ドイツのメルツ首相はウクライナ支援の透明性を放棄して「戦略的曖昧さ」に方針を転換、ここ数日「射程制限解除に関する発言」で注目を集めていたが、ゼレンスキー大統領がベルリンを突然訪問し、両首脳はドイツがウクライナの長距離攻撃兵器調達に資金を提供すると発表した。
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非難に反論する支援内容の透明性はロシアに利するだけ、ウクライナ支援においてドイツが果たしてきた役割を疑うものは誰もないない
ドイツのメルツ首相はWDR Europaforumで「我々は軍事的支援を含めてウクライナ支援継続に全力尽くす」「もうウクライナに供給されてる英国、フランス、ドイツ、米国の武器に射程制限はない」「ウクライナは供給された武器を使用してロシアの軍事目標をどこでも攻撃可能だ」「ロシアは容赦なく民間人を攻撃し、都市を爆撃しているがウクライナはそんなことをしていなし、今後もそうあるべきだ」「しかし、自国領内でしか侵略者に対抗できない国は十分な自衛ができない」と発言。

出典:Ukrainian Air Force
この射程制限解除発言の真意についてメルツ首相は27日「射程制限の問題は数年前から問題になっていた。昨日も申し上げたように射程制限を課していた国々は既に本要件を放棄している。この点に関して言えば昨日の発言は『ここ数ヶ月間に起こっていること』について述べた、つまりウクライナは国境を越えてロシア連邦領内の軍事目標に対し、受け取った武器を使用する権利を持っているいうことだ」と説明し、これを額面通り受け取れば「ここ最近のウクライナに対する大規模攻撃を受けた新たな措置」ではなく「過去の取り組みに言及しただけ」という意味なる。
但し、メルツ首相は首相就任直後「もう個別の兵器提供について公には議論しない」「国民への情報公開を中止するわけではないがロシアに情報を与えたくない」と述べ、これはマクロン大統領の「戦略的曖昧さ」を真似たものと見られており、ドイツのワーデフール外相もKEPD350のウクライナ提供について「個別の兵器システムについて何も発言しない」「我々はロシアに何を行うのか知る機会を与えない」「ドイツはウクライナを軍事的に支援し続け、ウクライナが自国を防衛し、ロシアが侵略戦争を継続できなくするようにする」と述べていたが、遂にドイツが具体的な行動に出た。

出典:Президент України
ゼレンスキー大統領は28日にベルリンを突然訪問してメルツ首相と会談、両者は会談後の記者会見で「両国はウクライナ企業が製造した長距離攻撃兵器の共同購入に関する覚書に署名する予定だ」と発表、さらにメルツ首相は再び「もう長距離攻撃兵器に制限はなく、ウクライナは自国を完全に防衛できるようになり、ウクライナ領外の軍事目標も攻撃できるようになる」と述べ、ドイツ国防省も「両国の国防相が長距離攻撃兵器への資金援助に関する協定に署名した」と発表。
ドイツ国防省は協定の詳細について「ウクライナにおける長距離攻撃兵器の製造に資金を提供する」「この合意はドイツがウクライナの兵器生産に直接投資するという約束に基づいたもの」「資金を提供するウクライナ企業には活用されていない生産能力と最新システムを製造できる技術的知識がある」「最初の長距離攻撃兵器は数週間以内に配備される可能性がある」「2025年中に相当数の長距離攻撃兵器が生産される予定だ」「これは既にウクライナ軍に導入されているため追加の訓練は必要ない」と述べ、砲弾、弾薬、通信、医療、防空システムを含む支援パッケージの総額は50億ユーロだと付け加えた。

出典:Philipp Hayer/CC BY-SA 3.0
この覚書に署名したウメロフ国防相も「IRIS-Tシステムとミサイルの製造契約をDiehl Defencと締結した」「この契約にかかる費用は22億ユーロだ」と明かしたたが、ドイツもウクライナも長距離攻撃兵器の詳細、調達規模、調達時期などについては口を閉ざしており、これまでのように情報公開という名目で内容を明かすのではなく「ロシアに何を行うのか知る機会を与えない」という方針を守っているのが特徴で、両首脳は会見中にKEPD350について一切触れていない。
発表内容をバカ正直に受け取れば「ドイツはウクライナ企業が開発した長距離攻撃兵器=弾道ミサイル、ネプチューン、パリャヌィツャ、トレンビタなどの製造に資金を投入する」と解釈できるが、ドイツ国防省の発表を慎重に読むと「追加訓練が必要ない導入済みの長距離攻撃兵器は『数週間以内に配備されるもの』に限定されている可能性」もあり、ドイツが何に資金を投資して何をやろうとしているのかは非常に曖昧だ。

