メルツ政権はドイツ軍の慢性的な人員不足を解消するため「兵役近代化法」の導入に取り組んでおり、キリスト教民主・社会同盟は「軍事的危機が深刻化した場合にのみ徴兵を許可するのでは意味がない」と主張し、強制的な改善=兵役が選択肢に含まれた義務的奉仕制度の導入を要求している。
参考:Pressure mounts on Germany’s Merz to restore military conscription
どのアプローチを採用しても目標が達成できないなら強制的な方法しかない
今年2月の選挙で勝利したメルツ氏は「米国からの独立達成が優先事項になる」「米国が信頼できる同盟国でなくなる最悪のシナリオに備えなければならない」と訴え、キリスト教民主・社会同盟と社会民主党は国防・インフラ整備のため「債務制限からの国防支出除外」「総額5,000億ユーロの特別インフラ基金設立」で合意し、首相就任後の初演説で「ドイツ軍を欧州最強にするための資金を全て出す」と宣言。

出典:Photo by Sgt. 1st Class Michael O’Brien
NATO加盟国は6月の首脳会談で「2035年までに毎年GDPの5%を防衛分野(3.5%)と防衛・安全保障関連(1.5%)に投資する」と約束したものの、メルツ政権は6月24日「今後5年間で総額6,490億ユーロ=約109兆円を国防費として支出する法案」を、7月30日「2026年~2029年までの年間国防費を最大1,620億ユーロ=27.7兆円に増額する中期財政計画」を、さらに防衛装備品の調達遅延を招いていた問題を解消する「連邦軍調達促進法」も承認し、ドイツ軍の人的リソース増強にも取り組んでいる。
ドイツは2031年までに現役18万人体制を20.3万人体制、予備役も6万人から20万人まで増強し、有事の際にドイツ軍を46万人まで拡張する予定で、メルツ政権は「兵役近代化法」の導入について議論を続けており、この法案について「キリスト教民主・社会同盟と社会民主党は意見が対立している」と報じられている。

出典:Bundeswehr/Jana Neumann
兵役近代化法の目的は「2011年に停止した徴兵制の全面的な再導入」ではなく、徴兵年齢に達した全男性に徴兵登録とスクリーニングプロセスを受ける義務のみを課し、議会が「危機的状況に直面している」と判断した場合にのみ「徴兵を許可する」というもので、キリスト教民主・社会同盟は「軍事的危機が深刻化した場合にのみ発動される徴兵は抑止力ではなく対応策に過ぎない」「これでは危機に対して手遅れになり本来の目的を果たせなくなる」「危機が発生している状況下での徴兵実施にどのような成果が期待できるのか」と主張して「強制的な改善=兵役が選択肢に含まれた義務的奉仕制度の導入」を要求。
ピストリウス国防相や社会民主党は「ドイツ軍が議会軍であるいう原則に基づき『徴兵制導入の決定は行政ではなく立法府が判断すべき内容』だ」「議会は目標が達成されず、脅威のレベルが高いと判断すれば徴兵制の導入を決定するだろう」「兵役近代化法が強制ではなく志願に重点を置いているのは本当に奉仕したい人々を惹きつけるためだ」「強制から始めれば抵抗を生み出すだけだ」「軍への奉仕を魅力的なものにして志願のみで目標を達成できるようにしたい」と反論しており、現在も両党の間で人的リソースの拡張アプローチについて調整が続いているらしい。

出典:Bundeswehr/Jana Neumann
どのアプローチが採用されるのかは不明だが、両党は「ロシアの脅威」「ドイツ軍増強の必要性」「志願で目標が達成できないなら強制的な方法しかない」という点では一致しているため、ひとまず志願制でやってみるか、志願制でダメなら徴兵への自動移行を兵役近代化法に盛り込むか、最初から徴兵ありきで話を進めるかのどれかに落ち着くだろう。
追記:ドイツ軍は2029年までに無人機・ドローンの保有数を600機から8,000機以上に増やすことを検討中で、さらに1,600機~3,200機を「予備」として追加調達することも希望している。
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※アイキャッチ画像の出典:Gerben van Es





















