欧州関連

NATO事務総長、現行の4万人から30万人以上に即応部隊を拡張すると発表

NATOのストルテンベルグ事務総長は27日、NATO即応部隊を現行の4万人から30万人以上に拡張すると発表して注目を集めている。

参考:NATO to boost rapid-response unit from 40,000 to over 300,000 troops in apparent response to Putin’s war
参考:Pre-Summit press conference

NATO変革への本気度を示すストルテンベルグ事務総長の発言内容

スペインで開催される首脳会議を今週末に控えたNATOのストルテンベルグ事務総長は27日、今回の会議はNATO変革の場になり多くの重要な決定が行われるだろう明かし注目を集めている。

まず事務総長が言及したのは「東欧の加盟国に展開する戦闘部隊を旅団レベルで強化する」という点と「NATO即応部隊を30万人以上に拡張する」という点で、具体的には特定国に事前展開する部隊の防衛計画を刷新して、NATOから派遣された駐留部隊と駐留国の軍隊との訓練を増やし「現地の地形や環境に精通させ有事の際の対応力を向上させる」と述べているが、最もパンチが効いているのはNATO即応部隊の拡張だ。

NATO即応部隊とは加盟国が持ち回りで部隊を派遣して編成される準備が整った部隊=有事発生時の初動対応部隊(現行4万人規模)で、これを30万人以上に拡張するというのだから相当気合が入っており、これを実現するにはより多くの資金が必要で「新たな国防支出の数字を首脳会議で発表する」とストルテンベルグ事務総長は述べているが、従来の指針=GDP比2.0%は達成すべき上限ではなく「下限であると考えている」と述べている点が興味深い。

出典:U.S. Army photo by Charles Rosemond, Training Support Team Orzysz

つまり加盟国が支出すべき国防費の目標は「GDP比2.0%」ではなく「2.0%以上」に引き上げられる可能性が高く、各国が派遣するNATO即応部隊の負担も「7倍以上になる」と示唆しており、NATO変革への「本気度を示している」といえるだろう。

他にもウクライナ支援パッケージの強化、新概念の下で中国への言及、パートナー国(日本、オーストラリア、韓国、ニュージーランド、ジョージア、ボスニア・ヘルツェゴビナ、モルドバ、モーリタニア、チェニジア)との関係強化、フィンランドとスウェーデンのNATO加盟なども挙げている。

関連記事:フィンランドとスウェーデンのNATO加盟問題は長期化、トルコは交渉を急がない

 

※アイキャッチ画像の出典:Photo by Sgt. Daniel Cole 米軍のNATO即応部隊

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コメント

    • あばばばば
    • 2022年 6月 27日

    即応部隊のこれ、ほぼポーランドと北欧だったりしない?
    英はやる気はあってもお金がないし、独仏伊はやる気あるのか怪しい。スペイン・ポルトガルは欧州の奥過ぎて影が薄い
    米国は独自路線に走ろうとしていつも迷子だし、ギリシャとトルコはお互いにやる気満々だし、元ソ連領の国は緊張感高いけどお金はないし……。

    30
      •    
      • 2022年 6月 28日

      各国持ち回りのローテーション配備になるだろうから、やる気のない国も用意するしかない
      ので要らぬ心配

      4
    • そうとうかっか
    • 2022年 6月 28日

    ドイツ「俺は経済を回す、軍事は皆に任せた!」

    17
      • hiroさん
      • 2022年 6月 28日

      過度なドイツ叩きをしても意味が無いでしよう。
      ドイツ自身が国防費の増額を表明しているのだし、批判は有れど正面装備をウクライナ支援に回した分の補充も必要だろうし、もう少し情勢を見てから批判したらどうでしょう?

      2
    • ナナシ
    • 2022年 6月 28日

    コロナ禍からのウクライナ危機で先進国は皆経済ヤバくなってるからなあ
    もちろん軍備増強は必要なこととは言え、悪いことは重なるものでなかなかに厳しいタイミングだ
    おまけに何らかの形でウクライナ危機が終わればウクライナの復興も必要で、その莫大な資金を出すのもやはり西側諸国なんだろうと思うと色々と頭が痛くなる

    3
    • WSO
    • 2022年 6月 28日

    事務総長がNATO首脳会議の会議後の成果発表じゃなくて会議前の段階でこんなかなりデカい事ぶち上げちまっていいんかい?この内容の決定経緯と決定に関わった国家代表の顔ぶれなど気になる事ばかりだが?加盟30ヵ国の賛成はすでに取りまとめているって事なのか?よくわかんねぇなぁ…何なんだコレ額面通りに受け取って喜べねぇ

    13
      • NATTO
      • 2022年 6月 28日

      記事を読む範囲だと日本もNATOの準加盟国なんだな。軍事費の増額の金額と期間は各国の事情に合わせるのかな?

      1
    • 無無
    • 2022年 6月 28日

    額面通り実現するのかは別として、NATOが冷戦終了後のモラトリアム期間を終了させたのは確実であり現実
    これは地域紛争対処でなく戦争に対応できるNATOの復活

    全世界レベルで経済関係が密接につながってる現代ではもはや大規模な戦争は起こらないだの、知ったり顔していた経済的評論家だちは、ウクライナにより退場する時が来たんだよ

    18
    • 名無し
    • 2022年 6月 28日

    トルコとギリシャのNATO加盟は1952年のほぼ同時だよな。
    しかもギリシャのNATO加盟はアメリカの強制みたいなもので選択肢があったとは言い難い。

    3
    • ナイトアウル
    • 2022年 6月 28日

     旧ソ連程の軍事負担は無いとはいえ結構な規模に拡大するな。2000年過ぎたあたりのイラクレベルの国ですら多国籍軍30万ぐらいの規模だったように思うし多過ぎることはないんだろうが。

     ただ即応レベルでここまでの規模が必要か輸送兵站も問題無いのかは考えてるのかね。それとも規模だけ大きくし見た目の抑止力に全振りした張子の虎かでロシアみたいな暴挙を防げるか変わってくると思う。

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