欧州関連

イタリア空軍、ビーストモードで訓練するF-35AとF-35Bを初公開

イタリア空軍は27日、ビーストモードと呼ばれる状態で初めて訓練を実施したF-35AとF-35Bの様子を公開した。

参考:F-35: PER LA PRIMA VOLTA MISSIONE ADDESTRATIVA F-35A E F-35B IN “BEAST MODE”

世界で唯一、F-35AとF-35Bを同時運用しているイタリア空軍がビーストモードのF-35を公開

イタリア空軍は空軍仕様のF-35Aと海兵隊仕様のF-35Bを同時運用している世界で唯一の軍事組織(F-35B導入予定の航空自衛隊が2例目)で、通称「ビーストモード」と呼ばれる状態で初めて訓練を実施したF-35AとF-35Bの様子を公開した。

第4世代戦闘機までは搭載兵器や増槽を胴体下部や主翼下のパイロンに取り付けて運用するのが一般的なのに対して、ステルスを優先する第5世代戦闘機は搭載兵器や燃料を全て機内(ウェポンベイ)に収容する方式を採用しているが任務の内容や戦場の状況によってはステルスよりも搭載量を優先する場合があり、F-35も主翼下に3ヶ所つまり左右計6ヶ所のパイロンに兵器や増槽を搭載することができる。

出典:イタリア空軍

ただビーストモードと呼ばれる状態だとパイロンに搭載した兵器がレーダー反射面積を増やしステルス性能を著しく低下させるため「戦争が始まってから3日目の運用形態」と呼ばれることがあり、逆にウェポンベイのみに限定した状態を「戦争初日の運用形態」と呼ぶこともあるため、この状態を示す正式な名称(Bomb Truckとも呼ばれることがある)は今のところ決まっていない。

あとイタリアはF-35AとF-35Bを導入している数少ない国の一つだが、この国のF-35調達は政権交代と経済状況に振り回されており予定通り調達が進むのか謎だ。

イタリアは当初、F-35を計131機(A型69機+B型62機)を調達する予定だったがソブリン危機の影響を受けてを調達数を90機に削減、さらにF-35導入中止を掲げた「五つ星運動(Five Star Movement)」が選挙に勝利して政権を獲得したためF-35調達が危ぶまれたが、導入を中止すると高額な違約金が発生するため調達ペースを落とすことで(年間10機→5機)決着した。

しかし新型コロナウイルスの影響で経済に大きなダメージを受けたイタリアはF-35の調達を1年停止して調達資金を医療分野に回そうと言い出したり、調達数の変更を含むF-35調達プログラムの再検討を行うと言い出しているので、この先どうなるのかよく分かっていない。

出典:イタリア空軍

さらにイタリアの場合、62機調達予定だった海兵隊仕様のF-35Bが30機まで削減されてしまい困ったことになっている。

イタリア海軍は空母「カヴール(定数12機)」でF-35Bを運用予定なので30機もあれば十分だと思うかもしれないが、半分の15機は空軍に割り当てられて滑走路の短い陸上基地からの運用に使用(空軍機のF-35Bは空母で運用しない前提)されるため海軍への割り当ては15機しかない。

訓練機や予備機をのことを考えると海軍のF-35Bの保有予定数は正にギリギリの数字で、訓練で機体を失うことがあれば運用が直ぐに苦しくなるだろう。

この他にもイタリア海軍はF-35Bの運用も可能な強襲揚陸艦「トリエステ(2万2,000トン)」が昨年5月に進水、実質2隻もF-35B運用艦を保有しているのに肝心の機体が15機しかないというのは完全に宝の持ち腐れだ。

せめて空軍と海軍に分けられたF-35Bを統一運用できれば少しはマシなのだが、、、

 

