スロバキアのペレグリニ大統領はショルツ首相との会談後「我々はウクライナのNATO加盟が現実的ではないため協議しないことで合意した」と、ショルツ首相も独国営メディアに対して「戦争状態にある国は絶対にNATOへ加盟できない」「NATOへの招待は即時加盟に結びつかない」と述べた。
参考:Vstup Ukrajiny do NATO teď není na stole, shodli se Pellegrini se Scholzem
参考:Ukraine in die Nato? Scholz ist skeptisch
参考:Ukraine’s immediate accession to NATO ‘not realistic,’ Slovak president says following meeting with Scholz
今のところ勝利計画に対する表面的な支持ではない部分=具体的な成果は見えてこない
ゼレンスキー大統領は勝利計画の最上位にリストアップされた「NATOへの招待(加盟手続きの開始)」について「現在ではなく将来の問題だと理解しているが、今直ぐ招待が実現すればプーチン大統領に『地政学的な計算の誤り』を思い知らせることになる」と説明し、実質的には「戦争終結前のNATO加盟」を強く要求しており、ゼレンスキー大統領を含むウクライナ政府高官らは「我々の加盟に反対する加盟国はいない」「ドイツの懐疑的な態度も軟化している」と前向きな発言を繰り返しているが、これをNATO関係者は否定している。

出典:President of Ukraine
PoliticoはNATO関係者の話を引用して「(米国、ドイツ、ハンガリー、スロバキアに加えて)ベルギー、スロベニア、スペインなどもウクライナの即時加盟を望んでいないが、米国とドイツの影に隠れて目立たないだけだ。これらの加盟国は抽象的にウクライナ加盟を支持しているだけで、これが実現に近づけば公の場で難色を示し始めるだろう」と報じ、ドイツとスロバキアも「ウクライナの即時加盟を議論することすら出来ない」と述べた。
スロバキアのペレグリニ大統領はドイツのショルツ首相との会談後「我々のテーブルの上に(ゼレンスキー大統領が勝利計画の中で求めた)ウクライナのNATO加盟問題はなく、この議題は現実的ではなく、話し合いの議題にも挙げないことでドイツと合意した」と、ショルツ首相も独国営メディア=ZDFの番組に出演した中で「戦争状態にある国は絶対にNATOへ加盟できない」「この原則について(加盟国間で)意見の相違がないことは誰もが知っている」「NATOへの招待は即時加盟に結びつくことはない」「NATOはウクライナ加盟についての見通しを示したが、それ以上の決定は今のところ必要ない」と言及。
It was a pleasure to meet @Bundeskanzler Olaf Scholz and Federal President Frank-Walter Steinmeier today. #Germany is the key partner of Slovakia in Europe. Security situation has brought us even closer together and we are ready to boost our cooperation.
We discussed the… pic.twitter.com/cnt7n6jllS
— Peter Pellegrini (@PellegriniP_) October 24, 2024
ウクライナ加盟についての見通しとは2023年のNATO首脳会議で採択された「全ての加盟国がウクライナの加盟に同意し、条件が満たされている場合にのみNATOに招待する」「NATO加盟国はウクライナの加盟条件から加盟行動計画(MAP)を除外する」、2024年のNATO首脳会議で採択された「ウクライナのNATO加盟に対する不可逆的な道への支援」「2023年に採択された条件の再確認」を指しており、当時のウォレス英国防相も「米国の主張と同意見でウクライナの加盟を決めるのは戦争終結後でなければならない」と述べている。
ゼレンスキー大統領は「今直ぐNATOに加盟できれば戦争で『ウクライナの中立化』を達成するのが難しくなる=これを撤回させるにはウクライナ全土を占領して政権をすげ替える必要があり、目標達成のコストが跳ね上がるため戦争というアプローチを断念する→停戦が実現する」と言っているのだが、これにはロシアとの戦争リスクをNATO加盟国が受け入れる必要があり、戦争のエスカレーションを防ぎながらウクライナの要求と加盟国のリスクの間でバランスをとった結果が「加盟を支持しても正式加盟の判断は法的な戦争状態の終結後」なのだ。

