ドイツのメルツ新首相は議会演説で「連邦政府はドイツ軍が欧州最強の通常軍になるため必要な資金を全て供給する」と述べ、ピストリウス国防相も「志願兵が十分に集まらなければ徴兵制を復活させる」と強く示唆し、新政権は安全保障分野における独立達成に向けて強い決意を示した。
参考:Germany’s Merz vows to build Europe’s strongest army
参考:Germany’s Pistorius warns draft may return if troop numbers fall short
高まるロシアの脅威、トランプ政権の不確実性を受けて徴兵制を復活させればドイツの安全保障にとって大きな政策転換
今年2月の選挙で勝利したメルツ氏は「米国からの独立達成が優先事項になる」「米国が信頼できる同盟国でなくなる最悪のシナリオに備えなければならない」と訴え、キリスト教民主・社会同盟と社会民主党は国防・インフラ整備のため「債務制限からの国防支出除外」「総額5,000億ユーロの特別インフラ基金設立」で合意し、ドイツ連邦議会も憲法改正を可決して歴史的規模の財政パッケージが成立。

出典:President of Ukraine
正式に首相に就任したメルツ氏は14日の議会演説で「連邦政府はドイツ軍が欧州最強の通常軍になるため必要な資金を全て供給する。これは欧州で最も人口が多く、経済的に最も強力なドイツにとって相応しい措置だ。我々のパートナーらも強力なドイツに期待し、実際にこれを要求してきている」「我々の目標は武力を行使する必要がないほど強いドイツや欧州を実現することだ」と、米国に次ぐ規模の支援を行っているウクライナ問題についても「我々の立場に疑いの余地はない」「今後も無条件でウクライナ側に立つということだ」と述べたが、本当に欧州最強の通常軍を建設できるのかと疑う声も多い。
最大の理由は「ドイツ軍の慢性的な人員不足」で、軍は採用アプローチを強化しているものの「若者の兵役敬遠」の影響で上手く機能しておらず、未だに人員不足の穴を埋めることが出来ていないため「本当に欧州最強の通常軍を建設できるのか」と疑われてるのだが、ピストリウス国防相はメルツ首相の演説後「(2031年までに現役20.3万人体制について)初めはボランタリズムに頼ることで合意した。初めはと前置きしたのは十分な志願兵が集まらなかった場合のためだ」と述べ、軍に自ら志願する若者が少なければ徴兵制を復活させると強く示唆した。

出典:NATO photo by Corporal (OR-4) Martin Glinker, DEU-A
さらにピストリウス国防相は「欧州の安全保障は欧州人自身の責任だ」「ドイツはフランス、英国、ポーランドと並んで欧州防衛を主導していく」とも述べており、Politicoは「高まるロシアの脅威、トランプ政権の不確実性を受けて徴兵制を復活させればドイツの安全保障にとって大きな政策転換になるだろう」と指摘した。
関連記事:ドイツ新首相はトルコへのタイフーン売却を否定せず、ギリシャは落胆
関連記事:独首相候補のメルツ氏、安全保障面で米国からの独立を達成すると言及
関連記事:米国製多連装ロケットシステムから脱却する動き、米国がドイツの選択を警戒
関連記事:弾薬統合の自由、ドイツ軍の選択はGMARSではなくEuroPULS
※アイキャッチ画像の出典:Photo by Sgt. 1st Class Michael O’Brien
フランスは商人として動くのでドイツの動きは歓迎でしょう。
NATOとしてもドイツが貢献を増すことになるので歓迎でしょう。
一方で、ドイツ人からすれば、負担がただ増えるだけ。
今までのアメリカに防衛を依存し、それでいて貿易で恩恵を十分に受けるという効率の良いやり方が通用しなくなった。
政府は自国民の当事者意識を高めることで果たせると思ってそうですが、本格的になった際に政権は持つのか・・・
ドイツ新政権が、徴兵制にまで言及したのは、政治的に勝負に出ていますね。
第二党AfDが、行政処分に対して仮処分申請を行っており、司法判断に委ねられました。
ドイツ連邦議会選挙は2025年なので次回は先ですが、それまでにドイツ州議会選挙が2026年から続々とあるんですよね。
ドイツの有権者は、ドイツ新政権の政策可否について州議会選挙を通じて審判するわけですが、来年どのような結果が出るのか注目したいと思います。
(2025年5月9日 独情報機関(がAfD極右認定を一時停止、行政裁判所の判断待ち ロイター)
(ドイツの州首相一覧 Wiki)
追記です。
メルケル首相は、不法移民を大歓迎してきことが有名ですが、ドイツ新政権は大きく方向転換をしているんですよね。
民意を取り込もうという姿勢は、野党弾圧のような事をするよりも、民主主義として健全に感じています。
(2025/5/8 ドイツが不法移民入国拒否へ メルケル氏の難民に寛容な措置を撤回 産経新聞)
やったね、ドイツの福祉業界!無料の良心的兵役拒否者が増えるよ!
難民は帰国か兵士か選べってやれば集まるんじゃないかな?
