欧州関連

イタリアのF-35調達数は90機から115機に拡大、新型タイフーンも取得

イタリアは17日に発表した予算文書の中で新型タイフーンの調達、F-35の追加調達、GCAPへの投資、F-35プログラムにおけるイタリア産業界のワークシェア規模、カーメリに設置されたF-35 FACOの売上、未確定の海上哨戒機取得に言及し、F-35の調達数は90機から115機に拡大することが判明した。

参考:Italy to buy 25 extra F-35 fighter jets under new budget

イタリアは伝統的な陸上戦力だけでなく航空戦力も増強、新しい海上哨戒機の調達も検討中

イタリアのメローニ政権は議会に提出したタイフーン追加調達案の中で「Tranche1を更新するためTranche4かTranche5を24機取得しなければならない」と述べていたが、17日に発表された国防予算の内訳と2026年までの予算見通しに関する文書の中で「新型タイフーンの調達」「F-35A/Bの追加調達」「GCAPへの投資」「F-35プログラムにおけるイタリア産業界のワークシェア規模」「カーメリに設置されたF-35 FACOの売上」「資金供給が確定していない海上哨戒機の取得」に言及。

出典:U.S. Air Force photo by Airman 1st Class Joseph Bartoszek

イタリア空軍が運用している93機のタイフーンの内26機は限定的な対空能力しか備えていないTranche1(単座16機+複座10機)で、2029年までに段階的な退役が予定されているが、17日発表の文書の中で「Tranche4(24機)の調達作業を開始するため2024年度予算の中で6.9億ユーロを確保した」と言及しているため、イタリアはCaptor-E/MK.1を搭載したTranche4を調達してタイフーンの戦力規模を2029年以降も維持する見込みだ。

ドイツもTranche1の更新用にTranche4を発注し、2024年6月にはTranche5の購入(20機)を発表したが、今のところTranche5が何なのか(対外的に)定義されていないため良くわからない。

出典:U.S. Air Force photo by Airman 1st Class Brooke Moeder

さらに文書の中で「25機のF-35を追加調達(空軍向けにF-35Aを15機とF-35Bを5機/海軍向けにF-35Bを5機)するため70億ユーロを投資する」とも言及しており、これは計画していたF-35の調達規模(90機→115機)が拡大することを意味するが、イタリアは元々131機の調達を予定していたため「元の調達規模に近づいた」とも言える。文書の中でも「F-35の131機調達はイタリアに必要な数だ」「90機から115機への増加はイタリアの地政学的立場を改善するだろう」と述べている。

因みにF-35プログラムにおけるイタリア産業界のワークシェアは47億ドル(2023年12月時点)に達し、カーメリに設置されたFACOについても文書の中で「欧州諸国(イタリアを含む)の導入国利用で売上が16億ドルに達した」と、英国、イタリア、日本が共同開発するGCAPに関しても「2024年に5.06億ユーロの投資が行われる」「これは前年度(2.71億ユーロ)の約2倍に相当する」と、まだ資金供給が確定していない将来の調達プログラムについても「空軍と海軍が共同で運用する海上哨戒機の取得(推定5.6億ユーロ規模)」に言及している。

関連記事:イタリアはTyphoonを追加調達、Tranche4かTranche5を24機取得か
関連記事:エアバスが期待するタイフーンTranche5、次世代戦闘機の能力を先行実装
関連記事:各国が別々に進めるタイフーン用レーダー開発、最終的な勝者はイタリアか
関連記事:Leonardo、3年以内にPantherとLynxをイタリア陸軍向けに出荷する
関連記事:LeonardoとRheinmetallが提携、イタリアはLeopard2からPantherに乗り換え
関連記事:イタリアのLeopard2A8導入が破談した可能性、Panther KF51を検討か
関連記事:レオナルド、イタリア軍向けにレオパルト2の大幅なイタリア化が行われた
関連記事:歩兵戦闘車の開発に乗り出すイタリア陸軍、数ヶ月以内に開発企業を選定
関連記事:イタリア、2024年度からレオパルト2、次期IFV、HIMARSの調達を希望
関連記事:イタリア、レオパルト2A8の新規調達とアリエテのアップグレードを実施
関連記事:イタリアで当面のギャップを埋める戦車調達が浮上、レオパルト2A7導入?
関連記事:イタリア陸軍、アップグレードされた主力戦車アリエテのプロトタイプが完成
関連記事:ポーランド陸軍の次期主力戦車に新たな挑戦者、イタリアが国際共同開発を提案

 

