NATO首脳会談で32ヶ国の首脳は「2035年までに毎年GDPの5%を防衛分野(3.5%)と防衛・安全保障関連(1.5%)に投資する」と約束、ギリシャメディアも「2035年までに3.5%へ引き上げるには0.4%分の増額で十分だ」「この増額が債務に及ぼす影響も軽微だ」と報じた。
参考:No budget problem for Athens from defense spending
最も重要な3.5%をポーランドは達成済み、ラトビア、エストニア、ドイツ、ギリシャも達成が確実視されている
オランダで開催されたNATO首脳会談で32ヶ国の首脳らは「2035年までに毎年GDPの5%を防衛分野と防衛・安全保障関連に投資することを約束する」と正式に発表、この5%は「直接的な軍事力に結びつく防衛分野への投資=3.5%」と「重要インフラの保護、ネットワークの防衛、民間防衛や回復力の確保、イノベーションの促進、防衛産業基盤への投資=1.5%」で構成され、後者の投資については「支出を決定する同盟国の柔軟性」を容認。

出典:NATO
もっと詳しく言うと防衛・安全保障関連への投資=1.5%には軍事物資の輸送に活用できる港湾施設、道路、鉄道、戦時に負傷者を治療する病院、通信やネットワークの整備などへの投資を柔軟にカウントできるものの、これは「トランプ大統領の要求=5%に合わせるためのもの」に過ぎず、従来の国防支出に相当するのは「防衛分野への投資=3.5%」であり、ベルギーのデウェーフェル首相も「3.5%は能力要件に基づいてNATOの専門家が計算したもの」「これを2.1%で実現できるならスペインのサンチェス首相は天才だ」と述べたことがある。
ポーランドは防衛分野に3.5%を超える4.07%を投資済み、ラトビアも「2026年までに国防支出を4%、数年後に5%まで引き上げる」と、エストニアも「2029年までに国防支出を5.4%まで引き上げる」と、ドイツも「今後5年間で総額6,490億ユーロ=約109兆円を国防費として支出する法案を承認した」と発表し、特にドイツの国防費は本法案によって毎年増額され「防衛分野への投資=3.5%を2029年までに達成する見込み」と報じられているが、ギリシャも「我々は国防費の増額についても大きな問題はない」と主張した。

出典:Πολεμική Αεροπορία – HAFspokesman
ギリシャメディア=Πρώτο Θέμαも28日「我々は既にGDPの3.1%を国防費に費やし、これを2035年までに3.5%へ引き上げるには0.4%分の増額で十分だ。ギリシャの債務比率は2035年までにGDP比150%超から120%に減少すると予測されており、0.4%分の増額が債務に及ぼす影響は軽微だ」と、同時に「他の国では巨額の財政赤字と膨張した債務負担に直面し、今後10年間で財政リスクの増大に直面することになるだろう」と報じている。
まだ防衛・安全保障関連への投資(1.5%)の定義や柔軟性について明確な方針は決まっていないものの、最も重要な3.5%をポーランドは達成済み、ラトビア、エストニア、ドイツ、ギリシャも達成が確実視されているが、これ以外の国は「どうやって3.5%を達成するか」を具体的に明かしていない。
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※アイキャッチ画像の出典:Πολεμική Αεροπορία – HAFspokesman
流石に今の時代になってネットワーク防衛は従来の防衛に対する3.5%に含まないはおかしくないだろうか。ネットワークへの依存度が高くなる中で、UAVとかからの映像が乗っ取られてAI加工されて実情より過剰にされたり逆に存在を消されたりとか、レーダーの表示される機体の増減とか位置情報ずらされるとか、ネットワーク無力化による迎撃態勢の崩壊は有り得る話じゃなかろうか。
直接的な戦力を持とうがそれを有効活用出来ない状況にさせられるなら遊んでいるか無いのと同じで活用する為に最低限必要な物であってオマケで予算消化するのに使うカテゴリではないと思う。
軍より警察の管轄な気もする
以前からギリシャは対トルコのために防衛力強化に邁進していますから、そりゃそうでしょうと思います。
「債務に及ぼす影響は軽微」というのも、すでに積み上がった額に比べれば…、という意味なのでしょうね。
というか、3.5%迄積み上げても、トルコに対抗出来ないのでは?
対抗は出来ないでしょうね、古来より領土問題やキプロスで揉めてますがお互いNATOなので戦うことはないにせよ一定の軍事力ないと対等な交渉は難しいとの考えと国内世論が対トルコでの一定以上の強行路線が支持されやすい等の理由なのではないかと。
ギリシャとトルコだと欧州目線だと心情ギリシャで現実的にはトルコが重要という感じなんでしょうかね。
どうでしょうね、それはギリシャとトルコ次第だとは思います。
露宇戦争で旧来の戦力でガチンコ対決みたいなのは、そこまで発生するか疑問に思えてくる。使い方が限定される数の上では主力のレオ1やM48みたいな旧式戦車やM113とかはモスボールするなりして浮いた費用をFPVドローンや長距離攻撃用のドローンやミサイル、防空装備に割り振るとか古い兵器との決別をして費用対効果に優れるスリムな軍へと変貌する。
トルコが投入するのにも維持するのも苦労する旧来の兵器を大切にして散財する、かつトルコ経済の後退が期待出来るなら格差に関しては何とかなる可能性がワンチャンあるかも知れない。トルコが今の勢いそのままだとどうしようもないけど、そこまで将来が保証されているのかと言えば疑問です。
トルコは陸軍大国ではありますが陸続きとは言え、繋がっている場所は限られ海路でのアプローチもどこまで出来る物なのかは未知数、ウクライナみたいに相手の都合次第でどこからでも侵攻可能な地形でもない。
ギリシャの国防費増額は、NATO・対ロシアというよりも、対トルコというのが興味深いですね。
ギリシャ危機により、社会保障費カット・公務員のリストラなどを行ってきたわけですが、余力がでてきたのかもしれませんね。
ドイツすら5年で6500億ユーロとか言ってるけど本当に達成できるんだろうか?
現状が11%とそこそこデカいのに、2029年に1620億ユーロまで上げると予算に占める割合が26%近くになって第二次大戦が始まった頃の日本みたいになってるんだが
それこそスペインみたいにNATO加盟国に嫌われたら、トルコとの交渉が著しく不利になるからやるしかないだろうな。物理的にトルコを追い払うより大事かもしれん
ギリシャ経済は観光業を軸に大復活してますから強気発言ですね
もっとも観光依存の経済は有事や世界同時不況に弱いという脆弱性もありますが
日本の財政はギリシャ以下だからね
対GDP比2%くらいが限界でしょう