規格のXA300で良いような?恐らくポーランド製(南ア製も同様)に準ずる内容だから安いはず。
    XPの7億+想定が多分3億未満になる。今後は更に欧州スタンダード車になる予定なので量産効果が期待できる。ハイエンドは三菱車で別に良い。そもそもハイアンドハイがイカれてるし新規参入のJSWで作るにはそれが適当かもだし。小松案だってそもそもミットシップだったし!

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