欧州関連

日本にも参加を呼びかける第6世代戦闘機「テンペスト」の価格は1億ポンド(約140億円)?

英メディアは、第6世代戦闘機「テンペスト」は極超音速で4,000マイル(6,400km)以上飛行でき、拡張現実技術で機体を制御し、機体価格は1億ポンド(約140億円)になると報じた。

参考:RAF plans £100m fighter jet that can fly at more than 4,000mph and be controlled by virtual reality helmet

1機140億円?F-35Aよりも高価な第6世代戦闘機「テンペスト」

英メディア「デイリー・メール」紙は20日、英国が主導して開発を進めている第6世代戦闘機「テンペスト」は4,000マイル(6,400km)以上の航続距離を持ち、ヘルメットに装着されたヘッド・マウント・ディスプレイに投影される拡張現実技術で機体を制御でき、この戦闘機は1億ポンド(約140億円)で調達できると報じている。

引用:BAE Systems テンペスト

さらに「デイリー・スター」紙によれば、第6世代戦闘機「テンペスト」は極超音速機として開発され、マッハ5.0で4,000マイル以上を飛行でき、ヘッド・マウント・ディスプレイに投影される拡張現実技術で機体を制御する際、特殊なグローブを装着して操作することで触感をフィールドバックできるので、パイロットは操作感覚を失わずに済むらしい。

このような物理的要素を排除した次世代のコックピットを英国では「ウェアラブルコックピット」と呼んでおり、最終的には思考力のみで機体の制御が行えるようになるかもしれないと報じている。

本当に第6世代戦闘機「テンペスト」が極超音速=マッハ5.0以上のハイパーソニックで飛行可能になるのかについては謎な部分が多いが、英国のリアクション・エンジン社が開発した革命的な冷却装置「プリ・クーラー」は1,000℃に達する高温の空気を1/100秒で-150℃まで冷却することが可能で、これを使用すれば理論上、マッハ5.5で飛行中でもエンジンの過剰加熱を防ぐ事ができると言われている。

出典:Science Museum London / CC BY-SA 2.0 サーブル・エンジンの断面図

ここまでの話であれば、将来可能になるかもしれない程度で終わるのだが、昨年、リアクション・エンジン社と米国の国防高等研究計画局(DARPA)が実施した実証実験で、このプリ・クーラーがマッハ5.0に相当する環境下で設計通りの性能を発揮できることが確認された。

サーブル・エンジン社の共同設立者であり、最高技術責任者のチャード・ヴァービル氏は今回のテスト結果について「同社の技術は極超音速域での動作が検証され、マッハ5.0まで加速可能な初めての空気呼吸エンジン開発という目標実現へ近づいた」と語り、英国防省も同社が開発中の「プリ・クーラー」に興味を示し、この技術を用いて戦闘機用エンジンの能力強化を行うプログラムを立ち上げ資金提供を行っている。

このプログラムにはサーブル・エンジン社も参加しているが、プログラム全体を主導しているのはロールスロイスで、革新的技術を持つベンチャー企業と航空用エンジン開発に長けている防衛産業企業の大手が組むことでプリ・クーラーの本格的な開発と軍事利用が進められているのだ。

恐らく、このような動きを見て第6世代戦闘機「テンペスト」は極超音速機として開発されると英メディアが報じているのだが、英国防省や開発を主導する「TEAM TEMPEST(開発企業の総称)」が公式に極超音速機だとか4,000マイル以上飛行できると発言したことはなく、所詮はタブロイド紙の戯言かもしれない。

ただ、英国で空気呼吸エンジンによる極超音速実現へ向けての動きがあることだけは真実であり、もしかすると第6世代戦闘機「テンペスト」が完成を目指す2035年までに実用化できる可能性もあり、そうなれば航空用の空気呼吸エンジンに革命が起きるかもしれない。

だた熱の壁問題をどうやってクリアするのは明らかになっていない。

 

※アイキャッチ画像の出典:Swadim / CC BY-SA 4.0 第6世代戦闘機「テンペスト」のモックアップ

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コメント

    • 匿名
    • 2020年 1月 26日

    本当ならすごいけど、イギリスは良くない実績が多いからなぁ、素直に信用し難い。
    ユーロファイターだって、欠陥機であることを隠して売りつけようとしてたし。

    • 匿名
    • 2020年 1月 26日

    それが成功するかどうかは置いておいて、革新的なものを常に生み出してきたのは事実だからなぁ
    日本は色々制約が多すぎて、それが確実に成功すると判れば、超高効率な方法で実現するけど、海の物とも山の物とも判らないものには手を出さないから
    でもマッハ5で飛ぶ飛行機で有人機だとまともな機動が出来ないだろうから、無人機向きじゃないかねぇ?
    素材開発とかで計画に噛んでおいてもいいんじゃないかと思うけど