後は国民の理解を得られるかどうかですね
まあ一から徴兵制を導入するのでは無く復活すると言う形ですから、比較的理解は得やすいとは思います
ただ徴兵対象世代からの反発はどうしてもあるでしょうね。
仰る通りです。
社会保障費もそうですが、若者・現役世代に負担を負わせるだけじゃなくて、老人世代も痛みを分かち合うべきだなと(女性もです)。
徴兵についても同様で、老人に労役か何かを同じように背負わせる仕組みにしなければ、強い反発により選挙結果に現れるだろうなと注目しています。
単純に徴兵した兵士の給料を平均の二倍にすれば納得するのでは?日本なら900万円 これならいいと言ってくれる人も沢山いるでしょう
ドイツは改革案でも3万6000ユーロ、平均の8割で済ませようとしているので反発は必至でしょうね
日本も、どうなりますかね。
国・地方公共団体が、何でもボランティアにして搾取しようとするのに、まともに割増しで払うのかなあと…
900万出すなら徴兵する必要がない
人数が必要な多額の投資を是認している時点で理解もなにもあったもんじゃない気はします。昔みたいな条件で復活するなら徴兵忌避の代替措置として社会奉仕活動(民間)を義務付けを一部修正するなりして導入ですかね。
軍事に多額の費用が必要なら無休で医療・福祉サービス等の現場で担い手を確保しそこへの出費低減を狙うと言うのはアリでしょう。実際に兵役義務を無くした後に医療・福祉関連への出費が増えましたし。
政治基盤が弱まってきているため、政治的にかなりハイリスクに感じますね。
メルツ首相支持率32%に低迷していて前任より大幅に低いだけでなく、AfDの支持率が首位という調査結果もあるからです。
>一方、ドイツ公共放送連盟(ARD)が週末に実施した世論調査では、メルツ氏の危機管理能力が優れているとの回答は29%に留まった。メルツ氏の個人的な支持率は32%となり、就任100日目時点のショルツ前首相の56%、メルケル元首相の74%を大きく下回る。
(2025年8月13日 独メルツ政権発足100日、与党支持率が2位へ転落=世論調査 ロイター)
ドイツが口で大きい事を言っていても信用できないのは何でだろう。
韓国とかもだけど陸軍国ってやっぱ徴兵は必須なんだよねぇ
産業ロボか即日大隊規模の軍にでもならない限り残りそう
根本的には今すぐウクライナに行って戦わないからじゃないかな。
マキャベリズム的に、というかすごく冷徹に考えれば欧州は兵士を
今すぐウクライナに放り込んでロシア人と殺し合ってくればいいんだよ。
それが合理的だし、実際クリミア戦争ではそうしたんだから。
この戦争は民主主義の価値を賭けた戦いだ、ウクライナを支援しよう、
とか言っておきながら自分達が血を流すのは無理だと言う。
まあ控えめに言っても臆病だし醜悪ですらあると思う。
ドイツで徴兵がなかった時期って、WW1直後のワイマール共和国初期か、2010年代~の平和の配当期くらいしかなかったと思うけど、ドイツ人の心理的抵抗なんてそんなにあるのか?
軍隊行くのが男のつとめみたいな文化でしょ
そりゃあ2010年代~の平和の配当期が現在に続いてるんだからそうだろ
実際には徴兵制廃止の前、2003年の時点で良心的兵役拒否を選択する人の数が兵役につく者の数を上まわっていて兵員不足に悩まされていたんだし
ドイツが全面戦争決意している状況って、ロシアとNATOが無制限核戦争勃発した状況以外無理じゃない?
歴史的に言うと対フランスですな
正直EU内部に向けられる気がしてならないのですよね…
いや偏見かもしれませんがドイツの一般人の愛国観と愛国主義者集会を実際に見てしまって生まれた偏見です…
英仏がパレスチナ承認に向けて動く中、ドイツは「意味がない」と切り捨てており、既に英仏対独の構造が出来上がりつつあるのがね…
切り捨てるってレベルではなく、ドイツ国防省大臣がイスラエル・パレスチナ戦争でイスラエルへの完全な支持を表明して、「我々が支援できることなら何でもおこなう用意がある。」とまで表明していますからね。
いずれドイツ軍がイスラエルのために戦う未来もあるのでは?ど思ってしまいます。
ほらほら、左翼の皆さんの大好きな「先進的なヨーロッパの国」が、徴兵制を議論していますよ。
当然、我が国も乗り遅れずに、追随しますよね?
徴兵も男女平等、女も兵士の時代です。
ヨーロッパを見習え、まさに仰る通りですね。
テクノロジーが戦争を変えたように見えても徴兵制の話を
現代でもしなきゃいけないのだから、戦争はある意味何も
変わってないのかもしれません。
数十年前までは高コストで優秀な戦車があれば志願兵だけでいけた
と思うが、現代では装甲車両同士の交戦はメインではなくなった
ので、陸戦の主語は戦車じゃなくて歩兵に戻りつつあると思う。
皮肉にも技術の進歩で先祖返りした感がある。
これでは実用アンドロイドが誕生するまでは徴兵制は陸戦の
勝利を左右する要素になってしまうだろうな。
小型のタイヤで動く無人運搬機みたいなのがウクライナに投入されてるようだがこいつは実際には評価がイマイチって聞いたな。
割と高価なのにゆっくりで回避もしないからドローン攻撃であっさり潰されるのだとか。
歩兵の重要性はずっと変わってないと思うよ
安保法制が問題になってた時にこんな解釈が通るなら徴兵を苦役扱いするのを止めて徴兵制だって導入できるようになるって野党が騒いで賛成派が現代戦ではハイテク兵器云々言って国会でも同じような答弁してたけど
あの時も本当は軍事専門家は分かってたと思う
過去だろうが現代だろうが結局戦争では点じゃなく面を制圧する必要があってそれには歩兵が必要なのは昔も今も変わらないからね
機甲兵力だって歩兵が随伴しなければ脆弱だし
国内に抱えてる難民を兵役に就かせればいんじゃね?(人権無視)
それは冗談として、徴兵制・予備役制度にして常に最低限の練度を保たないとダメでしょうね
兵役の対価としてのグリーンカードは有りといえば有り(なお信頼性)
この後詳細を書き込みますが、ウクライナの無人システム軍が7月に撃墜したロシア偵察用無人機は700機超、使用したFPVは万を超えます。
追記の目標数では開戦時の一時しのぎにしかならないような···開戦後急ピッチで増産はするのでしょうけど···
〈追記:ドイツ軍は2029年までに無人機・ドローンの保有数を600機から8,000機以上に増やすことを検討中で、さらに1,600機~3,200機を「予備」として追加調達することも希望している。
とありますが、先日ウクライナの無人システム部隊(USF)が報告した7月分の報告書では全然足りないかと……少し長いですが原文と翻訳を併せて記載します。
(Grokによる翻訳:無人システム部隊の運用に関する公開報告書 – 2025年7月
無人システム部隊はウクライナ武装力量のわずか2%を占めるに過ぎませんが、確認された敵目標の無力化の36.3%は我々の人員によって実施されました。
ウクライナ戦争の現実を意図的に過小評価した状態で軽々しく語って欲しくないな
西側の当局やメディアはいまだにウクライナの死者が最大で10万とか言ってるけど実際は倍~数倍で重傷者入れればさらに多いのは明らかだし