欧州関連

次期主力戦車「MGCS」開発計画、英国関与を期待するドイツと警戒するフランス

英国とドイツは2ヶ国間の防衛協力に関する範囲を拡大することで合意、この拡大された協力範囲には独仏が共同開発を進めている次期主力戦車「Main Ground Combat System(MGCS)」への協力も含まれていると報じられており注目を集めている。

参考:German and British defense officials discuss ‘Eurotank’ cooperation

英国のオブザーバー参加実現に向けて順調に話し合いが進展しているように見えるが、、、

英国は今年3月に軍の再編計画を発表、227輌保有している主力戦車チャレンジャー2の内79輌を廃止して148輌のみにアップグレードを実施することになったが、独仏が共同開発を進めている次期主力戦車「Main Ground Combat System(MGCS)」にオブザーバーとして参加することを希望して交渉が行われている。

英国の狙いはMGCSへの正式参加ではなく2040年頃に予定されている近接戦闘車輌の更新に必要な「情報収集」で、MGCSの開発情報にアクセスするための権利を獲得するためオブザーバー資格の確保に乗り出したのだが、ドイツ国防省の報道官は「MGCSは独仏以外の国がプログラムに参加できる仕組みを備えておりオブザーバー資格はMGCSに興味を示している国を正式参加に踏み切らせる役割を果たすだろう」と答えて英国の正式参加に期待を滲ませた。

出典:Alan Wilson / CC BY-SA 2.0 チャレンジャー2

しかし英国防省は「複数のグローバルな主力戦車開発プログラムも注視している=MGCSのみに関心があるのではない」と強調することでドイツ側を牽制したが、どうやら両国の協議は英国のオブザーバー参加実現に向けて順調に進展しているように見える。

ただフランス側はMGCSに関与する国が拡大することを懸念=利害関係が複雑化することとMGCSと密接な関係にある未来戦闘航空システム(Future Combat Air System:FCAS)のバランスにも影響が出来るかもしれないと心配しているため「MGCSへの英国参加はよく検討して決定しなければならない」と主張しているのが興味深い。

ドイツとフランスはレオパルト2(約300輌)とルクレール(約200輌)を更新するため次期主力戦車を共同開発する「Main Ground Combat System(MGCS)」プログラムを進めており2025年までに技術検証用車輌を製造、その結果を受けてプロトタイプ製造へと進み2035年頃に量産された次期主力戦車の引き渡しを予定、MGCSプログラムにかかる最終的な研究開発コストは約15億ユーロ(約1,850億円)だ。

恐らくフランスはドイツが英国を計画に引き入れ、FCASと同じように1対2の状況を作り出そうとしていると疑っているのだろう。

関連記事:英国、独仏の次期主力戦車「MGCS」開発計画にオブザーバーとして参加か
関連記事:第6世代戦闘機開発FCASに振り回されるフランス、ダッソーが単独開発に言及

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※アイキャッチ画像の出典:AMB Brescia / CC BY 2.0 Leopard 2 A7

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コメント

    • 匿名
    • 2021年 4月 25日

    うん、まあ目の前にぐだぐだになった例があるからフランスの懸念も分かる
    て言うか前にポーランドの要請を断ってなかったっけ

    27
    • 匿名
    • 2021年 4月 25日

    またかぁ・・・

    21
      • 匿名
      • 2021年 4月 25日

      ドイツはそういう奴だから
      にして英独が協力というのは、歴史的に違和感たっぷり

      9
        • 匿名
        • 2021年 4月 26日

        イギリスは開発情報チラ見してデータぶっこ抜きたい
        ドイツは頭数増やして自分有利に交渉進めたいって
        協力とは名ばかりのドロドロでいつものザ欧州って感じでしょう…

        8
    • 匿名
    • 2021年 4月 25日

    レオパルドも、ルクレールも限られた台数しかないが、改修なのか新造なのかが気になる

    2
      • 匿名
      • 2021年 4月 25日

      mgcsは新型戦車の開発計画ですよ

      7
        • 匿名
        • 2021年 4月 25日

        既存の情報でレオパルド2A7のエンジンとシャーシ、ルクレールの砲塔を流用するとある。
        シャーシとエンジンブロックが既存のままで、砲身や装甲やべトロにクスを交換するだけなら、新規開発ではなく改修計画になるのではないか

        慣例的に砲塔を新しく交換したら名前が変わる気もするが

        1
          • 匿名
          • 2021年 4月 26日

          それはEMBTのデモンストレーションでMGCSとは別らしい。…
          けれどもレオ2用の新型の二人乗り砲塔を開発中のようなので、MGCSがコケて砲塔を換装してレオ3を名乗ってレオ2の後継になる気がしてならない。

          9
    • 匿名
    • 2021年 4月 25日

    隙さえあれば話が流動化している印象。外からはごちゃごちゃと何やってんだって見えますけど、欧州ってそういう文化というか、面倒くさいコミュニケーションのしかたをするところがあると思います。

    22
      • 匿名
      • 2021年 4月 26日

      その面倒くさいコミュニケーションの結晶がユーロファイタータイフーンな訳で…え?何?タイフーンと呼ぶな…?
      えー、失礼しました、そのコミュニケーションの結晶がユーロファイターEF-2000な訳でありまして。

      …結局最後までまともにコミュニケーション取れてねーじゃん。

      13
        • 匿名
        • 2021年 4月 26日

        まぁ、そこまで含めてコミュニケーションなんじゃないかな(白目)

        6
        • 匿名
        • 2021年 4月 26日

        周回遅れのリリース、まだ未完成、機体寿命も少ない
        かつてないほどの負債が爆誕
        つまりコミュ障ってことですかねえ?

