欧州関連

勝手に期待して失望するギリシャ、欧州に防衛の連帯は事実上存在しない

ギリシャは自国の優位性を守るため「トルコへのミーティア売却を認めないでほしい」と働きかけたが、これをフランスが拒否した可能性が高く、現地メディアは20日「武器生産国はギリシャの防衛ニーズよりも経済的利益を優先するため欧州に防衛の連帯は事実上存在しない」と嘆いた。

参考:Defense industry beggars or producers?

ギリシャを共同開発国に加えると「トルコ輸出」が絶望的になるため、欧州からすれば煙たい存在とも言えなくはない

ギリシャとトルコの間にはキプロス問題、エーゲ海の領海・領空問題、東地中海の排他的経済水域問題など多くの対立点が存在し、2020年にトルコが「自国のEEZ圏内」と主張する海域で油田の掘削調査を始めると両国の緊張は武力衝突寸前まで高まり、これが契機となってギリシャはF-16C/Dのアップグレード、ラファール、F-35A、FDI導入を決定、一連の投資によって航空戦力の質と能力はギリシャ優位に大きく傾き、トルコのF-16C/Dアップグレードも米議会へのロビー活動で阻止。

出典:SAC Helen Farrer RAF Mobile News Team / OGL v1.0 

トルコはスウェーデンとフィンランドのNATO加盟を利用して米国から「F-16V新造機×40機売却」と「既存機をV仕様にアップグレードするためキット80機分売却」を引き出したが、米国への依存度を引き下げるため「V仕様へのアップグレード」を中止し「独自技術によるアップグレード」に切り替えることを選択、トルコはF-16のソースコードを取得しているため独自のシステムや武器を統合することが可能で、F-16をライセンス生産したトルコ航空宇宙産業も独自のAESAレーダー、ソフトウェア、電子機器を開発しており、既に35機のBlock30は独自技術でアップグレード済みだ。

F-16V取得もタイフーン取得に置き換える交渉も進められており、トルコ輸出に否定だったドイツも交渉を許可したため、ギリシャはタイフーンの能力を制限する方向で外交努力を開始し、フランスにミーティア売却を認めないでほしいと要請したものの、一部の報道では「フランスが要請を断ってトルコへのミーティア売却を承認した」と報じられている。

出典:ILA-boy / Public Domain

これを受けてギリシャメディア=Η Καθημερινήは20日「ギリシャにとってラファールとF-16V導入、特にラファールとミーティアの組み合わせは空中での決定的な優位性をもたらしたが、フランスがミーティア売却を承認すれば2度目(1度目はドイツの214型潜水艦の売却承認)となる優位性の喪失だ。武器生産国はギリシャの防衛ニーズよりも経済的利益を優先するため欧州に防衛の連帯は事実上存在しない。そのためトルコが防衛装備の調達に多くの資金を投入できるようになった瞬間から不利な立場に立たされることになる」と指摘。

さらに「トルコは全領域でギリシャが優位に立つべきではないと見なしており、彼らを他の欧州諸国と同じと扱うべきではない。最も懸念すべきは「諸刃の剣」とも言えるトルコとの平穏外交だ。両国は2023年に署名したアテネ宣言で関係改善を約束し、トルコ空軍はギリシャ領空への侵犯を止めものの、状況の小康状態を利用して軍備の近代化を推し進めている。ギリシャ単独で独自の戦闘機やミサイルシステムを開発・製造するのは不可能なので、欧州の国際共同開発計画に参加して構造的弱点を克服すべきだ。常に国益が優先される世界で過度な海外供給に依存するのは愚かであり非常に危険だ」と述べた。

出典:Kyriakos Mitsotakis

トルコに対するギリシャのアプローチは「自国の優位性を損なうような防衛装備のトルコ売却を阻止する」で、米議会へのロビーもフランスへの要請も不発に終わり「生産国は自国の利益を優先してギリシャのことを顧みない」と嘆き「それなら国際共同開発計画に参加して輸出に関する権利を獲得すべきだ」と言っているのだ。

逆の見方をすればギリシャを共同開発国に加えると「トルコ輸出」が絶望的になるため、欧州からすれば煙たい存在とも言えなくはない。

関連記事:トルコのタイフーン導入、ギリシャはフランス経由でミーティア売却を妨害
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関連記事:相次ぐ発注と新規導入、タイフーンの総生産は800機を越える可能性
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関連記事:F-16V導入失敗に備えるトルコ、タイフーン購入を交渉中だと公式に認める

