欧州関連

トルコとギリシャの軍事的緊張が再燃、今年だけ模擬空中戦が8回も発生

トルコとギリシャの軍事的緊張は2025年から再燃し、2026年には近年発生していなかった両軍機による模擬空中戦=ドッグファイトが8回も発生、さらにギリシャは無人機主体の領空侵犯を有人戦闘機で対処しているため、領空侵犯とスクランブルのコスト交換比に苦しんでいる。

参考:Cheap violations, costly interceptions
参考:New Aegean airspace breaches by Turkish warplanes, one simulated dogfight

2022年と同じ規模の領空侵犯が無人機主体でおこなわれればギリシャ空軍の負担は相当なものになる

トルコとギリシャの間には「キプロス問題」「東地中海のEEZ設定問題」「エーゲ海の領海問題」「欧州に天然ガスを輸送するパイプライン問題」「移民問題」といった問題が山積し、特に両国が自国のEEZだと主張する海域には天然ガスなどの資源が埋蔵している可能性が高く、2020年にトルコが当該海域で掘削調査を強行したため軍事衝突の一歩手前まで両国関係が悪化してしまい、これを契機にギリシャは大幅な軍事力拡張に乗り出すことになる。

出典:Kyriakos Mitsotakis

東地中海の軍事的緊張はウクライナ戦争、スーダン内戦、ナゴルノ・カラバフ戦争、イスラエルとハマスの戦争の影響もあり、トルコのエルドアン大統領とギリシャのミツォタキス首相がアテネ宣言(エネルギー、貿易、教育、輸送、投資、観光、スポーツといった15分野の協力に関する合意)に署名して落ち着きを取り戻したかに見えたが、ギリシャのミツォタキス首相は2025年7月「自国領海内のイオニア海と南エーゲ海に国立海洋公園を設定する」と発表してトルコとの領海問題が再燃。

トルコ外務省はすぐに「これはギリシャの一方的行動であり、エーゲ問題に関するトルコの法的立場を何ら変えるものではない」と反応、そして「北エーゲ海から東地中海にまたがる範囲に海洋公園を設定する計画」を発表し、今度はギリシャ外務省が「これはトルコ領海を超えた違法な一方的行為だ」と強く非難した。

出典:Πολεμική Αεροπορία – HAFspokesman

2025年後半には領海侵犯だけでなく領空侵犯も徐々に増加し、アテネ宣言に基づく対話が2026年2月に行われたものの成果はなく、エーゲ海上空ではギリシャ空軍機とトルコ空軍機による模擬空中戦=ドッグファイトが今年だけで8回も発生し、さらにギリシャメディア=Kathimeriniは13日「無人機による領空侵犯が増加し、ギリシャはエーゲ海全域で高額な作戦を強いられている」と報じている。

“トルコ軍機によるエーゲ海上空の領空侵犯は2024年一度も発生しなかったが、2025年は225件、2026年は現時点までに433件の侵犯が記録され、さらに近年発生していなかったドッグファイトまで再発しているが、トルコ軍機による領空侵犯は過去と比べて質的変化を遂げている。領空侵犯の大半はバイラクタル、アクスングル、ANKA-Sといった無人機によるもので、これを迎撃するギリシャ空軍機はこれまでと同じF-16とミラージュ2000-5だ。F-16による迎撃は1飛行時間あたり約2万ユーロの費用がかかり、領空侵犯を行う無人機の作戦費用は最大でも2,000ユーロで収まる”

出典:Ivan Anušić

要するに領空侵犯とスクランブルにかかるコスト交換比が釣り合っていないため「経済上の課題を突きつけられている」となり、ギリシャ当局はトルコ側の戦略について「人命リスクゼロの安価な領空侵犯」と呼んでいるが、同時に「戦闘機による迎撃任務には多大なコストが伴う一方で、パイロットや防空システムに実戦的な訓練機会をもたらし、実際の作戦環境下における探知、識別、連携、対応手順の検証に役立っている」と主張している。

ちなみに軍事的緊張がピークだった2022年には11,258件の領空侵犯を記録しており、これと同じ規模の領空侵犯が無人機主体でおこなわれるとスクランブルの負担は相当なものになるが、トルコ側は人命リスクゼロで作戦費用の負担も軽く「パイロットや防空システムに実戦的な訓練機会をもたらしてくれる」とは言ってられなくなるだろう。

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※アイキャッチ画像の出典:Πολεμική Αεροπορία – HAFspokesman

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コメント

  • コメント (17)

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    • ハムスター名無し
    • 2026年 8月 20日

    対無人機用の対空COIN機が必要だな
    ホンダジェットでも改造するか

    7
      • 名無し
      • 2026年 8月 21日

      それやりだすと、今度はバイラクタルの飛び方を真似るF-16が出てきて、自惚れたCOINが戦闘機に追い回されます。

      4
    • daishi
    • 2026年 8月 20日

    無人自爆機を使った攻撃が相手に大きな迎撃コストを強いるのと同時に 中高度長時間耐久無人航空機(MALE UAV)による領空侵犯は相手側の有人航空機にも大きなスクランブルコストを強いる、という非対称の状況ですね。

