SPIEGELは20日「ドイツ連邦議会の予算委員会に提出された文書にはF-35Aの追加調達(15機)が記載されている」「これでドイツ空軍はF-35Aを50機保有することになる」と報じ、この追加調達はフランス側のFCASに対する疑念を煽ることになるかもしれないと付け加えた。
参考:Pistorius will weitere F-35-Kampfjets in den USA bestellen
このところ逆風ばかりだったLockheed Martinの航空部門にとってポジティブな兆候と言えるだろう
ドイツ空軍のトーネード戦力は戦闘爆撃機のIDSと電子戦闘偵察機のECRで構成され、特にIDSは核兵器共有協定の任務を行うため戦術核兵器B61の運用能力が統合されており、メルケル政権はトーネードの後継機を3種類(IDSの後継機としてタイフーンT4、ECRの後継機としてEA-18G、B61運用能力を維持するためF/A-18E/F)に分割して調達することを決定したものの、この決定に反対する国内勢力との調整に手間取っている内に米国家核安全保障局がB61/Mod12の統合機種からF/A-18E/Fを除外。

出典:Julian Herzog/CC BY 4.0
そのため後任のショルツ政権はF-35AとタイフーンEK導入を決定し、2022年12月「F-35Aを35機購入するための契約に署名した」と発表したが、SPIEGELは20日「連邦議会の予算委員会に提出された文書にはF-35Aの追加調達が記載されている」「15機の追加調達費用として25億ユーロを見積もっている」「安全保障関係者は『新たなNATO能力要件を満たすにはより規模の大きな航空戦力が必要だ』と述べている」「これまでF-35Aの追加調達は財源確保が難しく希望的観測だと考えられてきた」「しかし安全保障関連の支出が債務ブレーキ条項の対象外となったため追加調達の余地が生まれた」と報じた。
これでドイツ空軍が保有することになるF-35Aは50機となり、SPIEGELは「F-35Aの追加調達はフランス側のFCASに対する将来の疑念を煽ることになるかもしれない」「FCASの対立は開発製造に関するワークシェア合意を無視して主導権確保を主張するDassaultに責任がある」「最近もDassaultは『ドイツ人は文句を言いたいだけ言えば良い』『どうせ(FCASの枠組みの中で)我々だけが戦闘機の作り方を知っている』とドイツ政府を挑発した」「年末までに対立問題が解消できなければFCASは頓挫するとの見方もある」と付け加えている。

出典:AIRBUS
今回の追加調達がFCASに関連があるのかどうかは不明だが、このところ逆風ばかりだったLockheed Martinの航空部門にとってポジティブな兆候と言えるだろう。
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※アイキャッチ画像の出典:U.S. Air Force photo by Staff Sgt. Zachary Rufus





















F-104は916機も持っていたというのに。。。
F-104は916機も持っていたというのに。。。
F/A-18E/Fの一件で調べ直してみたのですが、F/A-18シリーズでB61-mod11以前に対応していたのはF/A-18C/Dレガシーホーネットだけなんですね。
「そもそも現行機がmod11以前に対応していない」という状況だとドイツの見込みが甘かった、としかいえないですね。
ただ、F-35A + B61 mod 12の戦力化はブロック4予定のため、「ブロック3系の投下用試験機はあっても実戦機は存在しない」ので、核シェアリングの一時的な解除がない限りトーネードIDSを維持する必要があります。
訓練期間以外に納入分が核シェアリングを実現できない現状は相当困りそうです。
今のドイツが核戦力を手放すとは考えづらいし、f-35の追加購入を引き換えに現行機に運用能力追加を求めるくらいはするんじゃないかな?
FCASは正直もうキツいし、仮に開発継続できても完成機にb61の運用能力を持たせられるかも不透明だしね
現在のB61ニュークリア・シェアリングは管理上「ドイツの核戦力」には該当しないですし、基本的にはドイツ連邦領土内に攻め込んだ敵対陸上戦力に向けて投下する「ベルカ式国防術」を前提としています。
また、ドイツ向けF-35は初号機も納入されておらずTR-3機になることが見込まれますが、TR-3機の実戦で使えない問題が納入までに本当に解決するか、またそのTR-3機にB61-12を統合できるまでにどれくらい時間がかかるのかは悩ましいかもしれませんね。
他のB61ニュークリア・シェアリングホスト国はF-16を使っているのでドイツ固有の問題ではありますが、東西冷戦時代と違ってドイツに攻め込むには複数のNATO加盟国を通らなければならないため、東ドイツ相手に投下しなければならなかった当時と比べれば猶予があります。
まぁドイツはユーロファイターも20機追加発注してるからF-35一辺倒というわけでもない
なんかもうFCAS放棄してF-35にした方がいい流れ。
しばらくF-35でしのいでたらGCAPかF-47実用化だからそれ買えばいいのでは?
ドイツがF-35をさらに導入するのなら、別記事であがったカナダの戦闘機問題もF-35で落ち着きそうですね。
だからといって、フランスが妥協するかというと…
対露だとF-35は性能過剰もいいとこだよな あるに越したことはないけど
現時点でできるかどうかわからないFCASに全てをかけるより、現物のあるF-35を準備しとくのは現実的かと思います。
本邦もGCAPに向けて動きながら、色々問題がありますがF-35 揃えてますし…
トランプさん率いるアメリカに不信感あるとは思いますが、バランス取ってきているんじゃないでしょうか?
ドイツさんは、F-35とユーロファイター強化と無人機配備で当面を凌いで、GCAPかF-47を購入してさらに時間を稼ぎ、その間に戦闘機の自主開発能力を磨き上げればいいので、そもそもFCASにそこまで入れ込む必要もないように思われます。
GCAPの20年後にドイツ主導の戦闘機が完成するぐらいのスケジュール感でいいのではないでしょうか。
それよりも、ユーロファイターについて、「英国はもう買わないんだから、今後のドイツ・イタリア・スペインの調達分ははそれぞれの国で国内生産させろ。それから近代化改修や再設計の自由はもっと拡大しろ」って交渉する方が優先度が高かったりしませんかね。