 

※アイキャッチ画像の出典:Kyriakos Mitsotakis

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コメント

    • 匿名
    • 2025年 2月 22日

    そらトルコは今後対露の最前線になる可能性高いし、NATOとしてはトルコに裏切られたら詰むんだからご機嫌取りするのは当然。
    更に言えばギリシャはトルコ以上のインセンティブをNATOに提示出来たのか?
    NATO加盟国と非加盟国とかならまだしもどっちも対等な同盟国と言う立場で自分の主張だけ認めろって流石に無理がある事普通分かるやろ…

    48
      • 理想はこの翼では届かない
      • 2025年 2月 22日

      トルコの立ち位置、国内情勢、政治思想など不安要素は多いですけど地理的要因・戦力としてはNATO内でも影響力は大きいので粗略に扱えないですからね
      トルコとギリシャ、どっちを取るのかと言われたらまず間違いなくトルコですわ

      24
      • 黒酢
      • 2025年 2月 22日

      現状トルコは黒海に続く海峡(ダーダネルス海峡とボスポラス海峡)の軍艦通行を認めない対応を取っています。
      これによりロシア海軍の地中海―黒海間の航行を遮断したことで、NATO内の貢献度としてはギリシャ以上に高いものだと考えます。
      それでも昨年の1月にイギリスがウクライナへ掃海艇2隻を譲渡したのですが、トルコのエルドアン大統領が「ウクライナに譲渡された掃海艇は戦争が続いている間、トルコの海峡を通過して黒海に向かうことは許可されない」として、海峡の通航を認めないと発表しウクライナ支援を妨害したなんてこともありましたが、それでもNATO内で大したお咎めが無いあたりトルコの影響力は凄いんだなって思います。

      21
    • 朴秀
    • 2025年 2月 22日

    技術も金もない奴が
    人の邪魔をするためだけに共同開発に参加したい?

    相手にされないと思います

    66
    • タスマニアン
    • 2025年 2月 22日

    ギリシャは残念だがこれが多国間主義の現実さ。
    世界各国の基本スタンスは常に自国ファースト。
    自国の利益に繋がれば多国間連携を推進するがそうで無いなら他国(同盟国、敵国)を踏み潰してでも自国の利益を追求しまくる。
    文字通りのダブルスタンダードの論理で成り立っているのですよ。

    41
      • 無名
      • 2025年 2月 22日

      ギリシャは財政破綻した時に、ナチスによる被害を蒸し返してドイツに金を要求しようとした国ですから。
      ギリシャこそ自国ファースト

      18
    • ざる
    • 2025年 2月 22日

    ギリシャはEUのお荷物だしトルコと天秤をかけてどちらを取るかと聞かれれば答えは明確でしょう。
    トルコとギリシャでまた紛争が起きてもEUは助けてくれないと思います。

    33
    • 名無し
    • 2025年 2月 22日

    ギリシャの言い分はさすがに自分勝手が過ぎますね

    27
      • 通りすがりA
      • 2025年 2月 22日

      欧州人の国の多くはもともとこんな感じ。

      24
        • 反革命分子
        • 2025年 2月 22日

        「ギリシャを優先してくれない」って当たり前だろと思ったけど、もしかすると翻訳・言い回しの問題でニュアンスが違ってるのではないでしょうか。

        「フランスが(トルコよりも)ギリシャを優先してくれない」ではなく
        「輸出国のフランスは当然売却益を追求するので、(フランスにとって他国である)ギリシャを優先してくれない」
        という当たり前の事実を摘示して共同開発を目指すべしとしているのかなあと。

