欧州関連

2035年までに廃止されるNATOのE-3、後継システムの受注にL3ハリスが挑戦を発表

米国のL3ハリス・テクノロジーズは欧米の防衛産業企業とコンソーシアムを結成、2035年までに廃止されるE-3の後継機プログラム「AFSC」の入札に参加すると今月13日に発表した。

参考:L3HARRIS NAMES FIVE NATO TEAMMATES FOR AIRBORNE WARNING AND CONTROL SYSTEM SOLUTION

NATOがE-3の後継機に求めるのはセンサー類を搭載した特定の装備品ではなく分散型ネットワークの基盤システム

米空軍ではE-3セントリーの老朽化や運用・維持の問題を解消するため韓国空軍、オーストラリア空軍、トルコ空軍での運用実績があり、英空軍も導入を決定しているE-7Aウェッジテイルを採用すべきだという動きが加速しているが最終的には敵の攻撃に脆弱な大型機ベースのAWACSを取りやめ、戦闘機や無人機などに搭載されたセンサーやレーダー搭載の小型衛星群などで構成された分散型ネットワークに移行することを目指している。

NATOも2035年までにE-3を廃止して新しいプラットフォームに置き換える計画を2019年に正式発表したが、E-3の後継システム探し自体はAFSC/Alliance Future Surveillance and Controlプログラムとして2016年に始まっており、こちらも米空軍と同じようにセンサーを搭載した地上/海上/空中ベースの既存資産に宇宙ベースの監視資産を統合した分散型ネットワークを想定している。

※2017年にNATOが公開したAFSCプログラムに関する動画

つまりNATOがAFSCプログラムを通じて開発しようとしているのはセンサー類を搭載した特定の装備品ではなく分散型ネットワークの基盤=システム・オブ・システムズ(複数の異なるシステム群を統合したシステム)で、米国のL3ハリス・テクノロジーズはヘンソルト(独)、ジェイコブズ(英)、ジェネラル・ダイナミクス(GDのカナダ法人とイタリア法人)など複数の防衛産業企業とコンソーシアムを結成してAFSCプログラムの入札に参加すると今月13日に発表した。

恐らくL3ハリスが主導するコンソーシアムが狙っているのは年内に契約締結が実行されるAFSCプログラムの「初期コンセプトに関する分析・評価フェーズ」受注で、これに名乗りを挙げたのは今のところL3ハリス以外にはいない。

典:U.S. Air Force photo/Airman 1st Class Chris Massey

まだまだ米空軍の計画は不明な点も多くNATOのAFSCプログラムも初期段階なので何も断言することは出来ないが、少なくとも2030年代には部分的に実用化された分散型ネットワークへの移行が始まり、2040年代には高価で敵の攻撃に脆弱な大型機ベースのAWACSは戦場から姿を消すことになるのではないかと管理人は予想している。

但し、全ての国が高度な分散型ネットワークに移行できるとは考えにくいので2040年代以降も小型(ビジネスジェットベース)のAEW/AEW&Cは生き残る可能性が高いのではないだろうか?

関連記事:米空軍トップがE-7導入へ前向きな発言、但し本命はレーダー衛星を活用した分散型ネットワーク

 

※アイキャッチ画像の出典:L3Harris

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コメント

    • 匿名
    • 2021年 9月 24日

    取り上げる話題がマニアックすぎるw 悪い意味じゃなくて良い意味の方向で

    19
      • 匿名
      • 2021年 9月 25日

      これぞ航空万能論の基礎ですね
      華々しい爆撃だの格闘戦の始まる前に、探知という情報戦が欠けてりゃ戦時の戦争は成立しませんよ
      そこが判ってないなら軍好きでも子供の次元まんま

      9
    • 匿名
    • 2021年 9月 24日

    C-130にE-2Dのお皿とコンソール移植するんじゃあないですかね?>米軍
    そっちの方が高性能だし
    海軍が使う限りにおいてはシステムの便乗更新できるし。