※アイキャッチ画像の出典:イタリア空軍

SM-3迎撃実験への対抗? ロシアが対弾道ミサイル迎撃システム「A-235」をテスト前のページ

韓国、最大54km先を攻撃可能な155mm射程延長弾「K315」の開発が完了次のページ

関連記事

  1. 欧州関連

    スロバキアがドイツの要請を拒否、レオパルド2A4の提供数が少なすぎる

    スロバキアはドイツから「レオパルド2A4を提供するので保有するT-72…

  2. 欧州関連

    ウクライナ軍兵士、とっくの昔にドニエプル川左岸での主導権を失っている

    ニューヨーク・タイムズ紙とKyiv Independent紙はウクライ…

  3. 欧州関連

    ウクライナとロシアの電力を巡る戦い、今年の冬は昨年の再現で終わらない

    ゼレンスキー大統領は6日「冬にロシアがエネルギーインフラへの攻撃を再度…

  4. 欧州関連

    アルツァフ共和国の消滅が確定、アルメニアに逃れた住民も7万人を突破

    アルツァフ共和国のシャフラマニャン大統領は28日「2024年1月1日ま…

  5. 欧州関連

    ウクライナ軍、バフムートに弾薬、食料、医薬品を輸送することが出来る

    ウクライナ軍は5日「バフムートに弾薬、食料、医薬品を輸送することができ…

  6. 欧州関連

    イタリア海軍、F-35B運用資格を取得するため空母カヴールが米国に到着

    米海軍は13日、F-35B運用資格の取得手続きを行うためイタリア海軍の…

コメント

    • 匿名
    • 2020年 11月 28日

    これがいつものイタリアだから。国際的政治力、軍事的プレセンスもすべてうわべだけ、考慮する必要なし。地中海を巡るトルコやロシアの動きに対処する気もないんですよ、すべてが内向き
    三国同盟のお荷物だった黒伝統だけは健在

    15
      • 匿名
      • 2020年 11月 28日

      なんかどこぞの南半島国を彷彿とさせますな
      地形が似てると内容も似てくるんでしょうかね

      10
        • 匿名
        • 2020年 11月 28日

        それどころか、イタリアは南北問題もあるぞ
        そもそもイタリアは150年程前までは小国の寄せ集めだったから、地方間でのアイデンティティーの差が大きい(この辺りも韓国の地方間の意識差に似ている)
        勿論イタリア人としての意識よりも住んで居る地方に対する帰属意識が大きい
        その上、近代以前は南イタリアが裕福で北イタリアは満足な食料も無い位貧しかったが、近代以降は逆転して工業化に成功した北の方が裕福だから、南の人達の恨みは結構凄いらしい
        これに差別やテロが絡んで、時には南北分裂するんじゃないかって言う位対立が激しくなる事もある

        15
          • 匿名
          • 2020年 11月 29日

          >そもそもイタリアは150年程前までは小国の寄せ集めだったから

          「150年程前」なら日本も似たような状態だよ。
          明治元年が1868年だから。
          なので、その話しは省くか、「地方に対する帰属意識」をメインにしてその補完材料として出す程度に留めておくべきかと。

          2
            • 匿名
            • 2020年 11月 29日

            >「150年程前」なら日本も似たような状態だよ。

            残念ながら、江戸時代の日本(明治維新前)と同時代のイタリアは全く違う
            明治維新前の日本は皇室と江戸幕府の下に、一応の国家統一が図られていた
            勿論現代国家とは大きく違うが、江戸幕府時代の各藩は独立国家とは言い切れない
            此れに対してイタリアは独立国家が複数あって(時代にもよるが、大体8から12カ国位)、中にはローマ教皇が統治する教皇領と言う物迄あった(現在のバチカン市国はその名残)
            因みに、サンマリノ共和国は嘗てのイタリアに有ったこれらの小国の生き残りだったりする
            この辺りのイタリアの歴史は非常に複雑なので、一度調べてみると嫌になるよ

            16
    • 匿名
    • 2020年 11月 28日

    この迷走ぶりはさすがパスタとしか言えない……

    13
      • 帝国航空
      • 2020年 11月 28日

      イタリア周辺の脅威は日本ほど切迫してないからしょうがないのか…?

