欧州関連

イタリア国防省、テンペストへの投資額を28億円から300億円に増額

イタリアは2022年度の国防予算引き上げを発表、追加予算が投入され国防予算の総額は180億ユーロになり、増額された資金はテンペスト・プログラムへの追加投資やウクライナ問題への対応に充てられる予定らしい。

参考:Tempest program, Russian invasion drive growth in Italy’s defense budget

今回の国防予算の引き上げは「一時的なもの」で終わる見込みで、2024年までに2.0%達成も2028年に後退

イタリアの国防予算は国防省に割り当てられた資金、産業省に割り当てられた装備の国内調達資金、海外任務のために割り当てられた別財源の3つで構成され、追加予算が投入されたのは国防省に割り当てられた資金(180億ユーロ)で、3つの資金の合計は215億8,000万ユーロ(約3兆円)になる。

出典:BAE Systems

この内、装備調達や研究開発に投入される資金の総額は78億3,000万ユーロで2021年と比較して24億3,000万ユーロも増加しており、テンペスト・プログラムへの投資を2,000万ユーロから2億2,000万ユーロ(2023年は3億4,500万ユーロ)に増額、総額12億ユーロと見積もられているサン・ジョルジョ級強襲揚陸艦の後継艦プログラム、総額21.4億ユーロと見積もられているダルド歩兵戦闘車の後継車輌プログラム、 U212NFSの調達に総額5.1億ユーロ、タイフーンプログラムに14億ユーロ、F-35調達プログラムに12.7億ユーロが投資される予定だ。

今回の国防予算引き上げで最も恩恵を受けたのはテンペスト・プログラムだと評価されており、個人的に興味深いのはダルド歩兵戦闘車の後継車輌プログラムで「国際的なパートナーを2024年までに決定して13年間支出が続く」とイタリアは言及しており、これを額面通り受け取れば「共同開発」という形態を目指しているのだろう。

出典:Italian Army/CC BY 2.5

ただ新規設計の歩兵戦闘車を共同開発するのか、ASCODやCV90といった定番の歩兵戦闘車をベースに派生型を共同開発するのかは不明で、もし前者なら経済的なスケールメリットを確保するため調達規模の大きなパートナーが必要になるかもしれない。

どちらにしてもイタリアの国防支出はGDP比1.4%前後でNATOの努力義務=2.0%に達しておらず、2024年までに2.0%を達成するという公約も2028年達成に後退、78億3,000万ユーロまで増額された調達資金も2023年には61億8,000万ユーロまで減少する予定で、今回の国防予算の引き上げは「一時的なもの」で終わる見込みだ。

関連記事:イタリア、2035年までに第6世代戦闘機「テンペスト」の開発へ約2,600億円を投資予定

 

※アイキャッチ画像の出典:BAE

タイ議会がF-35A調達資金を来年度予算から除外、空軍は予算復活を訴える前のページ

フランス、競合したロシアと韓国を破ってイラクからSAMP/Tを受注次のページ

関連記事

  1. 欧州関連

    ナゴルノ・カラバフ紛争で停戦が実現 → 停戦発効から5分後にアゼル軍が攻撃再開

    アルメニアとアゼルバイジャンが捕虜交換や戦死者の遺体回収のため一時的に…

  2. 欧州関連

    独ラインメタル、KF51パンターの輸出についてキーウと話し合っている

    独ラインメタルのパッパーガー最高経営責任者は「KF51パンターの輸出に…

  3. 欧州関連

    トルコ、レオパルト2とアルタイを合体させたハイブリッド戦車を披露

    トルコは新しい155mm自走榴弾砲「T155フィルティナNG」の初納入…

  4. 欧州関連

    EUのウクライナ支援、加盟国の全会一致が必要ないBプランを準備中

    EUによる総額500億ユーロのウクライナ支援はハンガリーの拒否権発動に…

  5. 欧州関連

    ナゴルノ・カラバフ紛争、アゼルへの武器供給を遮断するのが難しい理由

    アルメニアのアルメン・サルキシャン大統領は5日、イスラエルのルーベン・…

  6. 欧州関連

    アゼル軍が要衝シュシャに進軍、アルメニア側の補給路遮断に成功か

    アゼルバイジャンのアリエフ大統領は8日、ナゴルノ・カラバフ地域の都市シ…

コメント

    • 名無し2
    • 2022年 7月 27日

    お、イタリアが気合を入れてくれとるぞ。もうこれでテンペスト=F-3は一生安泰だな!()

    6
    • 匿名
    • 2022年 7月 27日

    イタリアの歩兵戦闘車も韓国と共同開発となると予想する
    テンペストはイタリアと日本が購入するが、他に売れる当てはあるのかね?
    フランスとドイツのFCAS計画が拗れて、フランス単独で開発する事になればドイツにもテンペストは売れる可能性はあるのか

