オランダは5日に発表された防衛白書の中で「戦車大隊の再導入」を発表、現地メディアは「約50輌で構成される戦車大隊の再導入が決定された」「国防が政治的優先順位の最下位にぶら下がっていた時代が確実に終わりを迎えた」と報じている。
参考:Defence White Paper 2024: Strong, smart, together
参考:Tanks, straaljagers, helikopters en fregatten: defensie maakt zich op voor nieuwe tijden
参考:De landmacht juicht: het Nederlandse leger krijgt weer eigen tanks
兵者の受け入れ体制や訓練リソースは別にしても「義務的徴兵制度を復活させる土台」は維持されている
オランダはGDP比1.0%前半台の国防予算を2022年に129億ユーロ、2023年に154億ユーロ、2024年に214億ユーロ(GDP比1.95%)に引き上げたが、オンノ・アイヘルスハイム国防長官は「我が国が置かれた現状を考えると現在の予算では全くたりない」「例え国防支出が2.0%に達しても我々は選択を迫られる」「ロシアは侵攻初期の損失から迅速に回復して戦力を増強しているが、我々はそこに至っておらず、手持ちの軍事資産の殆どが十分ではない」と指摘。
特にオランダは伝統的な陸上戦力=戦車部隊を2011年に解散させてしまい、ドイツからリースされたLeopard2A6(18輌)を独陸軍との混成部隊=第414戦車大隊で運用するだけで、陸軍司令官のヤン・スウィレンス中将は「まだ政治的な決定は下されていないが戦車は調達リストの上位に入っている」「もう必要ないと考えられていた砲兵装備や防空システムも調達リストの上位に入っている」と述べていたが、5日に発表された防衛白書の中で「戦車大隊の再導入」を発表した。
現地メディアのNRC Handelsbladは「約50輌で構成される戦車大隊の再導入(大隊用に44輌+訓練及予備8輌/最大3.5億ユーロの投資)が決定された」「Leopard2を手放してから13年後の決定により戦場の王者が復活を遂げようとしている」「まだ何を取得するかは議論されていないものの40年以上に渡るLeopard2の運用経験、オランダ陸軍と独陸軍との一体運用、ドイツがLeopard2A8プログラムにオランダを招待していることを考えるとLeopard2A8を選択する可能性が高い」と、Volkskrantも「国防が政治的優先順位の最下位にぶら下がっていた時代が確実に終わりを迎えた」と報じている。
因みに防衛白書の中で「F-35A(6機)の追加取得」「対潜用フリゲート艦とNH90の調達」への追加投資にも言及しており、オランダの新政権も国防分野に年24億ユーロを追加投資することで合意、さらにブレケルマンス国防相は「過去の兵役モデルに回帰したい訳では無いが『新たな兵役モデル』に移行したい」「もし大規模な戦争が発生すればNATO加盟国として相当数の部隊を提供しなければならず、そのためには自発的な志願兵や予備役だけでは十分ではない」と述べているのが興味深い。
オランダは一般的に「義務的徴兵制度を1987年に廃止した」と解釈されているものの、実際には徴兵制度の運用を停止しただけで「徴兵対象者リスト」の更新は続けられており、17歳になると徴兵対象者リストに追加されたことを知らせる通知が来るが当局に出頭する必要はない。さらに2018年には徴兵対象者リストへの女性追加(国防に関する平等を象徴した取り組み)が始まっており、徴兵者の受け入れ体制や訓練リソースは別にしても「義務的徴兵制度を復活させる土台」は維持されている格好だ。
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※アイキャッチ画像の出典:FaceMePLS/CC BY 2.0
外交的な都合だけでなく、既成事実や運用面での経験・知識の蓄積も必要なので仕方ないとは思いますが、air littoralや無人車両といった今後期待される概念・技術への適応性や拡張性が高いとは言い難いであろう仕様の兵器を今揃えるというのは勿体なく感じてしまうところ。
ウクライナ戦争の影響は大きいですなあ。
後の世では「ウクライナ・ショック」とでも呼ばれるんですかね?この各国の陸軍編成が大幅に変わった事件と時期のことは。もう呼んでたりする?
事の是非や至るまでの諸々、各国の思惑など色々とありますが、各国が経時的に繋がり合って軍備を縮小して「平和が一番だよね」と笑って言える世界にならなかった事が悲しく思います
今後しばらくは軍備の見直し・再編の流れが続くんでしょうね
EMBTやKF51ではなくレオパルド2A8を選択するあたり、将来性よりも早く納品されるほうを選択したといったところでしょう。経験を無視して納品という観点だけでみればK2のほうが良さそうですけどね。
また国土の2.5割が海面下になるわりに北海側から上陸されることはほぼ考えなくてよく、陸側国境付近で迎撃するから重量級で平気と考えてるのかな?
レオパルド2の運用経験があり、ドイツとの関係性を大事にしたい
失礼、途中で送信されてしまった…
– レオパルド2の運用経験があり、ドイツとの関係性を大事にしたい、自国での生産や国産部品にこだわらない -> レオパルド2 A8
– ドイツとの関係性を大事にしたい、自国での生産や国産部品にこだわる -> KF51(おそらく国によって仕様が大きく異なる)
– ドイツ依存を避けたい、自国での生産や国産部品に拘る -> K2
といった感じなのでは。
破棄されたらしい? K2PLが砲塔の装甲の増強(高さと側面装甲の強化)、車体を延長して65t級だったことを考えると、実は素のK2では平原での運用に適してはいないのではという気も。
リンク
流石にオランダの今の装備体系でK2は選ばないでしょう。
それに経済力もあるし。
製造ラインとNATOを考えるとM1系
EU関係のつながりを考えるとレオ2かKF-51ってところでしょうか?
