欧州関連

NATOの米国製兵器離れ、E-3の後継機をE-7からGlobalEyeに変更

オランダ国防省は2025年11月「満場一致でNATOのE-3後継機として選定したE-7調達中止を決定した」と発表していたが、欧州の複数メディアが「NATOはE-3後継機としてGlobalEyeを選定した」と報じ、Defense Newsも「NATOの共同空中監視の中核をボーイング製以外の機体が担うことになる」と指摘した。

参考:NATO snubs Boeing and picks Saab for new AWACS surveillance planes
参考:NATO eyes Swedish-Canadian jet for AWACS role in shift away from Boeing

他の欧州防衛企業にない独自のポートフォリオをもつSAABは米国と欧州の対立から大きな成功を収めるだろう

米空軍やNATOが複雑で大規模な航空戦術を駆使できるのは早期警戒管制機や空中給油機といった航空支援能力を保有しているため、特にE-3セントリーは交戦空域の監視・管制能力が秀でているものの、プラットフォームのボーイング707は民間航空会社での運用が終了したためサプライチェーンが消滅し、政府説明責任局も「スペアパーツの供給と老朽化した機体のメンテナンスの問題でE-3は9年連続で空軍の設定した準備率を達成できていない」と指摘。

出典:U.S. Air Force photo by William R. Lewis

さらにロシアや中国は遠距離から早期警戒管制機(AWACS)を叩き落とすことが出来る長射程の空対空ミサイルや地対空ミサイルの開発を進めており、米空軍は「少数のAWACSに交戦空域の監視・管制能力を集中させるリスク」を危惧し、アドバンスバトル・マネージメントシステム(ABMS)に地上、海上、空中、宇宙ベースのISR資産を統合して戦場認識力を確保する方針だが、実用化に時間がかかるため韓国空軍、オーストラリア空軍、トルコ空軍で運用実績があり、英空軍も導入を決定しているE-7Aウェッジテイルの導入を決定した。

NATOも2019年に「E-3を2035年までに廃止して新しいプラットフォームに置き換える=Alliance Future Surveillance and Control(AFSC)」と正式発表、こちらも米空軍と同じように分散型ネットワークを想定しているのだが、まだAFSCは初期コンセプト段階で実用化には程遠いため「E-3の後継機としてE-7Aを6機取得する」と2023年11月に発表したが、トランプ政権のヘグセス国防長官は2025年6月「現代の戦場でE-7は生存不可能」「宇宙ベースのAMTI能力移行」「短期的な能力ギャップへの対応としてE-2Dの活用」に言及し、国防総省が議会に提出した2026会計年度予算案の中でもE-7関連予算が消滅。

出典:TheIntelFrog

最終的に議会が2026会計年度予算の中でE-7関連予算を復活させたため、米空軍向けE-7の開発は継続されるものの「完成した米空軍向けE-7」を購入するのかは不明で、国防総省はイラン戦争でE-3を失っても「宇宙ベースのAMTI能力移行が正しいと証明された」と主張し、2027会計年度予算案でもE-7関連予算は要求されていない。

NATOでもトランプ政権の不確実性、欧州の安全保障に対する方針転換、欧州と関係悪化が重なり、フランスは独自に運用するE-3Fの後継機にGlobalEyeを選択、ドイツもAWACSの独自取得を検討中で、ピストリウス国防相も「ドイツはAWACSの取得を検討中でGlobalEyeは選択肢の1つだ」「控えめに言ってもGlobalEyeは最有力候補だ」と述べていたが、オランダ国防省も2025年11月「我々はE-3の後継機としてE-7を取得する計画を中止する」と発表した。