    「無人航空機に対して無人航空機でスクランブルをかける」のは現地到着速度のほかにコミュニケーション手段といった問題があるためまだまだ実用に至らない状況と認識しており、国際法で一定の義務付けが出来ない限り無人機側が有利なのは変わらないでしょう。

    14
    • MK
    • 2026年 8月 20日

    隣の国もたびたびやってますねこれ。こちらも無人機出せるようにならないとですね。

    4
    • 荒川の渡り鳥
    • 2026年 8月 20日

    この実戦データが、あとに出てくる採算度外視の高性能無人機に全部移植・・・
    パトレイバーの内海課長みたいなトルコ人、居るんだろうな・・・

    12
      • 他人事では無い
      • 2026年 8月 21日

      ギリシャ相手の実戦テストか。
      コレって、ギリシャとトルコの技術力格差が、とんでもないことになってないかな。

      9
        • 荒川の渡り鳥
        • 2026年 8月 21日

        そのうち、ギリシャ側のエースパイロットみたいな機動をする、無人機が現れるじゃ無いでしょうかね・・・・

        1
    • せい
    • 2026年 8月 20日

    NATOは何としても宥めないとな
    こんなのやってて米国は信用できないとか言ってられないよ

    24
    • 58式素人
    • 2026年 8月 20日

    安価な対抗策となるならば、まずは第一にEWになるのかな。
    トルコ側は、おそらく、自国側の見通し線上外で誘導を行って
    いるのだろうから、おそらく、スターリンクなどの衛星経由かな。
    であれば、インターセプター機にスターリンクを妨害する
    EW機器を載せて対応すると良いのかな?。指向性アンテナを用いて。
    通信を絶って、自動帰還してもらうか、迷走して墜落してもらうか。
    墜落すれば、証拠物件を取得出来るのかな?、と思ったり。
    インターセプター機も、いずれ、無人化でしょうか。
    反応時間を重視するなら、デコイベースのジェット推進無人機、かな?。
    比較的に安価なようだし。

    8
      • T.T
      • 2026年 8月 20日

      トルコの空軍基地を占領して二度と飛ばせないように根本解決だ

      1
    • wyuki
    • 2026年 8月 20日

    ギリシャ殿曰く
    ~パイロットや防空システムに実戦的な訓練機会をもたらし・・・・・。
    >日本の航空自衛隊に関し同じ様な記事見ました。
    スクランブル≒ドッグファイトやら実弾を使うことの無い実戦的な訓練だと。
    頑張れ、日本!

    4
    • YF
    • 2026年 8月 20日

    実際、戦闘機はただ飛ばすだけでもパイロットの練度向上になりますし、飛行時間がパイロットの実力の指標にもなっているので、ギリシャの言い分も間違っていないですが、如何せん費用対効果が悪すぎます。

    加盟国どうしでドンパチ始まる前にNATOには上手く仲介して欲しいものです。

    日本もそうですが領空侵犯する側はどんな航空機でもよくてコストコントロールも容易ですが、スクランブルする側は最速で侵犯機に近づかないといけない事、最悪撃墜しなきゃいけない事考えると有人戦闘機以外の選択肢がないので、費用対効果の問題は簡単に解決出来ないですよね。

    13
    • トワス
    • 2026年 8月 20日

    無人機送り込まれるなら電子戦でどうにかしちゃえばいいのに
    そんな簡単にはできないんか?

    1
    • 山田さん
    • 2026年 8月 21日

    こういう相手を撃墜できないドッグファイトってどうやって終わらせるんだろう。
    ロックオンまでするとは思えないし、後ろを取られただけで、じゃあワイの負けでって帰還するとも思えないし…
    燃料切れるまで延々と空中戦やり続けるんだろうか…?(笑)

    6
    • kitty
    • 2026年 8月 21日

    >航空自衛隊による2025年度の緊急発進(スクランブル)の回数は595回でした。前年度(704回)から約15%減少し、この10年で最も少ない件数となりました。対象国の割合は中国機が約6割(366回)を占めています。
    >過去のピーク時(1,000回超え)
    防衛白書より

    防衛識別圏への侵入で「領空侵犯」は10何年に一回というレベルですが、トルコですら、これだけの数のピンポンダッシュができるのですから、MALEによる挑発行為が常態化すると日本も費用の非対称戦に巻き込まれかねませんね。

    6
    • elmoelmo
    • 2026年 8月 21日

    あまり極端にスクランブルが増えると迎撃機のエアフレームの寿命を削りますから、運用コストの話だけでは済まなくなるんですよね…。

    7
    • リンゴ
    • 2026年 8月 23日

    元々文明圏すら違うんだから、隣国に居て噛み合うワケが無いんだ
    今の所、力も技術も戦術も、トルコが圧倒的に見える

    1

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