Defense Newsは欧州の再軍備について「欧州の投資は将来のニーズに対する研究開発を犠牲にしたもので、欧州は戦略的自立を追求して既存の武器システムを消費する立場に留まるか、軍事力の強化に繋がる米国製システムを共同生産するか選択しなければならない」と指摘した。
参考:Europe can’t do it alone on defense
参考:Lithuania warns Europe against making ‘big mistake’ of breaking off from US defense industry
西側諸国として団結するなら米国と欧州は対等な立場で協力し合うべきだが、それを困難にしたのもトランプ政権の強硬なアプローチにある
ウクライナとロシアの戦争は「消耗戦を強いられる国家同士の本格的な戦争が21世紀でも勃発する可能性」を思い出させ、欧米を含む西側諸国の防衛産業が「このリスクに対応できない」と判明し、トランプ政権2期目の登場によって「欧州大陸の安全保障環境」も大きく様変わりしてしまい、この変化は欧州だけではなく世界中に国々に大きな影響を及ぼし、特に米国の欧州とアジアにおける同盟国やパートナーはGDPの5%もの国防支出を要求されている。

出典:EU
この変化の中で注目されているのは「逃れることができない安全保障分野への大幅な追加投資から誰が利益を得るのか」で、リトアニアのブドリス外相は24日「欧州が米国抜きで防衛力を構築するのは本当に大きな間違いだ」と、エストニアのツァクナ外相も「ドイツが主導して欧州諸国が安全保障分野に投資している資金の総額は今後7年~8年の間に数兆ユーロ(1兆ユーロは約168兆円)に達する見込みだ」「この金額には米防衛産業が大きな関心を示している」「これだけの金額があれば米国、韓国、トルコなどEU加盟国以外の国々にも十分な余地がある」と述べた。
Defense Newsは欧州の再軍備について「この過程において欧州は米防衛産業への依存を止めることが出来ないだろう」「安全保障に対する差し迫った脅威は国防支出を増大させる一方で政治家の時間的視野を狭める」「ジョージ・マーシャル元帥は第二次大戦前夜に『我々は約20年間の間に十分な時間はあったが資金がなかった』『現在は十分な資金が与えられたが時間が全くない』と書いている」と述べ、以下のように欧州が直面している問題を指摘している。

出典:16 Dywizja Zmechanizowana
“ポーランドのようにロシアと近い国々は「準備時間が限られている」と感じているため、長期的な欧州の自立を犠牲にしてでも「軍事力の即時増強が必要だ」と考えている。ロシアとは距離があるフランスは独自の核兵器も保有しているため、自国の防衛産業に忍耐強く「ド・ゴール主義的な投資」を行う余裕がある。資金面で遥かに余裕があるドイツは「軍事力の即時増強」と「長期的な欧州の自立」の両方を同時に追求することが、つまり米国製システムを自国で生産しながら、欧州共同防衛計画にも継続的な投資を行うことができる”
“欧州の国々がユーロをどう配分したところで、現在の投資は将来のニーズに対する研究開発を犠牲にした上に成り立っている。米国は安全保障分野の研究開発に欧州の10倍を上回る資金を投入しており、さらに戦争で重要な役割を果たすAI、量子コンピュータ、宇宙技術などへの民間投資額が加味すれば、将来のニーズに対する米国と欧州の差は拡大する一方だ。欧州で最も成功している防衛分野のスタートアップ企業=Helsingの市場価値はPalantirの1/25に過ぎない。宇宙分野でSpaceXに匹敵する欧州企業は存在しない”

出典:The White House
“つまり欧州諸国は既存の武器システムを国内で生産できたとしても、将来の安全保障に不可欠なイノベーションについては米国に依存するしかないのだ。欧州は米国依存から自立できないのであればどうすべきか?欧州は市場規模を交渉材料にしてトランプ政権との取引を成立させるべきだ。米防衛産業に欧州市場へのフルアクセスを認める代わりに、購入する米国製システムの完全な運用権を獲得すべきだ。この大規模な取引はトランプ大統領が望んでいる米国製武器の購入増、貿易赤字の削減、グローバルな紛争に対応する弾薬生産の分散化を満たすことができる”
“その見返りとして欧州は米国製システムの現地生産、この武器システムに対するより大きな主権を確保すべきだ。ポーランドは既にこのアプローチを採用し、米国や韓国の武器システムを現地生産している。米防衛産業への依存を頑なに拒否してきたフランスでさえ欧州以外の企業と共同生産する姿勢を見せ始めている。電気自動車やソーラーパネルと異なり欧州の防衛産業は中国と競争しているわけではない。むしろ防衛産業の協力は戦略的にも経済的にも大西洋の両岸を強化する。そして選択の結果も明らかだ”

