メルツ政権はドイツ軍を欧州最強にするため「今後5年間で総額6,490億ユーロ=約109兆円を国防費として支出する法案」を承認したが、今度は調達手続きの合理化を目的にした「連邦軍調達促進法」を承認し、ドイツ軍は資金だけではなく調達ルールにおいても柔軟性を手に入れる格好だ。
参考:Berlin launches laxer laws in bid to hasten defense acquisitions
ピストリウス国防相は調達手続きの合理化を目的にした連邦軍調達促進法について「飛躍的進歩だ」と称賛
NATO首脳会談で32ヶ国の首脳は「2035年までに毎年GDPの5%を防衛分野(3.5%)と防衛・安全保障関連(1.5%)に投資する」と約束したものの、期限内に従来の国防費に相当する3.5%を達成する道筋が見えている国は一握り(ドイツ、ポーランド、ラトビア、エストニア、ギリシャ)しかなく、ドイツのメルツ政権は6月24日「今後5年間で総額6,490億ユーロ=約109兆円を国防費として支出する法案」を承認し、2029年までに防衛分野への投資=3.5%を達成する見込みだ。

出典:NATO
この資金力を背景にドイツはウクライナ支援と再軍備を同時並行で進めることができ、欧州最強の抑止力を手に入れるためレオパルト2×1,000輌、ボクサー×2,500輌、ボクサーの歩兵戦闘車バージョン×148輌、ディンゴ2×115輌、Patria6×6×1,000輌以上、戦術車輌×1,000輌以上、補給・輸送用車輌×10,000輌以上、PzH2000とRCH155を計190輌、新しい多連装ロケットシステムを最大100輌、Patria6×6とNEMOを組み合わせた火力支援車両を最大120輌、タイフォンシステムなどの調達を進めている。
さらにドイツはタイフーンTranche1を更新するためTranche4を38機、トーネードECRを更新するため既存機を改造したEK仕様を15機、戦術核兵器の運搬プラットフォームを更新するためF-35Aを35機、CH-53を更新するためCF-47Fを60機、アロー3システムを3セット、パトリオットシステムを8セット、IRIS-T SLMを6セット、212CD×6隻、MEKO A-400 AMD×6隻の調達も進行中で、F-35Aの追加調達、タイフーンTranche5の発注も控えているが、メルツ政権は調達を加速させるため調達手続きの合理化を目的にした「連邦軍調達促進法」を23日に承認した。

出典:Bundeswehr/Stefan Petersen
ショルツ政権は2022年「防衛装備品の調達を加速させる暫定措置」を講じたが、2026年に期限切れを迎える同措置は「重要な武器システムの調達」のみを対象にしていたものの、今回の連邦軍調達促進法はドイツ軍が必要とする全てのニーズに適用され、調達遅延を招く要因の排除やEUの入札要件を回避できる仕組みも導入されるため、ピストリウス国防相も「ドイツの防衛装備品調達における飛躍的進歩だ」と称賛している。
ドイツ連邦軍調達局(BAAINBw)は競争入札を通じて防衛装備品を調達し、これに参加する企業は入札結果に異議申してを行う権利、裁判所への控訴を通じて調達手続きを停止させる権利を有しており、入札を通じた迅速な調達が困難なのは「入札に敗れた企業との和解」に膨大な時間と労力を要するためなのだが、今回の連邦軍調達促進法は「国防上の利益のためなら契約手続きを進めても良い」と定義しており、緊急要件を満たすための防衛装備品は「EUの入札要件」を回避できるようになるため、入札者を国内もしくは欧州域内に限定することもでき、ドイツ軍は資金だけではなく調達ルールの柔軟性も手に入れる格好だ。

出典:Gerben van Es
勿論、調達ルールの柔軟性は防衛市場に参入を試みる新興企業の機会を犠牲しており、連邦軍調達促進法は欧州域内に拠点を置く伝統的な防衛産業企業に有利な内容だが、現在の安全保障環境において「平等な権利と機会を保護するため調達に時間をかける」というアプローチはナンセンスなので、状況が落ち着くまでは平等よりも効率を重視すべきだろう。
因みに入札結果に異議申してを行う権利はドイツ特有の問題ではなく、国際的な競争入札を実施するほぼ全ての国に(程度の差があっても)共通している。
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※アイキャッチ画像の出典:Bundeswehr/Jana Neumann




















