ドイツは今後5年間で総額6,490億ユーロを国防費として支出し、ゲパルト廃止で失われてしまった短距離防空システムを再取得するためSkyrangerを500輌~600輌調達する予定で、ラインメタルは「今年中に最大80億ユーロ=1.4兆円相当の契約が締結されるだろう」と述べた。
参考:Flugabwehrkanonenpanzer Skyranger – Rheinmetall erwartet noch dieses Jahr Milliardenauftrag von der Bundeswehr
参考:Germany To Bet Big On Skyranger Gun System To Address Growing Drone Threat
参考:【独自】政府、防衛用無人機を大量配備へ 26年度予算に1000億円超
ドイツは将来技術と並行して「今直ぐ入手可能な現実的手段」に投資する
メルツ政権は6月24日「今後5年間で総額6,490億ユーロ=約109兆円を国防費として支出する法案」を、7月30日「2026年~2029年までの年間国防費を最大1,620億ユーロ=27.7兆円に増額する中期財政計画」を承認し、ドイツはNATO首脳会談で合意された「2035年」ではなく「2029年」までに防衛分野への投資=GDP比3.5%達成が確実になり、この資金の使い道に大きな関心が集まっている。

出典:NATO
NATOは加盟国に課す能力要件(具体的な内容は数値は機密事項なので非公開)を大幅に引き上げ、ドイツに対しては「10年以内に最大7個戦闘旅団を提供してほしい」と要請しており、ピストリウス国防相とドイツ軍上層部はレオパルト2×数百輌、ボクサー×最大5,000輌、Patria×最低3,500輌の調達を計画中だが、ルッテ事務総長は「ロシアの脅威に備えるため防空システムは現在の5倍は必要」という認識を示し、デンマーク、ベルギー、スウェーデン、ノルウェー、ルーマニア、エストニアが防空システムの調達に計120億ドル以上の投資を発表。
ドイツもパトリオットシステム(PAC-3形態)取得を4セットから8セットに増やし、既存システムのランチャー=M901もM903にアップグレードし、PAC-3MSEを運用可能なシステムを17セットに増強、IRIS-T SLM取得も6セットから12セットに引き上げられ、パトリオットとIRIS-T SLMの中間ギャップをカバーするIRIS-T SLX(開発中)の取得も検討中で、弾道ミサイルを大気圏外で迎撃できるArrow3とArrow4の導入も決まっているが、ゲパルト廃止で失われてしまった低空域をカバーする短距離防空システム=SHORADにも60億ユーロ以上=1兆円以上の投資が見込まれている。
Bloombergは先月29日「ボクサーの調達にSkyranger搭載バージョン×600輌が含まれている」と報じたが、ラインメタルのパッパーガー最高経営責任者は7日「今年中に60億ユーロ~80億ユーロ相当のSkyrangerに関する契約が締結されるだろう」「納期に関しては『2029年まで』と『2035年まで』の2つの計画をドイツ軍と協議している」と明かし、ドイツのディフェンスメディア=hartpunktも「この金額はSkyranger搭載のボクサー×500輌~600輌の受注額と概ね一致する」と報じた。
War Zoneも12日「最終的な数字がどうであれ、Skyrangerへの投資は冷戦終結後にSHORADの再取得に繋がるため非常に重要だ」「ウクライナに提供されたゲパルトはShahed/Geran=一方通行型無人機の迎撃において称賛されている」と報じて、Skyranger調達の意義を以下のように述べている。
“ゲパルトのようなSHORADは低空域を飛行する戦術機や巡航ミサイルへの対処を目的に開発されたが、ウクライナとロシアの戦争でドローンの脅威が浮き彫りになり、多くの国でSHORADの要件が見直されることになった。Skyranger搭載のボクサーは機動性と防御力でゲパルトに劣るものの調達コストが安価で、装輪式のプラットフォームは作戦地域への展開も容易だ。さらにSkyrangerは30mm機関砲の他にスティンガー、ミストラル、対ドローン専用迎撃弾=DefendAirを発射することができる”
“将来を見据えるとレーザーやマイクロ波など指向性エネルギー兵器、ドローンを迎撃可能なドローン迎撃機などが対空砲やミサイルシステムを補完し、最終的には同システムを完全に置き換えるかもしれない。特に小型ドローンへの対処、ロケット弾、砲弾、迫撃砲弾への対抗手段として役割が拡大するかもしれないが、ドイツは当面の脅威に対処するためSkyrangerに多額の投資を行うつもりだ。さらに調達規模が非常に大きいため戦場での短距離防空任務と拠点防衛の両方にSkyrangerを投入できるだろう。ドイツはSkyrangerへの投資によってゲパルト退役で失われた自走式対空能力を再取得することになる”
Der Lenkflugkörperspezialist @MBDADeutschland wird seinen für die Drohnenabwehr vorgesehen Flugkörper unter der Bezeichnung DefendAir in sein Produktportfolio aufnehmen und zu Ende entwickeln.https://t.co/w3h3LaD8tm
— hartpunkt (@hartpunkt) June 2, 2025
実用的な指向性エネルギー兵器は2030年までに登場するかもしれないが、手頃な価格と信頼性を兼ね備えた普及バージョンの登場は当分先の話になるため、ドイツは将来技術と並行して「今直ぐ入手可能な現実的手段」に投資するという意味だ。
ドローンの脅威を目の当たりにした以上、低空域をカバーする安価な迎撃手段の大規模調達は「避けられない安全保障への投資」であり、日本は87式の後継をどのように考えているのだろうか?
