欧州関連

ラトビアが歩兵戦闘車の調達を発表、ASCODがCV90を破って勝利

エストニアとリトアニアはCV90を選択したが、ラトビア国防省は30日「ASCOD×42輌調達に関する契約(推定3.7億ユーロ)をSanta Bárbara Sistemasと締結した」と発表、そのためバルト三国で運用される歩兵戦闘車はCV90とASCODに分かれることになった。

参考:Latvia signs 373 million euro procurement contract for 42 “ASCOD” infantry fighting vehicles
参考:GDELS-Santa Bárbara Sistemas suministrará 42 vehículos Ascod a Letonia por 373 millones de euros

少なくともASCODのファミリー化戦略はビジネス面で大成功と言えるだろう

エストニア、ラトビア、リトアニアのバルト三国はロシアやベラルーシと国境を接するためウクライナ侵攻以前から防衛装備の取得や更新に積極的で、エストニアはオランダやノルウェーからCV90×81輌、フィンランドからXA-180/188×136輌、韓国からK9×36門を取得済み、現在はARMA×130輌、NMS×100輌、CAESAR×12門、HIMARS×6基の調達を進めており、伝統的な地上戦力の整備においてエストニアはラトビアやリトアニアよりも先行している。

出典:Lietuvos Respublikos Krašto apsaugos ministerija リトアニア企業=Granta Autonomyが開発した徘徊型弾薬のX

リトアニアもドイツからBoxer×89輌、PzH2000×21輌、M113A1/A2×268輌、デンマークからM101×72門を取得済み、現在はLeopard2A8×44輌、CV90×100輌、Boxer×27輌、CAESAR×18門、HIMARS×8基、NASAMS×2セットの調達を進めている最中だが、特筆すべきはリトアニアの無人機戦力に対する取り組みがNATO加盟国の中でも上位に位置する点で、当初はScanEagle、RQ-11、Switchblade300/600を米国から調達していたものの、現在は国内で開発したHornet、Partisan、GrantaXの調達に切り替わり、国産のFPVドローンも正式採用済みだ。

ラトビアも英国からCVR-T×198輌、オーストリアからM109A5Ö×47門を取得済み、現在はPatria×256輌、HIMARS×6基、IRIS-T SLM、Naval Strike Missileの調達を進めている最中だが、ラトビア国防省はASCOD×42輌調達に関する契約(推定3.7億ユーロ)をSanta Bárbara Sistemasと締結したため、バルト三国が運用する歩兵戦闘車はCV90とASCODに分かれることになり、SBS側は「NATOが実施した前方展開の一環でスペイン陸軍は2017年からラトビアにASCODを配備していた」「そのためラトビアはASCODの優れた性能や信頼性を良さを知っていた」「ASCODが選ばれたことを誇りに思う」と述べている。

エストニア、ラトビア、リトアニアはHIMARSの共同運用で合意しているものの、その他の装備については国情と国益に合致するものを選択しているため、バルト三国で歩兵戦闘車をCV90に統一する必要はないが「ASCODが売れた」というニュース自体が興味深い。

フィリピンが導入したイスラエル製のSabrah、英陸軍が調達を進めているAjaxはASCOD2プラットフォームを、米陸軍が調達を進めているM10はASCOD2から発展したGriffinIIプラットフォームを、米陸軍の次期歩兵戦闘車に提案されているGeneral Dynamics案もGriffinプラットフォームをベースにしているため、ASCODプログラムは生産開始から29年以上も利益と雇用をもたらし続けているものの、オリジナルのASCODを採用した国は開発国のオーストリアとスペインのみだ。

出典:U.S. Army photo by Bernardo Fuller

ラトビアが導入する歩兵戦闘車もASCOD2プラットフォームをベースにしたものになり、生産作業の約30%はラトビア国内で行われるらしいが、この結果は競合したCV90、K21、Tulparを破っての勝利なのでSanta Bárbara Sistemas(実際にはGeneral Dynamics)にとっても快挙で、さらにASCODのファミリー化戦略もビジネス面において大成功を収めていると言えるだろう。

