NATOはStandardization Agreement=STANAGによって加盟国間の軍事分野における規格を標準化しているが、155mm砲弾の規格には「ある程度の幅」が存在するため仕様が異なり、加盟国間でシームレスな弾薬共有が実現していない。
参考:How Europe’s diverging artillery munitions complicate Ukraine support
参考:NATO summit to push for standardizing shells
NATO規格の155mm砲弾は155mm榴弾砲で発射出来るという部分しか保証していない
NATOはStandardization Agreement=STANAGによって加盟国間の軍事分野における装備、弾薬、技術、通信、保守、兵站、手順、条件等を標準化し、特にSTANAG magazineによって小口径弾薬や弾倉は標準化をほぼ達成しているため加盟国間でシームレスな共有が可能となっているが、STANAG 4425で定められた155mm砲弾の規格は「厳密」ではなく「ある程度の幅」が存在する。

出典:Генеральний штаб ЗСУ
NATO加盟国が運用している155mm榴弾砲は基本的に「STANAG 4425規格に従った砲弾」を発射可能だが、加盟国の砲弾企業は「規格の幅」を活用して「独自の仕様」を定義しており、砲弾毎の仕様を射撃管制システムに入力しなければ砲弾が目標に命中(最大50m~60mほど目標を外すリスクがある)せず、砲弾企業は独自仕様のデータを顧客にしか提供しないため「加盟国間での155mm砲弾共有」は実現しておらず、14の国は規格からの逸脱権利を保持しているため「NATO規格の155mm砲弾」は仕様が異なる14種類に分かれている格好だ。
実際にはもっと細かな違いが存在しているため「STANAG 4425規格は155mm榴弾砲で発射出来る」という部分しか保証しておらず、欧州防衛庁が取り組んでいるウクライナ向け砲弾の調達もCaesar、PzH2000、Krab、Zuzanaが対象で、シェディヴィー長官はDefense Newsの取材に「全てをカバーする万能弾はない。4種類をカバーする砲弾も射程距離が長いものと爆発力が高いものに分かれ、155mm砲弾を構成する各要素を全て提供できる企業もないため砲弾調達は約60の契約に分かれている」と明かしているのが興味深い。

出典:U.S. Army photo by Sgt. Victor Everhart, Jr.
ロイターは「NATO首脳会議で厳格な弾薬の標準化を発表する可能性がある」「厳格に標準化された弾薬が生産される世界は司令官にとってもシンプルな世界になる」と指摘したが、同じ規格の弾薬は「独自性」を奪い「価格競争」を強いることになるため「砲弾企業は厳格な弾薬の標準化に反対するかもしれない」と付け加えており、今のところ「厳格な弾薬の標準化が発表された」というニュースは聞こえてこないため加盟国で合意の形成に失敗した可能性がある。
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※アイキャッチ画像の出典:U.S. Army photo by Sgt. Victor Everhart, Jr.
撃てるだけで十分でしょ。誤差ぐらい事前に試射して自分で修正しろよという。
贅沢は敵だ!ってこういう事では。
それ皮肉ですよね?
本気だとしたらなぜそんな無茶を言うのか。
いや、結局は試射して実測値を出さない方が無茶だよ。
装填する砲塔だって違うし、装填される砲弾だって製造ラインの機材違うんだから、砲弾の仕様を同等的にマネたところでもとても同じにならない。
仕分けて振り分けることが出来るうちは良いけど、物流が混乱してきて各社の砲弾と装薬がバラバラで前線に混在してくると大変そうですね
共通化と言いつつ大抵の国はウチの砲で撃って当たればいいで改良してきて仕方ないところもあるとは思うのですが、こと砲弾に関しては資本主義の良くないところが出っぱなしな気がします……
陸自戦車も74式の時代には砲単位で独自の照準射表があるという話がありましたね。
なんで、砲身を交換すると射表の修正作業を一からやり直しになると。陸自戦車隊員は初弾必中に拘って日々邁進していたとか。毎日が訓練だからできることかと。
ウクライナ・ロシア両軍とも輸入弾をじっくり試射する余裕は無いでしょうし、無誘導の榴弾は面制圧兵器と割り切って撃つしかないのでは。もともと着弾修正しつつ撃ってたものだし。
砲弾ですらこの有り様では武器戦闘システムの共通化とか夢のまた夢ですね。
災害の支援物資とか適当に送られても逆に迷惑なのと近い感じ。
99式や19式でアメリカ製砲弾を撃ったら、撃てなくはないがあっちこっち変な不具合が出てしまう、みたいな事が起こってしまうのだろうか
日本製の砲弾と、アメリカ製の砲弾を交換して撃つ、って訓練を聞いた事が無いのは、こういう事情があったのか…
平成29年に発効した日米物品役務相互提供協定で自衛隊と米軍間でお互いに提供するものの中に弾薬も含まれています(ただ弾薬は武力攻撃事態がある時のみに限られるようですが)。なので全く考慮がなされていないということでもないのでは?