因みに防衛省は令和5年度予算の中で「情報収集機能に加えて火力及び電磁波による攻撃機能を効果的に保持した多用途UAV」と「侵攻部隊等の情報を収集し即時に火力発揮可能な攻撃用UAV」の取得に言及し、朝日新聞は「2023年度に試験導入を検討している無人機にMQ-9とTB2が含まれる」と報じていたが、共同通信は12日「政府は防衛用無人機を大量配備するため1,000億円以上の調達費を来年度予算に計上する方針だ。政府高官は『大方針は質より量で、まずは数で優勢を確保する戦略になる』と述べ、海外から比較的安価な無人機を購入する方針だ。ウクライナが使用したトルコ製の低価格無人機の取得も視野に入れる」投じている。
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※アイキャッチ画像の出典:Boevaya mashina/CC BY-SA 3.0 de





















>>Skyranger搭載のボクサーは機動性と防御力でゲパルトに劣るものの調達コストが安価で
安いと言っても車体含めてSkyranger30は20億円くらいするから、やはり自走対空兵器はいつの時代も高いのだなと。今回の量産効果でどこまで値段が下がるのか。
もし量産が効いて数億円程度に下がるのなら、サイズ的に陸自が導入するパトリアにも16式の車体にも載せられるだろうし、砲塔をラ国するのもありかもね
仮にSkyranger砲塔載せるならスラローム射撃の実績も不明で幅が小さいパトリアより、スラローム射撃で車体ぶん回して射撃出来て横幅がボクサー並みにある16式機動戦闘車に載せる方が良いよ。この手のトップヘビーな砲塔搭載して設置面積が少なくてスピードが出るような装輪型だと転倒しにくい仕様を持つ車体に載せた方が良い。
日本の場合空海の強化の方が先決なきがします。
上陸される前に打ち落とせって意味で
日本も、低空域をカバーするものが、大量に欲しいですね。
海岸線が長く、海岸沿いに重要施設が多いですから、安価・大量・移動しやすいのバランスが求められるのかなと。
(横須賀もそうでしたが)原発周辺に、ドローンが飛んでいても騒ぐだけでしたから、きちんと撃墜できる体制を整えられるのかは気になっています。
(2025.7.26 九電玄海原発、ドローン侵入か 設備、放射線量に異常なし 共同通信)
1000億で大量に安価なドローンを調達するのはいいんですけど、国内で生産できる体制を整えないと厳しいので国内で一気通貫の生産体制を、かつ分散拠点で出来るように整えてもらいたいものですね
政府高官は『大方針は質より量で、まずは数で優勢を確保する戦略になる』
自衛隊で質より量という発言は新鮮味があっていいですよね
弾薬も輸入品の購入である程度の備蓄を増やしてほしい所ですね
>大方針は質より量で、まずは数で優勢を確保する戦略になる
良かった……学んでおられる
スターリン「量にはそれ自体にある種の質があるのだ」
本当にスターリンが言ったかは分からないみたいだけど。
あとは迎撃についても質より量であることも考慮して欲しいね。
3000万ユーロのスカイレンジャーじゃ一機1000ドルのFPVには
量で圧倒されてしまう。
質、という点では双方に相手を破壊する可能性があるのにね。
>ドローンの脅威を目の当たりにした以上、低空域をカバーする安価な迎撃手段の大規模調達は「避けられない安全保障への投資」であり、日本は87式の後継をどのように考えているのだろうか?