出典:Air Force photo by Richard Gonzales

オランダ国防省はプレスリリースの中で「オランダは米国を含む7ヶ国と共にAWACS更新計画に参加していたが、米国は2025年7月に計画から撤退(米空軍のE-7調達中止のこと)してしまったためE-3後継調達は大きな変更の真っ只中だ。E-7調達計画は戦略的基盤と財政的基盤の両方が失われたため、米国を除く計画参加国は満場一致でE-7調達の中止を決定し、代替機の選定や新たな協力の枠組みを模索している」と指摘し、ルッテ事務総長も「E-3の後継選定が進められている最中だ」と言及。

オランダのトゥインマン国防長官も「米国の撤退は可能な限り欧州産業へ投資する重要性を示している」と述べていたため、欧州のNATO加盟国はGlobalEyeに投資する可能性が高いと見られていたが、フランスの防衛専門誌=La Lettreは23日「NATOはE-3後継機としてGlobalEyeを選定した」と、ドイツ通信社も「NATOはE-3の後継機としてGlobalEyeを導入する」「最終決定は2026年7月にアンカラで開催されるNATO首脳会議で下される」と報じた。

出典:Saab

Defense Newsも「この決定が正式に発表されれば、1982年以来初めてNATOの共同空中監視の中核をボーイング製以外の機体が担うことになり、米産業の機能的不全と欧州の戦略的自立に起因するE-3後継機選定の迷走に終止符を打つだろう」と報じ、トランプ政権はNATOと調整することなく一方的にE-7調達から撤退し、E-3共同運用に参加するNATO加盟国は「E-7調達への単独投資」ではなく「欧州製のGlobalEye」を選択したことは「性能よりも武器主権の確保が重要」と物語っている。

ちなみに、SAABのヨハンソン最高経営責任者は過去「NATOのE-3後継機入札は結果ありきの政治的案件だった」「我々のGlobalEye提案は殆ど顧みられなかった」と批判していたが、奇跡的な大どんでん返しでE-3後継機需要を取り込むことは確実になり、他の欧州防衛企業にない独自のポートフォリオをもつSAABは米国と欧州の対立から大きな成功を収めるだろう。

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※アイキャッチ画像の出典:Saab

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コメント

  • コメント (23)

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    • たむごん
    • 2026年 4月 26日

    SAABの時価総額『過去5年間・9倍(!)』時価総額5兆円前後まで上昇しており、ウクライナ戦争後に猛烈に上昇しています。

    『三菱重工よりも軍事部門の売上高が大きい』売上高が約1兆2000億円のうち、軍用品の割合93%もあるようですから、上手に受注を獲得しているなあと。
    GlobalEyeは、グローバル・エクスプレスがベストセラー・中古市場でも人気がありますから、部品確保・メンテナンス面でも信頼性が高いと言えそうです。

    スウェーデン(SAAB)が、武器輸出を大量に行っているわけですが国のイメージは極めて良好でしょうから、日本も上手に武器輸出を拡大していきたいですね。

    20
    • SB
    • 2026年 4月 26日

    お隣が戦場になりそうなスウェーデンならともかく、ドイツやフランスは唯でさえ小型で絶妙に余裕が無いのに受油能力が無いGlobalEye選んで大丈夫なのか?
    それ米軍のセンサー網に接続して始めて全力発揮する機体でしょ

    9
      • 名無し
      • 2026年 4月 26日

      アメリカがNATOから出ていくケースを想定して機材選定してるんでしょうね。アメリカ製だと、大事なときにマスタースイッチ切られるから。

      8
    • せい
    • 2026年 4月 26日

    E-7に関しては米軍(政府?)自体が興味をなくしてるんだし、そりゃあ他国は手を出せないよなぁ
    只、AWACSを軸に戦闘機がずらっと並んで飛んでる画像は大好きだから、今後ああいう画が無くなってくのかと思うと悲しくなるね