自衛隊は弱装弾使ってて、米軍との互換性がない!とかキヨが叫んでいましたね。
NATO加盟国同士で互換性がないのが常態だったというオチ。
清谷氏の指摘する問題点が自衛隊だけでなく西側軍隊に共通だったとは救いようが無い。
考えてみれば装甲車両の価格は何処も同じぐらい(1両10億円超過は普通)だし、某国では予算超過と開発遅延は当たり前、某国では稼働率低下が著しく対戦車ヘリ部隊は壊滅状態・・・。武器輸出で単価を下げられるのと、性能を実戦で証明できる点では日本より幾らかマシなのかな。
(清谷氏の主張によると)自衛隊の通信情報能力と医療体制は西側標準どころか人民解放軍にすら劣っているらしいので、補助部隊も実戦部隊と同じぐらい大事にして欲しい。
情報のほうは知りませんが、自衛隊の個人携帯医療キットは米軍の軍用犬の装備以下とは読んだ記憶がありますね
救護訓練も味方救護所に連れ込んだら終わりが長く、トリアージなどの複合的な訓練をやり始めたのが2020年台入ってからとか(さすがに衛生兵の訓練は別だと思うけど)
防衛医大とかキャリアパスが酷くて、まともに臨床経験も積めない。
腕を磨くために民間病院にバイトに行ってたら怒られる。
難しい症例はお手上げで、国立病院にたらい回し。
外傷治療とかもその辺の救急病院の医師の方が実戦経験豊富。
航空医学とか潜水医学とかの民間ではできない仕事も予算不足。
現実に打ちのめされた医官は、医師免許はあってつぶしが効くから辞めちゃうわけで。
一方、人民解放軍病院なんか、予算が潤沢な中国の最先端病院ですからね。
「人民解放軍にすら」と言うのは思い上がりです。
自衛隊の医療キットの問題点は自衛隊も医事法を遵守するという日本の法制度上の問題です。
現在でも所謂医療行為の範疇に規定される救命措置は、原則医師ないし救急救命士の資格を持つ隊員しかできません。救急救命士制度が導入されたのは近年のことですし、長い間止血等最低限の延命措置を行い医官が待機する後方救護所まで移送するまでが救護訓練だったのは止むを得ない一面がありました。
無資格隊員でも訓練を受ければ簡便な救命医療処置をできるよう、法制度をなんとかしておかないと、だと思うんですがね。
自衛隊も医事法の問題をクリヤするために准看護師+救急救命士のライセンスを持った第一線救護衛生員(これなら静脈確保も問題なし)という苦肉の策を施行したら、日本看護協会が、今更准看護師を作るな!とクレームを入れられるというオチ。かわいそうに。
あれはアメリカが7.62ミリ小銃弾をNATO標準にするのをごり押ししたからな。
日本の防衛思想を考えると使いにくい弾薬だったから日本が改良を加えた妥協の産物だったわけで
結局アメリカもごり押しした7.62ミリが使いにくいことに気づいて自国だけ5.56ミリ弾を正式小銃弾として採用するし。
いえいえ、彼は5.56mm弾のことを言っているのですよ。
アゴラ
自衛隊はNATO規格の弾薬を導入すべき
アレも良く解らない話と思います。
5.56mmNATO弾は初活力が、大体、1,760ジュールです。
昔の38式実包は、大体、2,610ジュールでずっと強いです。
ちなみに38式実包はよく当たる弾とされています。
7.62mmNATO弾は、大体、3,300ジュールで確かに強力ですが、
その前の制式の30-06弾は、大体、3,800ジュールでさらに強力です。
38式より弱い弾で泣き言?を言っていることになりますから。
素人などは、某Z省が火薬を惜しんでいるのか?、と疑っています。
K様が7mmの弱装薬と89式がコンペンセイター機能で無反動レベルなのを混合しただけかと。
5mmで弱装薬では初速が低下して200m以内でのフラグメンテ効果が出ない事になる。それではバーミントハントをベースにした小径高速の利点が半減してしまう。
5mmは大人偏重の弾頭デザインで近距離では高初速が故に横弾というか自壊のフラグメンテ効果を利用してマズルエナジーのムダ遣いをしない構造を採用時から取られた。しかし7mmは対人/対物(障害物越し制圧)であり続ける結果で、今日でも対人ではずっぽ抜ける弾なわけです。7mmの対人偏重弾頭化は10年前にM80A1になっての事ですね。
>戦闘組織に学ぶ人材育成
>コンバット・メディックは実戦で生き残るための必須の戦闘技術である
によると、
>南九州に勤務していた時、日赤関係者との会合で、アフガンへ行かれた医師から「5.56㎜の弾は特別に作られているのですか」と質問を受けました。どういう意味なのか尋ねると、「AK47の7.62㎜の弾で腕を撃たれると腕の骨が折れて外に飛び出るような状態になりますが、治療は何とかできます。5.56㎜の弾で撃たれると、とても大きな穴があいて筋組織を全部持っていってしまう状態になり酷いんですよ」と話してくれました。