共通戦術装輪車の車体にSKYRANGER 30の砲塔を乗っけるのが手っ取り早い気がする・・・・・
相模原の余力がどこまであるかわからんけど。
軟弱地でスタックする姿を見たくは無いな。
ドイツならPUMA車体に。日本なら89式の車体に積んでほしい。
大量導入はいいんだけどその前に電波法をどうにかしないと意味ないと思うな
信頼度はあれだけどスキャンイーグルも電波法の影響でダウングレード化されてるって情報もあるし、能登の災害派遣でもドローンの目立った活躍はなかったし
正直、この前のアメリカ軍のドローン改革を見習うべきだよ
4月に行った嘉手納基地のイベントでFPVドローンが展示されてから「いつから配備されてるんですか?」って聞いてみたら、どうやら基地の人が自作したものらしくアメリカとの差を感じさせられた
軍人、民間人問わず今やFPVドローンですら必要な材料とちょっとした技術があって自作しようと思えば可能ですからね。
実際ラジコンメーカーに勤務してた俺の知り合いがFPVドローンをそこいらの部品集めて作っちゃいましたからね。
性能は正規メーカーより劣りますが。
取り敢えず共通装軌車ってのを作って、87式と89式と99式は砲塔載せ替えって話だったかと。
自衛隊の場合、耐用年数半ばで予備役用に回される事がなく、現役部隊で使い回されるので足回りの方が先にヘタれるんですよね。
ドローン対策は対空火器というよりは、既存の装備の両用砲化が正解な気がします。FCSと電子信管の能力的には出来る筈でしょう。
ベータ氏のnoteを読んだ感じ、陸自の対ドローンはレーザー、ミサイル中心でしたね
対空砲はRWSぐらいしか無かったような…?
まずは日本海を越えないといかんからね。
湾岸部を狙うとしたら北方領土か半島南部か船舶搭載になるからね・・・。
ついでに船舶搭載の非正規戦やテロの場合は、海保や公安のリソース増やせになるわけで・・・。
湾の最狭部で停止した貨物船のコンテナから無人機やミサイルが発射される···悪夢かな?
架空戦記的に追記するなら日本政府に対して「複数のコンテナに機雷を搭載している。当船を撃沈した場合周辺海域を機雷原にする」とか通告すれば嫌がらせ倍プッシュだぜ
性能は未知数ですが一応レールガンも対空兵器としても開発されてるはずなので入りますかね?
レールガンはやるとしたら対ミサイル防衛な気がします。
無論無人機や巡航ミサイルが相手でも使えそうではあるのですが、数が強みのそれらにレールガンを撃っていてはいざという時に砲身がダメになっていそうです
自走高射機関砲は連装砲が正義
ゲパルトも87式もツングースカも全て格好良い
ドイツは今からでも遅くないのでSkyrangerを連装に設変かけるべき
ドイツ伝統の縦二連装でお願いします!
一応、統合対空信管の研究ってのをやってます。155mm用だそうです。99式なら全周射界、仰角70度近く、任意角装填、バースト射撃可能なら対空砲として使えるスペックです。
10榴の方が合目的な感じはしますが、重迫を代替するとなると冒険かな。
スカイレンジャーじゃドローンには対抗できないと思うけどなあ。
SHORADは迎撃率100%を目指す防空兵器じゃない。
従来想定してきたヘリなりジェット機なら有人機だし撃墜=死な訳で
コストも高いからある程度撃墜する確率があれば敵はリスクを感じて
おいそれと近づいてこないだろう、という兵器であって。
ドローンの場合撃墜のリスクをほとんど感じないから迎撃が失敗する
まで相手はチャレンジできてしまう。
もちろん小型で低速なのでさらに撃墜しにくい相手でもある…
実戦に出したらスカイレンジャーは戦場からすぐに消えてしまうと思うね。
その辺りは想定するドローン次第では
ゲパルトにしても基本シャヘドクラスのドローンが仮想敵ですから、スカイレンジャーにしても同じかと
それにスカイレンジャーのみで対抗するのではなくて多層的な対ドローン防空網の一角を担うだけでしょうし
つい最近ウクライナSBUがあげていたクリミアの対空システムを標的としたドローン攻撃の映像では数発のミサイル(パーンツィリ?)による近接爆破をかいくぐって陸地に接近する様子が見てとれました。
現地のロシア軍が1発ずつしかミサイルを撃っていなかったというのもあるでしょうが、やはり対空射撃は数を撃たないといけないですね
5年で約100兆円と考えると凄いな
参考にわーくにの今年度の防衛予算は8.7兆円
この種の高射機関砲やC-RAMはユニットコストや弾薬単価は安いのですが、目標を無力化するまでに使う弾薬数とそれらの管理費、および(狭い射程に基づいて決定される)必要調達数を考えると別に安くもないな……となって結局遠ざけられるというのを十数年おきに繰り返している気がします。まあドイツのコレはスマート信管付きの調整破片弾みたいですし昔のAAGほどはばら撒かなくて良いのかもしれませんが、UAVを狙うならそのぶん標的の数も増えているので、600ユニット入れるとなると常備弾薬や戦時予備を考えると先々までのすごい出費になりそうですね。
その点徘徊型迎撃ドローンが有用ならコスト面で優位に立てるかもしれませんね
団北海道七師用に砲塔買って90式戦車に乗せ換えて改修分の戦車を10式の増産で置き換えたらの素人思考,
87式自走高射機関砲の後継車種開発の話は聞きませんが、既存の車両に押せ買えられるお得な価格で調達できないのかなとこれ又素人思考.