    15
    • 無印
    • 2026年 4月 26日

    日本のE-767後継はアメリカのシステムに相乗り+E-2Dの合わせ技で行くのだろうか
    E-767は4機しかないので、後継はシステムの分散化は必須ですよね

    7
    • 58式素人
    • 2026年 4月 26日

    全くの願望ですが。
    V-22を改装して、V -22E?みたいな機体はできないものかな?。
    もちろん、ドームアンテナは載せられないだろうから、
    機体の両側面と前後ににフェーズドアレイ形式のアンテナを貼る形で。
    もしできれば、たとえば、海自の艦載早期警戒機になれるのでは?。
    すでに生産終了とされているようだから、メーカーからライセンス権を
    買い取れるのでは?、と思ったり。
    無人機ベースでも良いのですが、V-22のVTOL機能は魅力に思えます。

    1
      • 無印
      • 2026年 4月 26日

      V-22の管制機型の提案はありました、が結局プランで終わってしまいました、開発してもペイしないと
      今ではMQ-9Bに管制機能を付与しようという動きがあるので、多分復活は無いでしょう…

      8
        • 58式素人
        • 2026年 4月 26日

        ご教授ありがとうございます。
        そうでしたか・・・。少し残念な気もしますが。

        2
          • 他人事では無い
          • 2026年 4月 26日

          MQ-9B STOL AEWがひゅうが型護衛艦から運用出来れば、F-35BにAEWを付けられますね。

            • YF
            • 2026年 4月 26日

            MQ-9B STOLは離陸滑走距離300m必要と言われてるので、ひゅうが型どころかいずも型でも運用は難しいと思います。
            そういう意味ではV-22の管制機型は魅力あったんですけどね…

              • バーナーキング
              • 2026年 4月 27日

              MQ-9B STOLの離着艦速度はMojaveの失速速度とされる45ktより低速なはずですし、離陸滑走距離は1000ft(約300m)「以下」、空荷なら500ftも可能となってます。発艦には合成風力も使えますのでいずも型なら十分運用可能だと思います。
              長くて邪魔くさいので給油と洗浄、点検だけして即飛ばして時々陸上に戻してそっちで整備、みたいな運用になるでしょうが。

              3
                • YF
                • 2026年 4月 27日

                なるほど、運用出来るんですね。
                教えて頂きありがとうございます。

                  • バーナーキング
                  • 2026年 4月 27日

                  実際に運用できるかどうかは分かりませんが「滑走距離が足りないから運用できない」は数字的には違うと言えるかと。

                  1
      • 匿名希望係
      • 2026年 4月 26日

      本体がすでに製造停止なので遠からずB-707と同じコースになりそう>AEW転用

      3
      • バーナーキング
      • 2026年 4月 26日

      海自の固定翼機搭載護衛艦()中心に打撃群組んで国外遠方に派遣する訳じゃなかろうし、警戒機/哨戒機は狭い艦内や艦上に無理して詰め込むより国内の基地や空港から飛ばしてローテでカバーする方が現実的じゃないかなぁ。
      それじゃ間に合わない緊急対応にはF-35Bに頑張ってもらって。

      2
      • 58式素人
      • 2026年 4月 26日

      思うのですが。
      現状の日本の防空レーダー(地上/OTH/AWACS)は
      航空機や弾道ミサイルの探知に向いているのでは?。
      高度50m未満を飛んでくる、大量のUAVや巡航ミサイル、
      を探知するレーダーが別途で必要なのでは?。
      地上設置のレーダーにとっては、低空域のUAVや巡航ミサイルは、
      水平線上(距離概ね30km程度)に突然現れる?多数の目標となるのでは?。
      AWACSはそうしたものに対応できるでしょうが、目標データの処理数が
      あまりに多数の場合、取りこぼしが出るのでは?。出ては困ります。
      対策としては、AWACSより、退役したE-8ジョイントスター相当の
      機体が多数(20機くらい?)必要なのでは?。
      そうした機体を、日本の場合、海上に前進配備する必要があるのでは?。
      そこで艦載の警戒/管制機が必要になるのでは?、と想像します。
      海上の低空域専門の防空レーダーですね。
      艦載レーダーでは、探知距離から、膨大な数のフネを必要とするでしょうし。
      今の海自の艦船は、最大で、いずも級ですし、その飛行甲板の長さは248m
      であり、固定翼機の運用は困難です。カタパルトが必要でしょう。
      海自の様子を見ていると、カタパルト開発の様子はありませんね。
      飛行時間から、ヘリコプターベースは現実的では無いのでは?。
      であれば、VTOL機体をベースとするか、カタパルト開発か、かな?。
      などと勝手に思います。
      イタリアで退役した軽空母(概ね、ひゅうが級同等)も必要になるのでは?。
      などと、更に、勝手に思います。
      なんといっても、日本の原発は全て、海浜にあるのですから。