出典:U.S. Air Force photo Senior Airman Shelimar Rivera Rosado
“欧州は戦略的自立を追求して既存の武器システムを消費する立場に留まるか、軍事力強化を追求して米国製システムを共同生産する立場をとるか、このどちらかを選択しなければならない”
Defense Newsの指摘は興味深いものがあるものの、これは米国の利益や都合を代弁したものであり、欧州は将来の安全保障に不可欠なイノベーションについて米国に依存するしかないという視点を裏返せば、米防衛産業の規模や収益は欧州市場から獲得している資金にも依存しており、どちらかが一方的に依存しているわけではない。

出典:U.S. Air Force photo by Airman 1st Class Matthew Arachik
米防衛産業の売上にとって欧州市場の規模は無視できないもので、EU主導の欧州再軍備計画に投資される資金から除外されるということは「その資金が米防衛産業の競合に流入する」と意味で、その分だけグローバル市場で米防衛産業の地位は低下するしかなく、欧州が米国製システムを拒否するということは「武器システムに対する主権の行使に疑問がある」と強く印象づけるため、海外輸出で稼ぐ米防衛産業にとっては致命的だ。
特にDefense Newsの指摘は「共同生産する米国製システムに対するより大きな主権の確保」について何も定義しておらず、トランプ大統領と取引すれば「今よりもマシな運用権が確保できるだろう」という憶測に過ぎない。

出典:Donald J. Trump
米国も「欧州市場に流れ込む資金を獲得して生産能力や研究開発に再投資しなければ成長を確保できない」と、欧州も「米防衛産業との早急な決別と戦略的自立は差し迫る脅威への対応に間に合わない」という事情があり、西側諸国として団結するなら米国と欧州は対等な立場で協力し合うべきだろうし、それを困難にしたのもトランプ政権の強硬なアプローチにあるため、どこでバランスを取るのかは非常に難しい問題と言える。
但し、米国製システム(米防衛産業が開発に関与したイスラエル製システムを含む)を使用したイスラエルがイラン相手に優位性を発揮したタイミングでの指摘は、非常にやり方が素晴らしい=やっぱり米国製システムかと思わせるには本当に最適なタイミングだ。
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※アイキャッチ画像の出典:NATO Allied Air Command





















世界全体観ても、陸海(潜)空の兵器を対各ミサイル含めて一国で作ってる国は数カ国しか無いですので、金が掛かるので大きい国におんぶ抱っこが普通でしたからね。
研究開発に多額の投資が必要なるものは、数が売れなければ高くなりますよね。
どこまで国産・共同開発でやっていくのか難しい課題ですが、政治リスク財政リスクをとった見返りとも言えるので、難しいところだなと感じます。
第三国なら資金や国力、立地次第で中露の兵器も選べるんですが、その二国と事を構える場合はどうしても選択肢が狭まりますからね。
その観点、まさに仰る通りですね。
中東は選択肢が物凄い広いだけでなく、管理人様が何度か取り上げられていましたが、防衛産業育成にも力を入れていますね。
トランプの強硬姿勢は強烈に西側の結束を揺さぶったが、同時に課題点も浮き彫りにしたのは事実
客観的、理性的に対策して、雨降って地固まる事を願う
トランプの問題は仮に合わせたとしても平気で梯子を外しかねない所。ヨーロッパが少しずつ自立するしかないですかね。
米と欧の両陣営トップともに『アメリカにひれ伏すか』『ヨーロッパに尻尾を振るか』の二択思考なんかね。欧米じゃ『寛容』の意味とか、是々非々の考え方が日本と違うらしいから、俺が理解しにくいだけかもしれないが。
まあ世の中、何やっても誰かから批判されるから、正解だったか否かはは結果次第でしかないんだが。
そりゃ100%アメリカ依存をやめるのは無理だろうね。
欧州は例えばリンク16とか米国製システムを通信システム
の基盤として組み込んじゃってるし、今から同じものを作って
取り替えるなんてまず無理だろう。
マイクロソフトとかグーグルと同じでプラットフォームとして
既に食い込んでるから依存がやめられない、こういうのは
アメリカのすごいし怖いところだと思うわ。
ただ買ってくれないとアメリカも困るわけだからそこを利用して
いこうっていうのは大変まともな意見だ。
トランプは…暗殺者でも雇って殺そう、欧州がガチればいけるだろ。