>当時の私の知識は、7.62㎜の弾では生命を失う破壊力があるので、兵士に怪我をさせて戦闘が継続できない程度に損傷を与える人道的な弾として登場したのが、5.56㎜の弾と認識していました。
>「5.56㎜の弾が人体に入ると回転して周りの筋組織を全部だめにしてしまう状態になります。人道上許されない弾です」と聞き、弾が人体に当たった時、どのようになるのか、口径による違いや兆弾の威力と特徴など全く知らない状態だったので、鮮烈な話でした。
日赤の民間医師に教えられる自衛隊員の構図…。
ぶっちゃけ155mm榴弾砲で全部賄う縛りってどうなんでしょう
もっと大口径のカノン砲とかあってもよさそうなものを
>>大口径のカノン砲とか
昔あって(M65 280mmカノン砲等)今ないってことは使いにくかったんでしょう
多分これ以上だと可搬性や専用車体の新規加発等々のコスト増、継続的に発揮できる火力と比べて効果が薄いと
射程が欲しいんならミサイル使えばいいし、威力が欲しいならデカい爆弾落とせばいいし
継続的に前線に火力を提供し続けて、気分よく運べて使いやすいギリギリが今の技術だと155㎜なのかも知れないです
戦争が泥沼化した頃にロシア軍はお払い箱にしていた203mm榴弾砲や240mm迫撃砲を現役復帰させたけど、砲弾を運ぶだけで2人必要で、砲撃も1分当たり1発しか撃てない。ドローン偵察と砲撃監視レーダーが多用される現代では射撃速度が遅くて準備及び撤退に時間が掛かる大口径は余程有利な状況でない限り足手纏いにしかならない。
逆に時代遅れと思われていた105mm榴弾砲がウクライナ軍に好評だったので、ハンヴィ―搭載の自走砲も開発されたんだとか。105mm榴弾砲を扱う動画を見ていると、確かに体力面での苦労は少なそうだ。
大口径砲はウクライナのコンクリート要塞を破壊するために引っ張り出してきたけど、滑空爆弾が使えるようになったから過去の物になったかもね
155mmで47キロぐらい。203mmで90キロぐらいらしい。私には無理だ。腰痛になりそう。
パワードスーツがいるな。
ウクライナ軍にしても2S7ピオンを後生大事に使ってるのであると便利には違いないんでしょうけど、わざわざ新しく作るほどではないんでしょうね
Pzh2000みたいに優れた冶金などで上等な作りをすると155mmでも射程は伸びるようですし、RAPなどの手段だってある
では上等な203mm作ればどうかというと、それはとんでもなく高くつきそうな割に鈍重さが完全に解消はしないので、それくらいならミサイル使ったほうがいうらへんのバランスが冷戦後期からずっと続いているのかと
これは結構前から指摘されてましたね
ライフル弾のNATO弾なんかも同じだったはず
・・・ん?
ということはなんか新設するとか言ってた砲弾工場も今のままだとこの規格に沿って動くわけか?
あまりよろしくないような
大体、同じ155ミリ通常砲弾、のはずなのに14もパラメーターが違うとかシステム開発には百害あって一利なしなんだし
自走砲開発でコストがかさむ要因の一つにはなっていそうな気がするが
自走砲のカタログスペック・テストデータは、開発国の砲弾なのではないか?という話しになってきます。
例えばですが、仏カエサルに米国製砲弾、K9に欧州各国製砲弾のような場合、本当に精度がでているのかと。
韓国・米国のように、砲弾生産量のがある国は、(砲弾も納入すれば)自走砲のカタログスペックを実戦でもある程度は信頼できますが。
自走砲の生産を重視・砲弾生産量の少ない国は、他国から砲弾を調達する必要がでるため、実戦での自走砲に精度を期待できないかもしれませんね。
射撃システム・砲身製造に大金を使っても、ここまで規格が違うと話しにならなたいため、安価に大量生産大量消費できることは強いですね。
ウクライナ戦争の実戦データが気になります。
追記です。
どの分野でも参入障壁になるため、規格統一はそもそも難しいです。
自国の砲弾製造企業を守ることが、安全保障名目で成り立つため、規格の統一は他分野以上に難しそうですね。
デファクト(市場競争)・デジュリ(公的機関の話し合い)、どちらの標準化パターンも難しい気がします。
ロシアより高くなるはずだよ
各国政府と癒着した製造企業の利権を隠そうともしない
一口に「砲弾」と言っても155mm榴となれば装薬分離式なので砲弾+発射装薬です
相性問題としては飛ばす砲弾以外に撃ち出す発射装薬の方も燃焼特性が同じでなければ
初速に違いが出て、これが狂うと着弾精度が出せません、
西側標準規格の砲弾とするなら発射装薬の組成や燃焼特性も合わせなければなりませんが
この辺りは企業毎のノウハウや特許もありそうで、どうでしょうね