        • 58式素人
        • 2026年 4月 28日

        探してみると。
        海自の P-1哨戒機に装備している、
        HPS-106アクティブ・フェーズド・アレイ・レーダー、
        には低空目標を探す能力はありそうに思えます。潜望鏡もOKだとか。
        あとは、UAV/巡航ミサイル迎撃の指揮管制ができれば?、ですね。
        P-1の数にもよりますが、当面はこれでも良いのかな?、と思ったり。

        2
    • YF
    • 2026年 4月 26日

    中国の長距離空対空ミサイルの登場でアメリカはAWACS自体に懐疑的ですからね。そうなるとおのずと選択肢は限られますよね。
    乱暴な話をすれば管制は衛星通信で地上でやって空中に大きなレーダーを飛ばすだけなら、これこそ無人機の出番だと思うので、今後の流れはそっちなのかなと。

    11
    • 足柄
    • 2026年 4月 26日

    データハブとしてのステルスG6機を前方展開、さらに無人センサー機を前に出す

    互いに補足されたら後方からスタンドオフが雨霰と降り注いで最低でもミッションキル
    これが日中米の想定する海上航空戦だと思うんだけど

    E-767は太平洋側を安全に高域スキャンみたいな使い方になりそう
    今更737ベースは要らんな

    1
      • 匿名希望係
      • 2026年 4月 26日

      わざわざ中型から大型買うならC-2AEW&C作る方が多分楽でしょうしねぇー・・・
      データベースとかも地上設備転用出来るんならそのままつかえるでしょうし。
      イスラエル形式で国産走ってもいいし。インド形式で他国からレーダー買ってもいいですしねぇ。

      あるいはアメリカの面子だけを考えるなら退役E-3買い取ってE-767にする契約やEC-2にする契約結んでもいいですし

      • 匿名希望係
      • 2026年 4月 26日

      わざわざ中型から大型買うならC-2AEW&C作る方が多分楽でしょうしねぇー・・・
      データベースとかも地上設備転用出来るんならそのままつかえるでしょうし。
      イスラエル形式で国産走ってもいいし。インド形式で他国からレーダー買ってもいいですしねぇ。

      あるいはアメリカの面子だけを考えるなら退役E-3買い取ってE-767にする契約やEC-2にする契約結んでもいいですしねー。(やるんならレーダー統一を考えてE-3かE-2系に自ずとなる)

        • バーナーキング
        • 2026年 4月 26日

        E-767の寿命で最初に尽きるのはおそらく(E-3退役で更新が止まる)レーダーの性能寿命なのでE-3系を継続する意味はないんじゃないですかね。
        EC-2をベースにC-2AEW&C化する方に一票。
        エレメントレベルDBFなら無理しておっきい皿やら平均台やら背負わなくても分散レドームで機能するんじゃないかなぁ。

        2
    • John Smith
    • 2026年 4月 26日

    非アメリカ製だとG550 CAEWがあるけど、イスラエルがヤラかし過ぎて嫌われているんだよな。

    ただ、アメリカ海軍が導入しているから、宇宙AMTI能力移行の保険で買う可能性があるかも。

    1

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