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ウクライナ軍、ロシア陸軍が導入したサンシェードをジャベリンは貫通できるとアピール

ウクライナ陸軍はジャベリンを使用した訓練を23日に公開して「サンシェードを導入した戦車の砲塔上部でもジャベリンは貫通できる」とアピールして注目を集めている。

参考:Ukrainian Troops Test Javelin Missile Against Russian Cage-Style Improvised Tank Armor

個人的にはサンシェードとジャベリンの勝敗に興味があるが、ウクライナ人にとっては実戦で使用する事態にならないのが一番だろう

ウクライナとの国境沿いに展開しているロシア陸軍の戦車には見慣れない保護装置が取り付けられており、西側メディアは「明らかに戦車砲塔上部へのトップアタックを防御するためのもので、米国がウクライナに供給している対戦車ミサイル(ジャベリン)や徘徊型UAVの起爆シークエンス妨害を狙っている」と指摘している。

出典:@AlexKokcharov

この保護装置が初めてメディアに登場したのは今年6月に行われたロシア陸軍の演習で、露メディアは「T-72B3に搭載された保護装置は対戦車ミサイルや徘徊型UAVが意図的に狙ってくる戦車砲塔上部への攻撃(トップアタック)を防ぐためのもので、乗員の間ではサンシェードと呼ばれている」と説明、ロシア国防省も「近い将来他のT-72にも同様の保護装置が導入されるだろう」と語っていた。

つまりウクライナとの国境沿いに展開しているロシア陸軍の戦車は米国がウクライナに供給しているジャベリン、トルコが供給しているTB2の攻撃を意識してサンシェードを戦車に導入しているのだが、ウクライナ陸軍はジャベリンを使用した訓練を23日に公開して「サンシェードを導入した戦車の砲塔上部でもジャベリンは貫通できる」とアピールして注目を集めている。

出典:Операція об’єднаних сил / Joint Forces Operation

ウクライナ陸軍はBTRの車体にT-64の砲塔を乗せた標的にジャベリンを使用した訓練風景を公開、この標的にはロシア陸軍が採用しているサンシェードを模したものが取り付けられており、ジャベリンが命中したT-64の砲塔は完全に破壊され「サンシェードによる防御は無意味だ」とウクライナ陸軍は言いたいのかもしれない。

ただサンシェードとT-64の砲塔上部の間にはロシア陸軍が追加していた爆発反応装甲が見当たらず、T-64の装甲もロシア陸軍が投入している戦車より旧式なためウクライナ陸軍のシミュレーション結果がそのまま実戦で再現できるかは謎(そもそもT-64の砲塔がどれだけの標的として使用され装甲が摩耗していたのかも不明)だと米メディアは指摘しているが、ロシア陸軍が恐れているジャベリンをアピールするプロパガンダ的な価値は十分あると見ている。

個人的にはサンシェードとジャベリンの勝敗に興味があるが、ウクライナ人にとっては実戦で使用する事態にならないのが一番だろう。

関連記事:サンシェードの実用バージョン? ウクライナ周辺で特殊な保護装置を装着したT-80が登場

 

※アイキャッチ画像の出典:Операція об’єднаних сил / Joint Forces Operation

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コメント

    • 無無
    • 2021年 12月 25日

    ジャベリン
    久しぶりに聞く名前だな
    劣勢のウクライナとしてはいろいろ物語も必要だろう
    そのうち竹槍でもスホーイを墜とせるだの、行き着くとこまで行かないうちに平和を取り戻せますように
    クリスマスだしな

    8
    • 新・にわかミリオタ
    • 2021年 12月 25日

    >個人的にはサンシェードとジャベリンの勝敗に興味があるが、ウクライナ人にとっては実戦で使用する事態にならないのが一番だろう。

    1月に侵攻するという話もありますよね。
    NATO内が荒れているところをグサッと来るかもしれません。

    8
    • ミリオタの猫
    • 2021年 12月 25日

    ウクライナ軍が公開した動画を見る限りジャベリンATMは兎も角、標的になったT-64の砲塔が只のドンガラにしか見えないので、ジャベリンがサンシェードに対して効果的な証拠にはなり得ないと思う。
    第一、サンシェードはスラット装甲の一種だろうから、これでトップアタック式ATMの信管を早爆させて十分なスタンドオフ距離を取らせなかったら良いって装備の筈だし(ロシアMBTの場合、これにERAが加わるのでATMに対する生残性が更に増す)。

    それよりもウクライナ軍の動画を見ていて驚いたのは、標的になったT-64の砲塔内部に火が付けられていた事。
    多分、訓練と言う事でジャベリンのIIRシーカーが確実に標的へ命中する様に火を焚いていたと思うんだけど…これって、もしかするとジャベリンのIIRシーカーは焚火程度の火でも本物の戦車と区別が出来ない位に性能が悪いって事?(滝汗)