徴兵制を施行すれば、どうせ全員軍隊じゃなくて良心的兵役拒否を選ぶはずで、そーすれば低賃金の福祉産業に移民を入れる必要が無くなる。軍の強化はさておき、とりあえず徴兵は復活させたらどうだろうか。
そもそも人材をより多くの移民で補う方針もあって2011に徴兵制やめてましたね。昔からドイツは兵役よりも拒否者が多くて成り立つ福祉という話でしたし。
しかし一度廃止した不人気な徴兵制復活事態が現政権にできることなのか、福祉以外の人材不足はどうするのかが最大の焦点になりそうですが果たして…
最強を目指すのはいいけど、先立つ金はどこから出すのさ?
大増税とか言い出したらそれこそ連立が崩壊するかメルツ氏が放逐されかねないけど
現代版のドイツ再軍備宣言か
地政学的に不安定になりやすいドイツに強すぎる軍事力を持つ必要がないほどの防衛力を欧州と米で提供することで、地域全体の安定化を図ることが本来のNATOの目的の一つでもあるのだが、実際問題アメリカの国力あってこそそれが実現できるわけで、それがトランプみたいな大統領になればこうなりますよ。日本だって同じ要領で、日本人は意識しないかもしれないけど、中国筆頭に、韓国だってあまり日本が強くなりすぎれば恐怖して軍拡に走るわけで、だからこそアメリカが軍を置いて補う形で、日本独自の軍事力を抑制してバランスを取ってきた。そしてこれらの地域が安定していちばん利益を得るのはアメリカ。もちろん安定化した地域にも利益はある。その利益で美味い思いしてたのを崩してしまってはアメリカは今後どうなるのだろうか。すぐにどうこうはならないだろうけど。
もうその安定が維持出来ないわけです。少なくとも今の米国にはそれを続ける力がない。
はっきり言えばただそれだけの事です。
中国に兵器の基幹部品を依存した状態で中国と戦う事は出来ません。
また仮にロシアと戦うとしてもロシアが本当に崩れそうになったら中国がどう動くかは予想出来ません。
ある程度は予想出来ますけどね。ロシアが倒れたら次は中国、インドと西側の圧力が向けられます。
西側諸国は自分達の力をあらゆる意味で過信していたというのが実態だと思われます。
ロシアは思ったほど軍は強くなかった。侵攻開始段階では。
しかし、ロシアという国家と経済システムの強壮さと人的資源の優秀さは西側の想定を明らかに超えていました。
もう米国が押さえ付けてどうこうするというのは無理なのです。
なんならカマラハリスが政権を取ったとしても彼女と彼女のスタッフに出来た事は例えばウクライナ向けにはバイデン政権時代よりももうちょっと支援を積み増すが限界でしょう。仮にそうであったとしても、ウクライナが優勢に立つ事は特になかったと思われます。
ましてゼレンスキーは自分の支持層を動員するのを本当に嫌がります。彼等が一番好戦的なのに。
そして今の欧州の動きでもドイツは自分達が言った通りにやるかもしれない。でもフランスはオランダはベルギーはどうでしょうか?ゼレンスキーがぶっちゃけていましたが、欧州からの支援は言ったほどは来ないのです。ドイツ以外。
実はとっくの昔に崩壊していた仕組みを「こんなもの形だけ守っても無駄だ」としたのがトランプと言うだけだと思いますね。世界が大丈夫と思ってる内は持つから有効だったと反論される可能性は高いですが、それをロシアが別に信じてなかったら結局崩壊するのですし、今わかりやすく崩壊中です。それだけの事です。
その為のエネルギー、人員、食料、お金、装備等、拡張に必要な物資を何処から調達する気なんだろ。
トランプとプーチンが目先の短絡的視野と利益追求をした結果、寝た子を起こす事になりそうですな。米露共同でナチスを彷彿される軍事大国を出現させるわけです。何と言うか、端的にアホですな
徴兵制復活も辞さずってえらく強気ですな。
実際問題、ロシアとの間には大軍拡中のポーランド君がいる訳で
ロシア自体もポーランドを突破できるかというと不可能なわけで、それを考えると例えアメリカの庇護がなくなったといっても西欧が危険になるかと言えばそうでないと思えるのです。
今はロシア脅威論の熱に浮かされた国民の支持があるでしょうが、熱が過ぎた後に揺り戻しが来そうです。
精々国民が容認しそうなのは軍事費増額の為の増税位までで、自らの命を国家の為に捧げる徴兵制まで本音で指示してるとは思えない。
日本だけでなく西側の価値観では国家の為に強制的に個人が犠牲になるのは論外でそうなりそうなら国外に逃げるってのが現代の若者の多数派でしょう。
ようし、ジークフリート線を東側に作っちゃうぞ!
ジークハイル!
ジークジオン!