※アイキャッチ画像の出典:Photo by Dane Wiedmann

ゼレンスキー大統領の勝利計画、米国連大使と米国務省は機能すると評価前のページ

エストニアで高まるロシアへの恐怖、数年以内に侵略してくる可能性も次のページ

関連記事

  1. 欧州関連

    フランスが第6世代戦闘機に対応した次世代空母を発表、2038年までに就役

    フランスのマクロン大統領は8日、空母シャルル・ド・ゴールの後継艦が「原…

  2. 欧州関連

    スロバキアがウクライナへのMiG-29引き渡しを発表、ポーランドと合わせて計17機

    スロバキアのヘゲル首相は17日「本日の臨時閣議で政府は13機のMiG-…

  3. 欧州関連

    ポーランド海軍のフリゲート調達、SPY-7とイージスシステムを統合したスペイン案が脱落

    ポーランド国防省は新型フリゲート調達プログラムの最終候補に英国案とドイ…

  4. 欧州関連

    チェコ大統領、反攻作戦は期待外れで支援国も戦争疲れを感じている

    チェコのパベル大統領は「ウクライナ軍は戦場での優位性を示しておらず、来…

  5. 欧州関連

    エアバスがA400Mの正式受注をカザフスタンから獲得、累計受注数は176機に到達

    エアバスは1日、カザフスタンから2機のA400Mを正式に受注したと発表…

  6. 欧州関連

    韓国、輸出制限のないRedbackのライセンスをポーランドに提供できる

    韓国のハンファディフェンスはDefence24に「輸出制限のないRed…

コメント

    • 全てF-35B
    • 2024年 9月 19日

    もっと海軍向けのF-35Bを買わないと、いつまでもハリアーを使い続ける事になる。
    米海兵隊も直にハリアーを廃棄するよ。

    3
      • あまつ
      • 2024年 9月 19日

      元々イタリアのハリアー導入数は16機で空母1隻分しかなかったが今回の追加でF-35Bが計40機(空軍と海軍で20機づつ)になるのでカヴールとトリエテに十分な部隊を送り込めるでしょ。
      となると仮に海自が3隻目の空母(または強襲揚陸艦)を導入すると42機では不足することになり追加でB型を発注するかも。

      11
        • hogehoge
        • 2024年 9月 19日

        そもそもとして防衛省はF35Bを何年間に渡り運用するつもりなんでしょうかね

        海上運用ということを考えると損耗率もF35Aを上回るでしょうし、部品数の多さから稼働率も低くなる。
        また1985年に運用開始したハリアーIIの後継機として、F35Bの2015年運用開始まで30年の間隔が開いたわけで、STOVL機は財政的にも開発予算捻出は難しい。
        しかも次は有人戦闘機でなく無人戦闘機としてしか開発予算が出なそうな気がするので、F35B後継となる無人戦闘機はF35B運用空母と根本から変化し、運用手法を再構築する必要性が発生してしまうでしょう。

        つまりどういうことかというと、F35Bを将来分の予備機も含め十全に機数を保有しておかないと、30年とかした後に負債化して、とんでもなくエラいこととなる。
        陸上機のF35AはGCAPなりで補填出きるけれど、海上機のF35Bは難しいだろう。

        6
          • バーナーキング
          • 2024年 9月 19日

          需要と供給は相関するので、切り離して話をされてもあんまり説得力がない様な。
          現在STOVL空母を現役で運用してる3国が困らないのに、ようやく恐る恐る試験的に運用を始めようとしてる段階の日本だけが30年後に困る理由は少なくとも私は思いつきません。

          米英伊日が揃って必要としてるなら何かしら後継機が開発されるだろうし、情勢の変化で後継が不要になるなら要らないし、無人機等で代替されるなら流れに乗り遅れない様にすればいいだけでしょう。

          34
          • kitty
          • 2024年 9月 19日

          調達のアフォさで失敗したAHと違って、困る時はたくさんの国が同時に困るから寂しくないネ。

          17
          • ネコ歩き
          • 2024年 9月 19日

          情報開示請求により公開された防衛省資料によると、いずも型は10機程度のF-35B運用が可能と見積もっているようです。加えて飛行甲板上に8機を露天駐機可能とのことです。
          よって搭載運用数は最大18機になりますが、露天駐機を除外した通常運用数は10機と見て良いでしょう。
          現時点で確定しているF-35B調達数は42機ですが、その内訳は以下と思われます。
          1個飛行隊当り、常時稼動数16機(可動率80%として)配備定数20機 + 予備機1;計21機

          つまり、F-35B 1個飛行隊でいずも型2隻に充当できることになります。F-35Bの運用をいずも型艦載に限定考察するならば、当面十分な予備があると思いますよ。
          それ以上は次国家防衛戦略/防衛力整備計画次第です。

          3
    • F-3の配備期待
    • 2024年 9月 19日

    GCAPはどうなるんでしょうねえ
    日本はともかく、他の参加国がなにを欲しているのかイマイチ読めない
    とりわけ英国は共同開発国として協力してやっていけるのか不透明