出典:NATO
要するに、ショルツ首相もペレグリニ大統領も「ウクライナのNATO加盟問題についてこれ以上の政治的決定は出せない=これ以上の政治的・安全保障的リスクを加盟国が負うのは無理」と言っているのであり、特にショルツ首相が「戦争状態にある国は絶対にNATOへ加盟できない」と明言したのも、ZDFの記事タイトルが「ショルツはウクライナのNATO加盟に懐疑的だ」なのもウクライナ側のスタンドプレー(ドイツの懐疑的な態度も軟化している)を牽制するためのものだろう。
因みにウクライナ人ジャーナリストのブトゥソフ氏は勝利計画について「ロシア軍の前進をどうやって阻止するのか、それを達成するのにどれだけの時間が必要なのか、どのような組織的措置が講じられるのか、防衛ラインの構築に投じられる資金(230億フリヴニャ=約830億円)の有効性はどの程度なのかといった見通しは一切提供されなかった。この計画はNATOや支援国に対して具体的な要求を行うのに、ウクライナに関する部分は具体的に書かれていない。つまり大統領は勝利の定義や自国に対しては何も具体的に述べていないのだ」と指摘。

出典:President of Ukraine
さらに「ロシア軍の攻勢を止めない限り政治的交渉が不可能なことも説明せず、社会全体を非現実な方向に誘導したかっただけ」「この勝利計画はNATO加盟国を含む西側社会への呼びかけとガイドラインのみで、ウクライナが勝利のため負うべき責任や義務はなく、前線の困難な状況認識もなく、それを修正するための措置もなく本当に無責任な計画で、これは勝利計画と呼べるものではなく何も変わらない」と批判したことがあり、今のところ勝利計画に対する表面的な支持ではない部分=具体的な成果は見えてこない。
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※アイキャッチ画像の出典:European Parliament/CC BY 2.0
いやいや、まさか
こんな当たり前のことが分かっていなかった人がいるんでしょうかね?
日本人は、特に分かってなかった・今も分かってない人が、多いかもしれませんね…
軍事的常識があったら、予備戦力も無しに東部捨ててまで半端なクルスク侵攻なんてやらないからなぁ
侵攻されてる側なのに動員だってロシア以下のやる気でgdgd
ゼレンスキー氏自身ですら重々承知だったことでしょう
しかしながら敢えて明言する意味は不明ですね、曖昧さはそれだけでも一定の圧力を発揮するというのに
ハシゴを外すなら一気に外したほうがお互いのためですが
リーダー不在の共同体というのは害しかもたらしませんね
>曖昧さはそれだけでも一定の圧力を発揮する
ウクライナ支援額が膨大過ぎ、EU各国の国民も経済が不調な中で負担感を嫌がりますから、「曖昧さはそれだけで政治への不信不満を発症する」という事情もあるのでしょう。内政と外交への民の確固たる信頼と政権基盤があれば、“曖昧さにも意味がある”と民は納得してくれるでしょうが、自国の消費税や物価高への方策についても曖昧では文句も出ます。
リーダー不在の共同体というのは害しかもたらさないという点は、大いに同意です。EUやNATOの現状における最大の弱点だと思います。オバマとメルケルの時代であれば、まだそれなりに機能していたと思うのですが。
リーダー不在は責任者不在ですからね…
上手く行っている内は良くても、失敗と向き合わなければならない時に不具合に直面するのは必然
曖昧な状態にしておくことがドイツ等にとってマイナスだと判断したのであれば明言しても別に違和感はないですよ。
何事もウクライナ中心に判断しているというわけではないですから。
>ウクライナが勝利のため負うべき責任や義務はなく、前線の困難な状況認識もなく、それを修正するための措置もなく本当に無責任な計画
まあ、これを恥知らずに要求してくる上に戒厳令を理由に選挙を行わない政権を、集団防衛体制の中に迎え入れる国家はないでしょう。戦争状態を終わらせ、戒厳令を解いて、選挙を行い、「ウクライナ国民に選ばれた大統領」との間でNATO加盟は協議することであって、任期が終わったのに居座ってクルスク侵攻を企てる男は論外。NATOに入れるのは危険すぎる。今のイスラエルをNATOに入れるようなものだ。
国内向け発言じゃないですかね?