      • 774545
      • 2022年 7月 27日

      >テンペストはイタリアと日本が購入するが、他に売れる当てはあるのかね?
      何故こういう嘘を平気でつくんだろうな匿名さんは

      52
      • 名無し2
      • 2022年 7月 27日

      大炎上必至のテンペストか、アメリカ製完成品を買わされるかの究極の二択ですね次期戦闘機…。それに比べたら歩兵戦闘車とか戦車とかはまだいろいろ選択肢があるように思われます。FCAS…??そんなのあるんですか知らなかったです

      4
        • STIH
        • 2022年 7月 27日

        大炎上しないよう工夫しようとしているのがテンペストプログラムのはずなんですけどね。今のところは国際規格の技術委員会みたいに、技術の持ち寄りとパテントプールのようなものを実現するプログラムのように見えますが、さらにその先、実装(機体部品)の共通化や完成品の生産の分担まではプログラムの枠組み内ではやらないんじゃないでしょうか。それだったら大炎上する要素は、そんなには無い気がしますけど、どうでしょう。

        5
          • 名無し2
          • 2022年 7月 28日

          ものの言い方とらえ方になりますが、日本で将来戦闘機ビジョンが発表されて10年以上、あと10年以上かかるとなれば昔の基準ならもう大炎上状態ですが、我々はF-35を知っているので、初めから20年以上かけて燃えるよう計画され制御しながら炎上できます。

            • バーナーキング
            • 2022年 7月 30日

            それはただの言いがかりですね。
            ビジョンはビジョンでしかなく、開発開始ではありません。
            そもそもビジョンでは当初から

            >F-2戦闘機後継の取得を検討する所要の時期に(国産)開発を選択肢として考慮できるよう

            となっており、「F-2戦闘機後継の取得を検討する所要の時期」である数年前から国産開発を選択肢に入れて検討し、結果として国産主導の国際共同開発になった訳で、時期も結論もまあまあ妥当でしょう。個人的にはLMとの共同開発話が要らない寄り道だったし、最強の当て馬を失った点で痛いとは思いますが。
            これで「テンペストに完全統合」が本当であればブレた、ヘタれた、という話が出るのも分かりますが、現時点ではロイターの記事は飛ばしか観測気球に過ぎない可能性が高いですしね。

            1
      • ido
      • 2022年 7月 28日

      なんでそう嘘をつくんですかねぇ。

      2
    • 名無し2
    • 2022年 7月 27日

    >テンペストはイタリアと日本が購入するが、他に売れる当てはあるのかね?
    作らないと全員NGADを買わされることになるので作らざるを得ないんですよね・・・アメリカ強すぎワロタ
    >イタリアの歩兵戦闘車も韓国と共同開発となると予想する
    というかそれしかありえないと思います。歩兵戦闘車などと言わず戦車もK-2で良いのでは。

      • 名無し2
      • 2022年 7月 27日

      管理人さまへ
      申し訳ない
      こちら上の匿名様へのレスのつもりで間違って新規書き込みしてしまいました。消してくださいますと幸いです。

      1
    • 2022年 7月 27日

    腹くくりましたねー。
    FCASも空中分解しそうですし、2030年代配備を目指すならそりゃテンペスト計画しかないですよね。
    気になるのはどの程度の共通化がなされるのかですね。
    XF9とJAGUAR実用化は今のところ日英濃厚として、イタリアはどこに収まるのか楽しみ

    3
      • NHG
      • 2022年 7月 27日

      そのJAGUARで組んでるのがイタリアじゃなかったっけ
      とググったらレオナルドUKと日本の共同事業となってますね

      yahoo news 「日英、次期戦闘機の高性能センサーシステムを共同開発」
      >イギリス国防省によると、このジャガーシステムを設計、構築、評価するのに約5年がかかる見込みで、イタリア防衛大手レオナルドの英国法人と日本企業が参加する。

      過去記事でF-35のアビオニクスを担当してるのがレオナルドという話もあった

      10
    • 2022年 7月 27日

    勘違いしてました!お恥ずかしい!
    アビオニクスは初耳でしたありがとうございます。

    2
  1. この記事へのトラックバックはありません。

  1. 北米/南米関連

    カナダ海軍は最大12隻の新型潜水艦を調達したい、乗組員はどうするの?
  2. 米国関連

    F-35の設計は根本的に冷却要件を見誤り、エンジン寿命に問題を抱えている
  3. 軍事的雑学

    サプライズ過ぎた? 仏戦闘機ラファールが民間人を空中に射出した事故の真相
  4. 中国関連

    中国、量産中の052DL型駆逐艦が進水間近、055型駆逐艦7番艦が初期作戦能力を…
  5. 軍事的雑学

    4/28更新|西側諸国がウクライナに提供を約束した重装備のリスト
PAGE TOP