Financial Timesは「NATO加盟国は本格的な攻撃から中欧や東欧を保護するのに必要な防空能力の5%以下しか提供できない」と、Telegraphも「NATOはロシアとの大規模な衝突に備え、米軍の機械化部隊を東欧に急行させる陸上回廊を開発しているが兵站拠点を保護する防空能力が十分ではない」と報じた。
参考:Nato has just 5% of air defences needed to protect eastern flank
参考:Nato maps out plan to block Russian invasion
参考:France outlines counter-offer to Germany’s anti-missile defense project
ウクライナが経験している空からの攻撃に対処可能な防空能力は恐らく全ての国で欠如している
ウクライナとロシアの戦争は「防衛側の対応時間が限られる戦術弾道ミサイルの有効性」「低空を飛行する巡航ミサイルの検出に大規模なセンサー網が必要」「長距離攻撃兵器は超大国だけに許された特別な能力ではない」「高度な防空システムを隙間のない壁とイメージして『これを脅威はすり抜ける事はできない』と考えるのは間違いで、これを回避する方法も突破する戦術もある」など防空分野に多くの教訓をもたらし、欧州ではカリーニングラードに配備された弾道ミサイルなどの脅威が浮上。
Financial TimesはNATOの機密防衛計画や関係者の証言に基づき「加盟国は本格的な攻撃から中欧や東欧を保護するのに必要な防空能力の5%以下しか提供できない」「東欧をミサイル攻撃や空爆から守る能力が欠如している」「防空能力の欠如は我々が抱えている大きなギャップの1つで否定することが出来ない」と報じ、Telegraphも「NATOはロシアとの大規模な衝突に備え、米軍の機械化部隊を東欧に急行させる複数の陸上回廊を開発しているが、肝心の兵站拠点を保護する防空能力が十分ではない」と指摘し、欧州スカイシールド・イニシアチブ=European Sky Shield Initiative(ESSI)に注目が集まっている。
ショルツ首相が2022年8月に提案したESSIは中距離をカバーするIRIS-T SLM、長距離をカバーするPatriot、大気圏外をカバーするArrow3を統合した多層式の防空システム群で、このイニシアチブに英国やポーランドなど21の欧州諸国が参加を決めているものの、フランス、イタリア、スペインなどの主要国は参加を決定していない。
特にフランスは「ドイツ人が主導する計画は商業的なものだ」「戦争が勃発するまでIRIS-T SLMの輸出は成功していたとは言えず、これをESSIに統合することで商業的な成功を狙っている」「さらにPatriotとArrow3の統合も欧州基準に適合しないArrow3導入の機会を切り開くもののように見える」「ESSIは欧州外のシステムや技術に依存し過ぎている」「ESSIからSAMP/Tが除外されている」と批判し、ドイツのピストリウス国防相は「将来的にSAMP/TをESSIに統合することは可能だが、そのためには迅速に決定を下す必要がある」と反論。
要するにSAMP/Tや仏技術をESSIに統合したいなら「早く参加を決めろ」という意味だが、マクロン大統領は「ドイツが提唱しているのは産業戦略で我々は戦略的イニシアチブのことを言っている」と述べ、ESSIに対抗するシステムを欧州諸国に提案する構えだが、フランスや欧州域内に大気圏外での迎撃をカバーする実証済みの技術はないため、技術とインフラの両方が揃ったESSIの方が早く実現に漕ぎ着けられるだろう。
因みに王立防衛安全保障研究所のジャック・ワトリング氏はFinancial Timesの取材に「欧州諸国が保有する様々な防空システムを完全に統合できれば、大陸全体に濃密なセンサーと迎撃ミサイルのメッシュを作り出せるかもしれないが、NATOが試みる防空分野の指揮統制刷新は一向に軌道に乗らない」と指摘しており、新しくESSIを普及させた方が欧州全体の相互運用性向上に寄与すると思うものの、これだけの大規模な国際プロジェクトには投資と雇用の問題がつきまとう。