        1
    • 匿名
    • 2021年 4月 25日

    UAVの登場で戦車不要論も真面目に検討しないといけなくなった昨今、MBTの開発計画ってとても難しい。

    3
      • 匿名
      • 2021年 4月 27日

      >UAVの登場で戦車不要論も真面目に検討しないといけなくなった昨今

      UAVは戦車の代わりにはならないから、戦車不要論はまた妄想論に終わると思うよ。戦車よりも火力・防御力・機動力全てにおいて戦車を圧倒的に上回っていて且つ、値段も戦車よりも遥かに安い兵器が出てくるなら戦車は不要になるけどUAVは今のところそうじゃないでしょ…
      とは言え、今後開発・量産される戦車は何かしらのUAV対策を施しておかないと、いざというときに相当不利な状態で戦うことになるかもね。

      6
    • 匿名
    • 2021年 4月 25日

    正直言って次世代戦車のデザインがちょっとイメージできない
    今後出てくるであろう徘徊型ドローンの攻撃に対してどのように防御するのか
    煙幕とダッシュで避けるのか対空装備を付けて迎撃するのか
    あるいは高度な迷彩技術で認識されないようにするのか
    それとも思い切って無人化するか

    5
      • 匿名
      • 2021年 4月 25日

      ズムウォルト級「全部!」

      15
        • 匿名
        • 2021年 4月 25日

        あ、あとテストはすっ飛ばして量産してね!

        11
        • 匿名
        • 2021年 4月 26日

        全部入り空母じゃないのでまだまだ低望みですわ

      • 匿名
      • 2021年 4月 25日

      無人砲塔と遠隔操作式車載兵装はほぼ確定なので、ドローンの脅威もあるしこちらは対徘徊用随伴ドローンでも付けるとか?

      5
      • 匿名
      • 2021年 4月 26日

      上空からいいように狙われては、いまの戦闘車両ではひとたまりもない。
      一番安上がりな対抗策は、毒には毒を、UAVにはUAVを、でしょう。

      4
        • 匿名
        • 2021年 4月 26日

        UAV相手に戦死するなんてほんと割に合わんね

        2
    • 匿名
    • 2021年 4月 25日

    UAVの登場で戦車不要論も真面目に検討しないといけなくなった昨今、MBTの開発計画ってとても難しい。

    1
    • 匿名
    • 2021年 4月 25日

    今後の装甲ってどうなっていくんですかねぇ…複合装甲って技術的な限界に達したの?
    詳しい人教えてください。

    1
      • 匿名
      • 2021年 4月 25日

      現重量でこれ以上防御力を上げるのは厳しい局面に入ってる
      が、代わりとしてAPSを使用したAPFSDSのインターセプト技術は徐々に整いつつあって
      最終的にはAPSによる撃ち落とし+ERAによる防御+複合装甲による防御の三段構成になるんじゃないかって言われてる
      場合によってはここにショット装甲による空間装甲を加わる
      どのみち本邦が10式で行ってる純粋な複合装甲による防御はもはや通用しない時代になってる

      22
        • 匿名
        • 2021年 4月 25日

        丁寧な返答解説ありがとうございます。
        また装甲不要論あるいは戦車不要論が出てきそうですな

        7
        • 野嘗
        • 2021年 4月 25日

        そもそもミサイル万能論のころから戦車の装甲は通用しないって言われてたから今さら感。

        5
          • 匿名
          • 2021年 4月 26日

          イタチごっこ、とは言うモノの近年は圧倒的に盾の分が悪いんだよね。
          今後のイタチごっこは下のコメントにもある様に、
          「矛」と「矛を潰す矛」のイタチごっこになるんじゃないのかね。

          10
            • 匿名
            • 2021年 4月 26日

            俺の矛は全ての矛を過去のものにする

      • センカン・スキー
      • 2021年 4月 25日

      合成金属発泡体、ジアメン等の衝撃拡散・吸収性能の高い新素材の開発などはされております、その点我が国は有利です。
      さらに、これから先APS等も進化していくでしょう
      それに高精度高性能な索敵機能を備えた無人機、レーダー等も発達していきますし戦車の上空を索敵特化の無人機の群れがカバーしてくれたりするでしょう、そしてその無人機を攻撃する無人機が開発され、その無人機から無人機を守るために護衛用の無人機が開発されたり等する可能性も無くはないでしょう、あくまでもひとつの可能性ですがね
      矛と盾のイタチごっこは我々人類が絶滅するまで止まりません。
      長文失礼致しました