    3
      • バーナーキング
      • 2024年 9月 19日

      ソースを英国政府、軍、企業トップの公式発言に絞れば、別にブレは感じないですけどね。
      強いて言えばやたらグイグイ日本の要求に寄せて来てるのが気持ち悪いくらい。
      もちろん油断のならない相手ではあるからGIGOの初代トップには何としても日本人を就けてキッチリ初期段階の手綱を握って欲しいとは思うけど。

      20
    • NHG
    • 2024年 9月 19日

    >因みにF-35プログラムにおけるイタリア産業界のワークシェアは47億ドル(2023年12月時点)に達し、カーメリに設置されたFACOについても文書の中で「欧州諸国(イタリアを含む)の導入国利用で売上が16億ドルに達した」

    いいなぁ
    開発国の特権とはいえドル150円換算ならほぼ1兆円か

    2
      • kitty
      • 2024年 9月 19日

      三菱のMRO&Uは、稼げているんでしょうかねえ。
      韓国も素直に日本に発注すれば相当お金を節約できるのに。

      1
        • バーナーキング
        • 2024年 9月 20日

        自衛隊分と在日米軍分だけだから「儲かる」って感じじゃないけど、国外に垂れ流すよりはなんぼかマシなんじゃないですかね。

        • 匿名希望係
        • 2024年 9月 21日

        そもそも韓国軍機受け入れるキャパあるので?
        あるとしても米軍や日本の将来増やす分の増加見込み分食いつぶすんなら普通に反対かな

        1
    • 無印
    • 2024年 9月 19日

    F-35B増えるみたいですけど、母艦になるトリエステはまだ就役してないんですかね?
    何かトラブルでもあったのかな…?

    2
      • 理想はこの翼では届かない
      • 2024年 9月 19日

      そういやイタリア海軍の装備更新の話が全然進んでないですね

      1
      • ido
      • 2024年 9月 19日

      トリエステは2023年中に就役予定でしたが普通に遅延(造船界隈あるある)。その後公試を行ってる最中に事故を起こし緊急入港、公試を2023年6月から10月にずらして2024年春の就役を予定。しかしコロナの影響かなんか(五つ星政党の予算削減の煽りを受けたかも)でまた遅延、今年中には就役させる予定だと聞きました(なお後3ヶ月以内に就役できるとは自分は思ってない)。

      4
        • 無印
        • 2024年 9月 19日

        詳細ありがとうございます
        就役は来年かな…

        1
    • ras
    • 2024年 9月 19日

    意味がないとは言いませんし増強自体はよいのですが、イタリアが2割強の主力兵器を増強することで具体的に何と比較してどのくらいポジションが上がるのでしょうね。現在は支援としてウクライナへの提供はありましたが、英仏米のように海外任務を前提としない限りイタリアのEU・NATO枠外でのポジションと言うのはあまりない気がしますが。
    EU・NATO内の軍備パワーバランスへの知識がすくないための不理解だとは思います。

      •  さ
      • 2024年 9月 20日

      「ポジションが上がる」の意味がよくわからない
      NATO内での政治力やらの話?
      いや、このご時世にそんなことを考えて増強したりは普通しないだろうから、そういう意味ではないのだろうな

      2
        • ras
        • 2024年 9月 20日

        「90機から115機への増加はイタリアの地政学的立場を改善するだろう」とありましたので、地政学的立場をポジションと言い換えてしまってました。まさにNATO含む国際情勢での政治力の話だと思いますが、イタリアがEU・NATO枠組以外で政治力を行使することがあるのか?という疑問です。

          •  さ
          • 2024年 9月 21日

          なるほど…
          イタリアは地理的にアフリカに近いためそちらへのあれこれは単独でもしたりする
          EUへの不法侵入(不法移民)としてまずイタリアへ上陸のパターンが滅茶苦茶多いのもあるので
          海や空での力の投射力はあればあるだけよいのだろうなと

          1
            • ras
            • 2024年 9月 21日

            確かに右派政権の移民対策で北アフリカに圧力をかけるための軍備かもしれませんね。なんならリビア直接介入などの戦力として抱えるのかもしれません。

  1. この記事へのトラックバックはありません。

  1. 欧州関連

    トルコのBAYKAR、KızılelmaとAkinciによる編隊飛行を飛行を披露…
  2. 欧州関連

    BAYKAR、TB2に搭載可能なジェットエンジン駆動の徘徊型弾薬を発表
  3. 軍事的雑学

    4/28更新|西側諸国がウクライナに提供を約束した重装備のリスト
  4. 中東アフリカ関連

    アラブ首長国連邦のEDGE、IDEX2023で無人戦闘機「Jeniah」を披露
  5. 米国関連

    米陸軍の2023年調達コスト、AMPVは1,080万ドル、MPFは1,250万ド…
PAGE TOP