右派のAfD支持層を取り込みつつとしているうちにまさに極右的な主張になっているような…
まあそれはおいておいても、一時的にこの議論で優位を取れたとしてもAfDという代案がドイツに存在するうちは、政権運営失敗したらさらに支持を奪われる結果になるので果たして。
だからこそ主な差異のウクライナ戦争がドイツ経済停滞の象徴として攻撃されてるのですが、停戦を達成して支出を減らせる見込みが取れる前にこの大支出と労働人口の軍流入の方針は経済側からすると冷淡に見られそうです。
自動車産業で大量リストラされた人達を入隊させよう
欧州最強だったドイツ連邦軍をここまで弱体化させたメルケルってやり手だったんだな
冷戦の時みたく自国が最前線じゃないからやり易そうではあるが、それ故に他人事になりがちな国民の危機感をどう高めていくのか注目したいですね
AfDは移民反対なだけで軍拡を支持している訳ではないので、数年以内に撤回に追い込まれると予想。
>>「連邦政府はドイツ軍が欧州最強の通常軍になるため必要な資金を全て供給する」
その金はどこから持ってくるんだろうか?
メフォ手形再び?
実現度はさておき地力的には可能な国力ではあるからな
欧州人としてはドイツの軍事力が自国を上回るような環境を望んではいないでしょうに。特にEUに残ってるフランスなんかは隣に仮想敵が生えてくるような状況を許容出来ないんじゃないかなぁ。
経済も軍事力も、一度やる気を出したドイツに勝てるわけもない。イギリスと協力して裏で妨害工作くらいはやってきそう。ロシアも嫌がるだろうし、国内外に疑心と不和を撒くことになりはせんか。
ポーランドだってドイツが強くなったら今度は東プロイセンやオーバーシュレジエンが気になって来ちゃいますよね。多分。
東西冷戦期の西ドイツは、東ドイツとワルシャワ条約機構を仮想敵にしていて、実際に隣接していましたけど。
今のドイツは、そもそもどこが仮想敵なのか、どことどういう問題で対立していてそれが戦争に発展しうると想定してるのですかね。
少なくともロシアとの間には、領土問題も民族問題も宗教問題もないはずですが。まさか、東プロイセン北半分を取り返すとか?
ポーランドからも東プロイセン南半分とオーデルナイセ線以西を取り返すとか?
フランスからもアルザスロレーヌを取り返すとか?
はたまたトルコ系等の移民を追い出すとか?
まぁ日本もしれっと国防費1.7%くらいにしてるし何とかなるでしょ
日本も防衛増税が問題になってないしね…
単純に人口比で考えると。
ロシア(≒146.0百万人)、ドイツ(≒84.7百万人)ですから、
ドイツは、第一位にはなれないのでは。
西欧から見て、ロシア+ベラルーシ(≒155百万人)に対して、まず、
ドイツ+ウクライナ+ポーランド(≒154.6百万人)で同程度の戦力を
保持することが必要なのかな、と思えます。
さらにスウェーデンとチェコを加算して(合計≒176.1百万)で、
ロシア+ベラルーシの戦力を凌駕する必要があるように思えます。
ついで、英国+フランス+イタリア+スペイン(≒245.7百万人)で、
さらにロシア+ベラルーシの1.5倍の戦力を保持すれば良いのかな。
合計2.5倍に有効率を0.6掛けして、対ロシアは、実働1.5倍で良いのかな。
などとテキトーに考えます。ロシアは数を頼む国のようだし。
ドイツ国民の人口統計を見るとボリュームゾーンは50代半ばと30代前半がツートップであとは順当に少子化傾向なんですね。先進国はみんなそうですが、徴兵に適する年齢層がそれほど厚くないのに徴兵を再導入するのは(背に腹は代えられないとはいえ)経済や人材育成方面への影響も大きそうですね。
ナチスドイツと関連付けようとする人は西ドイツという国を知らないんだろうか。冷戦末期彼の国は4000両の戦車を保有してた
そして今は第二次冷戦が勃発しているわけで、アメリカを除く世界中が軍拡を志向してる
ドイツが露からの安価な天然ガスの確保で経済的にEUの覇者になったことは第二次大戦の戦争目的の達成に匹敵する事だった。しかしウクライナ戦争・ノルドストリームの爆破で露のエネルギーと切り離されて経済的に苦境に立った過程は政治的な大敗北でありドイツにとっては自殺に等しい。
その追い詰められた資源なきドイツが国債の多発により再軍備するというのはヒトラーの政策と同じ。ドイツのレーベンス・ラオム(生存圏)要求に繋がる。ドイツは先行き必ず侵略行動に打って出ざるを得なくなり極めて危険。さすがに核軍事大国の露と戦争することは出来ないから中欧、東欧、バルカン諸国や西欧諸国は複雑なことになる。
これは恐ろしいことになりなしたね。
ドイツは非常に巨大な力をもった大国ですが、地理的不運から強い力を持たないと活きていけないと思う不安定な国で、アメリカが居るNATOはその安全装置のようなもの。
世界大戦の発端は何れもドイツです。ロシアではないのです。
そして古参の欧州加盟国が本当に恐れるのはドイツが力を持つこと。