欧州関連

ギリシャ、トルコのタイフーン導入に対抗するためラファールの追加調達を検討

ギリシャは軍事的優位性を確保するため手を尽くしてきものの「トルコのタイフーン導入」が実現してしまい、ギリシャメディア=Πρώτο Θέμαは4日「我々の優位性はF-35Aの導入によって維持される見込みだが、国防当局はラファールの追加調達を検討している」と報じている。

参考:Athens monitors Turkey’s reported Eurofighter purchase, plans further Rafale acquisitions

ギリシャ人が自信を取り戻すにタイフーンT5相当のラファールF5を必要としている気持ちも分からなくはない

ギリシャとトルコの間にはキプロス問題、エーゲ海の領海・領空問題、東地中海の排他的経済水域問題など多くの対立点が存在し、2020年にトルコが「自国のEEZ圏内」と主張する海域で油田の掘削調査を始めると両国の緊張は武力衝突寸前まで高まり、ギリシャは軍事的優位性を確保するため手を尽くしてきものの「トルコのタイフーン導入」が実現してしまった。

出典:Keir Starmer

トルコはF-35プログラムから追放され、バイデン政権が関係修復のため提案したF-16C/DのアップグレードやF-16V導入も議会に妨害され、タイフーン導入はシリア内戦関与に起因したドイツ禁輸措置に直面し、第5世代戦闘機=カーンが実用化されるまでのギャップをどう埋めるかに頭を悩ませ、その間にギリシャはF-16のアップグレード、ラファールF3導入、F-35A調達を進めたため、エーゲ海上空の優位性にギリシャに大きく傾いてしまったが、ドイツが安全保障環境の変化を理由にトルコとのタイフーン輸出交渉を許可してしまう。

そのためギリシャはフランスとの二国間関係を利用して「トルコへのミーティア売却を認めないでほしい」と働きかけたものの拒否され、英国とトルコは7月「タイフーン輸出に関する暫定合意」に署名し、10月末「タイフーン20機を総額80億ポンドで売却する契約に署名した」と発表したため、ギリシャはラファールとミーティアの組み合わせによる優位性を喪失することになり、ギリシャメディア=Πρώτο Θέμαは4日「我々の優位性はF-35Aの導入によって維持される見込みだが、国防当局はラファールの追加調達を検討している」と報じているのが興味深い。

出典:Πολεμική Αεροπορία

“トルコがタイフーンを導入してもF-35Aの導入によって優位性を維持できるため、エーゲ海における勢力均衡に大きな変化はないと予想される。それでも新型タイフーンの取得とミーティアの運用能力が注目を集めており、トルコは現行のT4ではなくドイツが発注した最新のT5を取得する可能性がある。このバージョンはラファールF3よりも強力なレーダー、強化された電子戦システム、改良されたセンサーと兵器が統合されているため、国防当局はラファールF4もしくは開発中のF5の追加調達を検討している”

ラファールとミーティアの組み合わせによる優位性はスペック的なもので、実際の戦闘にどれだけの優位性をもたらすのかは未知数だが、一般的な目線で言えば「せっかく確保した優位性がタイフーン導入で台無しになった」と危惧するギリシャメディアの主張も十分理解でき、ギリシャ人が自信を取り戻すにタイフーンT5相当のラファールF5を必要としている気持ちも分からなくはない。

出典:Presidency of the Republic of Türkiye

因みにギリシャは「トルコのF-35プログラム復帰」も危惧しており、トランプ大統領とエルドアン大統領は復帰に向けた交渉も実際に行っているため、もし第5世代機の優位性まで失えばギリシャ人は大きなショックを受けるだろう。

関連記事:英国とトルコがタイフーン輸出契約を締結、初号機納入は2030年を予定
関連記事:英国とトルコがタイフーン輸出で合意、ギリシャに傾いていた優位性を修正
関連記事:エーゲ海上空の優位性、まもなくトルコがタイフーン購入合意を発表か
関連記事:トルコのF-35プログラム復帰は容易、米国はロシア産石油の購入停止を要求か
関連記事:ギリシャが危惧するトルコのF-35プログラム復帰、米国とトルコが25日に交渉