人口規模と経済力的に、核抜きなら単独でロシアと殴り合える位の陸上戦力を整備できるポテンシャルを持った国なので頑張って欲しいですね。
ロシアが欧州方面の戦力増強を強いられれば強いられるほど、日本の北方防衛負担が楽になって中国に集中できますから、欧州のことは欧州でなんとかしてもろて
ただ移民がネックかな?
まあロシアは中央アジア移民入れまくってるんですけどね、初見さん
第七師団を含めた北部方面隊の近代化に投資できる状況じゃないしね
南西方面の体制強化に金かかるし
ウクライナ及びNATO諸国にがんばってもらって極東ロシア軍の再建を送らせてよう
なぜロシアに関する事で欧州の事は欧州でとか言えるのか不思議
ロシア?あそこはアジアでしょ。
先進文明のヨーロッパと一緒にしてもらっては困る。(17世紀史観)
日本的には初手でウラジオストクを強襲して太平洋艦隊の揚陸艦さえ沈めてしまえば後の脅威は極東空軍の空爆くらいなもんで、戦闘機や自縛ドローンや弾道弾を欧州に貼り付けてもらってればさして驚異でもないのでは。
安価な自爆ドローンは雲霞の如く飛んでくると思うのでウクライナみたいな安価な迎撃手段の構築は必須だと思いますが。
ドイツに極右とか親ロシア政権が誕生したら、今度は軍事予算の引き下げを周りの国が求めそうですね。
ホントにこの戦力内容でいいのかな。
戦車不要論なんて今更言うつもりは無いが…戦車を代替できる存在がいない、
という事実と戦車の生存性がかなり低いという事実は別に矛盾しない。
実際に戦車が1000両ほど供与された宇ですら前線には出撃しなくなっている。
大量にやられるならたくさん用意しとけ!はスマートな解とは言えないので
現代の陸戦に通用する機甲部隊/機械化部隊のビジョンが必要だと思うけどね。
Skyranger+その他でドローンは何とかなると踏んでいるんだろうか…?
Northrop Grumman Cannon-Based Air Defense – or CBAD
CBADはセンサーを統合します、 戦闘管理指揮統制、 と エフェクター 活用 戦闘で実績のある大砲 と の 組曲 先進的な弾薬、亜音速巡航ミサイルおよび無人航空機システム(UAS)に対して紛争の開始から終了まで防御する準備ができています.という風にノースロップグラマンは主張していますよ。155mm砲57mm砲30mm砲のシステムを組み合わせて迎撃するというコンセプトですね。ドイツでも同じ様な事を考えていそうな気がしますが‥
だからAPS標準装備と天板装甲の強化、各種センサーを追加したレオパルド2 A8なのでは。
フランスとかポーランドとか表面上は歓迎するだろうけど、内心は相当ビビっているんじゃないかな。再軍備して欧州最強になったドイツってある意味ロシアより恐ろしいだろうしさ。本当に日本は島国で良かったわ
イギリスの鉄の女は「強いドイツはダメ!!!」って制限かけるのに血道を上げてたからなぁ
もしまだ存命だったら倒れるんじゃないかね?
軍備増強は良いと思うんですが、それを操る人の増員は出来るんでしょうか···?
ここの諸兄はご存じかもしれませんがカンボジアとタイの国境付近で武力衝突が起こったようですね。どちらが先にやらかしたかは不明ですがカンボジア側がBM-21をタイへ発射し、タイ側はF-16による空爆を実施したとか。
あちこちでドンパチするのはやめてくれ···
元を辿ってみれば戦争ケインジアンを遂行してきた歴代アメリカ大統領のおかげ
ドイツの事だから次は極左政権になって白紙になりそう
ならんやろ もしなっても白紙化するとは思えない
日本の防衛費5%がどうなるのかの方が、私、気になります。
自民党政権だったら、付け替えとか予算名義の書き換えとかでなるべく被害が少なくなるように上手くやったと思いますが、野党連合が政権担当した場合、脳死で増やすか、トランプに逆らって無視するかのどっちかしか無さそうで。
そういう実務面は自民党の議員ではなく官僚がやりますから、共産・社民・れいわあたりが政権に入らない限り大きく方針が変わらないと思います。
本来旧ソ連と対峙すると同時に[欧州最強の強いドイツ]復活を抑止する為に結成されたNATOが今では手のひら返しで復活を歓迎するとは・・・
これも時代の変化ですかね?
その成立から言ってアメリカが頼りなくなったらこうなることは分かってたことだ
ドイツ怖い病という不治の病を患っているフランスとイギリスは本当に歓迎するのだろうか
ドイツが巨大になりそうな時は昔なら表で歓迎しても怖がってソ連に接近したが
第二次大戦までと違って両国とも核兵器を保有していますから、前ほど脅威には感じないのではないでしょうか?
ポーランドと並んでロシアに対する防波堤が強化されるくらいに考えていそうです。
”レオパルト2×1,000輌、ボクサー×2,500輌、ボクサーの歩兵戦闘車バージョン×148輌、
ディンゴ2×115輌、Patria6×6×1,000輌以上、戦術車輌×1,000輌以上、
補給・輸送用車輌×10,000輌以上、PzH2000とRCH155を計190輌、
新しい多連装ロケットシステムを最大100輌、
Patria6×6とNEMOを組み合わせた火力支援車両を最大120輌、タイフォンシステムなど”
すごいと思いますが、歩兵を直接支援するものはないのかな。
対地直射のできるもの。NEMOはどちらかとすると、砲兵寄りだろうし。
よその記事を見ていたら、対UAV用に6銃身の無反動散弾銃が作られたみたいですね。
”出てきた”と言う気がします。いすれこれは外部動力化されるかな。チェーンガンみたいに。
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