      5
        • 匿名
        • 2020年 11月 28日

        イタリアも地中海がきな臭くなっているし、海の向こうのリビアはアレな状態だから切迫していない訳では無いだろうけど、本音の所は毎年恒例の不景気と財政破綻、そしてコロナ禍対応が優先で国防は考えたくも無いのが本音だろうね

        5
          • 帝国航空
          • 2020年 11月 28日

          しかし武装船が毎日領海侵犯する訳でもないし、対岸のイスラム圏の空軍も中共解放軍ほど強力ではないだろうから、感覚は違うでしょうな。

          18
            • 匿名
            • 2020年 11月 28日

            船いっぱいの難民が毎日やってくるのも怖いと思うよ。
            武装船なら国がバックにいているからまだ動きが想定しやすいが
            難民船をF-35で物理的に対処するわけにもいかない。
            さらに難民が南部にたどり着くのでイタリヤ南北問題に悪影響を与える

            6
    • 匿名
    • 2020年 11月 28日

    F3もこんな形態ができるのかな?

    5
      • にわかミリオタ
      • 2020年 12月 24日

      まぁ、できるよな。
      匿名時代のコメなんだけど。

    • 全てF-35B
    • 2020年 11月 28日

    日本も人のことは言えない。
    いずも型以外に輸送艦、掃海母艦の更改で、DDH運用に入れる艦が5隻増えそうだが、飛行隊はどうするのだろう。
    F-35Aの発注をBに変えるのかな?

    1
      • 匿名
      • 2020年 11月 28日

      いずも型は試験運用的な改装に過ぎないし、輸送艦と掃海母艦の更新は恐らく10年位先の話だろうから、今から搭載機の皮算用をするのは早い
      飛行隊の増設やF-35Bの追加発注の是非が議論されるのは、早くとも輸送艦と掃海母艦の更新が具体化してからだろう

      14
        • 全てF-35B
        • 2020年 11月 28日

        全ての体勢が整う迄には3年位掛かりそうだから。
        その時、世界はどうなっているかな。
        私は、もういないだろうが。

        1
          • 全てF-35B
          • 2020年 11月 28日

          訂正、30年掛かりますね。

          1
          • 匿名
          • 2020年 11月 28日

          おじいちゃん強く生きて…

          17
      • 匿名
      • 2020年 11月 28日

      すでにB型は42機の発注している(A型は105機)
      F-3発注の兼ね合いもあってこれ以上の難しいかもしれないが、息の長い戦闘機になるだろうし足りなくなったら発注するのではないだろうか

      4
        • 匿名
        • 2020年 11月 28日

        「一切触らせない」って言われている機体が息の長い戦闘機になるかと言うと少々疑問。
        アップの費用が相当高くなるのではないかなぁ。

        どこかで米帝の方針変換があればともかく現時点ではつなぎの機体になりかねないような気もする。
        まあ、F35Bは替えがないから長く使うだろうけど。

        5
          • 匿名
          • 2020年 11月 28日

          F-3が上手くいったらF-15も更改して、F-35AをBに変更するのがいいのでは?

          3
            • 匿名
            • 2020年 11月 29日

            三機種運用したいんだろうけど流石に十五年後にFー15を日本が運用する意味ない気がするなー。Fー35、Fー3、それから計画聞いた事ないけどFー3の発展型を使っていくのがいんじゃないかなぁ。そろそろ次やりたくなってる頃だろうし。タイフーン入れて外交的に関係強化もありかもしんないが。

      • 匿名
      • 2020年 11月 29日

      輸送艦(実質強襲揚陸艦?)でSTOVL戦闘機を運用するかはまだ分からんでしょ。
      10年以上先の計画だから、その頃はヘリとSUVの組み合わせが強襲揚陸戦のトレンドになるかも。
      日本は島嶼部奪還作戦用の部隊と装備を整えようとしてるわけで、F-3は南西諸島域での航空優勢を確保することを前提に開発される制空戦闘機ですから、輸送艦にF-35Bを搭載する必要性は必ずしもありません。