      20
        • 匿名
        • 2021年 4月 26日

        第二次大戦の空母機動部隊同士の航空戦のミニ版が至る所で繰り広げられるような感じかな

        6
    • 匿名
    • 2021年 4月 25日

    ポーランドを蹴り出しておいてよくもまあ参加歓迎だと言えるもんだな
    イギリスもびっくりな二枚舌じゃないか

    9
    • 匿名
    • 2021年 4月 25日

    ドイツは本当にダメな奴だな

    16
    • 匿名
    • 2021年 4月 25日

    もうそれぞれ自分の国でやりなよ

    3
    • 匿名
    • 2021年 4月 25日

    英国「宥和政策やで」
    仏国「おいやめろ」

    7
    • 匿名
    • 2021年 4月 26日

    呉越同舟して、どうぞ(白目

    4
    • 匿名
    • 2021年 4月 26日

    君たち戦闘機の方でも揉めてたのに戦車も揉めてるのかよ
    やっぱり国内開発がナンバーワン!

    3
      • 匿名
      • 2021年 4月 26日

      国内開発も、宿敵財務省による予算削減や、政権交代のタイミングで見直しが入ったりする弱点がある
      ※特に政変が起きて事業仕分け党とか2位じゃなきゃだめさんとかが与党になると悲惨
      一方で国際共同開発は利害調整が大変だけど、外交問題が絡むので政変による影響を受けにくい利点があるのだ

      弱小組織で何かと予算を取り上げられるJAXAはこんな事情もあってよく国際共同に動いてる

      8
        • 匿名
        • 2021年 4月 26日

        >2位じゃなきゃだめさん
        「2位じゃダメなんですかさん」あるいは
        「1位じゃなきゃダメなんですかさん」かな?

          • 匿名
          • 2021年 4月 26日

          KFなんとかさん
          1位目指したら妄想の中で1位になれました
          なお実態は・・

          2
        • 匿名
        • 2021年 4月 26日

        政権交代とかでポシャッたとしても自国民の選択の結果であり自業自得だけど
        共同開発国の都合でポシャッたら目も当てられんぞ
        影響受けにくいってそんな律儀に契約守る国が無いのはあちこちで証明されてるでしょ

        1
          • 匿名
          • 2021年 4月 26日

          引きこもって妄想ばかり書き込んでないで外に出て散歩でもしてこい

        • 匿名
        • 2021年 4月 26日

        F-35の共同開発国なのに政変起こったから一機もF-35導入しないことにしたカナダ等の共同開発だろうがひっくり返してくる国いくらでもあるのに
        軍事系のブログでよくそんな大嘘垂れ流そうと思ったな

        1
          • 匿名
          • 2021年 4月 26日

          影響を受けにくい、って書いてあるけど。
          日本語読めない人?

            • 匿名
            • 2021年 4月 27日

            受けにくいがもう嘘なわけだが馬鹿だからわかんない感じ?

              • 匿名
              • 2021年 4月 27日

              日本のF-2も大統領交代の影響しっかり受けてるしね。

              • 匿名
              • 2021年 4月 27日

              ごめんよ、日本語読めないんだったね

        • 匿名
        • 2021年 4月 28日

        結局NASAが予算額はでかいのにスペースシャトル以降自力でロケットも開発できない
        ISSも予算を浪費するばかりで、アメリカが宇宙大国から滑り落ちないのは
        スペースXをはじめとした民間の力というね
        (無論、裏では支援しまくってますが。)

    • 匿名
    • 2021年 4月 26日

    安定安心のグダグダっぷりですね!お互いにマウント取りに行くヨーロッパスタイル、纏まるはず無い。口ではなんのかんの言っても、旧ソ無くなれば他国なんざ畑の肥やしにしか思って無いだろ。

    3
    • 匿名
    • 2021年 4月 26日

    麗しい。

    • 匿名
    • 2021年 4月 27日

    またフランスが抜けて空中分解しましたとかじゃないだろうな……?
    フランスとしては自国で戦車開発出来るのに、何が楽しゅうて独英と組まないといけないのかって思ってそうだし

    1
      • 匿名
      • 2021年 4月 27日

      かといって単独で作ったら、EU村八分にされそうだし

    • 匿名
    • 2021年 4月 28日

    ドローン対策?最悪ポン付けした車載型スティンガーミサイルでも入れておくか
    対空自走砲並みのFCSでもつけるか
    最近いらない子扱いされてきた対空自走砲を護衛につける方法もある
    別に兵器どうし1対1で戦わなきゃいけない義理はないですからね。

    要するに無人になっただけで攻撃ヘリとかの話と一緒では?と思う。

    中期的にはドローン狩りドローンみたいなのが出てくる可能性もありますけどね。

    2
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