ギリシャのミツォタキス首相が新国防戦略を発表、この中で「我々はウクライナから中東に至るまで劇的な作戦環境の変化を目撃している。これは慣れ親しんできたものとは別の種類の戦い、少なくとも我々が想定して準備してきた戦争とは異なる」「今後12年間に250億ユーロを新たな装備調達に費やす」と述べた。
参考:Greece plans €25 billion defense overhaul with new strategy
参考:Greece to spend more than 25 bln euros in arms procurements by 2036
Achilles Shieldの正体はイスラエル製防空システムをベースにしたギリシャ向けの統合型防空システムだろう
ギリシャでは2009年の政権交代で財政赤字の隠蔽が発覚、その後の財政赤字削減も思うように進ますデフォルトの危機に直面し、緊縮財政の中で国防投資も大幅に削減(3.2%~3.5%から2.2%~2.6%)されたため、ミツォタキス首相が政権を引き継いだ頃のギリシャ軍は問題だらけで、2020年にはEEZ問題を巡ってトルコと軍事衝突寸前まで緊張感が高まり、大規模=3.0%台の国防投資(F-16C/Dのアップグレード、ラファール、F-35A、FDI導入の決定)を再開した。

出典:3-тя окрема штурмова бригада
しかし、2022年にウクライナとロシアの戦争が始まると戦争の形が様変わりし、ミツォタキス首相も2日「我々はウクライナから中東に至るまで劇的な作戦環境の変化を目撃している。現在、我々が目にしているのは慣れ親しんできたものとは別の種類の戦い、少なくとも我々が想定して準備してきた戦争とは異なる」と述べ、新たな防衛戦略の中でUGV、UAV、徘徊型弾薬、対ドローンシステム、人工知能などの新技術を組み込む必要性、そしてサイバー攻撃やサイバー攻撃に対する防御に重点をおく必要性を強調した。
さらにミツォタキス首相は「今後12年間の新たな装備調達に250億ユーロ(12年間の国防予算ではなく調達予算)を投資する」と発表、Reutersもギリシャ関係者の話を引用して「250億ユーロの資金は対空・対ドローンドーム(通称Achilles Shield)の開発、F-35A×20機、新型潜水艦×4隻、大型巡視船(もしくはコルベット艦)×6隻、新型UGV、UAV、USV、UUA、通信衛星の購入費用、F-16C/DとMEKO-200のアップグレード費用に充てられる(機密部分は非公開)」と報じており、ミツォタキス首相も今回の投資について「ギリシャ軍史上最も劇的な変革だ」と述べている。

出典:Πολεμική Αεροπορία
因みにミツォタキス首相は「自由の代償は永遠の警戒(ジェファソン元米大統領の言葉)で安全なくして国の発展はない。我々の国防投資は主権と国家の尊厳を守るための投資である」「特に現在は国境や国際法に挑戦するための戦争、国際経済を脅かす関税によって世界の形は再構築されつつあり、これは欠陥だらけで非常に危険な状況だ」とも付け加えている。
追記:Achilles Shieldの正体はイスラエル製防空システム(恐らくIron DomeやDavid’s Slingなど)をベースにしたギリシャ向けの統合型防空システムだろう。
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※アイキャッチ画像の出典:117 окрема механізована бригада
ギリシャの仮想敵国は、トルコですからね。
トルコは、バイラクタルTB2などの無人機~自爆ドローン、通常戦力まで強力ですから、ギリシャも大変だなと。
イスラエル=トルコはシリア情勢が混沌としており、ロシアの基地維持をアメリカに働きかけるくらいですから、ギリシャも相応のものを受け取れそうですね。
(2025年3月3日 シリア弱体化狙うイスラエル、米にロシア基地存続働きかけ ロイター)
ギリシャとトルコは歴史的にも領土問題も含めて色々ありますものね。
ただどちらもNATO加盟国なんですが、もし戦争にでもなったらどうなるんですかね?
NATO8条として、両国どうせ相手の先制攻撃と主張しそうすから、NATO静観でしょうかね?
キプロスのみ・キプロス周辺地域と無理矢理解釈しても、キプロスはNATO非加盟ですし、トルコが反対を続ければ加盟の可能性もゼロだろうなと。
北キプロスも、国際的に承認されていませんから、NATO適用の範囲外とされる可能性も十分にあるでしょうし。
紛争範囲の解釈次第という面倒くささを考えると、ギリシャが国防を強化する理由を感じてしまいますね…
個人的にはアキレスより、ヘラクレスやゴルゴンシールドの方が良さそうだが、今後の為に取っておくのか、商標の問題なのか気になる所
仮にも民主主義国家wで、財政赤字って隠蔽できるもんなんだ…。
インフレにして踏み倒す(なお、庶民の生活が死ぬ模様)
それは解決方法で隠蔽方法ではないような。
中国とか旧ソ連なら、隠蔽はお手のモノでしょうけど。
ギリシャは通貨ユーロ導入の条件を満たすために、粉飾決算をやっておりました。
通貨が既にユーロに切り替わった後で発覚しました。
そのような場合、普通ならインフレと通貨下落で帳尻が合います。
が、既に通貨がユーロだったため、そのような手段は使えませんでした。
結果ギリシャ国債の金利が急騰し、緊縮財政に追い込まれました。
海を挟んで、人口、工業力で大きく優越する敵対国家と領土問題を抱えているという点で、ギリシャと日本の立場って似ているなって。
装備品の重点の置き方も、空海戦力の整備に注力してるあたりは日本に近しいのだけど、スタンドオフミサイルの名前が無いのは何か理由があるんだろうか?
あの辺り島が多いんだから、島嶼部を要塞化して接近拒否戦略を取るのが、コスト的にも優れている気がするのだけども。
ギリシャの状況踏まえた上で島嶼部の要塞化をすべきって話なんだけどどうなのかねぇ。それに大まかな種類だけを出しているだけで航空機や艦船に装備する武装までは導入するにしても発表には盛り込んでいないだけって感じがするが。
10隻以上のミサイル艇もあるしフリゲートとかにもMdCN巡航ミサイルやエグゾセNM40を搭載しようとかしている。F-16のアップグレードするならLRASMの搭載や最近米空軍がF-16にハープーンミサイルを装備させた真似は出来る。イスラエルのPULSロケット砲システム導入も視野にあるし射程300kmのPredator Hawkも買うはず、これである程度の面積をカバーするのは既存の流れでもある。
将来的にPULSから純粋な対艦ミサイル発射出来るようになっても驚かないしPrSMのような性能を持つミサイルだって発射出来るようになるだろうから対地対艦への対応も不可能じゃないだろう。
ギリシャとトルコの位置関係だと、大量のドローンによる爆撃を防ぎきれるとは思えない