欧州関連

ドイツ、次期主力戦車「MGCS」開発計画に参加する新しいパートナー国を今年9月に発表?

ドイツの国防当局者は9月に開催されるMGCSプログラムの独仏協議後に新しいパートナー国を発表できることに期待していると発言して注目を集めている。

参考:Germany expects ‘wave’ of new Eurotank partners after September conference

MGCSの開発情報にアクセスしたい英国、MGCSの正式な開発国に英国を迎え入れたいドイツ、利害関係の複雑化を嫌いフランス

英国は今年3月に軍の再編計画を発表、227輌保有している主力戦車チャレンジャー2の内79輌を廃止して148輌のみにアップグレードを実施することになったが、独仏が共同開発を進めている次期主力戦車「Main Ground Combat System(MGCS)」にオブザーバーとして参加することを希望して交渉が行われている。

英国の狙いはMGCSへの正式参加ではなく2040年頃に予定されている近接戦闘車輌の更新に必要な「情報収集」で、MGCSの開発情報にアクセスするための権利を獲得するためオブザーバー資格の確保に乗り出したのだが、ドイツ国防省の報道官は「MGCSは独仏以外の国がプログラムに参加できる仕組みを備えておりオブザーバー資格はMGCSに興味を示している国を正式参加に踏み切らせる役割を果たすだろう」と答えて英国の正式参加に期待を寄せている。

出典:AMB Brescia / CC BY 2.0 Leopard 2 A7

英国防省は「複数のグローバルな主力戦車開発プログラムも注視している=MGCSのみに関心があるのではない」と強調することで正式参加を期待するドイツを牽制、フランスもMGCSに関与する国が拡大することを懸念=利害関係が複雑化することとMGCSと密接な関係にある未来戦闘航空システム(Future Combat Air System:FCAS)のバランスにも影響が出来るかもしれないと心配しているため「MGCSへの英国参加はよく検討して決定しなければならない」と主張してドイツを牽制している。

しかしドイツの国防当局者は9月に開催されるMGCSプログラムの独仏協議後に新しいパートナー国を発表できることに期待していると発言しており、新しいパートナー国とは正に英国のことだ。

出典:UK Ministry of Defence

パートナー国とは英国のオブザーバー参加を意味するのか正式参加を意味するのかは今のところ不明だが、チャレンジャー2をチャレンジャー3規格にアップグレードする契約を最近締結したばかりの英国は2035年頃に量産予定のMGCSを飛びつく必要がないので「情報収集」を目的にしたオブザーバー参加である可能性が高いだろう。

果たして情報収集を行うためMGCSの開発情報にアクセスしたい英国、MGCSの正式な開発国に英国を迎え入れたいドイツ、利害関係の複雑化を嫌い英国の参加に否定的なフランスの3者は上手な落とし所を見つけられるのだろうか?

関連記事:英国、独仏の次期主力戦車「MGCS」開発計画にオブザーバーとして参加か
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関連記事:英国、主力戦車のアップグレード「チャレンジャー3」を1,210億円で発注

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※アイキャッチ画像の出典:Blackbirdxd / CC BY-SA 4.0 レオパルト2の車輌とルクレールの砲塔を組合せたデモ車輌(MGCSの設計を示唆するものではない)

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コメント

    • 匿名
    • 2021年 5月 16日

    Janesのコメンテーターの方はこのようにおっしゃられていますし、恐らく全く新しい筐体の新戦車を開発することは現実的ではなくて、利害関係以前に初めから無理ゲーな可能性がありそうだなと。
    MGCSの成果物を既存のレオパルド2やルクレールに適用する可能性の方が高そう。
    リンク

    2
    • 匿名
    • 2021年 5月 16日

    この3国が関わる共同開発は必ずもめる、これまでもこれからも

    19
    • 匿名
    • 2021年 5月 16日

    またグダグダになりそうな予感しかしかしない

    21
    • 匿名
    • 2021年 5月 16日

    イギリスとしてはチャレンジャー3は繋ぎで、本命はその次って事ですかね

    3
      • 匿名
      • 2021年 5月 16日

      チャレンジャー3の戦車砲は120mmだから、
      その次を見据えていても不思議ではないよね。

      7
    • 匿名
    • 2021年 5月 16日

    と言うか、ポーランドの立場はどうなるのよ?

    5
      • 匿名
      • 2021年 5月 16日

      一番の陸軍国家が入ってない不思議

      7
        • 匿名
        • 2021年 5月 16日

        西欧って東欧見下してそうだよな

        18
          • 匿名
          • 2021年 5月 17日

          日本って東南アジア見下しそうだよな

          1
    • 匿名
    • 2021年 5月 16日

    選ぶ相手で、”やる気なし”ドイツの本気度がわかりそうですね

    1
    • 匿名
    • 2021年 5月 16日

    参加国が増えれば増えるほどグダグダになりそう

    2
    • 匿名
    • 2021年 5月 16日

    ユニバーサル砲塔でお茶を濁して、終わり。

    • 匿名
    • 2021年 5月 16日

    >次期主力戦車「MGCS」開発計画に参加する新しいパートナー国

    そりゃ、世界の武器輸出先進国で、兵器技術大国の「韓国」も有力候補でしょう。
    と、誰も言わないな。なんでだ?

      • 匿名
      • 2021年 5月 16日

      K-2の技術自体、独仏露のコピーの集合体でしかなく目新しいものではないから

      17
      • 匿名
      • 2021年 5月 17日

      韓国の兵器技術はCOIN機みたいな先進国では役に立たないけど発展途上国ではそこそこ活躍できるかもってぐらいの技術力でそれさえも他国のライセンスが数多く入っており、武器輸出も簡素な性能のものか消耗品ばかりだからね

      3
    • 匿名
    • 2021年 5月 16日

    ドイツは何を期待してこんなこと言ってるんだ?

    2
    • 匿名
    • 2021年 5月 16日

    ヨーロッパの共同開発なんて
    資金は他国
    設計は自国
    生産は自国だがまぁ…出資額次第で要検討?
    としか考えていないから揉めるに決まってる

    11
    • 匿名
    • 2021年 5月 16日

    プーマIFV見りゃ分かるけどドイツ人の要求仕様は対露偏重でかなりいびつ。
    方やフランスは海外遠征に最適化で自軍採用でもトロピック仕様も含まれる。
    そこに戦車開発自体も捨てた知見で20年遅れの英国が参上・・・。地獄やな。
    しかもアルマダ的に各種派生も前提とかなってくると絶対収集つかん系じゃん!

    8
    • 匿名
    • 2021年 5月 16日

    トルコだって技術輸入してるとはいえ単独開発してるんだから
    戦車ぐらい単独で作ればいいのにな

    1
      • 匿名
      • 2021年 5月 17日

      今のドイツは戦車の単独開発どころか自国戦車の維持すら怪しいからなぁ……

      3
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