出典:Президент України
Defense Newsも「メルツ首相が言及した射程制限解除がどのシステムを指しているのか不明」「今回の合意についても詳細は不明」「メルツ政権はショルツ政権が築き上げてきた支援の透明性を放棄し、今後提供する武器システムの詳細を一切公表しないと明言している」と報じている。
因みに「ショルツ政権が築き上げてきた支援の透明性」とは、戦争勃発前~戦争初期にかけて「ドイツの支援は他国に比べて少ない」「ドイツはウクライナ支援に積極的ではない」と国内外から散々非難されたため、ショルツ政権は2022年6月頃に支援リストの機密解除し、政府サイトで「新たに支援を約束したもの」「支援を準備中もしくは実行中のもの」「約束した支援が完了したもの」を毎週更新し、1週間で「何がどのくらいウクライナに引き渡されたか」を公開していたが、このリストの更新は2025年4月17日をもって停止された。

出典:Повітряні Сили ЗС України
勿論、安全保障上の理由から詳細な引き渡し時期はぼかされているものの、もはや「非難に反論する支援内容の透明性」はロシアに利するだけで、ウクライナ支援においてドイツが果たしてきた役割を疑うものは誰もないない。
何故ならドイツが提供した軍事支援の規模(280億ユーロ=4.5兆円/経済支援なども含めると478億ユーロ=7.8兆円)は米国に次ぐ規模なのだから。
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※アイキャッチ画像の出典:Президент України
トランプのお陰で、欧州も火が付いてきたなあ。
GCAPも加速してくれると良いが。
この支援で戦局が変わるとも思えませんし
和平交渉をご破算にするための支援でしょうね。
ドイツ君、GDPで日本を追い抜き対外純資産でも日本を抜いて1位になって金に困ってないので金持ちはどんどん支援してもらうのがいいんじゃないですかね。
ただ最近の戦況を見ると地上戦が激化してて、ポクロウシクの北側ではロシア軍の突破が見られるので長距離兵器があれば勝てるっていうゲームチャンジャー脳だけではなく、地道な陸戦支援であるといいですね。
追加の自走砲とか戦車もそろそろ必要になるんじゃないでしょうか。
ドローンとかもウクライナではボランティアが寄付を募って購入している場合もあるので、ドイツ君が中国企業のドローンを大量購入して送るとかもいいかもしれませんね。
メルケル政権時代からドイツと中国はズッ友なんで、障害は少ないと思います。
ろころで、KEPD350って空中発射型だけですよね。
なぜか対応機種はHP見ると、EF-18、Eurofighter Typhoon、F-15K、Gripen、Tornadoと現行機では不思議なくらいに見事にF-16だけ抜けているんですけど、どうするんだろう。
まだ魔改造?
最近、typoが増えたな。歳か…。
重量がMk84の1.5倍あるので重すぎるんじゃないですかね。
わざわざFA-50とKF-16向けに小型版を開発するぐらいですし。
調べてみてたけど「天竜ALCM」じゃなかなか探せないですわ…。
ただ、少ないソースのうち、ナムwikiによると、搭載機種にはF-4ファントムII、FA-50、KF-21ボラメしか上がっていないんですけど、KF-16にも載るのかな。
欧州ウクライナ派遣軍も、この感じで盛り上がっていきますかね?
開戦当初ヘルメットだけ送ったり・消極的なことを批判されてきましたが、時流が変わった気がするなと。
例えば、日本国内だけを考えても、『ウクライナ支援が少なすぎる!』こんな非難は戦争4年目ということもあり静まったなと…
『お米が高い!』の方が、日常生活に密着しているため政治問題化して盛り上がっており、欧州で言えばガス・電気代が似たような政治問題だったのでしょうね。
このあたり全部ロシアも折り込み済みでしょう。タウラスミサイルも正式に供与されるでしょうし。
実際、ロシアの抗議も型どおりの何時もの抗議です。
というか、このままでは停戦が出来ないのもEU視点では無理も無いです。
はっきり言えば「突っ込みすぎた」からでしょう。西側諸国やウクライナの動きを振り返って見ると「勝つ事は実は侵攻前から確信していた」と思われます。予測が外れてしまっただけで。
数字に表面出てこない費やされた資金も労力も時間も莫大だったはずなので、ウクライナの負けが認められないってのが実情でしょうね。だからまだBETすると。
俺は西側諸国が更に追加支援と制裁を積み増すといいと思いますよ。何が出来るか、何処まで効果が出るかはわかりませんが。やるだけやってみないと恐らく諦められないでしょうから。
ただ、日本がそれに同調する必要は無いと思います。幸いな事にウクライナも西欧諸国も日本の扱いについては実にぞんざいです。十分助けたと思うので、日本はここまででよいと思いますね。
