ドイツのメルツ首相は「ドイツ軍を欧州最強の通常軍にする」と述べていたが、ドイツ国防省は22日「2039年までに欧州最強の通常軍を整備するための軍事戦略計画(機密が解除された範囲のみ)」を公開し、軍の即応体制を2030年代半ばまでに24.5万人から46万人まで増強する。
参考:Grundlagendokumente zur strategischen Ausrichtung der Bundeswehr
ドイツが2039年までに欧州最強の通常軍を構築する根拠は「NATOが各加盟国に割り当てた能力要件」と「ドイツ単独の安全保障要件」に基づいている
2025年2月の選挙で勝利したメルツ氏は「米国からの独立達成が優先事項になる」「米国が信頼できる同盟国でなくなる最悪のシナリオに備えなければならない」と訴え、キリスト教民主・社会同盟と社会民主党は国防・インフラ整備のため「債務制限からの国防支出除外」「総額5,000億ユーロの特別インフラ基金設立」で合意し、ドイツ連邦議会も憲法改正を可決して歴史的規模の財政パッケージが成立。

出典:Dirk Vorderstraße/CC BY 2.0
正式に首相に就任したメルツ氏は2025年5月の議会演説で「連邦政府はドイツ軍が欧州最強の通常軍になるため資金を全て供給する。これは欧州で最も人口が多く、経済的に最も強力なドイツにとって相応しい措置だ。我々のパートナーらも強力なドイツに期待し、実際にこれを要求してきている」「我々の目標は武力を行使する必要がないほど強いドイツや欧州を実現することだ」と述べ、現在のドイツの状況がどうなっているかを端的に説明すると以下の通りになる。
ドイツは非常に厳しい財政規律を緩和するため憲法改正(GDP比1.0%を超える国防支出を債務制限外として扱う例外規定)を行い、債務対GDP比率が60%前半台なので事実上「トリプルA格付けのドイツ国債で市場から資金を無制限に調達できる」と言われており、ドイツは2026年から2041年までの防衛装備品調達だけで4,002億ユーロ=約74兆円を投じる予定で、2025年に議会が承認した調達契約の総額は830億ユーロ=約15.1兆円に達したが、それでも本気になったドイツが予定している防衛装備品調達の1/4以下に過ぎない。

出典:KNDS Deutschland
防衛装備品調達の資金を含む国防予算全体の数字を見ても、メルツ政権は2025年6月「今後5年間(2026年~2030年)で総額6,490億ユーロ=約121兆円を国防予算として支出する法案」を、2025年7月「2026年~2029年までの国防予算を最大1,620億ユーロ=約30兆円増額する中期財政計画」を承認し、2026年からの5年間で投じられる国防予算の総額は最大8,110億ユーロ=約151兆円、1年あたりの国防予算は平均2,027億ユーロ=約37兆円となり、NATO首脳会談で合意された「2035年」ではなく「2029年」までに純粋な国防分野への支出基準=GDP比3.5%達成が確実な状況となっている。
ピストリウス国防相は2025年11月「2039年までに欧州最強の通常軍を整備するための軍事戦略計画」に言及、今年4月に完成した軍事戦略計画を議会に提出し、ドイツ国防省は22日「機密が解除された範囲の軍事戦略計画」を公開した。ドイツ軍の再軍備は「2029年までに急速な増強」「2035年までの能力重視の拡張」「2039年以降の長期的な技術主導の拡張」で構成され、端的に言うと「2035年まではすぐ手に入る能力で再軍備を行い、長期的な技術開発への投資が再軍備に結びつくのは2035年以降」という意味だ。

出典:Bundeswehr/Jana Neumann
さらに人員増強も2030年代半ばまでに現役18.5万人を26万人、予備役6万人を20万人、戦闘準備が整った兵士(現役と予備役の合計)を24.5万人から46万人までに増強し、予備役の立場も「二次的な戦力」から「現役部隊と同等」に引き上げられ、ピストリウス国防相は予備役について「軍と市民社会をつなぐ要だ」と述べている。今年1月に施行された新兵役法(志願制の兵役)は人員増強が目標を達成できないと徴兵制に切り替わる可能性を秘めているが、現時点での採用ペースは前年比10%増(応募数は20%増)となっている。
新兵役法(の徴兵制に切り替わる可能性)は対象年齢の男性を中心に反発も少なくないが、結局のところ徴兵制の有無に関係なく「有事になって消耗した兵力を回復する必要性=予備役が不足する状況」に陥れば「国家は国民の強制動員を実施できる」という点を見逃しており、ドイツのディフェンスメディアのhartpunktは以下のように指摘した。