え、M1ってもう作っていないんじゃと思ったら砂漠にまだ3700台もストックしていたでござる。
Wikipediaによると、M1の製造期間って、
M1 1979年–1985年
M1A1 1985年–1987年
M1A1(HA) 1987年–1992年
らしいのだけど、製造数が3700両より多いということは、単純に3700両/13年でも、284両
アメリカが本気だせば、年284両の戦車を作れるのかな。
>NH90の調達
オーストラリアは「全然ダメやん!」ってめちゃオコでしたけど
ヨーロッパは普通に使うんだなぁ、と思ったらオランダは開発国の一つでしたね
戦車大隊を一つ用意したところで、オランダ一国家としての存立に意味があるはずもなく、
あくまでNATOの付属品という前提での編成なのでしょうが、
この調子でNATO加盟国が個々に軍備を強化し続けると、
NATOはロシアに対して明らかに戦力過剰になって
逆の意味でパワーバランスが崩れるような気がするんですがねぇ
ロシアをダシにして強化し続けた力を持て余して
ユーゴ紛争のようにNATOが軍事的介入傾向を強めるルートもあるわけで
もはやプーチンの妄想の世界がどんどん現実化してることに
自称リアリストの方々は気づいているのやら
どの位用意したら意味があると思われますか?
こんな場で極論述べられてもなぁとしか
レオ2A8は良いのですが。
機械装填の方はどうなのでしょう。
陣地戦の時、人力では、至近距離でロシア戦車と向き合うと、
装填速度で遅れをとりそうな気もしますが。
西側で自動装填装置を使ってる戦車って
90式、ルクレール、K2、10式
と、意外に少ないんですよ、輸出されているのはルクレールとK2の2車種ぐらいです
でもオランダの「今まで使ってた実績」「ドイツとの関係」を考えたらどっちも選び難いですね
余っている90式を提供する。
わーくにも、漸く程度の良い余剰装備を予備戦力として保管する方向へ舵を切りましたからねぇ…
保管から漏れた個体にどれだけの価値がある事やら
装填速度のためだけに自動装填が必要ってのはどうかなとは思うけど。自動装填装置は完璧では無いし、当然安全係数高く取ればちょっとした事でエラー発生するので調整が難しい。
世界広しといえど戦車がガチの殴り合いをする実戦での運用実績ある自動装填装置ってカセトカ方式だけじゃないだろうか?
近距離で殴り合いして装填速度が問題になるのであれば運用がまずいだけだと思うし、人力装填で問題無いような距離で戦うなり遭遇戦で起きて速度が問題になるなら殴るより先に逃げるとかが必要では?
装填速度以前に、120mm砲弾の人力装填では移動射撃が困難という問題がありますので
走行中の激しく動揺する車内で20kgの砲弾を取り回すのは人間業ではありません
ロ軍や陸自など自動装填装置を搭載した戦車を扱う陸軍では、行進間射撃は多用されます
そのあたり、youtuberのインタビューでM1の中の人が答えていたけれども、
– 敵を見つけてから射撃するまでにかかる時間 > 装填速度だから問題ない
– 車体の安定性が高いのである程度速度が出ていても問題なく装填できる
後は現状のMBTは「砲塔の乗員で分担して目視で敵を索敵する」という方法を取るので、自動装填の分、一人分の視界がないのはかなりのディスアドバンテージだと思われ。
リンク
実際、Challenger 2 TESやLeopard2 A7HUのRWS(サーマル付き)は装填手が操作するだし。
(おそらく索敵能力向上のため)
オランダまでロシア軍が到達するような状況じゃ詰んでるから要らないだろと思うけど、一応NATOとして一緒に戦う姿勢は示さないとと言うことか。やはり要らないと思うな。
アメリカがM1A2をアメリカ国内で使うことを考えていないように、オランダ陸軍戦車隊がオランダ領内で戦うことは想定してないと思う。
戦争の細かいところは変わったが大元は2度の大戦で出尽くしたロジックと変わっていないわけで、戦車のコスパは確実に悪くなったとはいえ、まだまだ必須装備と言える。何ならここ何年かと比べたら数の重要さが如実になったので、米帝や中国たいな例外は置いておいて、それ以外はいかにコスパよく数を揃えるかになるんだろうなと。もちろんハイテク兵器も確実に必要になるけれども、100万もしないドローン一個で後退させられたら割に合わなすぎる。絶滅戦争をするならともかく、基本的には戦争継続能力を奪うことが勝利条件になるので、安く殺し、壊して安く守るのが今後のトレンドなのかな。
米帝?今だに使いますか。
戦車のコスパを言うと昔のMBTに大差ない今の装輪IFVはどうなるって話ですがね。MBTが無人機で一発と言っても砲弾を積まなければそうでは無い。
じゃあ砲弾がなければ10億円の装輪IFVとて何ができうるかはウクライナ戦場では依然としてMBTが戦車砲を撃ちまくってる様からして明確です。
直射火砲がなければやはり戦闘では勝てない。銃弾だけでは無力である以上、火砲は必須=誘爆は免れないって事です。コスパを無人砲塔で語るとさあどうなるかですね。