Saabは好調な2025年をフランスからのGlobalEye受注で締めくくり、Defense Newsも「欧州が防衛資産に記録的な資金を投入する予定で、この恩恵を受けて2025年の勝者となった欧州企業はSaab、Rheinmetall、BAE Systemsで敗者はNaval Groupだ」と報じた。
参考:Saab receives order for GlobalEye from France
参考:Europe’s 2025 defense winners include Saab, Rheinmetall; FCAS falters
確かにDassaultやNaval Groupはこの流れに乗り切れておらず、フランスは2026年に政治力を駆使して巻き返してくるかもしれない
フランスは2025年6月のパリ航空ショーで「GlobalEyeを2機調達する意向書に署名した」「この意向書にはGlobalEyeを追加で2機調達するオプション条項も含まれている」と発表、これはフランス空軍が保有するE-3Fの後継機に「GlobalEyeを選択した」という意味で、Breaking Defenseも「フランスは2030年までにE-3Fの更新を予定していたものの、これまで詳細を明かしてこなかったため今回の発表は唐突なものになった」「フランスの決定でGlobalEyeは2ヶ国目に輸出先を確保することに成功した」と報じた。

出典:U.S. Air Force photo/Airman 1st Class Chris Massey
Saabは30日「仏装備総局と正式に契約を締結した」「仏装備総局からGlobalEyeを2機受注した」「受注額は約123億スウェーデン・クローナ=約2,090億円で2029年~2032年の間に納入する」「この契約には追加購入のオプション条項も含まれている」と発表し、Defense Newsも「欧州は戦車、艦艇、防空システム、弾薬などあらゆる防衛資産に記録的な資金を投入する予定で、この恩恵を受けて2025年の勝者となった欧州企業はSaab、Rheinmetall、BAE Systemsだ」と報じている。
“Saabは好調な2025年をフランスからのGlobalEye受注で締めくくった。ポーランドからA26、タイとコロンビアからグリペンEを、スウェーデン、チェコ、ラトビアからRBS70を、ドイツからタイフーンT5向けの電子戦装置を、スウェーデンから将来戦闘機のコンセプト研究継続なども受注し、こうした好調な業績を受けて既存事業売上高の成長率見通しを20〜24%へと上方修正した。Rheinmetallも好調な一年を過ごし、ドイツ軍からは車輛や弾薬、オランダからスカイレンジャーなど数十億ユーロの複数年契約を獲得した”

出典:SAAB
“Leonardoとの合弁事業でもイタリア軍からLynxの初受注を獲得した。さらにRheinmetallはリュルセングループの造船部門を買収して軍艦建造事業に進出し、ICEYEと共同でドイツ軍向け情報収集衛星の受注も獲得した。こうした動きを背景にRheinmetallの防衛部門は2025年1月〜9月の売上高を前年比28%増に伸ばした。BAE Systemsはノルウェーから100億ポンド相当の26型フリゲート契約を受注した。さらに米国でも海軍から17億ドル相当のレーザー誘導キットを受注し、トルコからのタイフーン発注でも大きな恩恵を受けた。こうした動きを受けて通期の売上高および営業利益の見通しを上方修正した”
“独仏のKNDSも陸上戦用の装備調達が急増した恩恵を受けた。Leopard2A8は10億ユーロ相当の契約を受注し、1992年以来となる完全な新規生産が再開された。さらにKNDS製の火砲に対する需要も旺盛で、PzH2000やCaesarの生産に加えてRCH-155の新規調達が始まった。Rheinmetallとの合弁でドイツ軍とオランダ軍向けにBoxerベースの歩兵戦闘車を200輛以上も供給する34億ユーロ規模の契約も獲得した”

出典:Italian Army/CC BY 2.5
“MBDAも欧州諸国が防空システムに大きな投資を行ったことで大きな恩恵を受けた。デンマークはパトリオットではなくフランスとイタリアが採用しているSAMP/Tを選択した。フランスとイタリアもSAMP/Tの迎撃弾在庫を増やすためAsterを追加発注し、MBDAも急増する需要に応えるため生産能力の拡張に取り組んでおり、EUやNATOが優先事項に挙げた防空・ミサイル防衛能力の強化を支えている。さらにミサイル分野以外にも進出して英海軍からレーザー兵器の受注を獲得した”
“GCAPは競合するFCASが行き詰まる中でも前進を続け、アナリストのビル・スウィートマン氏もASPIに寄稿した中で「沈黙は雄弁だ」と語り、雑音が多かったFCASと比べてGCAPが順調かつ堅実に進捗していると称賛した。勿論、参加国からの不満がないわけではない。日本は開発スピードの遅さを懸念し、イタリアは英国がGCAP関連の技術を完全に共有していないと不満を漏らした。こうした摩擦を除けばGCAPの開発は静かに進んでいると言える。2035年の配備に向けて最初の試練があるとすれば「新たに参加を希望する国が現れたときの対応」で協力を維持できるかどうかだ”

