イタリアのLa Repubblicaは先月「メローニ政権が準備しているウクライナ支援パッケージにSAMP/Tが含まれる」と報じていたが、タヤーニ外相も3日「SAMP/Tを追加提供する」と公に認めたが「ロシア領内を提供した武器で攻撃することは容認できない」と付け加えた。
参考:Italy to send second air defence system to Ukraine, foreign minister says
参考:The Netherlands spearheads initiative to jointly deliver Patriot system for Ukraine, calls on other European nations to contribute
参考:“‘Patriot’-Einsatz ist denkbar”
参考:Italy has given Ukraine long-range missiles, says UK defense minister
参考:Zelensky urges US to allow Ukraine to strike Russia with ATACMS missiles
参考:Білий дім прокоментував можливість розширення дозволу на удари по Росії зброєю США
イタリア外相はウクライナへのSAMP/T追加供給を公に認めたが、ロシア領内での使用を否定
ウクライナはパトリオットシステムの追加供給(7セット)を西側諸国に要請中だが、提供候補に名前が挙がっていたギリシャは「自国の安全保障は犠牲に出来ない」と理由で提供を拒否、米国も発表した支援パッケージにシステム本体の提供を含めておらず、スペインも本体ではなく迎撃弾(12発)の提供に留まり、ルーマニアのヨハニス大統領は「パトリオットシステムの提供を検討する」と述べたものの「自国が防空システムなしで放置されるのは容認できない」と述べており、直ぐに保有するパトリオットシステムをウクライナに移転する可能性は低い。

出典:MApN/CC BY-SA 3.0
オランダは5月末「パトリオットシステムを構成するコンポーネントや弾薬を追加提供できる国を特定した。これを提供するよう当該国に呼びかけており、オランダが提供するコア・コンポーネントと組み合わせてパトリオットシステムを迅速にウクライナに提供したい=複数の国から構成要素(レーダー、指揮統制、発電機、ランチャー、弾薬など)を集めてパトリオットシステムを構築するという意味」と発表したが、この取り組みが何処まで進んでいるのかは不明だ。
真っ先にウクライナの要請に手を上げたドイツは「6月中に追加のパトリオットシステムを引き渡す」と明かしており、La Repubblicaは先月「メローニ政権が第9次ウクライナ支援パッケージの承認を決定した」「SAMP/Tが含まれるパッケージはG7前までに準備が整う」と報じていたが、タヤーニ外相も3日「これまでと同様に軍事支援の中身は秘密だがパッケージにSAMP/Tが含まている」「ウクライナへのSAMP/T追加提供は秘密ではない」と述べたものの「ロシア領内を提供した武器で攻撃することは容認できない」と付け加えた。

出典:Zelenskiy/Official
英国のシャップス国防相は4月末「ウクライナがクリミアを攻撃するため英国、フランス、イタリアがStorm Shadowを提供した。この兵器は戦場で大きな違いを作り出している」と言及したため、イタリアもStorm Shadowを提供している可能性が高く、タヤーニ外相の言及は「Storm Shadowによるロシア領内の攻撃」「SAMP/Tによるロシア領空内での迎撃」を容認しないという意味だろう。
複数のウクライナメディアは「ドイツがパトリオットシステムによるロシア領空内の迎撃を許可した」と報じているが、これはドイツメディアの取材に応じたフロイディング少将(ウクライナ支援の責任者)が「ドイツ提供のパトリオットシステムがハルキウやロシア上空で使用されることは十分考えられる」「滑空爆弾を搭載できる敵戦闘機と交戦するのに理想的なシステムだ」と発言したことに起因しており、政府がパトリオットシステムの使用を許可したのか、実際に使用されたのかなどは明かしていない。

出典:Photo by John Hamilton
バイデン大統領はウクライナや同盟国から「米国製兵器によるロシア領内の攻撃」を許可するよう迫られ、ブリンケン国務長官は31日「大統領がウクライナを攻撃する国境外の敵に反撃するため米国製兵器の使用を承認した」と発表、Wall Street Journalも「ウクライナ軍はハルキウ攻撃にロシア軍が使用しているロシア領内の司令部、弾薬庫、その他の資産にHIMARSを使用できるようになったが、ロシア領内に対するATACMSの使用は許可されていない」と報じている。
ゼレンスキー大統領は2日「ロシア領内に対するATACMSの使用を認めるべきだ」と発言しているため「WSJの報道内容は事実だ」と確認され、ホワイトハウスのカービー大統領補佐官も3日「バイデン政権はロシア領内を攻撃する米国製兵器の使用範囲を拡大する可能性があるのか」という質問に「現在のアプローチが今後数週間から数ヶ月で変更されるとは思っていない」「(許可したGMLRSによる攻撃が状況に変化をもたらすかどうか)様子を見るつもりだ」と述べた。

出典:U.S. Army photo by Eugen Warkentin
米国がパトリオットシステムによるロシア領空での迎撃を許可しているのかどうかも不明で、現時点で「ロシア領内の攻撃に使用できる」と断言できるのは「米国提供のGMLRS」と「英仏提供のStorm Shadow」のみだが、状況は流動的なので明日何が起こっても不思議ではない。
追記:イタリアがウクライナに提供するSAMP/Tはクウェートに展開していたものらしい。
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※アイキャッチ画像の出典:MBDA
火力発電所・水力発電所は、破壊され尽くされつつありますからね。
原子力発電所も、ロシア本土攻撃の報復攻撃に備える必要はありますが、ウクライナが防空システムをどこに置くのか悩ましいですね。
悩むかな。
ハルキウ一択じゃね?
ハルキウだと、それこそグラードですら届いてしまいます。
1万発あるという噂のS-300を乱れ打ちされてもアウトですし、そもそもランセット改良型の攻撃範囲でもあります。
ちょっと虎の子の対空ミサイルを配置できるエリアでは無いかなと。
なるほど 勉強になります。
確かに配置場所は難しいですね。
そもそもS300の1万発の件。ホントですかね。
ホントなら、対空ミサイルの1〜2セット追加配備しても、焼石に水 速攻無力化されるかと…。
ゼレンスキーネタだけに、眉唾です。
支援クレクレのネタの一つかな?
弾頭の数が限られてますから、配備場所は悩ましいですね。
現場で「えーっとこれはどこまで撃って良いんだっけ」
みたいなやり取りがありそう
確認できてませんが、既にベルゴロドにATACMS撃ち込んだと思われる子弾が散乱している画像がでており、何が本当なのかさっぱりな状況です
表向きは「GMLRSだけ」と言いながら実際は違うという事もありえそうです
確かウクライナもクラスター弾を持っていたのでクラスター弾の小弾が残っていたとしてもATACMS が使用された証拠にはならないですね。
むしろ、アメリカのクラスター弾は不発弾が少ないのが特徴だったはずなので子弾が散乱していたならウクライナのクラスター弾の可能性が高くなってきますね。
湾岸戦争でも命中率98%といいつつ実際は10%を切っていたミサイルといい
GPS妨害受けただけでイラン製ドローンに大きく劣る役立たず扱いされている自称世界最高峰性能ドローンといい
クラスター弾の不発率だけカタログスペック通りというのはあり得るのだろうか?
西側兵器も色々とメッキが剥がれてきましたね。
次は神格化されたF-16の番ですね。
ジャベリン神やTB-2みたいにF-16も一瞬だけ輝くんじゃないのかなあ。
MQ-9がイエメンで次々撃墜されているそうです。
>7か月で6機!イエメンで撃墜されるアメリカのMQ-9リーパー無人機
>ミリレポさん
アメリカの最新兵器()…。