欧州関連

イタリアが陸軍近代化に約3.7兆円を投資、PantherとLynxを計1,182輌調達

LeonardoとRheinmetallは15日「イタリア陸軍向けのPantherとLynxを開発・製造する合弁会社=Leonardo Rheinmetall Military Vehiclesを設立した」と発表、イタリアは計1,182輌の戦闘車輌調達に計230億ユーロ=約3.7兆円を投資することになる。

参考:New player in European tank production: Leonardo and Rheinmetall establish Joint Venture
参考:NEW PLAYER IN EUROPEAN TANK PRODUCTION:LEONARDO AND RHEINMETALL ESTABLISH JOINT VENTURE
参考:Rheinmetall, Leonardo pitch new Italy tank pact as a model for Europe

イタリアという顧客を確保したPantherの輸出機会にも期待感

ロシアのウクライナ侵攻を受けて「伝統的な地上戦力」に対する再評価に注目が集まり、イタリアでも現実的な脅威の登場を受けて「陸上戦力の更新」が本格化、ラウティ国防次官は「Arieteは200輌中50輌しか運用状態にない」「NATOの義務を果たすには250輌以上の戦車が必要」「2024年から戦車取得のための予算計上が始まる」と、計画に詳しい関係者も「Leopard2A8が133輌必要」と明かし、メローニ政権もLeopard2A8の取得費用を盛り込んだ予算を提出。

出典:KNDS

LeonardoとKNDSも戦略的提携に署名したと昨年12月に発表、この協定は「イタリアが希望している欧州戦車計画(Main Ground Combat Systemのこと)への参加」「発注が確実視されているLeopard2A8のワークシェア」に関するもので、Leonardoのロレンツォ・マリアーニ氏はマリアーニ氏は「KNDSと交わした協定に基づいて大幅なイタリア化が行われるLeopard2(Leonardo製の電子光学センサー、通信装置、指揮統制システム、砲身搭載)は我々の要求を満たした」と述べていたものの、両者は今年6月「協定が破談した(KNDS側が技術移転を一切認めなかったことに原因があるらしい)」と発表。

これを受けてRheinmetallはLeonardoと接触して翌月「主力戦車と歩兵戦闘車輌の開発・製造に関する合弁会社設立で合意した」と発表、Leonardoのロベルト・チンゴラーニ最高経営責任者も「Rheinmetallとの合弁会社は9月までに設立され、国防省と合弁会社の正式な契約は年末までに締結される見込み」「Lynxは2年~3年以内に、Pantherも3年以内に納入される予定」「イタリアとドイツのワークシェア比率は60対40で、イタリアの60%の内50%をLeonardoが、残りの10%をRheinmetallが所有する伊企業が行う」と述べていたが、両者はLeonardo Rheinmetall Military Vehicles(LRMV)設立を15日に発表した。

出典:Rheinmetall

イタリアはPantherベースで開発されるMBTプログラム(2035年までに132輌調達)に80億ユーロ、Lynxベースで開発される新型IFVプログラム(2040年までに16種類のIFVを計1,050輌調達)に150億ユーロを投資することになり、Rheinmetallのパッパーガー最高経営責任者も「Pantherベースの新型戦車は地球上で最も先進的なものになる。世界の主力戦車5,000輌のうち半数は35年前のもので、戦闘システムのアップグレードを必要とするパートナー国にも提供できる」と述べ、イタリアという顧客を確保したPantherの輸出機会にも期待を表明している。

因みにイタリアが主力戦車と歩兵戦闘車の更新(計1,182輌調達)に投資する額は計230億ユーロ=約3.7兆円で、パッパーガー最高経営責任者はLRMVの見通しについて「年間収益は20億~40億ユーロ」「収益率は約15%になる」と予測した。

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※アイキャッチ画像の出典:Leonardo

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コメント

    • hage
    • 2024年 10月 16日

    >Arieteは200輌中50輌しか運用状態にない
    陸軍国なのにそんな事あり得ていいのか、Arieteだけに

    14
      • hogehoge
      • 2024年 10月 16日

      いや、イタリアは今も昔も海軍国
      陸軍の配置も半島が接続する北部重視で、他の地域は水上阻止が基本なので

      21
        • 戦闘機
        • 2024年 10月 16日

        海洋国家ですけど、日本の12式地対艦誘導弾能力向上型程の性能はまだ求められてない感じですかね。テセオMk2/Eで装備の更新はしてるみたいですけど。

        1
        • hage
        • 2024年 10月 17日

        ギャグで投稿したつもりなのに真面目に回答いただいて大変申し訳無いです、、、参考になりました、ありがとうございました。

        5
      • 名無し
      • 2024年 10月 16日

      イタリアだけじゃなくてイギリスもドイツもそんなもんだよ
      現状のまま本格的な戦争が始まったら1ヶ月でまともに動く車輌は無くなるだろうね

      8
        • aburo
        • 2024年 10月 16日

        民主国のこのゴタゴタ感酷すぎて草

        3
      • D-day
      • 2024年 10月 16日

      陸軍国なのにそんな事がアリエテ良いわけがない。

      5
        • 戦略眼
        • 2024年 10月 17日

        Arieteを全車現役復帰させられない技術レベルだから、フランスやドイツに馬鹿にされる。
        日立レール(アンサルドブレーダ)に泣き付いて、何とかしてもらわないと。