それよりも台湾海峡が心配です。そもそもこちらについてはウクライナは元より、英国もEUも当然北欧諸国も何をしてくれる可能性もあまりないと思いますのでね。
露骨にロシア寄りになるとかえって敗戦の責任を背後からの1突き論の如く押し付けられかねないので、お家芸の遺憾砲をぶっぱなしつつ粛々とサハリンのガス田を開発させてもらうくらいが調度良いですわ。欧州のしたたかさを真似させてもらいまひょ。
ロシアよりになる必要はありませんよ。少なくとも停戦条約が正式なものになるまでは。
その後はエネルギーやら肥料やら「仕方がないでしょ」みたいな形でロシアと取引を開始すればいいだけです。
ただ、フェアにやる事です。
サハリンとかもシェルが色々やらかしたというのが判明し日本側は巻き込まれただけとなった時は権益を戻してくれましたから、そのように日本側も対応すればいいだけです。ウクライナ侵攻については、ロシアが実質はめられたと言っても、それはそれとして侵攻した事自体は全く良くありません。ただ、それについて余計なおまけをつけて制裁を追加したりとか、余計な注文をつけるとかは日本政府が主体的にやる必要は無いはずです。そういうのはEUとか英国とかに任せればいいし、どうせ勝手にやるはずですから。
後は米国の動き次第です。
大体が台湾海峡が事実上中国の支配下になった場合は、日本はどちらにしてもロシアと関係をある程度改善しないわけにいきません。そしてEUや英国の動きはこのあたりについては不穏です。
米国がウクライナ支援に力を入れるという事は、最低限の保険だけは絶対に動かせないイスラエル方面への支援も考えると、要するに極東の方が手薄になるという事です。英国やEUがこの事を理解してないはずもありませんが、執拗に米国の関与を求めているのも個人的には気に入りません。
米国「流石に三方向作戦は厳しい」
英国・EU「いいや駄目だ こちらもやってもらう」
本当に良い体制でのウクライナ支援というだけで米国の関与を求めているのか、俺はかなり怪しんでいます。
フーシ派のミサイルも中国が関与してたって話ですし、EUの動きは怪しいもんですなぁ。
アメリカの足を引っ張りたい策謀に見えてしまう。
素晴らしい決定です。が、前線で必要なのはロクに数もない巡航ミサイルより、砲弾と砲弾と砲弾と、ときどきFPVドローンでしょう。せっかく製造業が元気で金持ちなドイツが本気になっているのだから、これらの製造工場もバンバンドイツ国内に立ててもろて
結局、第三次世界大戦は不可避の方向ですか
地続きである以上は仕方ないですが欧州は統一国家が出来ない限りはいつまでも戦争し続けるんでしょうね
イギリス・フランスと違ってドイツは核を持ってないので、ロシアは報復するんじゃないかと言われてますね。
ドイツはアメリカと核兵器シェアリングをしていますから、ロシアも手を出しにくいのでは?
仮にトランプ政権が「核兵器シェアリング?知らんわ」となってしまうと核兵器シェアリングしている国はもちろん、日本のようなアメリカの核兵器の傘下にある国への衝撃は相当なものになります。
「やはり自前で持たないと駄目だよね」という流れになりかねません。
あれだけ騒いでいた英仏が静かですね。
気がつけばドイツが2番目に金を使わされている現実。
英仏はすごいなぁ
リンク
>メルツ首相は28日、首都ベルリンでウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領と会談し、ウクライナによる長射程兵器の生産を財政的に支援することで合意した。メルツ氏は「この兵器に射程制限はない」
>ウクライナが生産する長射程兵器について、ゼレンスキー氏は「無人機だ」と説明した。独国防省の発表によると、資金提供により、「今年中に長射程兵器を相当数生産することが可能になる」という。
長距離無人機の生産支援に資金投入→これまでの様なロシア国内標的の制限なし
という事みたいですね
ロシア政府の戦争資金源となっているエネルギー関連施設への長距離ドローン攻撃が、最もプーチンに経戦を諦めさせる為に有効でしょうし
結局最後は口より行動。ポーカーやっている以上、張らないといけないタイミングはありますよね。欧州で意味ある手札を持っているのは独だけというのが何とも心許ない現実だと露呈した昨今ですが、、独がエスカレーションもやむ無しと札を切った今、問題はこれに抑止力があるのかだと思います。軍事力なく経済力すら失いつつある本国に切れる札なし。。
結局最後は口より行動。ポーカーやっている以上、張らないといけないタイミングはありますよね。欧州で意味ある手札を持っているのは独だけというのが何とも心許ない現実だと露呈した昨今ですが、、独がエスカレーションもやむ無しと札を切った今、問題はこれに抑止力があるのかだと思います。軍事力なく経済力すら失いつつある本国に切れる札なし。。