出典:Bundeswehr
“どうやら徴兵制に影響を受ける人々は「自発的に軍隊勤務を希望する人間だけで自分達の安全が守られる」と勘違いしているようだ。さらに言えばドイツの徴兵制は廃止されたのではなく平時のみの運用停止で、有事の際には強制的に運用が再開され、基本法第12A条に基づき全成人男性は軍隊、国境警備隊、民間防衛部隊への勤務に招集される可能性がある。つまり志願制は平時の兵役義務から若者を救済するだけで、有事の塹壕配備から救ってくれる訳では無い”
“徴兵制に「自分や愛する人が戦争に行くのを望まない」という理由で反対する人々は「戦争を抑止するため何をすべきか」という問いについてよく考えるべきだ。平時の徴兵制は抑止力の原則に基づき軍隊の作戦能力、防衛能力、戦闘能力を確保する目的で行われている。戦う必要がないよう戦う能力と意思をもつことは冷戦時代の常識だった。現在の若者には抽象的に聞こえて現実味のない話に聞こえるかもしれないが、格闘技を練習している生徒が学校でからかわれたり、暴力を振るわれることがないのと同じだ”

出典:Bundeswehr/Jana Neumann
“志願制で必要な抑止力が確保されない場合、この解決方法は兵役義務だけだ。我々の安全は必要な装備と人員に満たされたドイツ軍によって確保されていることを忘れてはならないし、抑止力が欠けた状態では戦場で自由を守ることになりかねない。徴兵制に反対する若者、この若者の父親と母親は「塹壕で何年も過ごすよりも兵舎で数ヶ月過ごす方がマシだ」と認識すべきだ”
要するに「日本のように有事になっても国民の強制動員はできない、自衛隊にさえ入隊しなければ予備役登録されないので有事に招集されることはない」であれば「予備役登録に繋がる義務的な兵役=徴兵制導入の阻止」に意味が出てくるが、ドイツのように「有事になれば予備役登録の有無に関わらず全成人男性を強制動員できる国」において志願制の兵役は「平時の義務的な兵役=徴兵制」から若者を救済するだけで「有事の塹壕配備から自分たちを救ってくれる訳では無い=どうせ動員されるなら訓練しておいた方がマシでしょ?」という意味だ。

出典:Photo by Sgt. 1st Class Michael O’Brien
ちなみに「欧州最強の通常軍を整備するの必要な具体的な能力」については「長距離攻撃能力」「情報優位のためのAI」「ネットワーク化とデジタル化を進める上でのデジタル主権」「欧州最強の通常軍を運用する国家レベルの作戦能力」「ドイツ国内の作戦基地」を挙げており、ここまでの戦力が必要な根拠は機密なので具体的な数値が非公開なものの「NATOが各加盟国に割り当てた能力要件」と「ドイツ単独の安全保障要件」に基づいている。
偶にコメント欄で「ロシア国境から遠く離れた国は戦争リスクが低い」「だからそんな装備はいらんだろう」「安全保障環境が楽でいいよね」という意見を見かけるが、NATOが国防支出の新基準に総額5.0%(国防支出=3.5%と軍事インフラとしても活用できる分野への投資=1.5%の組み合わせ)を採用したのは「各加盟国に割り当てる能力要件」に基づいており、これは第5条発動時に加盟国がNATOにどんな能力を提供するかという意味なので基本的にロシア・ベラルーシ国境に近い遠いは関係がない。

出典:Hanwha Aerospace
つまりロシア・ベラルーシ国境から遠く離れたスペインが72.4億ユーロ=約1.3兆円も投じて新型自走砲を計214両も調達するのも「スペイン単独の安全保障要件」ではなく「NATOが各加盟国に割り当てた能力要件」に基づいている可能性が高いと解釈すべきだ。
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※アイキャッチ画像の出典:Bundeswehr





