        2
    • hogehoge
    • 2024年 10月 16日

    ふーんMBT132両に80億ユーロか・・・・んんっ?
    1ユーロ160円だとして1両97億円とな!!?うわー果てしなくとんでもない事になってるな

    8
      • Easy
      • 2024年 10月 16日

      バカ高いと思い込んでいた日本の装備が割安に思えてくる日が来ようとは・・・
      これは日本兵器が輸出競争力を持つ日が来る可能性が微レ存

      14
      •  
      • 2024年 10月 16日

      さすがにどこかで桁を間違えているのでは?
      開発費を含めたとしても戦車1両で戦闘機が買えちゃうのはいくらなんでもおかしいでしょう

      10
        • nachteule
        • 2024年 10月 16日

         計算がおかしいと言うなら自分で計算してみたらどうですか?高等数学みたいな難しい計算でも無いし、管理人さんだって双方のプログラム合わせた金額を邦貨で出しているでしょう。
         元記事ガッツリみているわけじゃ無いけどある程度のベースがある筈なのにほぼ新規の図面起こしでの製造、大規模で設備が整った新規工場建設や攻守に優れる装備を開発して載せるぐらいじゃ無いとここまで費用は掛からない気はするけど。

        3
          •  
          • 2024年 10月 16日

          いやあなたの計算にケチを付けているわけではなく、引用元かその前のプレスリリースの段階でどこかで桁を間違ってるだけじゃないかなと
          さすがに戦車1両数十億はいろいろな設備投資を含めたとしても絶対にそんなに行きません

          2
          • イーロンマスク
          • 2024年 10月 16日

          >因みにイタリアが主力戦車と歩兵戦闘車の更新(計1,182輌調達)に投資する額は計230億ユーロ=約3.7兆円

          なので計算間違いですね
          それてもたけーけど

          1
            • イーロンマスク
            • 2024年 10月 16日

            上のは間違いです
            いやーインフレひどいな
            記事ちゃんと読んでなかったわ
            Pantherベース一台で30台のT90と戦うのかw
            無理ゲー

            2
      • バーナーキング
      • 2024年 10月 16日

      開発費やライセンス料込み、ワークシェアありとはいえとんでもない額ですね。
      >Leonardo製の電子光学センサー、通信装置、指揮統制システム
      をこっちに組み込んで陸海空の統合ネットワークのノードにもなったりするとしても輸出のシェアがっつり取る気なら単価もそんなに上げられなさそうだけどどれくらいになるんですかね。

      しかしこれでまたMGCS周りが揉めそうだなぁ…。

      4
      • あばばばば
      • 2024年 10月 16日

      これは調達費ではなく開発費だから。
      日本10式が484億円、韓国K2戦車が2000億ウォンらしいから、一つの戦車開発に80億ユーロだとすると約1兆3000億円くらいになって……、物価高と人件費考えても開発費が3倍以上はさすがに異常ではないか。
      APSやドローンへの対応などの最新装備の開発が入るとしてもやっぱり高過ぎだな。

      6
      • 野良猫
      • 2024年 10月 17日

      工場新しく建て直す予算でも組み込んでるんじゃないかってくらい高額ですね
      実際今の運用状態考えると生産設備が無事とも思えないですけど

      5
    • toto
    • 2024年 10月 16日

    オランダも、イタリアも、物価高とEUの不景気の中での車両調達は大変だろうな。
    最大のネックとして、“国防のための準備は必要!”とは騒がれるけど、今すぐ欧州内の戦争で使う場があるわけでもないし、他国へ持っていって使うには戦車はクッソ重たい。遠方への輸送や運用コストも馬鹿高い。
    個人的には、戦争勃発時に国境を地雷原にするための「地雷を埋めて、また掘り出す撤去訓練」を地道に繰り返すほうが陸軍の練度としては高まるんじゃないかと思う。地雷ならそんなに金もかからんし、いざという時には結構役立つし。

    2
    • hoge
    • 2024年 10月 16日

    Leopard2 A8と完全に競合しますよね。
    うまくいけば一大勢力になるかも?