    2
      • 匿名
      • 2021年 9月 24日

      今回NATOが求めているのは、記事にある通りセンサー類を搭載した特定の装備品ではなく分散型ネットワークの基盤システムの初期コンセプトに関する分析・評価。
      言い換えれば多様な分散センサープラットフォームから取得するデータをネットワークを介して処理し評価・判定・対処指揮可能な基幹システムの実現性検討。
      前記事にある通り米空軍も同じ早期警戒管制システムへの移行を企画している。

      9
        • 匿名
        • 2021年 9月 26日

        ただまあ、展開距離が長くなればなるほど、無線通信の限界はあるから、展開距離を伸ばしたかったら管制機は必要だけどね
        衛生通信だって、妨害または破壊は相手側だってその能力を持ってるわけだし、こっちも限界はある
        もっとも、いままでの早期警戒管制機みたいな、どでかいレーダーを担いで、何人もの管制官を連れて現地に飛んでいくってことはなくなるだろうけども
        レーダーは管制機には持たせず、僚機の航空機や無人機のレーダーをリンクさせることで代替、大規模な管制能力は地上とのエミュレート、通信のバックアップとして管制官が1~2人程度乗せるだけで十分だろう
        大型でレーダーに映りまくる管制機は姿を消すだろうね

        2
    • 匿名
    • 2021年 9月 25日

    AEWは生き残らないと思うんだけどなあ
    帯に短し襷に長しのような気もするし
    AEWが生き残れるならもっと後方で管制官乗せた大型機飛ばした方が良いわけだし
    センサーだけ前方に小型機で進出して後方で管制など行うとか
    そう考えればAEWは中途半端に思える
    まぁ根拠なんて無いけど

    6
      • 匿名
      • 2021年 9月 26日

      AEWとAWACSをごっちゃにしてないか?
      前者は管制機能ないぞ
      管制機能つけたものはAWACSだったりAEW&Cと呼ばれるもの
      AEWは戦闘機や無人機でもできる

    • 匿名
    • 2021年 9月 25日

    これ日本も早く動かないとダメだよなあ

    4
      • 匿名
      • 2021年 9月 25日

      人工衛星を含む多様な分散型センサープラットフォームにより構成されれる常続的広域警戒監視システム構築の構想はあって、昨年防衛装備庁が研究開発ビジョンを公表しています。
      <宇宙を含む広域常続型警戒監視>
      リンク

      ロードマップによれば2038年ごろまでに構成センサーシステム単位の研究開発を完了することになっていますが、2030年代半ば頃から段階的に構築可能な構想と思われます。
      戦闘機等の索敵データを統合することは明記されていませんが、先進マルチスタティックレーダの分散プラットフォームに取り込むことは可能だろうと考えられます。

      5
      • 匿名
      • 2021年 9月 26日

      まったくやってないわけではないよ
      既にマルチスタッティックレーダーの試作機MIMOでデータを収集中
      E-767の早期陳腐化の恐れについては、防衛省も感づいてるとは思う

    • 匿名
    • 2021年 9月 25日

    F-35もこういう使い方をして、AEWの代わりが出来るようになるらしい。
    アメリカ級もひゅうが型も、E-3無しで行動出来るかな。

    1
      • 匿名
      • 2021年 9月 26日

      管制は母艦の指揮所でやればいいからね
      特に洋上展開だけが基本になるいずもなら、正規空母の艦載機のような長躯展開するわけじゃないし

    • 匿名
    • 2021年 9月 25日

    E-767もこのまま平穏に退役できそうだね。

    • 匿名
    • 2021年 9月 26日

    L3ハリスってF-35ブロック4のTR3アビオニクスハードウェアを開発しているところですね。
    もともと軍事通信・センサー系の会社なので次世代の早期警戒・管制について先進的な知見を蓄積して今後の米軍にも展開するため、と考えるのが妥当そうですが、もしかするとEUとUSの予算で2案作って検討する、という方法も考えられそうです。

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