    • 匿名
    • 2020年 1月 26日

    イギリス機って面白そうだけどなんかしら欠陥抱えてそうなイメージ…あるよね

    • 匿名
    • 2020年 1月 26日

    熱の壁の問題もありますが、冷媒の供給時間の問題もあります(ひいてはその容量と占有容積の問題)
    話は思い切り飛びすが、
    日本のリニア・新幹線は超電導モーターの磁石の冷却に使う冷媒は、使って気化した冷媒は回収して列車の中で再・冷却して循環使用します。
     韓国はアメリカが開発したハイパー・チューブ(真空度の高い、つまりは気圧の低いチューブの中で列車を走らす)の実用化を目指してます。 こっちもキモは超電導モーターですが、冷媒は使い捨て?で、使い終わったのをモジュール単位で好感、工場で再冷却/再充填。、ソウル~釜山の所要時間の1.5倍の容量だとかなんとか・・・戦闘機だと搭載する場所がキツイ・・・

    • 匿名
    • 2020年 1月 26日

    エンジンだけ冷却できても外熱はどうすんの?
    SR-71で外板の最も高温になる部分で600℃だぞ?
    マッハ3でこれならマッハ5だとどうなるのさ???
    仮にその高温に耐えられる素材で外板を作ったとして、内部への熱伝導やら輻射熱の影響はどうにもならんだろ。
    兵器倉や燃料タンク&配管への断熱をしくじると内部で炸裂してしまう。
    実用化のハードルが高過ぎて俄かには信じられん・・・。

    • 匿名
    • 2020年 1月 26日

    1000℃以上の空気が1/100秒で-150℃まで冷却もすごいけど、その熱量がどの様な形で変換され、放出(保存?)されるのかイメージし難いです。複数の組織で検証されているから事実?なのでしょうが・・・。

      • 匿名
      • 2020年 1月 26日

      プリクーラーは本来宇宙機用のシステムで熱処理方法は
      吸気→プリクーラー(液体窒素)→燃料(液体水素)です。
      熱を持った燃料は燃やしてしまうから問題なし。
      コレをどう「戦闘機」に利用するのかは謎ですね。
      やるとすれば友軍の「戦闘空域内の無人機」や
      「地上・海上のレーダー」が捕捉した敵に対して
      敵機の上空を極超音速で駆け抜けながらミサイルの雨を降らせる「XB-70のミサイルキャリア版」とか?
      コレを「戦闘機」と呼べるかは意見の分かれるとこだと思いますが。

    • 匿名
    • 2020年 1月 26日

    ハイパー・ルーピーなど実現する可能性は無いけど飛びついた国は多かった
    いまごろ世界各地で建設が始まっていたはずだが結果は言うまでもない
    画期的な新製品というものは画期的な技術ひとつでどうこうできる代物でないし
    「熱の壁」など複数のボトルネックが解決すれば、という”予測”はただの願望でしかなく
    株価操作目的のデマに等しい
    極超音速機開発には役だつだろうが機動によって全体に異常な負荷がかかる戦闘機でマッハ3以上を試す意味はほぼ無いね

    • 匿名
    • 2020年 1月 26日

    多分液体水素をプリクーラーに通すことで空気温度を下げ、そこで気化した水素を燃料としてエンジンを動かす仕組みだろう。
    しかし超マッハ速度にもっていくためには普通のジェットエンジンが必要で、燃料としてジェット燃料と液体水素の二種類が必要な状況だとスターリングエンジンを積んだそうりゅうと同じような問題が発生するはずだから行動に制限が出てくる。

    今のタイフーンのグダグダを見ていると、テンペストと名前を変えただけで第六世代機が成功するという考えは見通しが甘すぎる。

    • 匿名
    • 2020年 1月 26日

    現時点では、話に出てるプリ・クーラーの冷媒は液体ヘリウムです。

      • 匿名
      • 2020年 1月 26日

      ヘリウムってアメリカが輸出規制してるのに?

    • 匿名
    • 2020年 1月 26日

    サーブルエンジン+プリクーラーの実験と
    テンペストは関係ないからね?
    「デイリー・スター」その他のタブロイド紙が
    おそらく詳細を理解できずに勝手に結びつけてるだけ。
    この件を理由にテンペストの実現性を云々するのは
    丸っ切りの的外れかと。

    >プリ・クーラーの冷媒は液体ヘリウムです。

    でした。ツッコミありがとうございます。

    • 匿名
    • 2020年 1月 26日

    イギリスもアメリカもフランスもどこも要らん。
    他国参加型なら日本が主導しなきゃダメ

    2
    • 匿名
    • 2020年 1月 27日

    将来のお話だから完全に否定はしないが、現状のテクノロジーでは実現の見込みがない
    中2としか

    • 匿名
    • 2020年 1月 27日

    パンジャンドラム生み出したイギリスだからきっとやってくれる(色々な意味で)

    1
    • 匿名
    • 2020年 1月 27日

    資金集めに暗雲が立ち込めている計画だから、あれこれ勇ましいことを言いたいのでしょうね。
    日本に秋波を送っているのも、技術ではなく、その資金に目をつけたという解釈をする人々が一定数存在しますし。

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