 

※アイキャッチ画像の出典:Πολεμική Αεροπορία 

GEが垂直離着陸に対応したX-BATにエンジンを独占供給、F-15やF-16と同じF110前のページ

ウクライナ軍がポクロウシク中心部に国旗を掲げるも状況に大きな変化はない次のページ

関連記事

  1. 欧州関連

    UAVの次はUSV、トルコが武装した無人水上艇「ULAQ」を発表

    トルコは軍事用用途の無人航空機(UAV)開発で大きな成功を収めたが、今…

  2. 欧州関連

    スウェーデン自主開発を放棄、第6世代戦闘機「テンペスト」開発に参加

    スウェーデンは、ロシアとバルト海を挟んで対峙しなければならず、将来の戦…

  3. 欧州関連

    不具合続きの装甲戦闘車両「Ajax」に不満の英議会、ボクサー調達に切り替えも?

    英国では不具合続きの装甲戦闘車両「Ajax」プログラムに対する不信感が…

  4. 欧州関連

    相互運用性の確保が重要と説く独空軍​トップ、欧州の次世代戦闘機計画を統合すべきだと主張

    ドイツ空軍​総監のインゴ・ゲアハルツ中将は欧州で開発が進められている2…

  5. 欧州関連

    適応が求められる低空の戦い、ドイツが近距離防空システムの開発を発表

    ドイツ軍は25日「地上ベースにおける防空能力のギャップを埋めるため短距…

  6. 欧州関連

    フランスとドイツが第6世代戦闘機「FCAS」のエンジンについてスペイン抜きで合意

    フランスのサフランとドイツのMTUは未来戦闘航空システム(Future…

コメント

  • コメント (5)

  • トラックバックは利用できません。

    • 無印
    • 2025年 11月 06日

    トルコがF-35に復帰しても、ギリシャのF-35と角突き合う事はアメリカが許さないのでは…?

    8
      • 匿名希望係
      • 2025年 11月 06日

      両国とも使えない=ギリシャが一番いたいですからね

      3
    • 理想はこの翼では届かない
    • 2025年 11月 06日

    ギリシャとトルコが武力衝突する状況でNATOがどちらにも与しない場合は、お互いが近すぎるのでウクライナ紛争のように対空による接近拒否が成立しそうに思いますので、F-35やタイフーンの導入でそこまで優位性が得られるのかがちょっと疑問
    エーゲ海を挟んでいる所でも70~200km程度しか離れてないですし

    2
    • m
    • 2025年 11月 06日

    同じNATO構成国同士で良い加減にしろと言いたくなりますが、歴史的な経緯があるだけに難しいですね。
    お互い睨み合ってくれる方が戦闘機が売れるので、ロシアがギリシャ国境まで来ない限りこのままですかね。

    9
    • DEEPBLUE
    • 2025年 11月 06日

    この2国はNATOとか以前からの歴史的対立とキプロス問題あるしなあ

    5

ポチって応援してくれると頑張れます!

にほんブログ村 その他趣味ブログ ミリタリーへ

最近の記事

関連コンテンツ

  1. 欧州関連

    オーストリア空軍、お荷物状態だったタイフーンへのアップグレードを検討
  2. 中国関連

    中国、量産中の052DL型駆逐艦が進水間近、055型駆逐艦7番艦が初期作戦能力を…
  3. 米国関連

    米空軍の2023年調達コスト、F-35Aは1.06億ドル、F-15EXは1.01…
  4. インド太平洋関連

    米英豪が豪州の原潜取得に関する合意を発表、米戦闘システムを採用するAUKUS級を…
  5. 北米/南米関連

    カナダ海軍は最大12隻の新型潜水艦を調達したい、乗組員はどうするの?
PAGE TOP