ポーランドの新型潜水艦入札は最終局面に差し掛かっており、Defense Newsの取材にポーランド国防省も「調達局はドイツ、スウェーデン、イタリアの提案に最も高い評価を与えた」と明かし、コシニャク・カミシュ副首相兼国防相も「年末までに海軍向けの新型潜水艦を3隻~4隻発注する予定だ」と表明した。
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政府間の交渉で問題が生じないかぎり「高い評価を得た3提案」の中から選ばれる可能性が高い
ポーランド海軍は旧ソ連製のキロ級潜水艦「オゼル」に加え、ノルウェーから購入した4隻の中古潜水艦(205型潜水艦の派生型で207型もしくコッベン級潜水艦)を運用していたものの、2021年までにコッベン級潜水艦は退役し、老朽化したキロ級潜水艦の能力は非常に限定的で、新たな潜水艦を調達するためオルカプロジェクトを立ち上げた。

出典:tomasz przechlewski/CC BY 2.0
当時のポーランド海軍は潜水艦の運用範囲を「バルト海」に限定していたため、オルカプロジェクトで調達する潜水艦に「全長70m以下」という条件=ポーランドメディア曰く「馬鹿げた条件」が設定され、2014年1月までに手を上げた企業は8社、設計案を提示してきたのは4社だけで、検討が進められていた過程でウクライナ侵攻が勃発し、ブラスザック国防相が2023年5月「新型潜水艦の取得プログラム=新オルカプロジェクトを年内に立ち上げる」と表明。
新オルカプロジェクトで調達する新型潜水艦には「AIP機関による長距離作戦能力」や「巡航ミサイルによる対地攻撃能力」が要求され、ブラスザック国防相も「調達する潜水艦の維持やサポートを行うためオフセット協定=関連したサービスを国内で行うための技術移転を求めることになる」「この入札アプローチはオーストラリアの潜水艦入札モデルを参考にした」と明かしていたが、この計画には11社=Babcock、SAAB、Naval Group、TKMS、Navantia、Fincantieri、現代重工、Hanwha Ocean、建造実績のない欧州企業などが手を挙げている。

出典:TKMS
どの企業もポーランドに対する積極的なアプローチを見せていたが、ポーランドメディア=Rzeczpospolitaは2月「入札者との交渉は最終局面に差し掛かっている」「この交渉に残っているのはNaval Group、Navantia、現代重工、Hanwha Ocean、TKMS、SAAB、Fincantieriだ」「各提案に対する主な評価基準は潜水艦の性能、納期、プログラムに対する資金調達の方法などだ」「調達局はTKMS、SAAB、Fincantieriの提案に最も高い評価を与えた」と報じていた。
コシニャク・カミシュ副首相兼国防相も最近「年末までに海軍向けの新型潜水艦を3隻~4隻発注する予定だ」と表明し、ポーランド国防省もDefense Newsの取材に「我々からの受注を獲得するため多くの国が競争しているが、調達局はドイツ、スウェーデン、イタリアの提案に最も高い評価を与えた。但し、政府レベルの協議が継続しているため他の提案が選択肢から消えた訳では無い。政府の決定を待って調達局は新型潜水艦取得に関する措置を講じる予定だ」と説明。

出典:Saab AB A26
つまり「スペインのNavantiaは脱落した」「TKMSが提案していると思われる214か212CD、SAABのA26、FincantieriのU212NFSが性能以外の要素を含めて高い評価を獲得している」「この取引は政府間の交渉にも左右されるためNaval Group、現代重工、Hanwha Oceanの提案も選択肢から外れていない」という意味になり、政府間の交渉で問題が生じないかぎり「高い評価を得た3提案」の中から選ばれる可能性が高いが、もし納期や資金調達でより良い条件を提示できるならフランスや韓国にもチャンスが残っているのかもしれない。
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※アイキャッチ画像の出典:Fincantieri
素直に行けばドイツだろうが、本当に導入するのかな。
バルト海は水深が浅く、特にポーランド沿岸は水深50mくらいと浅いみたいですね(瀬戸内海みたいな浅さに見えます)。
ポーランドは、陸軍増強に注力してきたわけですが、(水深が浅くても)潜水艦の抑止力の高さも同時に感じてしまいました。
ポーランドに潜水艦いるのかなって一瞬思ったけど目の前にロシアの飛び地があるんでしたね。