一つだけ言えるのは「ウクライナが経験している空からの攻撃に対処可能な防空能力(迎撃弾の備蓄や生産能力を含む)」は恐らく全ての国で欠如しており、パトリオットシステムの有効射程で覆える範囲を「様々な脅威から完璧に保護されている」と考えるのも間違っているはずだ。
関連記事:ロシア軍のインフラ攻撃、ウクライナから30GW相当の発電能力を奪う
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※アイキャッチ画像の出典:Michigan Army National Guard photo by Spc. Aaron Good/Released
そらシステム1式で数百億超えるようなもん山盛り持ってる国あるわけないですよねえ。迎撃弾の予備備蓄すら足りてる国無いでしょう。日本も4発のランチャーに2発しか付けてなくて察しますね。守る方が不利すぎますね。
日本もMDに防衛費取られて正面戦力が減少しているのが危機的ですよね。
このあいだ、Jアラート鳴った時に沖縄地区に警報が出ましたが、
「頑丈な屋内や地下鉄駅などに逃げてください。あ、沖縄には地下鉄無かったね、ゴメーンw」
とかやってたのがずっこけました。
沖縄には地下鉄がない
なんて無駄な配慮をする方が無駄だと思いますけどね
基地攻撃能力の必要性は妥当でしたね。
逆ですよ。
策源地攻撃と称してインフラの潰し合いになった場合、「敵のインフラも潰せるが自国のインフラも潰される」
「その潰し合いの度合いは国力に比例する」ということです。
端的に言えば,中国相手にインフラの潰し合いになったら、相手にそこそこのダメージを与えることができるが代わりに日本は壊滅的な打撃を受ける、ということですね。
国防として何の役にも立っていませんよこれ。
仮の話で、中国のインフラを破壊すると言えば第一に上がる三峡ダム爆撃。
これをやられると揚子江流域の全ての都市は水浸しになり、中国の経済活動が半ば止まる致命的なダメージを受けると言われていますが。
同時にダムに溜め込まれていた中華名物の環境汚染物質が、都市部のガレキと共に東シナ海に大量に流れ込み、日本の九州沖縄の近海は船舶の航行も不可能で魚が死にまくる死の海になる諸刃の剣だとも言われていますね。
ところで三峡ダムっていつ決壊するんだっけ。2020年コロナの頃に話題になったけど。
重力式コンクリートダムなんて破壊可能なんですかね?
さすがに中国が軍事的攻撃により三峡ダムを破壊されたら、ジュネーヴ条約違反の大量殺戮と見なして、核による報復に打って出る可能性が高いのではないでしょうか?
インフラの潰し合いのために長距離打撃能力を持つ
などという前提自体が間違っている
その通り
弾道ミサイルで狙う高付加価値目標はとても重要な為に相手も守らざる得ない
その為に非常に高価な迎撃手段を相手側に強制させることになるが相手方の迎撃ミサイルは攻撃側には一切脅威にならない
お互いに防御に資金を消費させて結果的に紛争抑止になってる
一方が攻撃手段を持っていると相手は安心して侵略を助長してしまうから両方が持つことが理想
それなのに日本もウクライナに送るべきだという狂った意見があることに驚く
こういうのは外の目ってものを意識しないと
他所の動きが鈍いときにサッと提供して名をあげ、他が動いたらもう余裕ないですって姿消すイギリスみたいな立ち振る舞いを目指してほしかったところ
外圧に負けしぶしぶ提供して評価されないよりは、どうせ提供するならってとっとと動けやコノヤローって感じ(ウクライナの防空の話はほかの西側の手に余ってるから、いつ動いても高評価もらえるだろうけどね)
策源地を攻撃したらだめっていう歪な制限を取っ払えばいいですよね。
NATOだけでなくロシアも防空しきれないでしょう。
問題の本質からずれてますけれども…
打ち合えば確実にウクライナが数で圧殺されて自滅するだけ。
現在進行系で打ち合ってませんか?