        • 匿名
        • 2020年 11月 29日

        自己訂正;SUVでなくUAVです。

    • 匿名
    • 2020年 11月 28日

    追加でもっと買っといた方が良いと思ったり……

    ビーストモードて主翼にサイドワインダー6発積めるのかな?アスラームでも良いけど

    • 匿名
    • 2020年 11月 28日

    身を…捨ててこそ…浮かぶ瀬も…あれっ‼︎

    6
      • 匿名
      • 2020年 11月 28日

      ステルスレ○プ!野獣と化したF-35

      4
    • 匿名
    • 2020年 11月 28日

    ビーストモードってかっこいい。
    やはり戦闘機はこうじゃなきゃ。
    ステルス性能はガタ落ちだろうけれど。

    2
    • 匿名
    • 2020年 11月 28日

    >主翼下に3ヶ所つまり左右計6ヶ所のパイロンに…。
    胴体には何も搭載できないのかな?
    そんなに足が短いとは思えないけれど。

    1
      • 匿名
      • 2020年 11月 28日

      胴体下はウエポンベイの扉に干渉するのでガンパックくらいしかつけられない。
      地上で扉を開いてる、正面か真後ろの写真でも探して見てもらえば一目瞭然。

      4
        • 匿名
        • 2020年 11月 28日

        機外搭載機材もステルス化できればいいのに。

        1
          • 匿名
          • 2020年 11月 29日

          機外搭載機材をステルス化しても、それを懸吊するパイロンは構造上ステルス化の仕様が有りませんからね…それこそ機動警察パトレイバー・劇場版2のF-15J改みたいに、機材をコンフォーマルタンク風に機体に貼り付けるしか無いのでは?

          • 匿名
          • 2020年 11月 29日

          パイロンの固定用の金具?が電波反射源になりそう。
          F/A-18で提案されてたウエポンポッドみたなのなら別だろうけど。
          リンク

          1
    • 匿名
    • 2020年 11月 28日

    滑走路が短いからF35Bって。。。。 グリペンでいいんやないの?
    周辺に直接の脅威もないし、F35A自体はそれなりに入るわけだし。領空防衛なら十分だと思うけどねぇ。3機種ならいけそうな気もするけどねぇ。
    海軍に20機でグリペン25機でもほぼ同じ費用では? ステルス塗装のメンテナンスも大変だし。

    チェコ、ハンガリーと共同整備協定でも結んで運用費用を抑えるとか。。は無理かな

    1
      • 匿名
      • 2020年 11月 29日

      パッと見良さそうやけど、原因は予算の
      取り合いみたいだから難しいんかねぇ。

    • 匿名
    • 2020年 11月 28日

    イタ公もお金ないんやな…(遠い目
    お金があれば欲しい物いっぱい買えるのにね。

    このまま調達数が減らされるとF-35Bの方は高くなりそうだから、うちらも他人事ではないね。

    5
    • 匿名
    • 2020年 11月 28日

    日本だって明日からイタリアと位置交換しますってなったら国防政策なんてクソ雑になるよ
    ボートピープルが押し寄せてくるのは軍ではなく海上警察の問題だしな

    ところで自衛隊はF-35をビーストモードにしたところとか公開してるっけ?
    見た記憶がないけど

    4
      • 匿名
      • 2020年 11月 28日

      空自としては先ずは空対空が優先だろうから、爆弾満載は優先順位は低いはず
      でもアラート任務だと、リフレクター付けた上で武装を見せる方が都合が良いから、翼端にサイドワインダー積んだ形態は出てくる可能性が高いかと

      5
        • 匿名
        • 2020年 11月 29日

        そう。アラート任務でステルス要らんからね。
        F-15SEとか出来るのなら、買ってもいいかも。

        2
  1. この記事へのトラックバックはありません。

  1. 欧州関連

    オーストリア空軍、お荷物状態だったタイフーンへのアップグレードを検討
  2. 中東アフリカ関連

    アラブ首長国連邦のEDGE、IDEX2023で無人戦闘機「Jeniah」を披露
  3. 欧州関連

    アルメニア首相、ナゴルノ・カラバフはアゼル領と認識しながら口を噤んだ
  4. 軍事的雑学

    サプライズ過ぎた? 仏戦闘機ラファールが民間人を空中に射出した事故の真相
  5. 米国関連

    F-35の設計は根本的に冷却要件を見誤り、エンジン寿命に問題を抱えている
PAGE TOP