スイスのヴィオラ・アムヘルト国防相はF-35Aを選択した理由に調達コストを含む運用コストが最も安価だったことを挙げたが、この部分についてスイスメディアを含む複数の海外メディアが疑問を呈している。
参考:Von wegen garantiert tiefe Betriebskosten des F-35: Offerte deckt nur 10 Jahre ab
参考:Fädelte die Schweiz noch Deals ein, als der neue Kampfjet schon feststand?
参考:Die Schweiz zeigt uns den Mittelfinger
ヴィオラ・アムヘルト国防相が明かした保証のない「155億フラン」という数字は怪しいと思っておいたほうがいい
ヴィオラ・アムヘルト国防相はメディアに「F-35A×36機の調達コストは50.7億フランで設定されたプログラムコスト(60億フラン)を大きく下回る」と説明、さらに調達コストを含む30年間分の運用コストは「155億フラン」で2番目に安価だった機種と比較して「20億フランも差があった」と語っているのだが、米国で散々運用コストが高価だと槍玉に挙げられているF-35AがF/A-18E/F、ラファール、タイフーンといった機種より運用コストが安価なのはおかしいとスイスメディアを含む複数の海外メディアが指摘している。

出典:U.S. Air Force photo by Airman 1st Class Heather Leveille
要するにロッキード・マーティンが評価プロセスでポイントを稼ぐため「F-35Aの運用コストを異常に安く見せかけた資料を提出したのではないか?」と多くの人が疑っているのだが、これに対してアムヘルト国防相は「ロッキード・マーティンが提出した数字には法的な拘束力があるので我々は保護されている=155億フランという調達コストを含む30年間分の運用コストは法的に保護されているという意味」と説明して疑惑の払拭に努めた。
しかしスイスの戦闘機選定に参加した他の企業は「運用コストの大部分は戦闘機を提供する企業の影響が及ばない燃料費や運用組織の人件費といった部分で占められているので、運用コスト30年分の試算結果を企業が保証することなどあり得ない」とアムヘルト国防相の説明を一蹴、執拗なメディアの追求にアムヘルト国防相側も「ロッキード・マーティンが提出した調達コストを含む30年間分の運用コストに対する法的な拘束力は10年間分しかカバーしていない」と明かして注目を集めている。

出典:U.S. Air Force photo/Tech. Sgt. Brandon Shapiro
さらにメディアは「法的な拘束力で保護されている10年間の運用コストがロッキード・マーティンの提出した数字と異なった場合の制裁や保障についてどうなっているのか?」と質問したが、アムヘルト国防相側は「法的な拘束力がある」の一点張りで、具体的な契約違反に対するペナルティは設定されていないのではないかとメディアは予想している。
最も興味深いのは提出された調達コストを含む30年間分の運用コストが正しいのかスイス側は独自の検証を行っておらず、ロッキード・マーティンの提出した数字に完全な信頼を置いている=鵜呑みにしている点だろう。
つまりF-35Aを次期戦闘機に選択した要因の一つに挙げた「調達コストを含む30年間分の運用コストは155億フランで競合よりも20億フランも安価だった」という主張は裏取りをしていないロッキード・マーティンの数字をそのまま発表だけで、導入から11年目以降の運用コストが試算結果を上回ってもロッキード・マーティンは何のペナルティも課されないため「155億フラン」という数字は信ぴょう性に欠けるという意味だ。

出典:Airwolfhound from Hertfordshire, UK / CC BY-SA 2.0
通常、西側製戦闘機のライフサイクルコストは調達コストの2倍~2.5倍が相場だと言われており、F-35A×36機の調達コストが50.7億フランならライフサイクルコストは100億フラン~150億フラン(※)が適正値なののでヴィオラ・アムヘルト国防相が明かした155億フランという数字が正しいのならF-35Aの運用コストやライフサイクルコストが米国であれほど問題になるはずがないため管理人も怪しいと思っている。
※補足:数字が200億フラン~250億フランと間違っていた上、言葉足らずで意図が上手く伝わらず申し訳ございません。謝罪します。
因みに欧州に背を向けたスイス政府の決定を受けてフランス人で欧州議会議員のクリストフ・グラドラー氏はスイスメディアの取材に対して「あなた方は独立の主権を理由にEUとの条約交渉を打ち切ったがスイス政府は中国企業(アリババ)とIT契約を結び米国から戦闘機を買うと言い出した。市民データーの管理を独裁国家の中国企業に委託しておいて独自の主権が守られるのか?スイス政府は同じ欧州の国と良好な関係を築くより中国や米国に依存する行動を見せており主張と行動が一致していない」と不満をぶち撒けているのが興味深い。
さらにフランス政界は「スイス人は英国人やポーランド人と同じ親大西洋主義者(親米に傾倒する非欧州人的な振る舞いをする国や勢力を指した言葉)に分類するべきだ」と主張しており、欧州におけるスイスの立場はF-35Aを選択したことで決定に悪化してしまった。
果たしてスイスは本当にF-35Aを導入するのか、実施が濃厚と見られている国民投票で国民はF-35A導入にどのような審判を下すのか注目される。
関連記事:スイス政府は次期戦闘機にF-35Aを選択、但しグリペン導入を撃墜した国民投票の実施が濃厚
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※アイキャッチ画像の出典:U.S. Air Force photo by J.M. Eddins Jr.