本土用の16式ベースでもよいのですが,お安いものを期待。
共通装軌に87式や89式の砲塔部分を載せ替えるという案もありましたが続報がないのでなんとも・・・・・
R5年度予算で色々やってるらしいので流石に終わってはないと思うんですが・・・
個人的には長距離防空兵器に電子戦能力、近距離防空兵器にも(種類は別物にせよ)電子戦能力を付与するのが必要だと思う。理由は地上部隊に対する空からの脅威が有人攻撃機によるスタンドイン兵器から有人機のスタンドオフ兵器&無人機に移行したから対応するため。
従来は長距離防空兵器で上空から、近距離防空&携帯型防空で低空から侵入してくる有人機を迎撃してきたが、今や低空は近距離防空兵器では捌ききれない無人機が飛び、有人機部隊は長距離防空兵器の射程外からスタンドオフ兵器を撃ち込んでくる訳で、今の防空では空からの脅威を排除出来る保証がない。
そこで出てくるのが電子戦能力で、無人兵器もスタンドオフ兵器も通信能力に依存しているから、それを妨害すればリスクは減らせる。長距離防空兵器と電子戦能力を組み合わせれば有人機を前線から退ける分だけ妨害はしやすくなるし、近距離防空と電子戦能力を組み合わせれば、一定以下の通信能力の無人機を篩に掛けて、飽和攻撃されるのを防ぎうる。
おっしゃる通りです。しかしながら電子戦については基本的に終わりのないいたちごっこなので、ハードキルの方法についても練り上げる事が重要でしょうね。
3月の時点でロシアのシャヘド型自爆ドローンに搭載されている衛星誘導モジュールには12個の、滑空爆弾には8個のCRPAアンテナがついていました。ウクライナ側も電子戦能力の向上により滑空爆弾についてはほぼ無力化できていたものの自爆ドローンに対しては微妙でハードキルによる撃墜が多かったです。
ちなみにCRPAアンテナというのは正規の衛星通信が上空から、相手方の妨害電波が地上からやってくる事を利用し、地上方向からやって来る電波を排除するチップです。
最近のポクロウシク方面では滑空爆弾が猛威を振るっているらしいのでロシア側も対電子戦能力を向上させたのでしょう。
シャヘドのような後方の戦略目標に飛んでいく代物と、滑空爆弾のような最前線で戦術的に利用される代物への対処を一つのシステムでやるのは無謀に思います。
シャヘドは味方の防空圏奥深くまで飛んでくる以上、味方の有人機を投入してロケット、電子戦攻撃、機銃で迎撃出来る機会がある。現にイスラエルはイランから遠路遥々飛んでくる旧式のとは言えシャヘドを有人機部隊により無力化した。
一方で滑空爆弾は有人機を投入出来ない最前線に落ちてくる以上、地上部隊だけで対応する他ない。それを考えればウクライナ軍が一時でも電子戦で命中精度を落とせたのは良い参考例だと思います。
さてフランスとイギリスの反応が気になる
ドイツの軍事費増加を手放しで喜ぶなら、いよいよドイツに取り込まれたEUから抜け出せなくなったと見て良い
ドイツはARROWミサイルの契約をこのまま進められるのかは疑問ですね アメリカが主導という面が大きいからわかりませんけどね