欧州関連

エーゲ海上空の航空優位は誰の手に? ギリシャ空軍がラファールの初号機を受け取る

トルコと深刻な軍事対立に直面しているギリシャは待望の新戦力「ラファール」をフランスから受け取ったと報じられている。

参考:Greek armed forces mark delivery of the first of 18 French Rafale fighter jets

エーゲ海上空の航空優位を手に入れるのはラファールを導入したギリシャか、それともラファールを研究するトルコか

東地中海の排他的経済水域(EEZ)問題でトルコと深刻な軍事対立に直面しているギリシャはフランスからラファールを18機導入すると昨年9月に発表(議会による調達資金の承認は昨年12月で契約に署名したのは今年の1月)したが、21日にラファールの初号機がギリシャ空軍に引き渡されたと報じられている。

今回引き渡された機体はフランス空軍が運用していた複座型のラファールBで、ギリシャは「毎月1機」のペースでフランスから中古ラファールを引き渡されることになっており、2022年には新造のF3仕様機を6機受け取る予定だ。

ダッソーで最高経営責任者を務めるエリック・トラピエ氏は「ギリシャにとってラファールは戦略的なゲームチェンジャーで地域大国としての地位やリーダーシップを確保するのに積極的な役割を果たすだろう」と述べているが、トルコはギリシャが導入するラファールを研究するため「訓練目的」でトルコ国内の空軍基地にカタール空軍の軍用機36機の駐留を最大5年間(+1年間の延長オプション付)認める協定を議会に提出、これが承認されればカタール空軍はトルコにラファール×12機、ミラージュ2000×9機、C-17A×4機を派遣することを予定している。

出典:Public domain カタール空軍のラファール

つまりトルコ空軍のパイロットはカタール空軍のラファールと日常的の訓練を行うことで「戦い方」をじっくりと研究することが出来るようになるという意味だ。

ギリシャメディアはラファール導入がもたらす質的優位性が事前に研究されることを懸念して「協定が承認された場合、ギリシャはトルコとカタールの共同訓練がもたらす効果を徹底的に分析して対策を講じる必要性がある」と主張しているので、少なくともトルコ空軍のパイロットがラファールとの戦いに慣れることを快く思ってない。

果たしてエーゲ海上空の航空優位はどちらの手に傾くだろうか?

関連記事:トルコにカタール空軍が5年間駐留、ラファールやミラージュ2000を派遣予定でギリシャが反発

 

※アイキャッチ画像の出典:GEN Konstantinos Floros

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コメント

    • 匿名
    • 2021年 7月 22日

    トルコのほうが外交手腕でも上手かなあ。

    8
      • 匿名
      • 2021年 7月 22日

      でもエルドアンは最後の最後で大チョンボしそうな気がする

      14
    • 匿名
    • 2021年 7月 22日

    将来的にはトルコはロシアの「チェックメイト」を導入するかもしれませんね。
    そうなるとギリシャは苦しくなるかな?

    3
      • 匿名
      • 2021年 7月 22日

      ギリシャはF-35にも手を伸ばしていたのでは?

      1
    • 匿名
    • 2021年 7月 22日

    はたしてインドネシアのラファールはどうなるか

    1
    • 匿名
    • 2021年 7月 22日

    ゲームチェンジャーって言葉流行りすぎだろ

    5
      • 匿名
      • 2021年 7月 22日

      流行ってるというかインフレかな。
      多用され過ぎで安く感じる。

      6
        • 匿名
        • 2021年 7月 22日

        ゲーム盤ひっくり返しそうな国もあるよね

        • 匿名
        • 2021年 7月 22日

        それだとインフレよりデフレの方が適しているのでは?
        インフレだと高騰していそうだから。

        1
          • 匿名
          • 2021年 7月 22日

          この場合は「ゲームチェンジャーという言葉」を
          発行し過ぎた通貨に例えてるんだよ。
          作り過ぎた農作物や工業製品に例えるなら逆になるね。

            • 匿名
            • 2021年 7月 23日

            あ、違うな。
            物に例えると特定物が過剰なだけだからただの「値崩れ」だね。

            1
    • 匿名
    • 2021年 7月 22日

    本当にゲームチェンジャーか?

