欧州関連

世界市場で生き残れるか?フランス、F-35に対抗し「ラファール F4仕様」開発に着手

フランスは今年1月、23億ドル(約2,450億円)を投じてラファール「F4仕様」の開発を行うと発表した。

参考:Just How Stealthy Are France’s Rafales F4.2s?

価格面で優位性を失えば、世界市場でラファールが苦戦するのは必至

NATO加盟国の多くが第5世代戦闘機「F-35」導入へ傾く中、フランスは第5世代戦闘機の開発・導入をスキップし、ドイツと共同(後にスペインが合流)で第6世代戦闘機「Future Combat Air System(以下、FCAS)」プロジェクトを進めている。

しかし、第6世代戦闘機「FCAS」が完成するのは当分先(早くても2035年~40年の間)の話で、フランスは、最低でも15年以上は第4世代戦闘機の「ラファール」で戦う必要がある。

出典: Tim Felce / CC BY-SA 2.0 ラファール

ラファールはF-35のような第5世代機ではないが、機体を構成する多くの部分にレーダー波の吸収に優れた複合材料と軽量なチタンが使用され、レーダー波の反射を抑制するためエアインテークをS字型に曲げた構造や、機体の継ぎ目には鋸歯状のエッジを採用し、ラファールのレーダー反射断面積(RCS)の値は0.1~1㎡と第4世代機の中でも非常に小さな値に抑えられている。

しかし、真のステルス戦闘機であるF-35のレーダー反射断面積の値は0.0015~0.005㎡で、ラファールとは比べ物にならないほどステルス性が高い。

現在、ラファールは海軍向けのM型と、空軍向けのB型(単座)とC型(複座)の3種類があり、ソフトウェアの仕様はF1~F3まである。

捕捉:海軍向けの最初の10機は空対空能力しか持たないF1仕様、続く15機は限定的な対地攻撃能力を持つF2仕様として引き渡され、それ以降の機体が完全な能力を持つF3仕様。

フランスは今年1月、23億ドル(約2,450億円)を投じてラファール「F4仕様」の開発を行うと発表した。

出典: JohnNewton8 / CC BY-SA 4.0 パリ航空ショーで発表されたダッソーFCASのモックアップ

これは第6世代戦闘機「FCAS」が完成するまで、第5世代機戦闘機ではないラファールで戦い続けるための能力向上と、海外輸出における競争力維持のためという2つ要求を満たすためのものだ。

F4仕様でラファールに追加されることになる、大きな新要素は2つだ。

1つ目は、F-35と同じようにネットワーク機能を利用した戦闘機能が追加され、出撃中もネットワークに接続されたラファールは、常に最新のデータを受信し、より正確な戦場の状況を把握することが出来るようになり、2つ目は、F-35が導入した、メンテナス・保守パーツ管理システム「ALIS」に似たシステムをラファールにも導入して、コストパフォーマンスの高い予防的な保守管理を行う予定だ。

ソフトウエア以外の部分では、パッシブ式のフェーズドアレイレーダーだった「RBE2」を、2012年にアクティブ式の「RBE2-AA」に置き換えたが、このレーダーの対地モードが強化される予定で、搭載エンジン「M88」のデジタル制御コンピュター、偵察・目標指示用ポッドのAIシステムが新しくなり、M型は新しく自動着艦システムが追加され、新しく開発された兵器とラファールとの統合が行われるという。

ラファールを開発したダッソーのCEO、エリック・トラピエ氏は「F4仕様はラファールが世界レベルの能力維持を保証するためのもので、輸出市場でもラファールの信頼性を保証するものになる」と話した。

現在発注済みの180機の内、最終ロットの28機は、今回開発されるF4仕様で製造され、2023年にフランス空軍に引き渡される予定で、さらにF4仕様のラファールが30機追加発注されると言われているため、フランスが最終的に保有することになるラファールは計210機になる予定だ。

出典:public domain F-35A

ラファールのフランス軍向けの機体単価は7,600万ドルから8,200万ドルと言われており、約9,000万ドルの値札を付けているF-35Aよりも価格面で優位だが、数年後には7,600万ドル(約82億円)まで価格が下る予定になっている。

もし価格面で優位性を失えば、多少の改良を施した第4世代機のラファールが、世界市場の中で生き残れるのか非常に怪しい。

 

※アイキャッチ画像の出典:public domain ラファールB

第5世代機「SU-57」輸出準備完了!ロシア、輸出仕様の「SU-57E」を発表前のページ

特殊塗料を塗った戦闘機「J-16」は、中国第3のステルス戦闘機になり得るか?次のページ

関連記事

  1. 欧州関連

    米英、今後数日以内にロシア軍がウクライナへ侵攻する可能性を警告

    米国のバイデン大統領は「今後数日以内にロシア軍がウクライナへ侵攻するか…

  2. 欧州関連

    知らない間に終了?英海軍の戦勝記念日75周年イベントが残念な理由で不発

    英海軍は5月8日のヨーロッパ戦勝記念日(VE Day)を祝うため艦艇に…

  3. 欧州関連

    EUがウクライナに約束した砲弾100万発、21日時点の提供数は2.8万発

    EUは「今後12ヶ月間で100万発の155mm砲弾をウクライナに供給す…

  4. 欧州関連

    トルコ、レオパルト2とアルタイを合体させたハイブリッド戦車を披露

    トルコは新しい155mm自走榴弾砲「T155フィルティナNG」の初納入…

  5. 欧州関連

    アルメニア首相、アゼルバイジャンと領土の相互承認で合意したと発表

    アルメニアのパシニャン首相はユーラシア経済連合の首脳会談の中で「アルメ…

  6. 欧州関連

    英国、赤外線シーカーを国産化したASRAAMの最新バージョン「Block6」が間もなくデビュー

    英国防省のジェレミー・クイン調達担当次官は「空対空ミサイルASRAAM…

コメント

    • 匿名
    • 2019年 8月 20日

    ラファールはF-35を1とすれば0.6くらいの性能なんだろうけど、それでも必要なときにちゃんと存在していたという点ではフランスの国情にあった名機になったよなあ。

    3
    • 匿名
    • 2019年 8月 23日

    そもそも前任機種がF-8とシュペルエタンダールだから、早急に更新出来なければ空母持ってる意味が無くなる所でしたからね
    イカの方のアップデートは進んでいるのだろうか? イカのアップデートが無ければ、アメリカでもロシアでもない第三極の需要は取れそうだけど

    1
  1. この記事へのトラックバックはありません。

  1. 米国関連

    米陸軍の2023年調達コスト、AMPVは1,080万ドル、MPFは1,250万ド…
  2. 中国関連

    中国は3つの新型エンジン開発を完了、サプライチェーン問題を解決すれば量産開始
  3. 欧州関連

    アルメニア首相、ナゴルノ・カラバフはアゼル領と認識しながら口を噤んだ
  4. 欧州関連

    BAYKAR、TB2に搭載可能なジェットエンジン駆動の徘徊型弾薬を発表
  5. 軍事的雑学

    4/28更新|西側諸国がウクライナに提供を約束した重装備のリスト
PAGE TOP