ギリシャは正式にF-35を運用する19番目の国になったが、同国のゲオルギアディス保健相は早速「F-35があれば一晩でトルコに行くことが出来る」「トルコの航空戦力(ギリシャに匹敵する能力)は何も持っていないと知るべきだ」と挑発した。
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F-35があれば一晩でトルコに行くことが出来る
ブリンケン国務長官はギリシャ政府宛の書簡の中で「議会にF-35のギリシャ売却(最大40機)を通知した」と伝達、これに議会が異議を唱えなかったためギリシャへのF-35売却が可能になり、ギリシャ政府も16日にF-35購入を正式に承認、デンディアス外相は25日「ギリシャは世界で最も先進的な戦闘機の購入で強力な戦力を構築している」と述べた。
Lightning strikes in Greece, Z̶e̶u̶s̶ F-35 is coming.⚡️ Greece has chosen the F-35 Lightning II as its next aircraft, becoming the 19th country to embrace the world’s most advanced and connected fighter jet. pic.twitter.com/fMdyQPoeeV
— Lockheed Martin (@LockheedMartin) July 25, 2024
Lockheed Martinも「ギリシャは次期戦闘機としてF-35を選択し、世界で最も先進的でコネクテッドな戦闘を導入する19番目の国になった」と発表し、海外のディフェンスメディアも一斉に「ギリシャのF-35導入が正式に決定した」と報じているが、同時に今回の取引はギリシャとトルコに新たな緊張を生んでいる。
ギリシャのゲオルギアディス保健相は最近「F-35があれば一晩でトルコに行くことが出来る」「ある夜に突然F-35がアンカラに現れる」「これを実際にやるとは言わないが、トルコの航空戦力(ギリシャに匹敵する能力)は何も持っていないと知るべきだ」「ギリシャとトルコは対話を継続する戦争になるかのどちらかだ」と述べたため、トルコメディアのDaily Sabahも「保健相の発言はアテネとアンカラの和解に向けた努力に影を落とす発言を行った」「ある夜に突然というフレーズはエルドアン大統領が両国の関係について語る際によく用いるフレーズだ」と報じた。
“ゲオルギアディス保健相は「ある夜に突然という言葉を聞く度に笑ってしまう」と語った。このフレーズはエルドアン大統領が過去の敵対関係を脇に置くと決め、過去2年間の関係改善について語る際によく用いるフレーズだ。エルドアン大統領はギリシャがエーゲ海で領海侵犯を繰り返し、軍事力を誇示したことに対して「ある夜に突然」というフレーズを用い「挑発的な行動を取れば相応の対応を取る」と強調してきた。まだ政府はゲオルギアディス保健相の発言に反応していないが厳しい対応になるだろう”
トルコのエルドアン大統領は昨年末、7年ぶりにアテネを訪問してミツォタキス首相やサケラロプル大統領と会談し、エネルギー、貿易、教育、輸送、投資、観光、スポーツといった15分野の合意内容をまとめた「アテネ宣言」に署名、エルドアン大統領は「我々の間に解決できない問題はない。同じ空間を共有する隣国同士が意見の相違を持つのはごく自然なことで未解決の問題を解決したい。トルコとギリシャは今後の行動で世界に模範を示すことを望んでいる」と述べた。
ミツォタキス首相も「我々は平和の中で共存し、既存の相違を明確にし、話し合いで解決策を常に模索し続けなければならない。仮に溝を埋めることが出来なくて緊張や危機を生み出してはならない」と述べたものの、両国とも諸問題(キプロス問題、東地中海のEEZ設定問題、エーゲ海の領海問題、欧州に天然ガスを輸送するパイプライン問題、移民問題など)が話し合いで解決すると本気で思っておらず、現実的な状況に対応する必要性から「笑顔で握手をしてみせただけ」だが戦争に発展するよりはマシな選択だ。
但し、今回はF-35Aを手に入れたギリシャがトルコを軍事力を挑発しており、両国関係に詳しい方なら「お馴染みの光景」と思うだろう。
因みにWARZONEは「F-35Aの導入でギリシャ空軍とトルコ空軍の質的格差が拡大した」「トルコは新たにタイフーンの購入にも関心を示しているが、ギリシャのラファールに対抗出来ても総合性能でF-35Aには敵わない」「ギリシャは同じF-35Aをトルコが受け取る予定がないことに注目している」と報じており、如何に軍事力の優劣が隣国との力関係に影響を及ぼすかを物語っている事例だ。