    2
      • 匿名
      • 2021年 7月 22日

      4世代機を装備していた地域に4.5世代機が配備された程度の話しだよね。
      盛りすぎだと思います。

      2
        • 匿名
        • 2021年 7月 22日

        そうだね。
        自称「世界で2番目に強い」某4.5世代戦闘機に格闘戦で10勝0敗、BVRで4勝0敗程度の空戦性能と、
        ISの兵士から「アメリカの戦闘機より怖かった」と言われる程度の攻撃力、
        米海軍(スパホ乗り)から賞賛される程度の偵察・電子戦能力しか無い4.5世代機なので、
        4.0世代F-16C/Dと3世代F-4のトルコ相手に盛りすぎですね。

        1
          • 匿名
          • 2021年 7月 23日

          トルコの主力はF-16のblock50+のはずだから
          十分なアドバンテージだとは思うけど、
          ゲームチェンジャーは盛り過ぎ、ってのも
          間違っちゃいない様な。
          ワンサイドゲームではあっても別のゲームではない。

          1
          • 匿名
          • 2021年 7月 23日

          >自称「世界で2番目に強い」某4.5世代戦闘機に格闘戦で10勝0敗、BVRで4勝0敗程度の空戦性能と、

          その自称「世界で2番目に強い」某4.5世代戦闘機より対戦成績で劣る機体って何だろう?
          うろ覚えですが、グリペンがBVRでワンサイドゲーム、格闘戦では12:86で大敗したけど勝ちも拾えた相手に、
          その某4.5世代戦闘機はワンサイドゲームで負けたようだし。

    • 匿名
    • 2021年 7月 22日

    資源をめぐる軍備拡張は戦争にしかならないと思うのだが両国ともガチでやる気か?
    って話し合いで解決ないからこうなったのだったな
    正直に言って対岸の火事おもしろい

    1
      • 匿名
      • 2021年 7月 23日

      面白いとまでは言わんけど、初号機と聞くとエヴァンゲリオンしか想像しない
      対話にならない相手とは戦闘しかないのは現実もアニメも変わらないね

    • 匿名
    • 2021年 7月 22日

    恒例になったエーゲ海上空のドッグファイトに新型機が登場か。失速寸前まで減速してケツ取り合うような無茶苦茶な戦い方だけど、それはそれで楽しみだな(HUD映像公開待ってます)

    1
      • 匿名
      • 2021年 7月 22日

      その手の戦いだと、ミラージュ2000が対戦成績良いのだっけ?
      F-16は引き立て役な印象。
      ラファールは、どんな位置付けにおさまるのかな。

    • 匿名
    • 2021年 7月 22日

    >昨年9月に発表(議会による調達資金の承認は昨年12月で契約に署名したのは今年の1月)したが、21日にラファールの初号機がギリシャ空軍に引き渡されたと報じられている。

    中古とはいえ、1年弱でのデリバリー。
    仕事が早いね。
    それとも、中古だとそんなものなのかな?

    2
    • 匿名
    • 2021年 7月 23日

    >トルコ国内の空軍基地にカタール空軍の軍用機36機の駐留を
    >最大5年間(+1年間の延長オプション付)認める協定を議会に提出

    これってトルコのメリットはまぁ解るとして、カタール空軍に
    とっては何がメリットなんやろ?

    1
      • 匿名
      • 2021年 7月 23日

      カタール情勢を調べてみれば分かりますよ。
      カタールはサウジ他アラブ4ヶ国との断交状態を今年始めに解消していますが、断交中は物理的に孤立したカタールにトルコは約3年間に渡り食料・日用品や軍の派遣などの支援を行ってます。トルコとカタールは関係が親密です。
      今回の和平はサウジが米意向に沿った表面的なものと見られています。
      カタール空軍にというより、カタールの外交政策上のメリットがあるんですよ。

      4
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