もうこれ、国民投票でF-35Aが撃墜される未来しか見えないw
最低限の訓練だけを実機でして、
その他をシミュレーターで行えばそれぐらい安くなるのかなぁ?
性能面で採用されたならともかくF-35の運用コストがそこまで他の機種を下回るってありえんでしょ……
前の記事じゃシミュレーター使うから実使用時間が減ってその分コスト減になるんじゃないかって話ではあったけどさあ
アメリカ兵器は調達コストも運用コストもこのパターン多いな
程度の差こそあれ他の国も似たようなものかもしれんけど
9〜5時空軍が開店休業空軍になるかな?
ゲーセン空軍、かも。
ただ今後は、それが「差し迫った脅威に
日常的に晒されてる訳じゃない空軍」としては
スタンダードになってくのかもしらんけど。
日常訓練の大半をシミュレーターで済ませようとしてる可能性もありそうだよなぁ。
安全保障上の脅威が皆無のベリーイージーモードの国とかホント羨ましい。
Fー35の最新式シミュレータなら実機による訓練と同程度の技量維持効果が期待できるなんて言って
シミュレータでの訓練もパイロットの飛行時間に含めるとかやって計算した結果が155億フランだったりしてw
飛ばなきゃ維持費もかからんみたいな
いや訓練飛行の某かの時間はシミュレーターに置き換えられてるだろ。そうじゃなければシミュレーター経費がプラスオンになっちまう
機種ごとにライセンス維持のための年間飛行時間が設定されているからさすがにそれはないと思いたいけど、
>スイスの戦闘機選定に参加した他の企業は「運用コストの大部分は戦闘機を提供する企業の影響が及ばない燃料費や運用組織の人件費といった部分で占められているので、運用コスト30年分の試算結果を企業が保証することなどあり得ない」
を見るとそういう机上の空論の値段設定の可能性を否定しきれないのがなんとも
下手すりゃ人件費やら燃料費やら全部無視したロッキード製補修部品費だけの可能性すらあったり
逆に?人件費や燃料費がライフサイクルコストの大半ならどの機種選んでも大差ないってことになるような
試算結果を保証するのは普通あり得んと思うけど、その根拠はなんか変だな
順当に考えたら、戦場の変化に伴う予期せぬ改修とか、経年劣化が想定より早く進むとか幾らでも起こりうるから試算は出来ても保証はできないとは思うけど
ブロック4以降で目標としてるコストと思われる
スイスに引き渡されるF-35Aがブロック4以降のフル生産機であるかも不明瞭だし、
そのフル生産の受注量が未だ目標を下回ってるのが現状で、ブロック4以降での目標コストに達するのか甚だ疑問
スイスならグリペンで良かったのにね
整備が簡単で再出撃までの時間が短いのはメリットだと思うけどな
NATOと共同でロシアと戦う想定である以上、今の能力で頭打ちの4.5世代機じゃ能力不足って話にも妥当性はあるかと
前の国民投票の反対理由の一つは能力不足だから
やたらグリペンをもてはやす人は何なの?
もうグリペンとか性能的についていけてないでしょ
多分スイスの外交的立場を知らずに、自国のスクランブル専用だと思ってるんじゃないかと
グリペン撃墜の例があるから落選組は必死に情報工作するでしょうな…
それ悪手では?
仮に成功して次回当選したとしても、同じ手で撃墜されるだけだろうし。
最終的には、戦闘機に関してスイスという市場を失う事になりそう。
俺も運用コストが安いってとこには懐疑的だけど
> 通常、西側製戦闘機のライフサイクルコストは調達コストの2倍~2.5倍が相場だと言われており、F-35A×36機の調達コストが50.7億フランならライフサイクルコストは200億フラン~250億フランが適正値
これは計算間違ってるか、F-35の運用費が”通常”ではないことを説明する項が抜けてる?
