スロバキア軍の防空システム調達にはNASAMS、SAMP/T NG、IRIS-T SLM、SPYDER、Barak MXなどが提案されていたものの、イスラエル航空宇宙産業が提案したBarak MXを選択、フィンランドへの売り込みに成功したDavid’s Slingに続く勝利となった。
参考:Slovakia to buy Israeli Barak MX air defense systems for $610M
スロバキアは次期防空システムにIskanderの迎撃実績をもつBarak MXを選択
NATOに正式加盟したフィンランドは今年4月「次期防空システムとしてイスラエル製のDavid’s Slingの調達を承認した」と発表、パトリオットシステムやSAMP/Tといった欧米製以外の防空システム導入に注目が集まっていたが、今度はスロバキアがイスラエル製のBarak MX調達を承認したと報じられている。
スロバキア軍の防空システム調達には米国・ノルウェーがNASAMSを、フランス・イタリアがSAMP/T NGを、ドイツがIRIS-T SLMを、イスラエルがSPYDERとBarak MXを提案していたが、最終的にスロバキアはBarak MX(6基+関連機器/2025年後半に引き渡し開始)を5.5億ユーロで調達するらしい。
イスラエル航空宇宙産業が開発した防空システム「Barak MX」はロシア製防空システムと同じように複数の防空レイヤーを1つのシステムで提供できるよう設計(多層防空システム)されており、カバーするエリア毎にBARAK MRAD(高度20km/範囲35km)、BARAK LRAD(高度20km/範囲70km)、BARAK ER(高度30km/範囲150km)を使い分けるため、有人航空機、無人航空機、ヘリコプター、巡航ミサイル、超低空を飛行してくるミサイルやドローン、滑空爆弾、弾道ミサイル(LRADとERの対応)を迎撃することが可能だ。
Video of the Armenian Iskander launch pic.twitter.com/keTt7IT2MG
— Fabian Hinz (@fab_hinz) November 9, 2020
Barak-8を含めた運用国はイスラエル、アゼルバイジャン、インド、モロッコで、Middle East Eyeは「アゼルバイジャンに対して軍事的劣勢のアルメニアは旧ソ連製のTochkaやScudの後継となるIskanderに頼っていた。2020年のナゴルノ・カラバフ紛争でアルメニアはIskander-Eをアゼルバイジャンの首都に撃ち込んだが、これをアゼルバイジャンがBarak-8で迎撃することに成功した」「アルメニアやロシアはIskanderの使用を認めていないが、この戦争後に退役したアルメニア陸軍のハコビアン大将はIskanderが使用されたと述べた」と報じたことがある。
因みにアルメニアのIskanderによる攻撃は失敗したものの、Middle East Eyeは「アゼルバイジャン側はIskanderによる攻撃が拡大すればエスカレーションを招くと懸念した」「結果的にIskanderの攻撃はアゼルバイジャン側にアルメニアとの停戦を受け入れさせた」と指摘している。
関連記事:NATO加盟を果たしたフィンランド、イスラエルからデービッド・スリングを調達
関連記事:イスラエル、多層防空システムBarak MXを売却することでモロッコと合意
関連記事:役に立たない? アルメニアとロシアの間で勃発したイスカンデル論争
※アイキャッチ画像の出典:Israel Aerospace Industries
イスラエルの防空システムの優秀さはガザ侵攻でも証明されていますしね。
短距離弾道ミサイルの強力さはウクライナ侵攻でも目立ちますしそれを迎撃できる実践があり色んな目標にも対応できるとあれば妥当な選択だと思います。
でもお高いんでしょう?と思ったけど、6機1セット周辺機器コミコミで5.5億ユーロ(=約900億円)ならパトリオット一式よりも安いか
バラクは電光、稲妻の意味らしいね。
由来としては、カナン人を打ち破った裁き人バラクでしょうね。
これは興味深いですね。
武器購入は、安全保障問題の為、外交や世論なども強く影響します。
ガザ戦争・中東情勢は、イスラエルの攻撃による被害があまりにも大きいため、懐疑的に言われてきました。
長崎の原爆式典イスラエル不参加を理由に、G7大使が参加拒否していましたが、本件もイスラエルの強い国力を感じます。
(スロバキアもEU加盟国のため)EUの人権問題は建て前、イスラエルがヨーロッパに持つ強い力を感じてしまいます。
イスラエルと欧米は、ますます距離を取ることが難しくなりますね。
兵器の生産をEU内で行うなら判るのですが、どこでやるんでしょうねぇ。兵器の安全保障・安定供給を名目にイスラエル支援の派遣すら将来行いそう。
ユダヤ系のインテルもイスラエルで生産しているし。台湾依存は危険と言っているけど、イスラエルはどうなんだ。
ダブルスタンダードだろうか。
ウクライナ戦争=ガザ戦争、並行して見れば、歴然とした違いを感じますね。
イスラエルは、欧米にとって宗主国ように不可分であり、仰る通り核心的な国益のようなものだったんだなと。
マクドナルド不買運動・スタバ不買運動により業績悪化していますから、イスラム圏の怒りを末端レベルから感じています。
イスラエルよりも、中東の石油・天然ガスの方が最重要なわけですから、日本はガザ戦争(イスラエル追随)に上手く距離をとれて大正解でしたね。
元はイスラエル海軍の中距離SAMと思えます。
発射の写真を見ると、形状が米国のスタンダードミサイルに似ていると思います。
発射機もMk41VLSを使えるみたいだし。
であれば、運用システムによっては、SRBMも墜とせるのかな?
記事内容と関係ないコメントを投稿します。すみません。
「だいぶ溜まってんじゃんアゼルバイジャンWiki」という、コーカサス情勢を中心にした国際情勢についてまとめるWiki(最近はウクライナ情勢がメインになっている)において、このサイトが信頼性の低い情報源扱いされており、納得いかないのでこのサイトの中立公正さを伝え訂正に協力してくれる方を募集します。
イスラエル一国で、BARAKとSPYDERという似通った防空システムが有るのはちょっと不思議な感じもしますね。
BARAK MXの方が迎撃範囲と高度に優れるから、こちらが選ばれるのは当然か。でも、戦術的な機動性はSPYDERの方が高い感じがしますね。今後は野戦防空システムも全周フェイズドアレイレーダーを備えるのが当たり前になるのかな。
日本にも欲しい。中SAMは制式化から21年、ペトリオットは70年代の技術で作られている。もうどうしようもなく古い。
イスラエルは先進国・ブルーチームで一番真剣に防空を考えてる国だろう。
こんにちは
中SAMに関しては2017年度から中SAM改が納入されて順次置き換わってるのと、現在もSRBMやHGVへの対処能力を備えた能力向上型を開発中なので、決して古い兵器ではないかと。
能力向上型はかなり前倒して開発中ですし…
今更そういう”お買い物感覚”で見るマニアなんて何の役にも立たんけどね。
ガジェットマニアがどこのスマホはいいとかチップはどこがいいと言ってるんじゃないんだから。