出典:Edgewing
Defense Newsは逆に「この記録的な資金を取り込むことに失敗したのはFCASとNaval Groupだ」「FCASは参加国の対立が激化して期待値が高い現在の状況に逆行している」「Naval Groupはカナダ向け潜水艦でTKMSやHanwhaに敗れて最終候補者に残ることが出来なかった。ポーランド向け潜水艦でもSaabに敗れ、ノルウェー向けのフリゲート艦でもBAE Systemsに敗れ、この1年間に海外から獲得した大型契約は何もない。そのため新規事業の獲得という点でNaval Groupの2025年は厳しいものになった」と指摘し、フランスが関わる計画や企業にとって2025年は辛いものになったという意味だ。
防衛装備の取引は複数年にまたがることが殆どなので「単年実績」でアレコレ言っても意味はないが、Saab、Rheinmetall、BAE Systems、KNDS、MBDA、Leonardo、Fincantieri、Airbusなどには欧州諸国が拠出する資金の恩恵が流れ込んでおり、確かにDassaultやNaval Groupはこの流れに乗り切れていない。

出典:Ministerstwo Obrony Narodowej
米国の主要防衛企業、イスラエル企業、トルコ企業、韓国企業も欧州諸国が拠出する資金の恩恵を受けているため、フランスは2026年に政治力を駆使して巻き返してくるかもしれない。
新年、明けましておめでとうございます。今年もよろしくお願います。
関連記事:グリペンE/F勝利が確定、Saabとコロンビアが31億ユーロの契約を締結
関連記事:タイの戦闘機入札でF-16Vが敗れた理由、グリペンのオフセットが強力すぎ
関連記事:もう米国製はデフォルトではない、フランスがE-3F後継機にGlobalEyeを選択
関連記事:ドイツのGCAP参加問題、イタリアに続き英国も前向きだと表明
関連記事:GCAPは新たな国にプログラムを解放する条件を検討中、ドイツ合流に前向き
関連記事:GCAPに参加するLeonardo、英国が情報共有なしで計画を進めていると批判
関連記事:デンマークがSAMP/Tを選択、中長距離防空システムに総額1.3兆円を投資
関連記事:4ヶ国が競合したノルウェー海軍の次期フリゲート取得、英国の26型が勝利
関連記事:ドイツがFCASに関する政治的決定を無期限延期、プロトタイプ製造に暗雲
関連記事:英国がRCH-155調達に資金供給を開始、ドイツからプロトタイプを取得
関連記事:6ヶ国8設計案が競合したポーランドの潜水艦調達、勝者はスウェーデン
※アイキャッチ画像の出典:Saab





