自己レス
管理人さんの訂正が入ったね
> 155億フランという数字が正しいのならF-35Aの運用コストやライフサイクルコストが米国であれほど問題になるはずがないため管理人も怪しいと思っている。
ここがこの一連の話の中でずっと引っかかってるんだよな
アメリカで叩かれてるのがボーイングないしその他のロビー活動の成果なのか、スイスでLMが誇大広告してるのか
スイスでの運用環境がアメリカとは大きく異なっていて安く上がるカラクリがあるのか
続報・詳報に期待
>安く上がるカラクリ
一連の記事から推定されるのは、スイス空軍の年間スクランブル回数の少なさとシミュレータ活用による年間訓練飛行時間の大幅削減ですかね。
年間飛行時間が極端に少なければ重整備間隔もそれだけ延びるわけですから。
機体調達費が安いのは、LMが主張する将来の調達単価低減が見積りの基礎なのかもしれません。
その見積り価格が厳守される契約になるのならスイス空軍にとって問題ないはずですが。
それが事実でも国民の納得を得るには評価書と根拠になった提案書の公開が必要でしょうねえ。
メーカー側提案書の詳細を公開しない取り決めがあれば難しいですが。
同じく続報・詳報に期待ですね。
あとは有り得そうなのは、アメリカ空軍のF-35は各ブロックが混在しているせいで、アップデート費用やそもそもの維持管理費の高騰を招いていて
最新ブロック(block4?)に統一されるスイスにはそれが無いとか
確か少し前のここの記事にも、初期バージョンのF-35が維持費高騰の一因になってるから早期退役させるかも、みたいな記事もあったし
まあ、個人的な感覚としてはどれか一つじゃなくてそれぞれが少しずつ絡み合っての155億スイスフランって見積もりじゃないかとは思うけど
まずステルス機に「西側の標準」が
適用できるのかだよね。
東側の機体の「運用費係数」が大きいのは
エンジン等の主要構成品が消耗品だからで、
それなら塗装含むステルス関連が消耗品みたいな
ステルス機は運用費係数が東側の機体に
近くなるんじゃないのかなぁ。
米軍等のF-35運用費高騰はそれで説明がつく。
で、スイスの155億については、
ここでちょいちょい予想されてる通り、
F-35では訓練の何割かをシミュレーターで
代替する事が許容されていて、
スイスの運用環境ならその比率を大きく出来る、とか
そんなカラクリじゃないのかね。
30年間で何時間飛行する想定になってるのか。
フランスの物言い、納得出来る所もあるけど、
単に自分の所に金が落ちないのが不満なだけだろう
と思った。
フランスは国絡みだから語気が強いよね。ゴーンのときもそう・・・
しかし後だしで経費が膨らんでゆく話は、それフランスが潜水艦契約でオーストラリアにかました手口まんまだし
どの口がいうのかって笑う
ラファール以外の英米の機体を選ぶのは反欧州的と言わんばかりだが、ほんっと国力の割に傲慢だよな
いや、永世中立政策をとるってことは基本的に周りの国々と協調しないってことだよ
特に安全保障面では、不況でも金を絞り出して何とかやりくりしてる周りからすると、スイスはただ乗りされてるような状況だし
そりゃぁ、普段から不満もたまるよ
しかしスイスのあのポジションじゃあ中立国を宣言してないと生き延びられなかったでしょうに。ヒトラー時代なんか紙一重でつながった感じ
タイフーンやラファールは分かりませんが
2019のRCPFHではF-35Aが17,701ドル、F/A-18Eが11,828ドルとなっており
量産が進んだ今は両機間のコストはそこまで差がないのでは?
>西側製戦闘機のライフサイクルコストは調達コストの2倍~2.5倍が相場だと言われており、F-35A×36機の調達コストが50.7億フランならライフサイクルコストは200億フラン~250億フランが適正値なので
50.7億の2~2.5倍は100億~150億くらいになりますが、計算がちょっとよくわかりません。
単純な疑問です。
書き込んだと思ったんですが勘違いかもしれないので再度。
>西側製戦闘機のライフサイクルコストは調達コストの2倍~2.5倍が相場だと言われており、F-35A×36機の調達コストが50.7億フランならライフサイクルコストは200億フラン~250億フランが適正値なので
私が文脈を見落としているかもしれませんが、50.7億ドルの2~2.5倍だと100億~125億で155億の方がむしろ高く、文意を理解しかねています。
素朴な疑問として記させてください。
(前の書き込みでは100億~150億と自分が暗算ができないことを示してしまいました)
もう再書き込みはしません。
横からだけど自分は
調達コストを含めたライフサイクルコストと
調達コストを除外した維持運用費が一緒くたになってしまった文章だと解釈して読んだ
つまり調達コストを除外した維持運用費が調達コストの2倍~2.5倍という意味で
合わせたライフサイクルコスト200億フラン~250億フランが適正値になるという意味では?
