ギリシャメディアは8日「ウクライナとロシアのドローン戦争は戦いの形を決定的に変えた」「我々はドローン戦争の準備が出来ているのか」と自問し、防衛装備品の調達プロセス、ドローンの開発環境、軍における無人航空機の受け入れ態勢の全てに問題があると指摘した。
参考:Is Greece ready for drone warfare – Legal hurdles and institutional roadblocks
ギリシャはドローン開発の環境が整っていないため海外輸入への依存度が高いのだ
ウクライナとロシアのドローン戦争は「戦いの形」を決定的に変えてしまい、もはや西側諸国の軍事組織、防衛産業、シンクタンク、ディフェンスメディア、専門家はドローンの重要性をヒステリックに叫び続けているが、ドローン戦争への適応はプラットホームを沢山準備しておけば良いという話ではなく、この問題の本質は「従来の調達プロセスにおける新技術の統合スピードでは戦場の変化に対応できない」「特定のプラットホームを長々と大量調達していては適応できない」「特定の戦術や技術は数週間で効果を失うため軍、調達プロセス、産業界にまたがる適応能力が求められる」というものだ。

出典:Brave1
ギリシャメディア=Πρώτο Θέμαも8日「ウクライナにおける広範囲なドローン使用に特徴づけられた新たな技術革命は戦争の形を根本的に変えてしまった」「我々はドローン戦争の準備が出来ているのか」と自問し、自国の問題点を以下のように指摘した。
“ギリシャは無人水上艦艇の開発を発表し、この計画に31もの企業が名乗りを上げて数百もの入札参加書類を提出した。膨大な書類の戦いは防衛産業にデジタル企業登録が導入されていないことに原因があり、防衛装備品の調達に関する法律も手続きの硬直性に大きな影響を与えている。この法律に定められた手順を守れば防衛装備品の調達先を選定するのに2年~3年、法律によって保護されている入札者の権利=結果に対する異議申し立てや審査のやり直し要求など救済手続きが絡めば、調達先を選定するまで期間は最大5年近くかかるかもしれない”

出典:Γενικό Επιτελείο Στρατού
“官僚主義なプロセスや制度的な問題を除いたとしても、ギリシャ軍における比較的新しい無人航空機の受け入れ態勢には疑問があり、これを運用する兵士にも民間人と同じ認定資格が要求され、軍は資格取得のための訓練を提供していないため、軍は高額な費用がかかる民間サービスを利用して兵士に資格を取得させなければならない。さらに既存の手続きでは武装した無人機をテストする場所も確保できるか分からない。仮に理想的なシナリオがあったとしてもテストの許可には膨大な処理審査と許可が必要になる”
“要するにギリシャはドローン開発の環境が整っていないため海外輸入への依存度が高いのだ。一方のトルコでは高性能な無人機を国内で製造し、高度な戦闘能力とAIを備えた新型無人機を開発中だ。トルコの無人機輸出も30ヶ国以上に広がり、独自の統合型防空システム=Steel Domeの開発まで進めている”

