NATO首脳会談で32ヶ国の首脳は「2035年までに毎年GDPの5%を防衛分野(3.5%)と防衛・安全保障関連(1.5%)に投資する」と約束したが、ドイツは今後5年間で総額6,490億ユーロ=約109兆円を国防費として支出する法案を承認、2029年までに「防衛分野への投資3.5%」を達成する見込みだ。
参考:German Cabinet approves high-borrowing draft budget
参考:Germany plans to double its defense spending within five years
総額5,000億ユーロの特別インフラ基金と合わせると、ドイツは2029年までに総額5%を達成するかもしれない
オランダで開催されたNATO首脳会談で32ヶ国の首脳らは「2035年までに毎年GDPの5%を防衛分野と防衛・安全保障関連に投資することを約束する」と正式に発表、この5%は「直接的な軍事力に結びつく防衛分野への投資3.5%」と「重要インフラの保護、ネットワークの防衛、民間防衛や回復力の確保、イノベーションの促進、防衛産業基盤への投資1.5%」で構成され、後者の投資については「支出を決定する同盟国の柔軟性」を容認している。

出典:NATO
要するに「従来の国防支出」に相当するのが「防衛分野への投資3.5%」で、防衛・安全保障関連への投資1.5%は「トランプ大統領が要求する5%に数字を合わせるためのもの」に過ぎず、事実上「会計処理の変更=例えば重要な港湾施設への投資を防衛・安全保障関連への投資としてカウントできるという意味)」で対応可能なため「支出を決定する同盟国の柔軟性」と表現されているのだが、それでも旧基準2.0%から3.5%への変更は「大幅な国防支出の増額と呼ぶのに相応しい数字」と言えるだろう。
ドイツのメルツ首相は5月「連邦政府はドイツ軍が欧州最強の通常軍になるため必要な資金を全て供給する。これは欧州で最も人口が多く、経済的に最も強力なドイツにとって相応しい措置だ。我々のパートナーらも強力なドイツに期待し、実際にこれを要求してきている」「我々の目標は武力を行使する必要がないほど強いドイツや欧州を実現することだ」と述べ、今後5年間で総額6,490億ユーロ=約109兆円を国防費として支出する法案を24日に承認した。

出典:Bundeswehr/Stefan Petersen
この法案によってドイツの国防費は毎年増額され、NATO首脳会談で合意した2035年ではなく2029年に「防衛分野への投資3.5%=実質的な国防予算」を達成する見込みで、2025年の国防費にはGDP2.4%に相当する860億ユーロ=約14.5兆円(ウクライナ支援分を含めると950億ユーロ/約16兆円)を割り当ている。
因みにドイツは「総額5,000億ユーロの特別インフラ基金」を設立済みで、この資金は鉄道や道路といった産業基盤の修復や強化に投資され、防衛・安全保障関連への支出として会計処理される可能性が高く、ドイツは2029年までに総額5%を達成するかもしれない。
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※アイキャッチ画像の出典:Dirk Vorderstraße/CC BY 2.0
ドイツ財政は、極めて良好ですから、そのまま達成しそうですね。
ドイツはインフレの継続により、一般庶民・産業界への不満が溜まっており、(英仏もですが)既存政党への支持率が低下しています。
AfDが支持率トップの調査結果もでていましたが、防衛増額をドイツ国民が支持するのかどうか、選挙にどういった影響がでてくるのか注目しています。
ウクライナ戦争の前ドイツ軍は、演習に参加したプーマが何もしてないのに全車故障したとか、歩兵戦闘車が足りないから普通の車を代役にしたとか
散々な話があったけど、これで解消されるのだろうか
すっげえいいこと思い付いた!経済成長を阻害してGDP減らせば軍事投資増やさなくても5パーセント基準達成するんじゃないですか!?
戦時経済みたいに軍需で経済回した方が楽に達成出來ると思う。
>「重要インフラの保護、ネットワークの防衛、民間防衛や回復力の確保、イノベーションの促進、防衛産業基盤への投資1.5%」
「インフラ」やら「回復力」を含めて良いなら日本は災害対策費が多いので、軍事費がかなり多い事になるのでは?
国土強靭化計画再び
ドイツが前のめりなのはちょっと意外だが、軍事力は幾らあっても腐らないからね
もしくはロシアがウクライナ戦後、東欧や北欧に仕掛ける確信があるのかもね
思い出すメフォ手形…