LeonardoとKNDSの対立によってイタリア陸軍のLeopard2A8導入は御破算となってしまったが、Leonardoの最高経営責任者はRheinmetallとの提携について「最初のLynxは2年~3年以内に、最初のPantherは3年以内に納入される予定だ」と明かした。
参考:Leonardo, Rheinmetall eye three-year rush to field Italy’s new tanks
どういう仕組でPantherがMGCSのベースラインになる可能性があるのかは不明
ロシアのウクライナ侵攻を受けて「伝統的な地上戦力」に対する再評価に注目が集まり、イタリアでも現実的な脅威の登場を受けて「陸上戦力の更新」が本格化、ラウティ国防次官は「Arieteは200輌中50輌しか運用状態にない」「NATOの義務を果たすには250輌以上の戦車が必要」「2024年から戦車取得のための予算計上が始まる」と、計画に詳しい関係者も「Leopard2A8が133輌必要」と明かしていたが、メローニ政権もLeopard2A8の取得費用を盛り込んだ予算を提出。

出典:KNDS
LeonardoとKNDSも戦略的提携に署名したと昨年12月に発表、この協定は「イタリアが希望している欧州戦車計画(Main Ground Combat Systemのこと)への参加」「発注が確実視されているLeopard2A8のワークシェア」に関するもので、Leonardoのロレンツォ・マリアーニ氏はマリアーニ氏は「KNDSと交わした協定に基づいてLeopard2の大幅なイタリア化(レオナルドが供給する電子光学センサー、通信装置、指揮統制システム、砲身など)が行われてイタリア側の要求を満たした」と明かしていたが、この協定は最終的に破綻してしまう。
KNDSは6月「LeonardoとLeopard2の構成で合意できなかった」「LeonardoはLeopard2の共通性を崩壊させようとした」と主張して協定を破棄、匿名の関係者もDefense Newsの取材に「KNDSはLeopard2の技術移転を一切認めなかった」と、業界関係者も「RheinmetallのPanther KF51を検討するかもしれない」「Dardo後継車輌の開発(A2CS)でKNDSと協力するのは難しくなった」と述べていたが、LeonardoとRheinmetallは3日「主力戦車と歩兵戦闘車輌の開発・製造に関する合弁会社の設立」で合意した。

出典:Rheinmetall
この合意についてLeonardoのロベルト・チンゴラーニ最高経営責任者は「イタリア軍は主力戦車と歩兵戦闘車輌の取得を急いでいるため我々も出来るだけ早く動く」「Rheinmetallとの合弁会社は9月までに設立され、国防省と合弁会社の正式な契約は年末までに締結される見込みだ」「最初のLynxは2年~3年以内に、最初のPantherは3年以内に納入される予定だ」「イタリアとドイツのワークシェア比率は60対40で、イタリアの60%の内50%をLeonardoが、残りの10%をRheinmetallが所有する伊企業が行う」と述べている。
さらにチンゴラーニ氏は「LeonardoとRheinmetallの合弁会社が開発するPantherがMGCSのベースラインになる可能性もある」と述べており、KMWが「Leopard2からMGCSへの移行に対する裏切り」と罵っていたPantherはNATO加盟国内にハンガリーとイタリアという顧客を確保し、MGCSにも参加するRheinmetallはKNDS(KMW+Nexter)が主導する計画をPantherで乗っ取る気なのかもしれないが、どういう仕組でPantherがMGCSのベースラインになる可能性があるのかは不明だ。
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※アイキャッチ画像の出典:Rheinmetall
この話題でいつも思うんだけどLeonardoとLeopardで一瞬頭がバグるんじゃいw。
俺もバクッた。
名前は同じPanther(これすら最終的に変わるかもしれませんが…)かもしれませんが、イタリア製の部品の割合が多くハンガリー仕様とは別ものになりそうですね。
車体はどうするのか気になりますね、Bergepanzer 3ベースで新造するのか、稼働していないArieteの車体を使い回すのか…
Arieteの車体にKF-51の放蕩を載せるのが手っ取り早いが、倉庫のArieteを復活させられないところを見ると、足元見られまくってK2導入とかになりそう。
自国産業の保護という観点から見ると移転に優しいK2は結構ありかと思いますけどね。
重量がそこそこあるのが気になりますけど、レオパルド2A8買おうとしてるくらいだから気にならないのかな?
何はともあれ、新型戦車がこの短期間で正式導入される可能性ってのは一介のオタクとして胸が高鳴る…。
タミヤの新金型来たら嬉ションしちゃうかも。
強そうなんだけど、戦車も戦闘機もだんだんカッコ悪くなるなぁ。。
>PantherがMGCSのベースラインになる可能性
Panther は MGCS に先行し採用・配備されることが確実視される状況になったので、後発製品になる MGCS への要求パフォーマンスの最低基準になるかも、というだけの意味では。
くだらない質問かも、ですが。
“Panther”という名前にパテント?がもしあるなら、
今まで、どこの会社?がそれを保持していたのだろう。
MAN社?かな。
一般名詞だから、ないんじゃ。
なるほど、です。
ご教授ありがとうございます。
これがKF51がベースラインになるにしても何かぱっとしない感じはする。
UAV/UGVとの連携はともかく砲塔だけが変ってシャーシはレオ2なら設計は50年以上前ではないだろうか駆動系もユーロパワーパックで行くなら採用は30年以上前。ゴム製履帯か新しい履帯での地形対応の増大とか。せめて今後の欧州を考えるならロシアのアルマータ並の新規採用とファミリー化ぐらいの思い切りは欲しい所ではある。
戦車の場合、「必要なときに動くこと」「維持管理のコストが安いこと」「実戦で運用できること」が何よりも重要なので、車体はコスト、実績重視でそのままというのは理にかなっていると思われ。
できれば変えたいだろうけれども、新規設計とした結果、コストが増大したり深刻な不具合で計画が遅延、中止されたり、部品調達のコストが高すぎてまともに維持できないということは戦車の歴史でままあるので、こればかりはしょうがない…
少なくとも防御力に関しては複合装甲のモジュールを入れ替えれば近代化できるだろうし。
砲塔無人化が前提なら車体側の小型化はもう無い。むしろ大型化だが既存インフラで問題が出る恐れが大となれば据え置きが適当かと。だったら既存のレオ2のインフラネットの最大活用がコスト面で有利だろ。
MGCSも欧州標準MBTのレオ2車体に互換性ありでも能力面で問題無いとなればそれが正解。じゃあ能力面で問題は?というと今や問題の大半は砲塔側にあって車体は問題視される部分はほぼ無い。
問題が出るなら砲塔無人化に伴い車体の設計変更が大規模になる場合だが、それでもエンジン、ミッション、懸架ではなくシャシー駆体の話になる。車体弾庫の廃止とか駆体変えてもエンジン、ミッション、懸架は既存のMCで十分だろう。
サスのセミアクティブ油気圧化は130mm以上の場合は必須だろうが将来的な砲換装と同時となれば現状必須じゃないはず。どうもまずは120mmで感がすごいあるし。メーカーの考えはむしろその実質レオ2車体の将来ファミリーでIFVとSPHも作ればよくねでは?
KMWは裏切りとか言うくらいならイタリアに技術共有でもっと寛容な対応をできなかったのだろうか。
その辺の対応が渋いばかりに顧客を失っている気がする。