管理人様
あけましておめでとうございます。毎度海外記事からの情報収集ありがとうございます。今年もよろしくお願いたします。
GCAPも苦労している様子が漏れ伝わってきているので、今年もウォッチさせていただきます。
本邦の陸戦関連だと10式MBT採用から15年経ちましたので、そろそろ次世代戦車の開発に着手するのか?この辺りも気になりますね。
そもそも日本中に配備する為の10式が北海道と九州にしか配備されてないのと、15年経っても明確な改良型が現時点で出てきていない状態で次世代戦車なんか居るのかって思いますね。
本土防衛しかしないので改良もしないで新戦車を作り何かあれば本州に展開すれば良いとか言うなら流石に実戦を舐めすぎでしょう。実際に守備する範囲の地形とか把握した上で運搬はどうすべきか、どう立ち回るべきかとかはあるんだし(北海道の平原だろうが軟弱地盤が点在するので戦車が何も考えずに縦横無尽に走れる訳でもない)。
それに展開する時に必要なトランスポーターの数自体諸外国と比べて少ないと思われるので、そこの増加もした上で戦車をどうするかを考えるべきでしょうね。必要な場所に運べずに数だけあるとか意味が分からない。
戦車ばかり揃えて同等かそれ以上装備すべき行動を共に出来る装軌IFVが全然数が無いのですから、新戦車作るならまず最初に防御を上げた揃えるべき物を揃えてからやれって感じです。戦車さえ有れば陸戦をかなり有利に出来るって状態はここ数年で崩壊してるんだから、目先の総合力をまず上げろと思います。
トランスポーターの充足率が不足とは知りませんでした。浅学を恥じるばかりです。
近年民間運輸を利用した機動を研究、訓練していることから、こう言った面があるのだと目から鱗でした。
個人の感想レベルですがウクライナの戦場で60t超のmbtが積極活用できず40t級のレオ1やT64系の方が使いやすい=重量過多からくる戦略機動の問題と捉えていたので、そもそもの輸送インフラの充実に目が向いていなかったのは浅学と言う他ないですね。
ご教授ありがとうございました。
50t積載能力がある特大型運搬車は北方に少数で数の上での主力である73式特大型セミトレーラの最大積載量は40tで10式ですら装甲外して輸送(恐らく弾薬類も降ろす)している状態です。
ハッキリ言って降ろして即実戦投入出来ない状態で輸送出来ます戦略機動性が改善されたとか疑問に思います。もちろん砲塔分離までしなければ運搬出来ない90式よりは大分マシでしょうがそれでもフル装備で普通に運搬出来ないのは問題でしょう。
逆に積載量があるまともなトランスポーター作って増やすつもりが無いのならフル装備でも73式で運搬出来る小型軽量の戦車を作る必要があるかもしれませんね、なんか情けない話ですが。
トランスポーターで運搬するのは戦車に故障が多いからでもあるし、燃費の悪さもあるし乗員が休憩出来る時間を作る目的(運転や振動や音での疲労から守る)もあります。戦車が自力で展開出来るから百キロ単位ぐらいの移動は問題無いだろうとか言うのは流石に何も考えてない暴論です。
軍研で元陸将だったかが10式も16式ももっと必要とか書いてて萎えますね、ただ正面装備が欲しいだけで後方インフラまで含めた話までしてない時点でどうかと思います。
16式は打撃力だけで考えると相手はMBTもちださんといかんし
73式でも運べるしでそれほど悪くないのでは?
今後10MBT増勢は90MBT減勢とバーターですからトランスポーター不足はある程度改善されていると思いますよ。16MCV等の装輪戦闘車両の陸上移動は自走が基本です。
そして戦略的長距離移送は現在海上輸送が中心です。
ライフサイクルコストの見積り条件によればですが、10MBTは令和20年度(2038年度)までに約350両を取得、1両当たりの運用期間を30年としていますね。つまり(後継MBT計画が確立されればですが)2041年度から更新が開始されると見て良いでしょう。開発着手から量産化まで10年間程度と仮定すれば、早く見ても2030年代初頭着手というところでしょうか。
防衛装備庁ではトップアタック兵器や自爆型ドローン等も考慮した上で各種研究を進めています。現時点では無人戦闘車両の開発を主眼に置き要素研究を行っているように思われます。勿論有人戦闘車両にも適用できる研究と思いますが。
「無人化砲塔技術の研究」「装甲車両の近代化に関する研究(ハイブリッド動力、先進車体構造)」「装備システム用サイバー侵入対処技術の研究」等。
あけましておめでとうございます。今年も各種ニュースを楽しみにしています。
SAAB1年で株価100%以上(!)5年800%(!)伸びているわけですが、成長率20%以上ならば納得ですね。
時価総額2869億クローネ(STO SAAB-B)なので、1クローネ=約17円とすれば、4兆9000億円くらいになります。
スウェーデンのGDPは、6000億ドルくらいなので、SAAB=スウェーデン外交が上手に売り込んでいるのを感じました。
まあ、軍需産業は決して儲かる分野ではないし、需要が高まり受注が多ければいいというものでもないがな
ロシアの防衛産業の悲惨な現状を見るとそう思う
軍需産業は、安定的な利益が見込める銘柄で、ディフェンシブ株という位置づけだったんよね。
ウクライナ戦争後2.3年は、安全保障環境が変わったということで、成長株みたいな扱いになったかな。
明けましておめでとうございます!
BAEやラインメタルは以前から実績があったのに対してSAABはこれまであまり輸出が振るっていなかったのにこの躍進ぶりは凄いと思います。
2024年3月 スウェーデンがNATOに加盟
SAABは同盟国の企業として仕事がやり易くなったのかも?
>「新たに参加を希望する国が現れたときの対応」で協力を維持できるかどうかだ
うーん、サウジより金出せる国やドイツほど欧州で政治的影響力ある国がそうそうあるとは思えないんで
サウジの参加意思に対する反応、ドイツの匂わせへの反応見る限り、その辺はそこまで心配ない様に見えるけどなぁ。
それより普通に技術アクセスやワークシェアで上手い落としどころが見つかるのか、の方が個人的には心配。
日本も三菱や川崎の株価が底値から10倍だからな
スゲエ時代が来たモンだ