追記:南コーカサスでもフランスがアルメニアへの武器供給を約束し、これに対抗する形でアゼルバイジャンはフランス海外領の独立支援を表明、さらに米国がアルメニアで軍事演習を行い、EUが欧州平和ファシリティの資金でアルメニアに対する軍事援助を決定したため、アゼルバイジャン側は25日「この様な挑発的行動が戦争を引き起こす可能性がある」と警告した。
ナゴルノ・カラバフ地域を取り戻したアゼルバイジャンのアリエフ大統領は「南コーカサスのことは地域の国々で決める」「地域外の勢力は南コーカサスから手を引け」と要求、これは南コーカサスの力関係を決定づけるアルメニアとの和平交渉で「有利な交渉立場」を確保することが目的で「軍事的に劣勢のアルメニアに欧米諸国は肩入れするな」という意味だ。
アルメニアはアゼルバイジャンと事を構える気はないが、安全保障の後ろ盾をロシアから欧米に乗り換える方針で、大きな軍事力の格差はそのまま外交交渉の立場に反映されるため、アゼルバイジャンの言いなりにならないためには軍事力を強化する必要があり、アルメニアは1つの国に安全保障を依存して失敗したため防衛装備の調達先(インドやイランなど)を分散しようとしている。
誰も戦争は望んでいないが、ここまで世界が不安定化すると軍事力の裏付けがない外交力など何の役にも立たないのかもしれない。
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※アイキャッチ画像の出典:U.S. Air Force photo by Staff Sgt. Jana Somero
相変わらず君たち仲がええね
いつものギリシャだけど、世界情勢が燃え上がりつつある中でこの手の発言をしちゃうギリシャにはなんだかなあと思ってしまいます
お前らもうちょっと空気読めよ
過激な発言をした保健大臣の経歴を見ましたが、authorやtelemarketerとのことです。
Wikipediaでちらっと見ただけですが、非軍人こそ過激である一例かとの印象を受けます。
>地域外の勢力は南コーカサスから手を引け
もっともなことで。
ところでコンスタンティノープルはギリシャの物だよね。
>ところでコンスタンティノープルはギリシャの物だよね。
それ言い出すとイタリアが「ビザンティウムはローマが併合したものだからイタリアのものだよね」
「パリもロンディニウムもローマの植民都市だから、イタリアのものだよね」とか言い出しそう。
その上、シチリアのシラクサ、南伊のネアポリス(ナポリ)、タラントはギリシアの植民都市から、「南伊とシチリアの半分はギリシアのものだ」とかの応酬になったらもうカオス。
ルーマニアが何かを言いたそうにそちらを見ている!
そういうとこやぞギリシャ。
ギリシャの行動が早すぎて笑うしかない。
アルメニアの方は結構ピリピリしてて笑えない
欧米が関係しても、平和にならないからな。近頃は燃料(武器)投下で事態を悪化させてことが多い。
日本のメディアだとアルメニアはロシアの影響力低下の例に出されるけど。
ロシアは東方正教会のアルメニアとイスラムのアゼルバイジャンで二股だったけど、アゼルバイジャンやトルコと揉めているアルメニアが欧米派になり逆にスッキリしたと言える。
欧米のアルメニア支援はトルコとの関係悪化になるわけで。トルコに喧嘩を売る欧米という点でf35売却と共通点は多い。
ギリシャはホンマに懲りん連中やな
トルコのTFXがどの程度の物になるのかわからんけど、火に油を注ぐような事は止めといた方が良いと思うんだけどな
ロシアの防空システム導入でこじれたけど、トルコはF-35開発国の一つでもあるんだぞ?
カタログスペック以上の情報を持ってるだろうに
その問題の防空システムを平和裏にウクライナあたりに押しつけて
F-35の開発国として復帰できた場合どうすんだろうね>ギリシャ
F35を共同開発したBAEでさえ、技術開示がなされないと文句言ってるのに
資金出しただけのトルコに提供されるとは思えないが
閣僚しかも管轄外がイキってるのが滑稽です
ギリシャの予算と規模じゃどう考えてもトルコには勝てんだろうによくやるなぁ
S-400を持ち上げる気はないですが、トルコのS-400がギリシャのF-35に通用しないと証明されたわけではないでしょうに……。
F35は本当にイキれるのか?