出典:Baykar
米国でも調達プロセスにおける手続きの簡素化を進めているものの、結局のところは制度と合わせて行政機関の手続き処理に関する概念やアプローチにも変化が必要で、今のところ西側諸国は同じ問題に直面しているが、ここに手をつける国と手をこまねいている国では数年後に大きな差が生まれるかもしれない。
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※アイキャッチ画像の出典:Υπουργείο Εθνικής Άμυνας
ギリシャは、仮想敵国トルコというのが、非常に厳しいんですよね。
トルコは、ウクライナ戦争・ナゴルノカラバフ戦争などで、無人機の実戦データを持っているか・少なくともトルコ製兵器は実戦を経ているわけです。
無人機分野については、独仏英よりも強い可能性も高く、陸軍人員も多いんですよね。
NATO国内同士ですから、NATO他国が援軍派遣する可能性も低く、なかなか大変そうだなと感じてしまいます。
キプロス紛争は現在進行形ですからね。
一応沈静化し住み分けしている様ですが根本的な融和的解決は永遠に来ないだろうと思うので、キプロスはお互いに現状維持がキプロス国民にとっては最善ではないでしょうか。
またギリシャはトルコと戦火を交えれば勝てる要素は皆無だと思うので、兵器どうこうもあるけどその前にトルコを無駄に挑発せず周辺国家との連携を深めていくのが現実的なのかなと思う。
そもそもNATO加盟国同士で敵対している状況でもないと思うけど仮に紛争勃発したらNATOはどう動くのでしょうか興味深い所ではありますね。
日本は制度的な簡略化も必要だけど、民間での需要も産まなきゃ企業としては入りづらいよなぁ
林業とか漁業とかで国が支援してでも、ドローンやUSVを大々的に使う営利企業とかないと、まともに使うのが自衛隊くらいしかないんじゃあコマツの二の舞になるだけな気がする
ドローンが墜落したら賠償や回収しないといけないのに民間需要あるのかな?
海外は墜落しても被害者は泣き寝入りなの?
一応輸送や設備点検等、防衛以外の用途での活用も進めてますね。
これでノウハウの確立や法整備や安全性の確保が進めば乗っかって来る民間企業もあるでしょう。
昨今問題になっている配達員による盗難なんかも後押しになるかもしれません。
…問題はそこで使うのが必ずしも国産機である必要はないことですが。
インプレス総合研究所が昨年3月に発表した「ドローンビジネス調査報告書」によると、民間市場におけるドローンビジネス規模は、総額で 2023年度実績;3,854億円、2028年度予想;9,054億円 。内、業務用完成機体の国内販売額は、2023年度;1,051億円、2028年度;2,281億円としています。
産業別のドローン活用サービス用途で今後の急成長が見込まれるのは「物流」及び「点検業務」で、2028年度にはそれぞれ818億円及び2,088億円規模になると予測しています。
消耗品販売やメンテ業務、人材育成や任意保険等の周辺サービス分野は、完成機体の販売額に比例しての成長が予想されています。
まだまだ規模は小さいですが、技術的進展に合わせ今後の著しい成長が見込まれる事業分野と言えるのでは。
ベテラン作業員が4時間かかる鉄塔(だったかな?)の点検作業を、ドローンを活用したら30分ぐらいで完了できた
みたいな話をたまに見かけるので、そう言った利点をどんどんアピールしたら、ユーザーも増えるんでしょうね
…エアカムイの段ボールドローンとかは自衛隊が積極的に導入しなきゃ、折角の芽もしぼんでしまう気がしますが
別に国内だけに需要を絞る必要無いんだけどね、DJIとかどうやって大きくなったかと言うのと同じ。テラドローンとか自社のドローン開発はまだまだだと思うが海外展開のスケールはでかい。規模的に小さいフジインパックも販路拡大の為に東南アジアへの輸出拡大とかしようとしているしパイの小さい国内でどうかしようとするなら使える所に貪欲に販路拡大する必要がある。
米国のDJI規制法案が通ったら、米国のドローン業界はどうなっちゃうんだろう。
兵器の強さや兵力数に加え、兵站を支える工業力が戦局を左右することが改めて見直されるようになりましたが、おっしゃる通り平時で儲からないと硬直した軍需だけでは企業も食べていけませんので大変ですよね…。
この点、工業力を手放した(手放しつつある)西側に比べて、世界の工場たる中国の底力を感じます。
トルコといえばウクライナでのバイラクタルの運用はされているのかな?
高度に電波対策された戦場では価格的にも使いづらそうだ。
ギリシャは観光と海運と農業が主要産業の国だしな。一方のトルコはGDP比での工業と製造業を合わせた数値が53%というね。(工業31.3% 製造業:22% 2023年度時点)
内製をしたいのかもしれんが、観光に水資源を取られている現状で工業化できるかな。