欧州関連

日本も導入する巡航ミサイル「JSM」、ステルス性能向上のためBAEシステムズが協力

日本がF-35Aに搭載するため導入を決定している巡航ミサイル「Joint Strike Missile(JSM)」にBAEシステムズがステルス技術を提供すると報じられている。

参考:BAE to provide stealth tech to Norwegian defence firm

BAEシステムズから電波吸収材料に関する情報、敵に探知されにくいセンサー技術、技術統合に関する専門知識の提供を受ける

ノルウェーの「Kongsberg Defence & Aerospace AS (コングスベルグ・ディフェンス&エアロスペース)」の巡航ミサイル「Joint Strike Missile(JSM)」は対艦ミサイル「ペンギン」の後継として開発された巡航ミサイル「Naval Strike Missile(NSN)」をベースにF-35A/Cのウェポンベイ(F-35Bのウェポンベイには非対応)に収まるよう再設計されたもので、アップグレードが始まったF-35の基本ソフトウェア「Block4」に統合される予定だ。

出典:raytheon 米国でのJSM統合作業はNSNの製造や販売で協力関係にあるレイセオンの支援を受けている

F-35にはロッキード・マーティンが開発した巡航ミサイル「AGM-158C LRASM」の統合も予定されているのだが、LRASMはサイズが大きくウェポンベイに入らないため主翼下に搭載しなければならない=ステルス性能を犠牲にする必要があるので射程距離が短くてもステルス性能を維持できるJSMか、ステルス性能を犠牲にする代わりに射程距離が長いLRASMか明確に特徴が異なっている。

ただJSMの射程距離が短いといっても180km以上(コングスベルグ発表の公式数値)の交戦距離を備えており、発射する高度や選択する飛行プロファイルによってはJSMの最終到達距離はさらに伸びるため「射程距離が短い」という表現は飽くまでLRASMと比較した場合の話で、F-35Aを導入しているノルウェー、オーストラリア、日本がJSM導入を決定済みだ。

このJSMを改良するためコングスベルグはBAEシステムズと300万ポンドの契約を締結、同社から電波吸収材料に関する情報、敵に探知されにくいセンサー技術、技術統合に関する専門知識の提供を受けることになると報じられており関心を集めている。

出典:raytheon F-35の主翼下に搭載されたJSM

因みに日本はコングスベルグと累計150億円近い契約を締結済みで2021年もしくは2022年に日本へJSMを引き渡すことになると言っているが、F-35AでJSMを運用するのに欠かせない統合データーが含まれたBlock4がいつ配信されるの今のところ情報がなく、初期運用能力(当初の計画ではJSM統合データを含むBlock4のアップグレードバージョンが2021年中にリリースされIOCを宣言する見込みだと言われていた)をいつ獲得できるのかよく分かっていない。

補足:Block4へのアップグレードは提供機能毎に段階を踏んで行われるためBlock4へのアップグレードは2019年から2024年までかかる予定で、計画では年2回(4月/10月)アップグレードデーターが配信されることになっている。JSMの完全運用能力の宣言は2025年を予定

もし当初のスケジュール通りにBlock4へのJSM統合が進んでいるのなら新しい情報がそろそろ出てくる頃だろう。

関連記事:日本、F-35Aに搭載する巡航ミサイル調達のため契約を97億円で締結
関連記事:防衛省、F-2や次期戦闘機F-Xに国産の長射程空対艦ミサイル統合を検討

 

※アイキャッチ画像の出典:Kongsberg Defence & Aerospace AS

黒い布が外れたロシアの新型第5世代戦闘機、エアインテークは機首下で確定前のページ

ロシアの新型戦闘機は中国のJ-31、韓国のKF-21、トルコのTF-Xといった競合機に対する回答次のページ

関連記事

  1. 欧州関連

    パルリ仏国防相、訪問中のインドで空母向けラファールの供給について言及

    インドを訪問中のパルリ仏国防相は17日、インド海軍の空母向けにラファー…

  2. 欧州関連

    スイス議会が自国製兵器の再輸出禁止宣言の無効化を拒否、ウクライナ移転は不発

    スイス国民議会の安全保障委員会が発議した「自国製兵器の再輸出禁止宣言の…

  3. 欧州関連

    英国のステルス技術と専門知識、イタリアや日本よりも遥かに優れている

    英上院の国際関係・国防委員会はGCAPに関する公開セッションを開催し、…

  4. 欧州関連

    英国防相、タリバンがアフガニスタンで政権を樹立すれば協力関係を築く用意がある

    英国のベン・ウォレス国防相は13日、現地メディアに対して「タリバンがア…

  5. 欧州関連

    ロシア軍はソレダル占領を宣言、ウクライナ軍は市内中心部で戦闘中と反論

    ロシア国防省は「ソレダル解放によってバフムートの敵を大釜に入れることが…

  6. 欧州関連

    ギリシャ、スペインを味方につけたエルドアン大統領は祝杯を挙げているだろう

    ギリシャにとってトルコとスペインが大型空母建造で合意したというニュース…

コメント

    • 匿名
    • 2021年 7月 19日

    なんか戦闘機界のサグラダファミリア感ちょっとあるな
    まあ、現時点でも十分以上に強い(演習の結果的に)からそこと一緒にするのもちょっと失礼だとは思うけど、いつまでも開発してんなって
    なんなら、実現するかどうかはともかく無人機と連携して云々っていう第六世代の領域に片足突っ込むとこまで構想があるし、永遠に完成しないまであるのでは