不安しかないのだけど、トルコと引き渡せではなく、金返せと言ってるし期待してないのでは?
トルコは極音速ミサイルなかったはずだから、パトリオットでは落とせないキンジャールのようなもんを撃ち込まれる事はないだろうけど
そもそもF-35だけで戦争が決まるわけじゃないのになぁ
世界が平穏な頃ならまだ効き目あったかもしれないけど、
実際に全面戦争をしていたり、全面戦争になるかもなどと言われてるような話がちらほらあるご時世では、
ギリシャの発言は薄っぺらいなぁって感じ
>フランス海外領の独立支援を表明
これってニューカレドニアの暴動のことなのか?
フランス軍が一個大隊を派遣して鎮圧したと聞いていたけど、裏にアゼルバイジャンがいたとは驚いた。ニューカレドニアはニッケルが取れる(共テ模試の地理で出てきて詰んだ!)から独立は無理だと思うけど、新植民地主義だと非難を受けるし、フランスに取ってはアキレス腱だ。
ちょうどオリンピックで母国の警備に忙しいから今は海外領の警備は手薄なんじゃ・・・アゼルバイジャン動くか?
これに関しては沖縄を抱えてる日本はフランス支持一択だけどな
しょうもない国々が手を突っ込んできてるのは変わらんし協力して対処出来た方がいい
支持するかどうかは置いておいて、沖縄とフランスの海外領土は全く背景が別のものだと思うのだが…
そのF35
未完成ですわよ
外交プロトコルを知らない後進国のような発言。
大丈夫だろうか。
もう一度やりたいぜ。(メガリイデア)
幼稚だなぁ。。
何故か松田優作の顔が頭に浮かんだ
やっぱり外交力は軍事力の裏付けがないとね
アルメニアは一つの国に安全保障をゆだねて失敗したのではなくて、
その安全保障を委ねていた国にパシニャンが喧嘩うって関係を破壊した結果ではないかなと
パシニャンはアルメニア共和党を市民運動でウクライナのように倒して政権を取った人物で、最初から反露でありは2020年に紛争になるまで一度もモスクワには訪問していません。ブリュッセルには真っ先に訪問したのにです。プーチンとはソチで何かの会合の時に面会しただけです。
日本でいえば首相がワシントンに一度も訪問せずハワイなどで会合があったときに会談しただけです。鳩山ですら就任一週間でアメリカ訪問して大統領との会談を組んで訪問しているのを考えるとわかりやすいと思います。
2020年に敗戦した時もアルメニア軍の司令官(パシニャンと同郷で知人)大統領のせいでロシアの支援を引き出せなかったと批判してます。
2022年はウクライナ紛争が始まった時にアルメニアはアゼルバイジャンを挑発して紛争を起こし、ロシアに支援を要求するという事をやっています。ウクライナを有利にするためにアゼルバイジャンと対立させようとした疑惑すらあります(アリエフはウクライナ紛争が始まってから逆にロシアに訪問して軍事協定を結んでいます)
23年はICC加盟にロシアとの共同軍事訓練を拒否して、アメリカとの軍事訓練を開始した直後にアルメニアが侵攻を開始しました。ロシアは完全にアルメニア側にたって調停していますし、カザフらロシアの同盟国もアゼルバイジャンを支持して、逆に西側がアルメニアを支持していました。その後の報道によると事前にトルコとロシアは協議していたとも言われていますので、ロシアに切られてそうなったとしか思えません。
おそらくF−35にはキルスイッチ入ってるから米国の認証無しにトルコに使用は出来ないと思いますけどね。
アメリカが攻撃能力のある航空機を売却する時は特定の国家に対して使用しないという制限をかけていることがありますが、NATO諸国に対してはどうなんでしょう?
F-16を使ってトルコがギリシャと挑発行為をしていますしF-35の場合は違うのならば興味深い話ですね。
アセルバイジャンと違ってアルメニアは貧乏なだけにロシアと手を切って宗教上の遠縁である欧州に泣きつくしかないですしね。
しかしアルメニア駐留ロシア軍を何とかしないとね。
対ウクライナ戦でロシアが現状余裕がないだけでしょうから…