        前者だとあまりにもどうかしてるというか・・・

        10
    • 2025年 2月 22日

    NATOの規約には加盟国同士の争いに他の加盟国は中立という条項があった筈だけど
    それってこういう武器の売却や技術移転とかにも適用させるんだろうか

    11
    • cosine
    • 2025年 2月 22日

    ギリシャ救済の動機があるとすれば内紛を「敵」に見せないことくらいでしょうけど、肝心要の対露包囲網()で無様を晒した今となってはもはや考慮もされなそう。

    8
    • たむごん
    • 2025年 2月 22日

    ギリシャ=トルコを単純比較すると。
    人口1000万人・8000万人、人口減少・人口増加の差があるうえに、GDPにも大きな差があります。

    ギリシャには、そもそもの市場として大した魅力もないわけですから、大国と同じ扱いを求めるのは難しいでしょうね。

    26
    • ひろゆき
    • 2025年 2月 22日

    ギリシャもそうだけどフランスとか口だけの烏合の衆にベッドするからダメなんだよな

    トルコはNATOの弱みである海峡を外交的にフル活用して好き放題やっているのだから、ギリシャはロシアと接近してガンガン共同開発や武器を購入すればいいし

    面従腹背でNATOのレッドラインをギリギリで踏まないように導入されたくないなら
    見返りよこせ!国内に投資しろスタイルで行けばもっと上手く立ち回れるし自国にもプラスになる

    国益第一を自分が一番出来てないのに愚痴るのはどうかと思うね

    3
      • 特盛
      • 2025年 2月 25日

      それやったらギリシャはNATO追放でしょ
      とどめておくメリットも大してないくせにデメリットだけはあるんだから

      2
    • Taro
    • 2025年 2月 22日

    そもそも大国に自国だけでは対抗できないのでEUやNATOが必要とされたのに、結局域内でも大国優先で自国の権益が守られないとなるとギリシャの不満や落胆は大きいでしょうね。
    この亀裂をEUやNATOへの揺さ振りとしてロシアが利用する余地も生まれそうです。

    14
    • 折口
    • 2025年 2月 22日

    そういう時こそ域外、とくにアジアとの関係を重視すればいいのにと思うんですけどね。
    これは邪推ですが、この手の問題は意外と民族社会的なアイデンティティに左右されるのではないかと思っています。中国との深い関係が問題視されがちなハンガリーは歴史的に、西洋社会の東端にあって東洋的=野蛮という偏見に晒され続けたことで西欧社会の主流と一定の距離をとるべしという価値観が存在します。ギリシアも長らくオスマン帝国の影響下にあったことや民族的入れ替わりを経て西洋でも東洋でもない微妙な立ち所にある国ですが、彼らは近現代の独立やトルコに対する挑戦の過程で東洋的なものを否定して自分たちを西洋の側に位置づけるという結論を出しています。だからこそ、ヨーロッパ諸国がギリシアの敵と敵対してくれないことがなおさら気に食わないという感じなのかなと思いました。

    18
      • 通りすがりA
      • 2025年 2月 22日

      >ヨーロッパ諸国がギリシアの敵と敵対してくれないことがなおさら気に食わない
      中世ビザンツ帝国の頃からの、伝統的な関係ですよね。対オスマンの十字軍を何度要請しても、成功した試しはなく、コンスタンティノープルは陥落し、イスタンブールとなった。

      8
      • dd4
      • 2025年 2月 23日

      なるほどなぁ

      ただEUからすると、
      「仲間扱いしてくれという割には、トルコに比べてお前は何か我々に貢献してきたのか?」
      と言いたいでしょうけどもw

      5
    • かず
    • 2025年 2月 22日

    >トルコはF-16のソースコードを取得しているため独自のシステムや武器を統合することが可能で

    何で日本はこの点で冷遇されるのかソッチの方が印象に残った

    10
      • 本当だよね
      • 2025年 2月 22日

      トルコなど、比較にならない位、アメリカ様に収奪されているのに、、、、、

      8
      • kitty
      • 2025年 2月 23日

      日本にソースコード開示したら、本家より良いの作られてメンツ丸つぶれになるのいやーって思っているとか。
      過大評価だと思いますが。

      3
      • dd4
      • 2025年 2月 23日

      トルコはお客様だったからではないかと

      日本は防衛産業的には、確かにアメリカの大口顧客ではありますが、
      日米の貿易という視点で見れば、アメリカの方が基本的に大赤字になってましたからね…

      3
    • たむんご
    • 2025年 2月 23日

    タイトル『勝手に期待して失望するギリシャ』
    のび太みたいで草www

    1
      • dd4
      • 2025年 2月 23日

      身勝手な中小国だと良くある話だから・・
      実際、『勝手に期待して失望する●●』というフレーズで、
      あの国やらどこそこの国やら、いくつも思い浮かぶでしょう?

      4
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