大戦末期のナチスですら1000発超のV2ロケットを発射 液体酸素を利用した手間のかかるロケットにも関わらず一度たりとも航空攻撃で未然に防ぐことは出来なかったし生産も止められなかった
フーシ派も空爆にめげず相変わらず船舶への攻撃を繰り返している
ましてロシアはとんでもない国土縦深性を持つ
策源地攻撃は非現実的 エスカレーションに繋がるだけ
エスカレーションを避け、なるべく綺麗な戦争をし、よくばらず早々に終わらせる
これで行きたいところです
そもそもするな、と言う話ですが
今回のウクライナ戦争では、その願望は満たされないという一例が示されたと思います。
血なまぐさく泥臭く地に這いつくばるのが戦争だと。
ただしそれを恐れるばかりでは、その覚悟を持った勢力へ譲歩の繰り返しになるでしょう。
いやなもんです。
ウクライナは、ソ連の本流のため、野戦防空は東欧の小国よりも相当強いですからね。
そこに、さらに西側諸国に余剰になっていた、防空ミサイルが注ぎ込まれていたわけです。
東欧の小国を、今から守れるような余力はないんですよね。
防空ミサイルで対処しようとするなら、1兆円単位の購入を続けて、ライン新設からやっていく必要があるでしょうね。
なんだかんだでS300の発射機は数百あったらしいですからね。数だけ見れば東欧どころか世界全体で見ても相当な上位だったはずなんですよね
だからこそ戦争初期にロシア空軍の活動がかなり低調だった(はず)
まさに仰る通りです。
ロシアから補修部品が入手できてたらもっと稼働できてただろうしな
密輸に頼ってたみたいだけど開戦してから完全にルートも潰された
武器も、機械ですからね。
仰る通り、補修部品の入手、メンテナンスは重要ですよね。
GDPに現れないですが、それを含めて国力(軍事力)だろうなと。
ウクライナはNATOの支援不足あるいは裏切りを嘆いていましたが、第3国として間違いなく文字通りできる限りの支援はされていたように感じます。対空兵器に関しても。ただ、なにぶんロシアは世界で2番目の空軍大国、ロケットの分野でも最先端のレベルですから、もともと分が悪い戦いではあるんですよね。
仰る通りです。
ウクライナに、第三国で世話になった国なんかないですし、相当尽力してきたと思います。
ウクライナという国が、ロシアに(天然ガスの格安販売など)タカリ続けてきたため、麻痺してる部分があるのでしょうね。
ロシアの底力、仰るような彼我の戦力差を考えれば、同情を集めた状態で停戦が正解だったでしょうね。
結果論ですが、早期停戦していれば、世界の同情で早期復興も可能だっただろうなと。
対空高射砲塔の出番だな。
優秀な防空システムとしてイスラエルのアインドームが引き合いに出されることが多いですが国土が狭いイスラエルだからこそアイアンドームが有効に機能するのであり、広域を防空するとなると費用が嵩むのは仕方ないですね…
パトリオットがなあ。もともと言われてるほど優秀でもないし弾も少ない上に今の時代だとレーダーレンジも射程も短すぎてあんまりなあと
なんだかんだで近代化はしてるけど基礎設計が半世紀以上前だし製造開始だけでも40年以上前と結構なお爺ちゃんでかなり無理させてるところがある
NATO側に実用段階の極超音速ミサイルないから試験できなくて仕方ないんだろうけど極(省略)に対応できてないっぽいし
>パトリオットシステムの有効射程で覆える範囲を「様々な脅威から完璧に保護されている」と考えるのも間違っているはずだ
これは全くもってその通りで、これまで想定されていた空対地・巡航・弾道ミサイルだけでなく安価なドローンとの組み合わせによる想定外の飽和攻撃はパトリオット単体では防げない事が実戦証明されてしまっています
過去の海戦と似たような重層的な対空を地上においても広範囲に展開しないと防げないし、低空侵入してくるドローンについては早期発見も課題です
更に言えば都市ゲリラ的に侵入してきて、高価値目標の近くからドローン攻撃される事も考慮しないといけません
対空の概念も「安価な自爆ドローン」によってだいぶ変わってしまいました
やるか…ポンポン砲チャレンジ
本当に必要な場所の迎撃だけにまとめるか
巡航ミサイルごときで破壊でいると思ったかー!的に
発電所、工場、インフラ等を頑丈にするなり、地下施設にするとかになるのかね~
日本だと地震と水害が多すぎて地下都市は難しそうだけど….ロマンだよね
対ミサイルはともかく、ドローン対策のネットは欲しい所ですね
マリウポリのアゾフスタリ製鉄所モデルで各地に造りましょう。
次の戦いでも、立て籠もれそうだし…。アゾフ連隊ばりに…。
宇宙戦艦ヤマトやん
あれは火星との戦争で作られたやつだったが…
退役するタイコンデロガ級のシステムを転用してみては?