    13
      • 匿名
      • 2021年 7月 19日

      だからトータルユニットコストは200億円くらいになる恐れがあると指摘されとるね
      安い安い言ってる人らの気が知れない

      3
        • 匿名
        • 2021年 7月 19日

        他はもっと高い、というか選択肢が無い

        17
          • 匿名
          • 2021年 7月 19日

          200億より高い?
          f3ぐらいの価格じゃないっすかw

          1
        • 匿名
        • 2021年 9月 01日

        けどこのレベルの戦闘機を単独で自力開発・製造しようとしてたら200億円は確実に超えていたと思うよ

      • 匿名
      • 2021年 7月 19日

      常に進化を続ける、という意味にとれば、完成形にはこだわらなくていいのでは
      こうもテクノロジーが日進月歩では、完成したとたんに旧式化してしまうだろうし

      20
        • 匿名
        • 2021年 7月 19日

        最強のはずのF-15とかF-22も能力不足で改修(予定)してるもんね

        3
      • 匿名
      • 2021年 7月 19日

      戦闘機界のマイクラみたいなもんだろ
      物としては完成しているが、開発メーカーが開発終了するまでアップデートが終わる事はない
      収益モデルとしてどうやって利益を出しいてるのかわからないが

      2
    • 匿名
    • 2021年 7月 19日

    こういうのみてると、F-35みたいな世界規模な共同開発って当面されないだろうなぁって思う

    2
      • 匿名
      • 2021年 7月 19日

      開発自体は英米主導で他の国は金出してるだけなんで
      共同開発がどうこうより3タイプ作ろうてコンセプトが問題だったんじゃないかと
      それにソフトウェアの問題は他と関係なく酷いと思う

      10
        • 匿名
        • 2021年 7月 19日

        開発参加国は金出してるだけじゃないよ
        開発参加国はワークシェアを割り当てられて、部品製造を行ってる
        このワークシェアがコストを増大させる最大の要因になってるって言われてる
        一か所で集中して大量生産すれば安く作れるものを、多数の国に分散させたせいで、ミニマムな生産規模になってしまって、製造コストが増大、分散しすぎたことによる輸送コストも問題に。

        これだけならまだマシで、参加国もワークシェアを獲得するだけしておいて、製造するだけの技術も設備投資する金もなかったと後から判明。どころか、粗悪品の納品、納期遅延するところまで出る始末

        6
        • 匿名
        • 2021年 7月 19日

        ソフトウェアというかロジの話では
        (バージョン混在+生産国分散)×ALIS・ODIN=大混乱
        っていう

        本体のソフトウェアに今現在酷いと言えるような何かは残ってないような?

        1
        • 匿名
        • 2021年 7月 19日

        今更だけどF35Cはいらなかったと思う

          • 匿名
          • 2021年 9月 01日

          ただでさえ艦載型機は陸上発進機より制限多くて性能厳しいのに、陸上から発進してくる第5世代相手にスパホで相手しろと言われた場合の空母パイロットの心境はいかに

      • 匿名
      • 2021年 7月 19日

      参加国増やし過ぎて、技術も金もない国と共同開発にしたら痛い目を見た典型例になっちゃったのがF-35とタイフーンだからなぁ
      共同開発するにも、ちゃんと金と技術があるところとやらないとな

      3
        • 匿名
        • 2021年 7月 19日

        要らなければ米海軍は導入してないですよね?
        それにまだ当分は新型ステルス海軍機は出来ませんから、やはり必要なんだと思いますよ。

          • 匿名
          • 2021年 7月 19日

          一時は米海軍も予定数だけ導入して損切りをしようとしていたよ
          最もスパホのほうがさらに危うくなってF-35Cのほうを優先するようになったけど

          5
          • 匿名
          • 2021年 7月 20日

          >今更だけどF35Cはいらなかった

          へのレスなのかな?
          だとしたら「今更」のたられば論、「いらなかった(≒作らなければよかった)」に対して、
          (使った結果)海軍が採用した、という「結果的な事実」は世界線が違うんだから意味を持たないよ。

          1
    • 匿名
    • 2021年 7月 19日

    流石世界のBAEsystem
    大英帝国の陽光

    2
      • 匿名
      • 2021年 7月 19日

      残照じゃないの?

      6
        • 匿名
        • 2021年 7月 19日

        薄明だろ

        1
          • 匿名
          • 2021年 7月 19日

          そうは言っても、軍需メーカーとしてはトップ10から落ちることはまだまだ当分ないと思うし、そして日本もお世話になるかもしれない。

          3
    • 匿名
    • 2021年 7月 19日

    機体だけなら安いのは事実だし、 そんなこと言っても他のステルス機体で同じようなことをして、F-35以下に出来るとかは流石に難しいのではないか。イスラエルの古いF-15のアップグレードとか日本のアップグレード、台湾や韓国のF-16仕様への更新額見てるとそこまで高くはない感じはするが。

    7
    • 匿名
    • 2021年 7月 19日

    F-35Aステルス+JSMが空自の対艦攻撃をどう変化させるのか今から楽しみだ

    5
    • 匿名
    • 2021年 7月 19日

    中国海軍にとってこの組み合わせは悪夢だろう。
    発射母機もミサイルも見えないから、いつドカンと来るか分からない。

    3
  1. この記事へのトラックバックはありません。

  1. 中国関連

    中国は3つの新型エンジン開発を完了、サプライチェーン問題を解決すれば量産開始
  2. 欧州関連

    BAYKAR、TB2に搭載可能なジェットエンジン駆動の徘徊型弾薬を発表
  3. 米国関連

    米海軍の2023年調達コスト、MQ-25Aは1.7億ドル、アーレイ・バーク級は1…
  4. 軍事的雑学

    サプライズ過ぎた? 仏戦闘機ラファールが民間人を空中に射出した事故の真相
  5. 欧州関連

    アルメニア首相、ナゴルノ・カラバフはアゼル領と認識しながら口を噤んだ
PAGE TOP