ただ、ゼレンスキーだけに、未知数なところがありますね。
「ウクライナはNATOにもEUにも加盟できるが、その前に仕事をしろ。」と言っていた米国の国務次官だったヌーランドはすでに辞任した。命じられた仕事を始めたがウクライナはどちらにも加盟できてないどころか国家の存続も危ぶまれる事態に追い込まれた。日本の政治家・役人もウクライナの状況を直視することだ。くれぐれも米の小役人に操られるような事はしないことだ。日米合同会議などで日本の役人は米国の役人に随分脅されるらしいが、くれぐれも日本の国益を第一に自分達の足元をよく見て対処してもらいたい。
ウクライナの「勝利計画」にある「NATOへの即時加盟」に対しての回答という形でしょうね
これまで散々ウクライナに対してNATO加盟をちらつかせながら、結局はこうなるわけです。わかっていた事ですが、煽ったアメリカは好き放題やってるなという感じですね
これに対してウクライナは騙されたと言うのか大人しく諦めるのか
ロシアの脅威は、300年以上ロシア帝国時代からありますが、ロシア=ウクライナの状態が長く続いていますからね。
ソ連も、ロシア=ウクライナは中心構成国な訳であり、ウクライナ独立後に親西側になったといっても表面上10年程度です。
ウクライナNATO加盟は、歴史的な背景・文化宗教的な面があまりにも薄く、わざわざ戦争に巻き込まれるメリットがないですから無理筋だなと感じています。
NATOの曖昧な態度は、ロシアにとっての攻撃継続を暗に許しているようなものだ。ウクライナがこれほどまでにNATO加盟を切望し、ロシアの侵略を止めるための手段を求めているのに対し、NATOが行動を曖昧にすればするほど、ロシアにとっては攻撃を正当化する口実が増えてしまう。
だがロシアは明らかに情勢を読み違えている。この戦争が長引くほどに、ウクライナもその支援国も、ロシアの存在を安全保障の脅威としてみなすことが確実になりつつある。NATOが本気でウクライナに加盟の手を差し伸べれば、ロシアの軍事的野心は瓦解し、国内外からの圧力に押しつぶされていくことは避けられない。
NATOの決意こそがロシアの侵略の牙を折り、欧州全体の安全を守るための第一歩だ。
NATOの欲望というか米英が東欧での火種だと大戦後の歴史を見て分からんもんですかね?
先に腹をくくったのはロシアだが、その最強のNATOとやらは本当に腹をくくれるんですか。
ウクライナのスタンスはNATOやEUの末席として仲間に入れてくださいじゃなくて我々がNATO、EUの盟主として立ってやるから各国は惜しみない支援をですからね
人の金と労力で最強になろうとすんじゃないですよ
ウクライナは西側再軍備までの時間稼ぎの防波堤であり今までもこれからも仲間では無いので最終的にどうなろうが本音では知った事では無いという西側スタンスが何故理解出来ないのだろうか。
ロシアさんに土下座して今回の件は西側の詐欺に合ったことにし、ゼレンスキーとアゾフを処断しロシアの属国brics加盟で行くのが将来的には国良くなる方向になると思うが、今更方向転換難しいのでキエフ地下壕ルートまで行くしかないか。
この記事見てたら、広告が「持病があっても入れます保険」だったんだけどAdsenseってそこまで高性能になったの?!
いまさらな話ですが、当初から指摘があったように、他国の褌で戦争することは根本的に間違っています。
NATOからすれば、お荷物国家ウクライナの加盟は認められない
でしょうな。これ以上ロシアを刺激したくないでしょうし。
さりとて現状で終戦ともなれば、事実上NATOが総がかりでロシア
に敗北したとなり、面子まるつぶれで権威失墜なので公式には
認めたくない。ジレンマに悶えているように見えますが、
面子が立ち、西部ウクライナの利権を保持できる停戦がベスト
ウクライナはゼレンスキーが大統領である限り、終戦も停戦も不可能
なのはご承知の通り。感情と自己保身で理性的な判断は無理ですね
ウクライナは現状で終戦がベスト、停戦がベターだと思いますが、、
ロシアは領土的目標のドンバス完全制圧+緩衝地帯を削り取る目処が
立っており、このまましばらくは戦争状態がベスト。最終的には
ウクライナのNATO加盟阻止の為、停戦状態がベスト。もうウクライナ
との和解は無理なので、緩衝地帯に新スロヴィキンラインを構築し、
朝鮮の38度線のような状態にするつもりでしょう。
38度線より過激に双方永遠に撃ち合うでしょうが、それは紛争前と
変わりないのでロシアとしては、許容範囲だと思います
つまり潜在的には三者の落としどころは一致しているのですが、
最大の障害は現ウクライナ大統領というわけで、、
大きな流れは年末に決まるからね。今の段階からどうこうなんてことは出来る訳がない。
そもそも、材料的なもの…将来的なのはもちろんとして、ロシアの行動次第では絶対にないとは言えないという話でしかない。そんなレベルの物を捕まえて今すぐ確定声名を出さないからどうこうってのはまあなんというか…
例えばだよ?ロシアがポーランドやモルドバ、フィンランド、スウェーデンのゴットランド島とかを攻撃し始めたとしたら、NATOが戦争に巻き込まれたという判定になってその場合は戦争中に加盟できないという前提話が吹き飛ぶ可能性もあるのさ。
だから現時点ではそんな事はないが、ロシアの行動次第ではどうなるかを絶対にないと確約する事もないという話になるのはむしろ当たり前な話だったりもする。