    3
      • はる
      • 2021年 12月 26日

      標的のT-64のエンジンは動いないと思うんですけど実際に使用する場面ならT-64はエンジンを動作させているのでその熱の差を埋めるために火を炊いていたのではないでしょうか?
      憶測ですけどそんなことを思いました。

      3
        • TT
        • 2021年 12月 27日

        それは有るかもしれない。
        しかし、湾岸戦争では暗視装置で観たときに冷えた砲塔の上に車長の頭だけ浮いて見えていたそうだし、あまつさえエンジンを止めてバッテリーだけで待ち伏せしていた車両もいたからどうかな。無論、ATMはどちらかと言うと防御側の兵器だから相手がエンジンを止めていると言う事はまずないと思うけど、エンジンを動かしているからと言って砲塔が熱くなるとは考えにくいと思います。

        1
    • 匿名
    • 2021年 12月 25日

    上面反応装甲だけではジャベリンのタンデム先駆弾頭で無力化されるのでスラットでって話か知らんがそもそもスラットは弾頭を不発で粉砕できなきゃ意味がない
    あの程度のスタンドオフ機能果たした所で上面装甲なんぞHMGで抜けない程度の装甲鋼板でしかないのだからHEATからしたら紙に等しい
    MBTとて上面はAPCの側面に同レベルでそこに反応装甲を付加しスラットで覆った所でジャベリンに抗堪はまあ無理だろう
    それで十分ならばあんなに高額装備なAPSなんて誰も買わない

    6
      • 伊怜
      • 2021年 12月 25日

      最近のERAは対HEATで600mm以上防げるから、タンデムの小弾頭を無力化すれば十分防げる可能性はあると思うけどね。
      サンシェードとERAの組み合わせで上面を守れるとして、重量増加と全高の関係で市街地戦には不向きだし、それとは別に高い金払ってAPSを採用する理由は十分あるでしょ。
      そもそもAPSは上面だけだなく全方位防御なのだから、役割が違うと言える。

      10
        • 匿名
        • 2021年 12月 28日

        APSと反応装甲で役割違うの意味がさっぱりわからないがスラットと反応装甲ではその役割が全く違う事実はある
        なんせスラットは対戦ロケットの機械式信管を不発にするための機材であって電子式信管のミサイルにはそもそも意味がない
        例えば対ジャベリンでスタンドオフ長狂わせ効果を狙うならスラットと主装甲との距離は3メートルほど必要になる
        つまり上面の反応装甲からたかが1m程の空間開けてるだけの屋根スラットで先駆弾頭が起動した時点で露戦車はお亡くなる他ない
        なんせ上面装甲自体がジャベリンの主弾頭からしたら紙同然だからな

          • 伊怜
          • 2021年 12月 28日

          だからなんでERAとタンデム弾頭の関係を無視するのさ。
          サンシェードのスラットは不発にするためじゃなくてタンデム弾頭の先駆弾頭を起爆させるための物、先駆弾頭は小型なのでこの程度の距離でもERAを守れる可能性は高い。ERAさえ残ってれば本体の上面装甲が薄かろうが主弾頭を防げるぜって話でしょ。

          1
  1. もっとも侵攻ロシア軍の機甲師団被害与えるのはTR2から放たれるハイドラミサイルであると考えられる 歩兵に怖気づいて逃げないようにもたせているだけ お互いに電磁パルス爆弾もっていることもかんがえると とんでもない犠牲者出るであろう。

    1
    • 無無
    • 2021年 12月 25日

    ウクライナには悪いが、これは実戦を経ないとわかんない
    ロシアが間抜けなサンルーフで終わるのか否か

    4
    • 折口
    • 2021年 12月 25日

    スラットアーマーって起爆前の形成炸薬弾を物理的に歪めてメタルジェット形成を阻害するものだし、RPGシリーズならまだしも炸薬部が最初からかなり後方に配置されているジャベリンミサイルだと、メタルジェット形成レンズに衝撃が達する前に起爆してそうだよね。(ミサイルの直径に対してスラットの幅が細いし)
    そもそもあれ本当に対ジャベリンを見越した装備なんだろうか。ウクライナ軍がよくやってる駐機中の車両への迫撃砲弾や対戦車手榴弾を使ったクワッドコプター爆撃への対処って意味を含んでるような気がするんだよな。

    9
      • 匿名
      • 2021年 12月 26日

      ドローンで対戦車手榴弾落とされる対策で考えるとアレあっても上面反応装甲はおそらく起動するから対戦車手榴弾一発で反応装甲ごとスラットも吹き飛ぶと思うが

      2
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