関連記事:軽戦車ではなく火力支援車輌、米陸軍がM10 Bookerを披露
関連記事:リトアニア史上最大の契約、ドイツとLeopard2A8購入契約を締結

 

※アイキャッチ画像の出典:Aizsardzības ministrija

Diehl Defence、大成功を収めたIRIS-TのBlockII開発契約を獲得前のページ

地上戦を一変させたドローンの脅威、オランダ軍がSkyranger調達を発表次のページ

関連記事

  1. 欧州関連

    英空軍、機体寿命を半分以上残したタイフーン×30機を2025年までに退役

    英国は6,000飛行時間に設定されている機体寿命を半分以上残したタイフ…

  2. 欧州関連

    ポーランド、Shahed-136タイプの無人機を狩る無人機をMSPOに出展

    ポーランドのウカシェヴィチ航空研究所は5日に開幕したMSPOに「無人機…

  3. 欧州関連

    エアバスがA400Mの正式受注をカザフスタンから獲得、累計受注数は176機に到達

    エアバスは1日、カザフスタンから2機のA400Mを正式に受注したと発表…

  4. 欧州関連

    ポーランドがCAMMを発注、前例のない技術移転で英国が19億ポンドの契約を獲得

    英国のMBDA UKはCAMMの供給契約をポーランド軍と締結、MBDA…

  5. 欧州関連

    衝突する共和国の価値とイスラム教の信念、フランス軍の現役将校や退役将軍が内戦の危機を警告

    フランスでは先月、大量に流入したイスラム分離主義者によってフランスは内…

  6. 欧州関連

    ギリシャ空軍のミラージュ2000とトルコ空軍のF-16Cがエーゲ海上空で交戦

    ギリシャ空軍は5日、エーゲ海上空でギリシャ空軍の戦闘機ミラージュ200…

コメント

    • マンゴー
    • 2025年 1月 31日

    >「NATOが実施した前方展開の一環でスペイン陸軍は2017年からラトビアにASCODを配備していた」「そのためラトビアはASCODの優れた性能や信頼性を良さを知っていた」
    性能の良いキャラが欲しくなる現象と似てる
    実戦で能力が証明されてるCV90との競争に打ち勝ったのは素直に面白い

    7
      • 他人事では無い
      • 2025年 1月 31日

      Leopard2A8は高いから、M10を買っとこう。
      整備も統一できるよ。

      5
        • hoge
        • 2025年 1月 31日

        Leo2 A8が高価なのでスロバキアはCV90 120を検討しているようですね。
        360度どこからでも妨害が難しい有線式のFPV自爆ドローンが飛んでくることを考えると正面装甲の分厚さを活かしづらいので、ずっと軽量で地形を選ばず、始めからFPVドローンやATGM対策を行った軽量なIFVベースの車両でも大差ないかもですね。
        M10の場合、車高、全長が短縮されて最早別物ですけど…

        8
    • 無印
    • 2025年 1月 31日

    Tulparってどこの歩兵戦闘車?
    と思ったらトルコでしたか、名前の由来が神話の馬とかロマンチックな名前だ

    2
    • MK
    • 2025年 1月 31日

    ネットで知れる範囲の値段で倍近い差があるんですねー何だかんだ安さは正義

    1
    •  
    • 2025年 2月 01日

    上からは戦車、下からはバイク、直接的にはドローンに存在意義を脅かされてる歩兵戦闘車はどんな進化を遂げていくのかな
    戦車よりこっちのが亀とかデパート化しかねないんじゃないか?

  1. この記事へのトラックバックはありません。

  1. 欧州関連

    トルコのBAYKAR、KızılelmaとAkinciによる編隊飛行を飛行を披露…
  2. 軍事的雑学

    4/28更新|西側諸国がウクライナに提供を約束した重装備のリスト
  3. 米国関連

    米空軍の2023年調達コスト、F-35Aは1.06億ドル、F-15EXは1.01…
  4. 中国関連

    中国は3つの新型エンジン開発を完了、サプライチェーン問題を解決すれば量産開始
  5. 欧州関連

    BAYKAR、TB2に搭載可能なジェットエンジン駆動の徘徊型弾薬を発表
PAGE TOP