古いので順次に交換?/アップグレード?は必要だろうけれど、無いよりは遥かにマシでは。
なんなら、どこかの港に固定配備しては?。フーシ派相手にSM2/3/6を無駄撃ち?するよりマシかな。
ウクライナも将来的にNATOに加盟することが出来たら、ドニプロ河にアショア専用の艀を置いては?。
先日、他所の記事で欧州のBMDの概念図を見たけれど、一番外側にイージスアショアを想定していました。
欧州は、現在、自分達でBMDを行うことが出来ないのですから。
西側は売るために色々と仕様が異なる兵器を開発していると聞くが防空兵器にもそれは当てはまるんだったら統合して運用するのは大変そうだ
西欧をロシアから守るための東欧諸国の兵力供出には過去何の感謝もなかったのに、東欧をロシアから守るための西欧諸国の参加では論争になってしまうとは、欧州統合が聞いて呆れる話ですな。特にこれに関しては、物理的・技術的なギャップを政治的な優位性で黙らせてきた西欧諸国の悪い部分が過去10年より際立ってきているように見えます。こんな事をしているから、ヨーロッパは最後にアメリカ人とアメリカ製頼りになってしまうんですよ…
カリーニングラードに配備された弾道ミサイルなどの脅威が浮上って新たにNATO加盟したからカリーニングラードはお荷物になったとか言われていたと思えばこれだもんな。
この戦争のせいで大型の徘徊型弾薬なら100kmぐらいの射程になりそうだし、MLRSの通常サイズでも150kmで大型になれば500km超えても不思議じゃない。BAYKARの巡航ミサイルで200kmとかで安全な位置がどんどんと下がっていく。供給されるロングレンジ兵器でロシアが後方に下がって喜んでいた奴が居たけど逆の立場になれば厄介な事この上ない。
GPS妨害の技術も進歩したし。ロシア国内ですら現時点で効果は疑問視されている対EW性能を持つドローンとか実用化されれば防御のハードルはまた上がる。
先月末に日本、フランス、ドイツ当局が対空目標迎撃目的のレールガン技術における協力のための実施指針に署名しているけど、この先の対空防御は各種ミサイルやレーザー等色々な物があるけどどうなっていくんだろうな。
うろ憶えで書くのですが。
欧州のイージスアショア計画では、ポーランドに発射機を置く予定だったと憶えています。
そして、当面はバルト海にイージス艦を配置予定であったと憶えています。
実際どこまで計画が進んだのかは判らないのですが。
仮に、ポーランドのグダニスクにイージス艦を配置すると、カリーニングラードを
気にする必要はなくなるような気がします。防御範囲も広いですし。
他所の記事によると、先日、イージス艦のMk41VLSからPAC3を発射する実験が成功しています。
イージス艦の運用できるミサイルの種類が増えた訳です。元からシースパローも撃てますし。
遠距離攻撃に対する防空に関しては根本から考えを変えていくしかありませんね。
現状の高価かつ希少な迎撃手段では到底話になりません。
ただし、ウクライナが苦境に立たされるのは長距離攻撃に縛りがあるからなので、欧州がウクライナと全く同じになるとは限らないです。攻撃の応酬となった場合は、ロシアも困る事になるでしょう。
日本人も発電所をやられたときの為に、自己防衛のためにソーラーパネルとバッテリーを準備した方がいい。