ええ悪いは別として相変わらずドイツは極端から極端に走りますなあ
ほんと仰る通りです。
不法移民ウェルカム・EV最高・原子力反対・石炭火力反対(今でも日本より多い)・中国ベッタリ・ロシアべったりなど、これほんの数年前ですからね…。
追記です。
石炭火力2018年ドイツは約38%でしたが、近々の日独は逆転したようですね。
欧州最強の通常軍かぁ・・・
元々NATOは旧ソ連を抑え込むと同時に(欧州最強の強いドイツ)復活を阻止する為に作られた組織なのに今やNATO各国は揃って強いドイツ復活を望んでいるとはなぁ。
これも時代の流れと言うやつかな。
『ドイツ強大化への懸念(!)』NATOの裏目的だけでなく、『英仏ソの首脳』東西ドイツ統一をに警戒していたのが外交文書であるんですよね。
ドイツ軍を強力にする方向性になってるものの以前と違って、『EU・ユーロ』という広域の枠組みがあるわけですから、どういった影響を与えるのかしばらく見守りたいと思います。
いい試みですね。歯の一本でも折られてくれば軍隊文化を理解出来る様になるでしょう。
暴力で歯を折って問題にならない西側の軍隊があるのか?
本邦が西側に入るならYESでしたね。まあ、折ったやつは暫く外出禁止になりましたけどそれくらいでしたね。
追記
もし、これがおかしいと思えるなら正常な感覚をしていると思います。逆に共感される方が困ります。
German question
「ドイツだけど何か質問ある?」
>自衛隊にさえ入隊しなければ予備役登録されない
入隊しても自動的には登録されません。退職自衛官から「募集」しています。
ドイツの志願制の兵役と言うのは日本で言う予備自衛官補のことでしょつが、コチラでは3年間に50日の訓練で日当は一万円以下だったと思います。
日本としてもドイツが軍事費に無駄金つぎ込んでくれればありがたいわな
他にも言及されている方いますが、NATO創設理由を考えると大きな転換点ですね
まさに象徴的な動きです
何が起こるのかな
第三次世界大戦だ!
2039年9月1日、奇しくも先の大戦のちょうど100年後、東プロイセン奪還の為ドイツ軍がポーランドに攻撃を開始する・・・
いやほんと、意味深な数字を掲げないで頂きたい
米国に依存しない(核抑止無し)は厳しいんでないか
まあ自国で開発して配備とか天地がひっくり返っても無理だが…
フランスとイギリスにあるよ。核。
強いドイツが望まれてるor抵抗感がないのは今に至るまでのドイツの外交努力の賜物じゃないでしょうか、と軍拡しても同志国から反対の声が殆ど無くなったわーくに見てるとそう感じます。
本邦は有事になっても戦力は増やせないので、全自動で戦闘し敵殲滅まで人間の指示が無くても無限増殖して戦う無人機械の開発に全力を注ぐべき
暴走して日本を壊滅させた無人機械が避難民の船を乗っ取って他国に侵入を試みる事象が多発、リスク管理の最終手段として米露中共同での日本浄化作戦が国連安保理で決議される……
カリフォルニア州知事『I’ll be back』
ドイツ第四帝国か、ムネアツ
>現在の若者には抽象的に聞こえて現実味のない話に聞こえるかもしれないが、格闘技を練習している生徒が学校でからかわれたり、暴力を振るわれることがないのと同じだ
意外と大学生が格闘技ジムに来ていたりするし(単に流行の可能性もある)、民兵・準軍事組織の元(アゾフ連隊やドンバスの市民兵)が同じジムの仲間とかだったりするから、格闘技と軍事への連続性は案外無視できるモノじゃない気がする
多分社会がそれだけ不安定化しているのかもしれないけど、一種の指標にはなる気がする
格闘技好きな日本人が軍事の世界でリミッターが外れたら、結構凄い事になるとは思ってる
でも、職業軍人を目指さないのに、軍事訓練を進んで受けに来る若者に国防を頼るってのは危うい気もする。
どう考えても政治的に偏るのは避けられないし、職業軍人と違って給与や人事でコントロール出来ない。結果として在郷軍人団体はAfDの支持者ばかりと言ういつか見た風景になりそうな。
長年、財政規律を守ってきたドイツは軍備増強は余裕で可能ですね。
人員の問題もありますが、それも金で解決できる。
それに比べて、野放図にバラまいてきた日本は、財政再建を同時並行で進めなくてはならないという無理ゲー状態です。
高市総理は支持率が高いのは良いけど、経済的なセンスが無さそうなんですよね。
取り巻きがうまくやってくれると良いのですが。。。
メフォ手形を彷彿とさせる超絶資金源
凄いね……流石に真似できねぇや
欧州が結束して軍拡すれば、
アメリカ抜きでもロシアとタイマンはれるから良いよね。
極東はアメリカ抜きだと中国には敵わないから、
難しい所?
おそらくロシアを圧倒するのでは…?
>ドイツは2026年から2041年までの防衛装備品調達だけで4,002億ユーロ=約74兆円を投じる予定で
そんな金あるんなら今すぐその金でウクライナに兵器送れよ
戦争に備える?もう戦争は始まってんだよ
んな金ドブに捨てる判断するわけねえだろ
どう考えても自国軍強化した方がいいわ