    1
    • 名無しの航空機
    • 2024年 10月 16日

    Type10を売り込めればなぁ
    なんだよ5類型以外輸出禁止って

    2
      • kasugi
      • 2024年 10月 16日

      正面装甲面積が猫の額の軽戦車など誰も欲しがりませんよ
      ネットワーク規格も独自ですし

      国産の言い訳づくりのために奇抜な提案をして墓穴を掘る悪癖は早く治してほしいものです
      装輪装甲車の二の舞は何が踊るやら

      12
        • hoge
        • 2024年 10月 17日

        非常に嵩張る複合装甲の容積は外観から極小であることは確定だし、三菱の意見を却下して転輪5つの極小車体にしたから拡張の余裕も皆無。
        容積の不足だけではなくて極端に小型の車体は接地圧を増やす余地も少ないので装甲、ERAなどを増設する余地も少なく、ほんとなんでこんな仕様にしてしまったのか感…
        どうせ北海道と北九州くらいでしか使わないのならば、90式のFCSと砲弾を更新してBMSを追加するだけの最小限の近代化でよかったのではないか感…

        5
          • 無印
          • 2024年 10月 17日

          >拡張の余裕も皆無。
          この前の記事に10式にAPSとRWSを載せる、って話がありましたけど、拡張性無かったら出来ないですよね?

          16
            • kitty
            • 2024年 10月 17日

            追加装甲との排他になるのでは?
            ケージも付けなきゃですし。

            2
            • 半分の軍事費の国から
            • 2024年 10月 17日

            元々、用兵側から重量38tの戦車として要求されていたのを、将来の為の拡張性を持たせる為に重量48t設計の車体に砲塔部のモジュール(着せ替え)装甲付けて44tで運用しているので、モジュール装甲近代化とAPSとRWSと補助動力を載せて48tに納めて来るのでは?無理なら、三菱の技術者から自衛隊に砲塔無人AI化や車体の大型化等の解決策が示されて、ついでに主砲が50口径になったりして、レガシーホーネットとスーパーホーネットの様な違いが出て来てミリオタが大喜びしそうですが‥日本は昔から敵が戦車を運用出来ない所で運用するスタイルを通して来ているので、中国の15式と似たコンセプトに120mm滑空砲積んでいるという点に注目すべきで、重たい戦車は現状役に立たないので、意外といい線いっているかも?

              • kasugi
              • 2024年 10月 17日

              仕様書によりますと現行の装甲のラインナップでも48tに達します
              この48t状態でも側面は受動装甲と反応装甲を同時搭載は出来ず、機関砲弾に抜かれたいかHEAT弾に抜かれたいか選ばなくてはいけません

              環境に合わせてアップグレードするなら50tは軽く超えるでしょうし、砲塔の設計も見直さなければならないでしょう

              3
                • bbb
                • 2024年 10月 17日

                仕様書通りなら90式に砲塔側面の防護は同じであの空箱の搭載だけで露30mmAPには耐弾しますがね。
                もしサイドスカートの事でしたらLIC運用でもなければ重視されません。操縦席底部防護は今じゃ必須ですが。
                スカートは本格野戦では反応装甲で対HEAT化してLICでは増加装甲で対EFP化です。側面の反応装甲は砲塔車体の左右で必須でしょうがまあ2t以下です。
                これに新たに上面と後方側面と後部にスラットを追加して3tって所です。その上でのRWSとジャマーですね。

                1
                  • kasugi
                  • 2024年 10月 17日

                  側面装甲の防護力は「付加装甲を装着した状態で」指定されておりますので付加装甲なしでは耐えられません
                  90式と同等というのもあくまで付加装甲を装着した場合の話であり、この形態で48tとなりますので、数t追加したら50t超えです

                  2
                    • 半分の軍事費の国から
                    • 2024年 10月 18日

                    そこで、無人化ですよ、水陸両用戦闘車が無人になるのに、戦車がならないなんて事にはならないでしょうし。沖縄への逆上陸作戦に必須でしょうし、10式は日本でしか使っていないし生産数も少なく、北九州では90式は運用困難という事であれば自動的に‥

            • hoge
            • 2024年 10月 18日

            すでにAPSの要件で重量1t未満と非常に厳しい数字が出ていますね。
            TrophyHVは重量のバランスを取るための重りなども含めて2〜3tは増えるようで、早速余裕のなさが露呈していますね。

            1
              • 半分の軍事費の国から
              • 2024年 10月 19日

              APSは防衛装備庁と三菱重工で2013~2018年に試作したのが1t未満なのかもしれませんね。RWSが海外のか同等品と書かれていて、ついでに、指揮統制装置の汎用化改修も出て来ていて、受動装甲は記載が有りませんでしたね。以前に徹甲弾の近代化試作の話も有りましたし、本格的な改修は水陸両用戦闘車の開発がひと段落着いてからにされそうですね。

          • のー
          • 2024年 10月 17日

          90式の近代化といいますが、そもそも74式の引退に対して数が足りてないので。。。
          それに本記事にある通り、既存の車体設計を踏襲したレオ2A8が安いわけではないし
          米国M1のように、冷戦期の車体が余ってて再利用するならともかく、新規製造なら設計しなおした方が良いでしょう

          6
            • hoge
            • 2024年 10月 18日

            本州の74式は機動戦闘車に置き換えで戦車の定数は300両程度なのでは。

    • Taro
    • 2024年 10月 17日

    防衛産業も売り手市場ですね。

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