で、なんとなくロッキードもこの二つを敢えて混同させるような提案をしている気がする
50+50×2〜2.5=150〜175
で155億がズバリ適正値になるので、
>200億フラン~250億フランが適正値なので(略)155億フランという数字は管理人も怪しいと思っている
の真意が不明なのは変わらないね。
運用コストが高価で問題になってるF-35のライフサイクルコストが従来の相場に当てはまるから逆に怪しいんだろ。
それぐらい察してあげようよ。
そんな得体の知れない「察し」は
誤解の元にしかならんよ。
そんな擦れた言い方は止めたほうがいいとおもうよ。
記事で「米国で散々運用コストが高価だと槍玉に挙げられているF-35A」と書いてあるのに、155億フランが相場の2倍~2.5倍の範囲に収まっているのがおかしいと思わないの?
>そんな得体の知れない「察し」は誤解の元にしかならんよ。
違うね、読解力が足りないのを人のせいにしたいだけ。
こんな言い方をされて気分がいいかい?
上のレスしたのと別のものだけど、誤解の元ってのが普通の感覚だわ
計算ミスか記載の不足かどちらも考えられる、以上のことは決めつけるべきじゃないし、もし記事から確定できないことの結論を出したいならライフサイクルコストが高いという直接的な資料を提示すべき
つーか、数値が明らかに矛盾していてその指摘があるのにスルーしてる(気付いてない)管理人が悪い
何故そうやって書いてもいない文意を
捏造したがるのか理解に苦しむ。
>155億フランが相場の2倍~2.5倍の範囲に収まっているのがおかしいと思わないの?
もしそう言いたいのであれば、
>150億フラン~175億フランが適正値なので(略)155億フランという数字は管理人も怪しいと思っている
と書くべきだろうし、
そう読み替えると元の文章は文脈的に破綻する。
>違うね、読解力が足りないのを人のせいにしたいだけ。
>こんな言い方をされて気分がいいかい?
別に気分は良くも悪くもないよ。
おかしな指摘だな、と思うだけ。
全く同感だね。
レスを見て分かるが「察し」が個人様々な「解釈」を生んでる。
結局はどの解釈が正解かは結論できない状況。
勿論時と場合によるが斟酌して曖昧にすることを美徳とは思わない。
F-35が2倍~2.5倍の範囲に収まってるから怪しいって意味じゃないの?
管理人さんの訂正で腑に落ちました。訂正ありがとうございます。
再度の書き込みをしたのは、1度目の書き込みが長いこと反映されなかったので、自分の書き込みミスかと思ったからでした。
他意はありません。
返信くださった皆さん>
ありがとうございます。
なんで即座にバレる嘘を付くんだろうね
ヴィオラ・アムヘルト国防相とやらは
永世中立国のジレンマ
各政治勢力からの圧力で永久に決まらなそう
公共事業は「へへっ けいやくさえ とっちまったら こっちのもんよ」精神の奴が多すぎる
自分の金じゃない大金を運用する人間の腐敗って、古今東西変わらないのね。個人的には経済的に豊かで政治的にも瑕疵の少ない(中立だから)スイスに嫉妬しちゃう小人なので、スイスも同じ穴のムジナと知って正直気分がイイw
その精神の完成形が頭狂オリンピック
?
昨年10月2日付 航空新聞社 jwing.net 記事に
>米国務省は9月30日(米ワシントン現地時間)、スイスに対するF-35戦闘機とF/A-18E/F戦闘機の有償軍事援助(FMS)を承認したと発表した。見積もり金額としては、F-35戦闘機と関連機器で65億8000万ドル、F/A-18E/F戦闘機と関連機器で74億5200万ドルになるとのこと。
リンク
てのがあった。
65.8億ドル≒71.8億スイスフラン になるわけで50.7億フランとは21.1億フランの差が有る。
関連機器の価格を抜いた機体だけの価格とも取れるがどうなんだろう。
プログラムコストとは関連機器を含む導入コストと思えるが。
もうどうでもいいよ。
好きにしてくれ。